注意・タイトルのとおり『黄泉帰りの物語』の続きです。そちらを見てからこれを見ないと話が繋がりません。
あと、オリキャラが出てきます。そういうのがいやな人は回避してください。
次の日、何故か寺子屋は休みだった。
幾人かの子供達が『本日休業 慧音』の文字を見て帰っていく。
当然少年もそれを見て帰ろうとしたのだが、寺子屋の後ろのほうに誰かがいるのが見えたのでそこに行ってみることにした。
そこにいたのは一人の女性。
白い髪の毛と独特の服装をしていて、――こんなことをいうと怒られそうだが――少し怖そうな女性。
勿論少年と会うのはこれが初めてである。初めてであるのだが。
(どこかで、見たことのあるような)
そんな感じの女性であった。あるいは妙な既視感とでも言うのだろうか。
ともかく、少年が女性をじっと見ていたことは間違いがない。そのため、その女性に気づかれることとなってもそれは当然のことなのである。
「私に何か用か?」
「え!?」
しかし、少年にとっては突然だったため、多少驚いてしまった。が、そんなことはお構いなしに女性は少年に話しかける。
「ひょっとして慧音の生徒か?なら今日は慧音は休みだから、早く家に戻って休むといい」
そう言って、女性は家を見つめる。恐らく慧音先生の家だろうと少年は思った。
その表情はとても柔らかいもので、もしかしたらこの人は慧音先生のことが好きなのかもしれない、とも思った。
このままじっとしてるのも変な話だと思い、少年は思い切って女性に聞いてみた。
「あの、慧音先生は今日はどうしたんですか?」
「ん?何でも風邪をこじらせたらしい。まったく、この寒い中夜遅くまで外にいるからこんなことになるんだ」
ぶつぶつと慧音に対して文句を言ってるのだが、その表情はどこか心配した顔つきになっていた。
やはりこの人は慧音先生が好きなのだろう。そう少年が思ったとき、女性はふと思い出したかのように少年に話しかけた。
「ああ、そういえば。慧音の風邪の症状は……まぁ、割と芳しくないらしくてな。……なんでも一度嘔吐(えず)いたらしい。
だから私も心配でな。『看病する』と言ってるのに『迷惑がかかるからいい』と言って聞かないんだ、これが」
はぁ、とため息をつく女性。
「それで、まぁ私はここでこうして見守ってるわけだが。……少年も慧音が心配だろう?」
「はい」
「なら、ひとつ頼みがあるんだが、いいか?」
「えと、僕にできる範囲なら」
そういうと女性は微笑んで。
「そうか、ならお願いしよう。……この先をずっと言ったところに、風邪に良く効くという草があるんだが……それをとってきて欲しいんだ」
「分かりました。いいですよ」
「ああ、悪いな。細長くて若干赤みがかかった草だからすぐに分かると思う」
「分かりました。えっと、場所的にはどの辺にあるんですか?」
「うん?……あぁ。その草のありかな。それならば簡単だ。いいか?」
「丁度この前、人が一人死んで、慧音が墓を作ったところがあるだろう?そこにあるから、とってきてくれ」
* * *
そして少年はあの“悪夢の場所”に再び戻ることになった。
それは女性の死体が発見された場所。
それはいくつかの矛盾が生まれた場所。
それは、少年にとって恐怖が植え付けられた場所。
もう、できるならば二度と来たくなかった場所。
そこを少年は歩いていた。
気がつけばもう日はとっくに落ちていた。
――ああ、今日は満月か――
なんてぼんやり思いながら、月の光に照らされた道を一歩一歩進んでいく。
進む過程で少年は様々な事を思考していた。
自分が見たのと他の人が見た死体の違い。
誰も覚えていない死体の身元。
そして、何故か生きてあの場所にいた、死体。
全てが混乱する事だらけだった。
しかし、最早少年にとって『真実を知りたい』という気持ちは段々と薄れていた。
それは、生きていた死体が自分を(恐らく)殺そうとした時から。
そのため、少年はこのことを忘れて、普段の生活に戻ろうと思っていた。思っていたのに……。
(何でまたここに来ちゃったんだろう)
少年は一人愚痴る。そもそもあの女性こそが取りに来ればよかったんじゃないのか?とさえ思うほど、少年の心は疲弊していたのだ。
なんてことを、考えていたときだった。
(……あれ?)
