例え過去のことしか載っていなくても、本というものはよい情報源ですよ。
だからこそパチュリー様は本を通して知識を吸収し、自らの糧となさっているのです。
しかしながら、記憶とは違って必要な情報が即座に見つかるわけではないんです。
それでも、本は忘れたりすることはしないので保存・維持の面ではいいんですけどね。
だからこそ、私は今こうして膨大な書物の中から情報を検索しているわけなのです。
パチュリー様は折悪しく、お休みになられています。
明かりを確保するためちょっとだけ精霊さんにお手伝いしていただいて、資料を探しているのは見ての通り。
もちろんのこと、他の方に頼むわけにはいきません。
美鈴さんも咲夜さんもご多忙です。お嬢様や妹様に頼むのはもっての他ですよ。
それでも、本は大好きですからあまり辛くはないんです。
……本当ですよ?
私が今探している資料は、とある妖怪についてです。
……いえ、違いますね。妖怪なのかどうかも今の所はよく解りません。
資料から読み取れるのは断片的な情報だけなので、もしかしたら妖精だったり神様だったりするのかも。
――あ、もしよろしければ、お手伝いして頂けませんか?
い、いえ。そんなこの本全部に目を通して欲しいだなんて言いませんよ。
ただ、私が知ってる情報で、何か心当たりがあったら教えていただきたいなーって思っただけです。
……えっと、宜しいんですか?
じゃあ、私が知っている情報をお教えしますから、何か解ったら教えてくださいね。
まず……『冬に現れては多くの方を虜にして、春が近づくと姿を消していく』だそうです。
えっと、レティさんでしたっけ? あの綺麗な冬の妖怪さん。何だかレティさんに似てますね。
もしかしたらご友人か親戚なのかなーって思ったんですけど、どうやら違うみたいなんですよ。
それが次のキーワード『高熱を発する』から予想できますよね。
レティさんは寒気を操るそうですし、これだと逆ですもの。
実は『下手するとヤケドする』という情報もあるんですよ。咲夜さんみたいにカッコいいんでしょうね。
あ、『ミカンを持ってると強くなる』というのもありましたね。
きっとそれが元気の源なんですよ。サボテンを元気の源にする方もいらっしゃるようですから。
それと、お名前の感じからして2代目みたいですね。私は英語はちょっと苦手なのでよく解りませんけど、
パチュリー様がそう断言なさっているので間違いないと思います。
んーと他には……『近づいた者を眠らせてしまう』だそうです。ちょっと怖いですね。
目の前で指をぐるぐるぐる~ってするんでしょうか? 西行寺のお嬢様とご関係があるかもしれません。
『そのまま眠ってしまうと体調を崩されてしまう』という情報もあります。気をつけないといけませんね。
――あ、そうだ! 西行寺のお嬢様といえば、もう1つ関係がありそうな情報があるんです。
ちょっと怖いんですけど……『多くの方がその大きな口に足から食べられてしまう』そうです。
なんでも、一度喰らい付かれてしまうと動けなくなってしまったり、逃げ出したりすることが出来なくなってしまうとか。
好物は人。そして猫……と書いてありました。
……えっと、もし見かけたら逃げてください。捕まることはないと思いますけど、私でよければお助けしますから。
すみません、こちらもあまり情報がないもので。
代わりといってはなんですが、紅茶くらいでしたらお出しできますけど……はい、それではお持ちしますね。
あ、本が崩れないように気をつけてください。結構際どいバランスになってますから。
――こぁちゃんから聞いた『それ』と、私は後日まみえることになりました。
『それ』は圧倒的な魅力と魔力を以て私を誘惑しましたが、すんでの所でその誘惑を振り切ることが出来ました。
……実に、実に危ない所でした。あんなものが相手では私も本気を出さざるを得ません。
残念ながら痛み分けに終わってしまいましたが、私の仕事は『それ』の調査です。
こんなこともあろうかと用意しておいた、長距離望遠レンズでの狙撃的撮影で、その姿はバッチリカメラに収めました。
残念ながら犠牲になってしまった方を助けることは出来ませんでしたが、
何だか助けるのも気が引ける表情だったので気にしないほうがいいでしょう。
さて、こぁちゃんの紅茶をご馳走になりに行きましょうかね。
プラスチック製の炬燵はまだ大丈夫でしょう
電気の使わないコタツが幻想入りしたんだ!
・・・・あれ?
てか、犠牲者誰だ? 橙か? 椛か?
どうにかせんと。
だから幻想入りなどしない!
俺も食われたい・・・
あまり使わなくなったからと我が家にあったこたつを親が捨ててしもうた(´・ω・`)