Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

めが☆まり

2007/12/07 20:36:10
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「・・ふぅ」
博麗神社の巫女・博麗霊夢は、庭の見える縁側に座りお茶を啜っている。
天気は快晴、空には雲一つない。
季節は天高く馬肥ゆる秋。
読書の秋、スポーツの秋、そして食欲の秋である。

「良い天気ねー」
誰に言うでもなく、独り言のように呟く。

ここ最近の幻想郷は、結構治安が安定している。
ましてや真昼間から跋扈する物好きな妖怪もいない。
「平和ねー」
今日も怠惰な一日を満喫しよう、そう霊夢は心に決め、
湯呑を縁側に置き、軽く体を「んー」と伸ばす。

ふと顔を上にあげると、雲一つない空に一筋の光が走っている。
「あら、流れ星・・とかじゃなさそうね」

その流れ星らしきものはどんどんこちらに近づいてくる。
「え、ちょ・・っと??」
少し慌てて腰を浮かせる霊夢。
しかし、その光は博麗神社に到達する前に消失し、やがて光の中から
一つの人影が現れた。

「魔理沙!?」
普通の魔法使い・霧雨魔理沙である。
魔理沙は霊夢のいる縁側まで箒でふよふよと移動し、そして着地した。
「よう、霊夢。今日も良い妖気だな?」
と、陽気に挨拶する。霊夢は軽く手を上げてそれに答える。
「それよりも・・さっきのアレってスペルカードじゃないの?」
霊夢の問いに、魔理沙はしれっと答える。
「いや、アレは私のラストワードだぜ?『ブレイジングスター』って言うんだが・・」

『ゴツン』

霊夢が魔理沙を殴る。
グーで。

「馬っ鹿じゃないの?ウチに来るのになんでラストワードなんか使うのよ?
魔理沙、アンタ阿呆じゃないのっ!?」
霊夢は呆れ顔で捲くし立てる。
「馬鹿なのか阿呆なのか・・どっちなんだ?」
対する魔理沙は、反省している様子は無いが涙目である。

はぁっと霊夢は嘆息し、
「それで、わざわざラストワードまで使ってウチに飛んできたその理由を
訊かせてもらえるかしら?」
「霊夢、魔法の森までキノコ狩りに行こうぜ。」
「え?なん・・キノ、コ?」

沈黙が場を支配する。

「・・・・」
「・・・・」


色々と言いたい事はやまほどあったが、霊夢はとりあえずその言葉を喉の奥に引っ込める。
そして、今度は盛大に溜息を付き、
「いやよ、面倒臭い。アリスとでも行けば?」
霊夢は首を横に振り、気だるげにそう答えた。
今日は怠惰な一日を過ごすのだ。さっきそう決めたのだ。

ちなみに魔理沙の家、霧雨亭は魔法の森の中にあり、
その魔法の森はキノコを採るには絶好のスポットだったりする。

「いや、アリスはちょっと・・な、それこそ面倒な事になりそうだぜ」
魔理沙はそう言うと肩をすくめる。
「まぁ、それもそうね。」
と、同意する。霊夢は時々酷い事をサラリと言う。そして
「でもね、私もこんな真昼間から神社を空けるわけにはいかないし、
キノコを採るにしても食べれるかどうか判別できる人が必要でしょう?
やっぱり無理よ。」
と続ける。

「あぁ、私はキノコには詳しからそこは問題ないと思うぜ、多分。
神社の留守も・・っと、やっと来たみたいだぜ」
と、魔理沙は神社の入口の方を振り返る。
霊夢も魔理沙に倣ってそちらの方を見てみるとそこには二つの人影が。

一つはブレザーに兎の耳、もう一つは長身でナースキャップらしきものを被っている。
「えーと、あれは確か永遠亭の・・」
「おぅ、鈴仙と先生だ。こんなこともあろうかと呼んでおいた」
魔理沙は続けて、
「先生は神社の留守番と、キノコの判別。まぁ多分大丈夫だろうが一応の保険だ。
あと鈴仙は肉体労働担当だ。これで問題ないだろ?」
魔理沙はそんなに無い胸を大きく反らし、「えっへん」と誇らしげに霊夢を見る。
確かに魔理沙の根回しの良さは幻想郷で一番かもしれない。

