うっそうと茂る森の中。
そこに少女がポツンと一人。
前のめりになって倒れていた。
ちなみになぜかずぶ濡れである。
そしてそこで一人の青年と遭遇しました。
青年と倒れてる少女は面識があるようです。
二言三言話しあってから青年はため息吐きつつ少女を背負い運び始めました。
「お手を煩わして申し訳ありません、店主さん」
「いえ、一応お得意様ですから。それに見て見ぬふりをして、後日死なれたとあっては寝覚も悪くなりますし…と、着きましたよ」
茂る森を抜けた所にその古道具屋は存在した。
香霖堂。その青年が営む古道具屋である。
森近霖之助。それがこの古道具屋の店主の名前である。
店の中はさまざまな物であふれていた。
ゴミ屋敷と言ってしまえば元も子もないが、まぁ似た様な状況であった。
その奥の物であふれていない寝室に少女は寝かされていた。
さっきまでの着物ではなく、今は店主の普段着を寝間着代わりにして着ている。
少女の顔は赤く、どうやら風邪を引いてしまっているようであった。
自身の額に手を当てふぅ、と一つ溜息を吐く。
「少し安静にしていればすぐ治りますよ」
「はぁ、それならばありがたいのですが…」
「それにしても光の三妖精にも困ったものですね」
「はい、おかげで川にはまってずぶ濡れで…」
「風邪まで貰ってしまったようですしね」
「しかし店主さん、今日は助かりました」
「いえいえ、できれば商品を買って頂ければこちらとしては幸いです」
「申し訳ありません。今持ち合わせがあまりないので…」
「では後日期待させていただきますよ」
そこまで言ってから店主の方はカウンターに腰を下ろし、手持ちの本を読み始めた。
そこでふと気付いたかのように顔を上げ
「そういえば何かあったら言ってください」
「いえいえ、お気遣いなく」
そして店主は再び本に視線を下ろし、少女は布団の中に包った。
「はいどうぞ、自分で食べれるかい?」
「あ、その点に関してはお気遣いなく…」
少女は店主が作った粥を自分の息で冷ましながらちびちびと食べ始めた。
いつの間にかお互いに相手に対しての隔たりがなくなっていた。
それは少女が寝付けない時などに店主にいろいろ話を聞いていたためだ。
もともと店主は説明好きであるらしく、道具に関して何か聞けば自慢げにあれこれいろいろ話し始めた。
時には突拍子もないようなことをあれこれ話してり、少女は少女で店主にそれは違うあれそれ何とかとお互い舌戦を繰り広げたりしたのであった。
ちなみに舌戦の現在の対戦表は5対4で店主一勝で勝ち越している状況だ。
また、少女が「風邪を引いてさえいなければ…」などと悔しそうにつぶやいたりした場面もあった。
まぁ、そんなこんなで二人は仲良くなった。
「一応、里の方に連絡はしておいたよ」
「んん、いつの間に」
「文屋天狗がサービスとしてやってくれたよ。そういう訳だからゆっくりして休んでいればいい」
「なるほど、ありがとうございます」
「どういたしまして」
「しかし意外でしたね」
「ん、なにがだい?」
「初めて会ったころはもっと冷たい印象を受けたのですが…」
「ああ、あの時は騒がしかったからだよ。騒がしいのは嫌いでね」
「なるほど、大人しくすれば問題ないと」
「ああ」
そして店主はほかに行動することはないのかと言いたくなるほどに繰り返した、少女が何度も目にする視線を本に下ろし読み始めるという行動を行った。
ちなみにさっきから同じ本をである。いったい何度読み返せば気あ済むのだろうか。
「んん…」
小さな窓から朝日が差し込む。
少女、稗田阿求は思いっきり伸びをしてから体の調子を見た。
しばらく動かしてからやがて満足のいく結果が出たようで「よいしょっと」という掛け声とともに布団から起き上がる。
それから寝間着から自分の普段着に着替えてから店へと顔を出す。
「ん、目が覚めたかい?おはよう」
霖之助は昨日から変わらない姿でカウンターに座っていた。
「ああ、ハーフだからね。人間ほど睡眠が必要ではないだけさ」
などと勝手に語り始める。
「昨日はご迷惑をお掛けしました」
「いえいえ、こちらも割合楽しかったですよ」
にこやかな笑みで笑い合う。
「では、もし里によることがあったらぜひ家にいらしてください。お礼もしたいですし」
「お礼をしてくれるというのなら何か買っていって貰いたいところだよ」
「はは…善処します」
カランカラン
乾いたベルの音とともに阿求は扉の向こうへと消えて行った。
「またのご来店をお待ちしてます」
そして霖之助は再び手元の本へと視線を下した。