少年は、ふとあることを思い出した。それは、少年がここに来る原因を作った女性のことである。
どこかで見たことがあるような、と表現したが、それは間違いではなかったのではないか。
そう、確かに少年は見ていた、否、会っていたのではないか。あの女性と。
どこで?
それは……例えば今向かっている場所で。
いつ?
それは……例えばあの時の生きている死体を見たときに。
本当に?
……そうだ。その前にも一度会っている気がする。どこでだ?どこであの女性と会った?
―――白い髪―――独特的な服装―――そしてあの顔―――
それは
そうだ
あのときに見た
――――――――――――――――――死体?
はっとなって少年は瞬間的に後ろを振り返った。
――誰もいない
当然だ。いるわけがない。だって先ほどから歩いていて足音は一つしか聞こえないのだから。
そう思って顔を前に向かせようとして……そこでまた、一つ奇妙なことを思い出した。
それは、少し前に慧音に質問したときの慧音からの応答。
『ふむ……よくは覚えていないが、いやなんともへんな形容だが、普通の死体だったぞ?
こう、血はたくさん出ていたし、顔面も蒼白だったし。何より汚れが酷かったな。崖から落ちたからだと思うが……』
よくは覚えていない。
前述したとおりに、慧音は『知らない歴史はない』と形容される人物である。その慧音が覚えていないはずがないのである。
では、もしも慧音が『覚えていない』と言う言葉を使うのはどんなときか?それは、例えば。
「……誤魔化したい時?」
「ああ、そうだ。よくそこまで気がついたな」
あと、オリキャラが出てきます。そういうのがいやな人は回避してください。
次の日、何故か寺子屋は休みだった。
幾人かの子供達が『本日休業 慧音』の文字を見て帰っていく。
当然少年もそれを見て帰ろうとしたのだが、寺子屋の後ろのほうに誰かがいるのが見えたのでそこに行ってみることにした。
そこにいたのは一人の女性。
白い髪の毛と独特の服装をしていて、――こんなことをいうと怒られそうだが――少し怖そうな女性。
勿論少年と会うのはこれが初めてである。初めてであるのだが。
(どこかで、見たことのあるような)
そんな感じの女性であった。あるいは妙な既視感とでも言うのだろうか。
ともかく、少年が女性をじっと見ていたことは間違いがない。そのため、その女性に気づかれることとなってもそれは当然のことなのである。
「私に何か用か?」
「え!?」
しかし、少年にとっては突然だったため、多少驚いてしまった。が、そんなことはお構いなしに女性は少年に話しかける。
「ひょっとして慧音の生徒か?なら今日は慧音は休みだから、早く家に戻って休むといい」
そう言って、女性は家を見つめる。恐らく慧音先生の家だろうと少年は思った。
その表情はとても柔らかいもので、もしかしたらこの人は慧音先生のことが好きなのかもしれない、とも思った。
このままじっとしてるのも変な話だと思い、少年は思い切って女性に聞いてみた。
「あの、慧音先生は今日はどうしたんですか?」
「ん?何でも風邪をこじらせたらしい。まったく、この寒い中夜遅くまで外にいるからこんなことになるんだ」
ぶつぶつと慧音に対して文句を言ってるのだが、その表情はどこか心配した顔つきになっていた。
やはりこの人は慧音先生が好きなのだろう。そう少年が思ったとき、女性はふと思い出したかのように少年に話しかけた。
「ああ、そういえば。慧音の風邪の症状は……まぁ、割と芳しくないらしくてな。……なんでも一度嘔吐(えず)いたらしい。
だから私も心配でな。『看病する』と言ってるのに『迷惑がかかるからいい』と言って聞かないんだ、これが」
はぁ、とため息をつく女性。