「こんにちは二人とも、今日もいい妖気ね?」
月の頭脳・八意永琳は軽く手を上げ、二人のいる神社の縁側に近づいてくる。
その隣、ブレザー姿で兎の耳を生やした娘・鈴仙(うどんげ)は、
「ほら、さっさと行ってさっさと帰るわよ。姫の夕食の支度もあるから
日が暮れる頃には永遠亭に戻らないと」
と二人を急かす。

ここで魔理沙は腰を上げ、
「よし、んじゃ早速行こうぜ、霊夢」
と立ち上がり、霊夢の腕を引っ張るが、
「あー、うん、でもやっぱり面倒臭いわね。力仕事ってどうも私の性に合わないわ。
この際だから魔理沙と鈴仙の二人で行ってきたら?私は先生と留守番してるわ」

どうも霊夢はあまり乗り気ではないらしい。
考えてみれば霊夢が妖怪退治以外で神社を空けているところを
魔理沙はあまり見たことが無かった。
基本的に彼女は出不精なのだ。

「んー、困ったぜー。」
魔理沙は首を捻り、何か霊夢を誘えそうな口実を探したが、何も思いつかない。
今の霊夢を誘うのは、アリスの機嫌を直すのと同じくらい難しい。
「・・あー、困ったぜー。」
今度は反対側に首を捻り、やはり先程と同じ言葉を繰り返す。

それを何気なく見ていた永琳は、何か妙案でも思い付いたのか、
手を一回「ポン」と叩き、
「そうそう、食べられないキノコは私が買い取ってもいいわよ?
薬の開発の役に立つ物があるかもしれないし。・・勿論、レア物なら高額でね。
もし役に立たなくても、毒に耐性のある私なら食べても全然問題ないし。」
ポツリと一言、独り言のように呟く。

これを聞いた霊夢は、ガバッと立ち上がり、
「ほら、ボサッとしてないでさっさと行くわよ!魔理沙っ!鈴仙っ!」
とか言っている。

信じられないほどの変わり身の早さである。

「・・現金だぜ」
「・・現金よね」
「・・現金ね」

三者三様という諺があるが、この時だけは気持の良いほどに意見が一致した。



魔法の森。

この場所は、至る所から瘴気が発生しており普通の人間は滅多に近づくことは無い。
その為、この辺一帯には様々な妖怪が跋扈している。

しかしながら、時折物好きな人間がこの辺に家を構えたりする。
余程の命知らずか、それとも自分に相当自信のある者。
魔理沙は・・恐らくその両方だろう。

三人は魔法の森の入り口に店を構える「香霖堂」の店主、森近霖之助から
大きめの籠を借りる。
店を出る際、霖之助に「大丈夫だと思うけど、一応気を付けて」
と言われたが、三人は特に気には留めなかった。

それもそのはず。
博麗神社の巫女は幻想郷の結界を維持する為に必要な人物である為、
妖怪が彼女を倒してはいけない事になっているのだ。

香霖堂を後にし、キノコを狩る為、三人は魔法の森の奥深くを目指すのだった。


「よし、ここらで良いかな?」
どうやら魔理沙は本当にキノコに精通しているらしく、キノコが採れそうな場所に
おおよその検討を付け、空から森へ一気に急降下していく。
霊夢と鈴仙もそれに倣い、森へと降りて行った。

「さて、んじゃこれからキノコを採るわけだが・・」
魔理沙はここぞとばかりに仕切る。
魔理沙にとって、瘴気渦巻く魔法の森は自分の庭も同然。
霊夢と鈴仙にもそれが分かっているのか、彼女の言葉に従う。

「とりあえずは三人で固まって探そうと思うんだが。
霊夢の側にいれば危険は無いと思うし、鈴仙はこの森初めてだろ?」

・・まぁ、妥当なところだ。
霊夢も香霖堂のある魔法の森の入口までは何度か足を運んだことはあるが、
ここまでは来たことは無いので、流石にこの辺の地理には疎い。


と、ここで魔理沙は急に声を潜めて言う。
「・・なぁ、霊夢。気付いてるか?」
対して、霊夢も耳打ちするような感じで魔理沙に話しかける。
「えぇ、なんか陰鬱でジメジメした視線が背後から・・多分アイツね」