そこに少女がポツンと一人。
前のめりになって倒れていた。
ちなみになぜかずぶ濡れである。
そしてそこで一人の青年と遭遇しました。
青年と倒れてる少女は面識があるようです。
二言三言話しあってから青年はため息吐きつつ少女を背負い運び始めました。
「お手を煩わして申し訳ありません、店主さん」
「いえ、一応お得意様ですから。それに見て見ぬふりをして、後日死なれたとあっては寝覚も悪くなりますし…と、着きましたよ」
茂る森を抜けた所にその古道具屋は存在した。
香霖堂。その青年が営む古道具屋である。
森近霖之助。それがこの古道具屋の店主の名前である。
店の中はさまざまな物であふれていた。
ゴミ屋敷と言ってしまえば元も子もないが、まぁ似た様な状況であった。
その奥の物であふれていない寝室に少女は寝かされていた。
さっきまでの着物ではなく、今は店主の普段着を寝間着代わりにして着ている。
少女の顔は赤く、どうやら風邪を引いてしまっているようであった。
自身の額に手を当てふぅ、と一つ溜息を吐く。
「少し安静にしていればすぐ治りますよ」
「はぁ、それならばありがたいのですが…」
「それにしても光の三妖精にも困ったものですね」
「はい、おかげで川にはまってずぶ濡れで…」
「風邪まで貰ってしまったようですしね」
「しかし店主さん、今日は助かりました」
「いえいえ、できれば商品を買って頂ければこちらとしては幸いです」
「申し訳ありません。今持ち合わせがあまりないので…」
「では後日期待させていただきますよ」
そこまで言ってから店主の方はカウンターに腰を下ろし、手持ちの本を読み始めた。
そこでふと気付いたかのように顔を上げ
「そういえば何かあったら言ってください」
「いえいえ、お気遣いなく」
そして店主は再び本に視線を下ろし、少女は布団の中に包った。
「はいどうぞ、自分で食べれるかい?」
「あ、その点に関してはお気遣いなく…」
少女は店主が作った粥を自分の息で冷ましながらちびちびと食べ始めた。
いつの間にかお互いに相手に対しての隔たりがなくなっていた。
それは少女が寝付けない時などに店主にいろいろ話を聞いていたためだ。
もともと店主は説明好きであるらしく、道具に関して何か聞けば自慢げにあれこれいろいろ話し始めた。
時には突拍子もないようなことをあれこれ話してり、少女は少女で店主にそれは違うあれそれ何とかとお互い舌戦を繰り広げたりしたのであった。
ちなみに舌戦の現在の対戦表は5対4で店主一勝で勝ち越している状況だ。
また、少女が「風邪を引いてさえいなければ…」などと悔しそうにつぶやいたりした場面もあった。
まぁ、そんなこんなで二人は仲良くなった。
「一応、里の方に連絡はしておいたよ」
「んん、いつの間に」
「文屋天狗がサービスとしてやってくれたよ。そういう訳だからゆっくりして休んでいればいい」
「なるほど、ありがとうございます」
「どういたしまして」
「しかし意外でしたね」
「ん、なにがだい?」
「初めて会ったころはもっと冷たい印象を受けたのですが…」
「ああ、あの時は騒がしかったからだよ。騒がしいのは嫌いでね」
「なるほど、大人しくすれば問題ないと」
「ああ」
そして店主はほかに行動することはないのかと言いたくなるほどに繰り返した、少女が何度も目にする視線を本に下ろし読み始めるという行動を行った。
ちなみにさっきから同じ本をである。いったい何度読み返せば気あ済むのだろうか。
「んん…」
小さな窓から朝日が差し込む。
少女、稗田阿求は思いっきり伸びをしてから体の調子を見た。
しばらく動かしてからやがて満足のいく結果が出たようで「よいしょっと」という掛け声とともに布団から起き上がる。
それから寝間着から自分の普段着に着替えてから店へと顔を出す。
「ん、目が覚めたかい?おはよう」
霖之助は昨日から変わらない姿でカウンターに座っていた。
「ああ、ハーフだからね。人間ほど睡眠が必要ではないだけさ」
などと勝手に語り始める。
「昨日はご迷惑をお掛けしました」
「いえいえ、こちらも割合楽しかったですよ」
にこやかな笑みで笑い合う。
「では、もし里によることがあったらぜひ家にいらしてください。お礼もしたいですし」
「お礼をしてくれるというのなら何か買っていって貰いたいところだよ」
「はは…善処します」
カランカラン
乾いたベルの音とともに阿求は扉の向こうへと消えて行った。
「またのご来店をお待ちしてます」
そして霖之助は再び手元の本へと視線を下した。
楽しめました。