Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

宴のあと

2007/12/08 10:48:17
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春の盛り、今年も博麗神社の桜は見事に満開だ。
訪れる者たちも、主に妖怪たちであるが、見事な桜に目を奪われていた。
ただ、博麗神社の巫女である彼女、博麗 霊夢 にとっては散りゆく桜の花びらや、
花見と称して行われる宴会の後片付けなど、手間のかかる仕事が増える鬱陶しい季節でもあった。
現に、今も普通の魔法使い 霧雨 魔理沙 が企画した宴会の片づけをしているのだ。
しかも、企画した当の本人は酔いつぶれて神社の一室で眠っているのだ。
毎度のこととはいえ、ため息の一つもつきたくなる。そんな様子で霊夢はハァ、とため息をつき宴会後の片づけをしていた。
この場に鬼の 伊吹 萃香 がいたなら、その能力でゴミなど一瞬で集めて
掃除などすぐに終わってしまうのだが、何故か今日に限って宴会好きの萃香は花見の席に姿を現さなかった。
そういえば、冥界の白玉楼に住む亡霊の姫、西行寺 幽々子 に
その付き人の、というより半分彼女のおもちゃのように見えるが、半人半霊の庭師、魂魄 妖夢 も来ていなかった。
もしかしたら、冥界の方でも花見をやっていたのかもしれない。
あそこには、満開になることはないであろう妖怪桜、西行妖のほかにも、
神社の一角に咲いている桜など比べものにならないほどの沢山の桜がある。
その様はまさに桜の海、すばらしい風景の中で花見が出来ることだろう。
そして何よりもあそこで花見をすれば自分は後片付けなどしなくてもよい。
霊夢がそんなことを考えていると、ふと後ろから声をかけられた。
「お嬢さまたちが散らかした分の片付けは終わったから、私はそろそろ失礼するわ。」
そう言ったのは、吸血鬼の住む紅魔館のメイド長 十六夜 咲夜 だ。
自分たちの散らかした分だけきっちりと、というところが少し憎らしい気もするが、
そこはやはりパーフェクトメイド、といったとこだろう。
「そう、おつかれさま。次に宴会をやるときはあなた達のところでやってもらいたいものね。」
「残念ながら紅魔館の周辺には桜はないので、それは無理な相談ね。」
「別に花見じゃなくてもいいのよ。私はただ後片付けとか考えずに楽しみたいだけ。」
「そういうことだったら、お嬢さまに相談してみたら?霊夢がそういうのだったら
 ホームパーティーくらいは企画するんじゃないかしら。」
確かに霊夢が紅魔館の主である吸血鬼 レミリア・スカーレット にそう話を持ちかければ、
彼女の性格からして、パーティーくらいすぐにでも企画するだろう。
しかし、わざわざレミリアにそんなことを言うような霊夢ではない。
このメイドはそこまでわかって受け答えしているのだ。
「全く・・・、気が向いたらあなたから進言して頂戴。」
「わかりました。気が向いたら進言してみますね。」
終始、笑顔で対応しているところが何とも言えないが、毎度のことなので気にする必要もない。
第一、そんなことをイチイチ気にしていては幻想郷で巫女なんてやってられない。
ここには変におかしな妖怪が、一部の人間も含まれるが、多すぎるのだ。
前回の宴会がその最たる例だろう。アレは酷かった。
そんなことを考えているうちに咲夜は、それでは失礼しますわ、と一礼して去っていった。
「あら・・・?」
咲夜は紅魔館に帰っていった。帰っていったのはいいのだが、
ふと宴会会場の端を見てみると、そこには紅魔館に住んでいる
七曜の魔女 パチュリー・ノーレッジ がむきゅーと酔い潰れているのだ。
あのパーフェクトメイドがこんな忘れ物をしていくとは全くもってらしくない。
「おーい、パチュリー?大丈夫?」
不信に思いつつ、一応声をかけてみるがパチュリー本人はむきゅーと
力無く鳴く程度で会話が出来るような状態ではない。
仕方が無いので魔理沙と同じように神社の一室に運ぼうかと考えていると、
今度は七色の人形遣い アリス・マーガトロイド が現れた。
「霊夢、ちょっと待って。パチュリーは私が介抱するから大丈夫よ」
このアリスという魔法使いは人一倍プライドが高く、他人に心を開くことが少ない。
そのことを霊夢は知っていたのでアリスの言葉に少し驚きつつその場を譲った。
「パチュリー大丈夫?水持ってきたけど飲める?」
「ぅ・・・アリス?ありがとう、頂くわ・・・」
なかなか親密そうなその様子に霊夢は思わず声をかけていた。
「あなたがそこまで他人を心配するなんて正直驚いたわ。」
「別に・・・心配することは大した事じゃないでしょう?
 霊夢と違ってパチュリーとは同じ魔法使い同士、思うところがあるだけよ。」
そういってアリスは自分の顔を隠すようにサッと俯いた。
なんだか最初と最後で発言に矛盾があるような気もするが、
あえてそれを指摘するのは止めておこうと、霊夢は苦笑を浮かべた。
その様子に気付いたアリスは、何よ、その顔は、と顔を少し紅潮させて
抗議したが、霊夢の方は、別になんでもない、と軽く受け流した。
アリスはまだ何か言いたそうではあったが、
パチュリーのとこを気遣ってか、それ以上の討論は止めた。
「それじゃあ、彼女は私の家で休ませるから。」
アリスはそう言い、パチュリーをそっと背負った。
確かに、ここからなら紅魔館に連れて行くより、アリスや魔理沙の家のある
魔法の森の方が近い。そう考えたとき、ふと思いついてしまった。
「ねぇ、アリス。ついでにアレも持っていってくれない?」
「アレ?・・・あぁ、アレね。」
「そうアレ。」
「さすがにアレの面倒までは見切れないわ。」
「そう、残念。」
「あまり残念そうには見えないんだけど?」
霊夢のあっさりした様子に今度はアリスがニヤリと笑い喰いついた。
しかし、霊夢は別に気にする様子もなく淡々と話すだけだ。
「別に、ふと思いついただけで、そこまで期待してなかったから。
 第一、アレがうちで寝てるのは毎度のことだしねぇ。」
動揺の欠片さえ見せずに答える霊夢に、面白くないといった様子でアリスはため息をついた。
「それなら最初から言わないことね。」
アリスはそう言うとパチュリーを気遣うようにゆっくりと空に舞い上がり、
それじゃあ、と一言残して去っていった。
「まぁ、魔理沙の一人や二人いたところ・・・さすがに二人もいると厄介ね・・・。」
魔理沙は宴会など無くても、普段からいつの間にか神社に上がり込んでいることが多いのだ。
イチイチ気にしていては、それこそキリが無いというやつだ。
しかし、魔理沙一人でも厄介なのに二人に増えたら、さすがの霊夢も耐え切れるものではないだろう。
自分の想像に少し恐怖を感じてしまった霊夢は気を取り直して、と片付けを再開しようとした。
しかし、アリスと問答をやっている間に片付けはほぼ終了していた。
ちょっと不思議な感じもするが自分が動かなくてもいいのは良いことだ。
「う~ん・・・ぁ、博麗、このゴミは何処に置いていおけばいいですか?」
そう声を発したのは月人の住む永遠亭の月兎 鈴仙・優曇華院・イナバ だ。
「そうね・・・とりあえず、そっちの端に集めておいてくれれば明日にでも処分するわ。」
霊夢がそう言うと、わかりました、と鈴仙はあくせくと片づけを進めた。
この月兎、聞いた話では永遠亭に住む下っ端兎たちをまとめているということであったが、
こういう姿を見ている限り、彼女が下っ端のように思えてならない。
まぁ、それはそれできっと何かしら理由があるのだろう。
兎にも角にも自分自身が動かなくても片付けが進むのは良いことだ。
こうして十分も経たないうちに残りの片付けも終わり、鈴仙も自分の住み家である永遠亭に帰って行った。
霊夢はその背中に心の中でだけ、ありがとね、と呟いた。
もちろん飛びっきりの笑顔で。