「それで、まぁ私はここでこうして見守ってるわけだが。……少年も慧音が心配だろう?」
「はい」
「なら、ひとつ頼みがあるんだが、いいか?」
「えと、僕にできる範囲なら」
そういうと女性は微笑んで。
「そうか、ならお願いしよう。……この先をずっと言ったところに、風邪に良く効くという草があるんだが……それをとってきて欲しいんだ」
「分かりました。いいですよ」
「ああ、悪いな。細長くて若干赤みがかかった草だからすぐに分かると思う」
「分かりました。えっと、場所的にはどの辺にあるんですか?」
「うん?……あぁ。その草のありかな。それならば簡単だ。いいか?」
「丁度この前、人が一人死んで、慧音が墓を作ったところがあるだろう?そこにあるから、とってきてくれ」
* * *
そして少年はあの“悪夢の場所”に再び戻ることになった。
それは女性の死体が発見された場所。
それはいくつかの矛盾が生まれた場所。
それは、少年にとって恐怖が植え付けられた場所。
もう、できるならば二度と来たくなかった場所。
そこを少年は歩いていた。
気がつけばもう日はとっくに落ちていた。
――ああ、今日は満月か――
なんてぼんやり思いながら、月の光に照らされた道を一歩一歩進んでいく。
進む過程で少年は様々な事を思考していた。
自分が見たのと他の人が見た死体の違い。
誰も覚えていない死体の身元。
そして、何故か生きてあの場所にいた、死体。
全てが混乱する事だらけだった。
しかし、最早少年にとって『真実を知りたい』という気持ちは段々と薄れていた。
それは、生きていた死体が自分を(恐らく)殺そうとした時から。
そのため、少年はこのことを忘れて、普段の生活に戻ろうと思っていた。思っていたのに……。
(何でまたここに来ちゃったんだろう)
少年は一人愚痴る。そもそもあの女性こそが取りに来ればよかったんじゃないのか?とさえ思うほど、少年の心は疲弊していたのだ。
なんてことを、考えていたときだった。
(……あれ?)
少年は、ふとあることを思い出した。それは、少年がここに来る原因を作った女性のことである。
どこかで見たことがあるような、と表現したが、それは間違いではなかったのではないか。
そう、確かに少年は見ていた、否、会っていたのではないか。あの女性と。
どこで?
それは……例えば今向かっている場所で。
いつ?
それは……例えばあの時の生きている死体を見たときに。
本当に?
……そうだ。その前にも一度会っている気がする。どこでだ?どこであの女性と会った?
―――白い髪―――独特的な服装―――そしてあの顔―――
それは
そうだ
あのときに見た
――――――――――――――――――死体?
はっとなって少年は瞬間的に後ろを振り返った。
――誰もいない
当然だ。いるわけがない。だって先ほどから歩いていて足音は一つしか聞こえないのだから。
そう思って顔を前に向かせようとして……そこでまた、一つ奇妙なことを思い出した。
それは、少し前に慧音に質問したときの慧音からの応答。
『ふむ……よくは覚えていないが、いやなんともへんな形容だが、普通の死体だったぞ?
こう、血はたくさん出ていたし、顔面も蒼白だったし。何より汚れが酷かったな。崖から落ちたからだと思うが……』
よくは覚えていない。
前述したとおりに、慧音は『知らない歴史はない』と形容される人物である。その慧音が覚えていないはずがないのである。
では、もしも慧音が『覚えていない』と言う言葉を使うのはどんなときか?それは、例えば。
「……誤魔化したい時?」
「ああ、そうだ。よくそこまで気がついたな」
私みたいに叩かれるかもしれないし……それと続きを見たいって人が
いるかも知れないから(私も含む)