宴会の後というのは静かなものだ。
この広い博麗神社に霊夢一人、正確には魔理沙もいるのだが酔い潰れて寝ているのだから数には入らないだろう。
だいぶ夜も更けてきた。
月夜に浮かぶ桜の花びら、なんとも物悲しく、そして風流なことか。
そんな感傷に浸っていると、不意に背後に何かの気配を感じた。
霊夢は自身の勘の導くままに御札を背後の気配に向かって叩きつけた。
「いたぁーい!」
叩きつけたのと同時に予想どうりの声が響く。
「何よ~、ちょっと驚かせようとしただけなのに~。いきなり攻撃なんて酷いじゃない。」
「あのねぇ・・・いきなりはあんたの方でしょ。本当に突然沸いて出るんだから。」
「ひ・・酷いわ、人を虫か何かみたいに~」
そういって扇を片手にさめざめと泣いているのは、もちろん嘘泣きだが、境界を操る妖 八雲 紫 だ。
「全く・・・呼びもしないのに出てきて、一体何の用?」
霊夢にとってはいつものやり取りのようなものだが、冬眠から覚めたばかりの紫にとっては、
嘘泣きとはいえ泣いている姿を軽くスルーされたことはショックなことのようだった。
「あぁ~・・・まぁ、特に大した用事があるわけではないのだけど・・」
「なら無駄に現れないことね。そんなのだから胡散臭いって言われるのよ。」
久しぶりに霊夢に会ってみれば、いきなり胡散臭いと言われてしまった。
さすがの紫も今回ばかりは真剣にホロリと涙を流した。
その様子に霊夢は半ば諦めたようにもう一度、何しにきたのか?と尋ねた。
すると紫はコロリと表情を変え嬉嬉として、実はね、とスキマから何を取り出した。
「あなたとコレを飲もうと思ってスキマを潜ってきたのよ♪」
そう言う紫の手には立派な一升瓶が握られていた。
「それって・・・もしかして・・」
「そうそう、幻のお酒といわれる大吟醸よ。
 最初は幽々子のところで花見をしながらと思っていたんだけど、萃香は味わうことを知らないウワバミだし、
 幽々子はお酒どころか花より団子でしょ~、だからといって藍と二人で飲むのもねぇ。」
「確かに藍はともかく、あの二人相手にそのお酒は勿体無いわね。で、その藍は?」
「う~ん・・それがねぇ、向こうで幽々子と萃香に潰されちゃってね。
 今頃、橙が介抱してるんじゃないかしら。」
「あぁー、なるほどね・・・ご愁傷様。」
霊夢はそういうと何かつまみになるものを持ってくると台所に引っ込んでいった。
一方、紫はよろしくね~と言いつつ、さも愛おしそうに酒瓶に頬ずりしていた。
だが、不意に紫の手から酒瓶が消えた。
「ぇ?」
突然のことに紫が慌てて振り返ると、そこには白黒の人間、魔理沙が立っていた。
その手には先ほどまで紫が頬ずりしていた酒瓶が握られていた。
「よ!紫も花見にきたのか?招待してなくても酒さえ持ってくれば、いつでも誰でも大歓迎だぜ☆」
魔理沙はそういうと手に持った酒瓶の蓋をポンっと開け、
瓶の口に自分の口を当て一気に酒を飲み始めた。
「ぇ?え!?ちょっ!!!」
「ぷは~・・・けっこういい酒だなコレ。」
そういいながら魔理沙は酒瓶を紫に放り投げるようにして返した。
紫の手に戻ってきた瓶の中身は既に半分以上なくなっていた。
「・・・・」
「お待たせー・・・あら、魔理沙起きたの。」
ちょうど、その場に霊夢がつまみを持って戻ってきた。
「おぉー霊夢ー、今夜の花見はスキマ妖怪一名追加だぜ☆」
へらへらと笑いながら霊夢の持ってきたつまみに手を出す魔理沙。
一方、酒瓶を両手で抱えてカタカタと震える紫。
二人の様子を見て、霊夢はこの後、起こるであろう事を瞬時に予測し、魔理沙に一言声をかけた。
「さよなら。」
「おぉ?」
―――隙間「ゆかりんワールド」―――
 (副音声)隙間地獄に落ちろ!!
「おぉぉぉっ!?」
魔理沙は突如足元に現れたスキマに吸い込まれるように落ちていった。
そうなるわよね、と霊夢はふぅとため息をつき、うるうると涙ぐむ紫を見て
もう一度ため息をついた。
ため息をついた後、霊夢は一度部屋の中に戻りつまみとは別に何かを持ってきた。
それを紫の横にわざとらしくドンと置いた。
「私もね、けっこう良いお酒が手に入ったんだけど、ちょうど飲む相手がいなかったのよ。」
紫は一瞬きょとんとしたが、すぐにニヤリと笑顔を浮かべた。
「魔理沙や萃香相手じゃ勿体無いのよ。
 もちろん付き合ってくれるわよね、紫?」
「フフッ、もちろんよ。今夜はトコトン飲み明かすわよ、霊夢?」
そして、満月の光を浴びた桜の下、人間と妖怪、似たもの同士二人の宴は始まった。

今は冬?
知らんがな(´・ω・`)

ごめんなさい
なんとなく思いつきで書き上げてみました
東方をあまり知らない友達にも理解してもらえたらうれしいなーとか思いつつ・・・

次回
①このまま紫の話を聞く
②紅魔組が気になる
③ゆゆ様はー?
④うどんげ!!
とか言ってみるてすt

ちなみに点数つけられるのが怖くてこっちに投稿したチキンです

緋色
http://hiiro1127.jugem.jp/
コメント



1.名無し妖怪削除
不覚にもゆかりんにきゅんと来た
次回は・・・どれも気になりますがな!
2.創製の魔法使い削除
ゆかりんと話を続けてみたーい


っと、お疲れ様です

3.名無し妖怪削除
ゆかりんゆかりん!
酔いつぶれてたのに日本酒の一升瓶を半分も飲んだ魔理沙の肝臓がちょっと心配です。
4.緋色削除
12/9
レスがついてることに驚きました
本当にありがとうございます
次回の①~③は既に構想はあるのですが、④は本当に勢いだけだったり・・・
期待に添えるかわかりませんが、地味にがんばりたいと思います

12/14
<酔いつぶれてたのに日本酒の一升瓶を半分も飲んだ魔理沙の肝臓がちょっと心配です。

「幻想郷では酒は水と同じだぜ」って魔理沙がいtt(ry

一応、自分の中では
宴会の途中で酔い潰れ運ばれる→宴会終了→後片付け
と時間が経過して2時間ほど寝ているから大丈夫かなーと

あと、瓶から直接飲んでるのでこぼしながら飲んでるはず・・・

こういう表現もちゃんと含めて書くべきでしたね