霊夢の言う通り、三人の背後には一つの人影が。
その人影は木の陰に隠れて、恨みがましい視線をこちらに向けいている。

金色の髪、見た目だけは賑やかな服装をしている。
魔理沙と同じく魔法の森に家を持つ七色の人形遣い。
アリス・マーガトロイド、それが彼女の呼び名である。

気付かれたアリスは、木の陰から姿を現すと怒気を孕ませた声で、
「魔理沙、なんで・・なんで私を誘ってくれなかったのっ!!?」
と叫ぶ。

その叫びを聞いた三人は・・無表情。
アリスとの温度差でも感じたのだろうか。

とりあえず霊夢は「何とかして頂戴」と言わんばかりに、魔理沙に軽く肘打ちをする。
魔理沙は困った顔をして、
「あー、いや、これからキノコを採ろうと思うんだがアリスも一緒にどうだ?」
とりあえず誘ってみた。
科白が棒読みだったかもしれない。

「安い同情なんて要らないわ!」
アリスは激昂して突き返す。

(どうしよう、断られた。全くこれだからアリスは・・)
霊夢と魔理沙は心の中で愚痴をこぼす。
一方、鈴仙は今の状況が理解出来ていないのか、先程から思考が停止したままだ。

「もういいわよ!キノコでも何でも勝手に取ってればっ!?」
何故かアリスがキレた。いや、さっきからキレているようだが。
「いえ、言われなくてもそのつもりなんだけど・・」
ここで鈴仙が初めて口を開くが・・

「・・ふんっ!」

そこにいる鈴仙の姿が気に入らなかったのか、アリスは更に怒気を膨らませ
・・そのまま踵を返して去って行ってしまった。

「・・何、アレ?」と、鈴仙。

「私に聞くなよ」と、魔理沙。

「今晩辺り、うちの神社に五寸釘でも打ち込みそうね」と、霊夢。

「まぁ、・・いい加減、キノコを探そうぜ?このままだと日が暮れちまう」
魔理沙が何事もなかったように適当にまとめた。



実は今のやり取りを見ている者達がいた。
先程まで言い争いをしていた彼女らの頭上、その木の枝に隠れるように
三つの人影が・・いや、人影と呼ぶには小さすぎるかもしれない。

それらの身長は並の人間の半分も無く、その背中には透き通るような翅。
人間でもなく、妖怪でもない・・「妖精」。

魔法の森に住む三妖精である。

「ねぇ、見た?」
と、サニー。本名はサニーミルク。

「えぇ、何所かで見たことあるわね。えーと、確か・・」
と、ルナ。本名はルナチャイルド。

「神社の巫女とこの森の魔法使いね、あとの二人は知らないけれど?」
と、スター。本名はスターサファイア。

「何でこんなところに巫女が?」
はて?と三妖精は同時に首を傾げる。

そして、ルナがポツリと呟く。
「って事は、ひょっとすると、今の神社は無人?」
これを聞いたサニーは
「ふっふっふ・・何か良く分らないけどチャンス到来ね」
何か悪だくみを企んだらしい。
サニーは背中の翅をパタパタと羽ばたかせ、二人に告げる。
「ルナ、スター、急いで神社に乗り込むわよっ!」

「いや、行くのは良いけど、行って何をするのよ?」
ルナは冷静に突っ込む。
スターは「賽銭泥棒でもする?」とか言ってる。

サニーは呆れたといった感じで肩をすくめる。
「二人とも本当に向上心が無いわね。やることなんかいくらでもあるじゃない?
例えば・・そうね、巫女の飲んでるお茶の葉っぱを全部苦茶(不味くて有名)に
スり替えてみるのなんて面白そうじゃない?」

「・・・・」
「・・・・」

結局、面白そうという理由だけで行くことになった。
リーダー権限というのも多分にあるが、巫女に一泡吹かせるチャンスだ。
これを逃す手は無い。
三妖精はこれから行うであろう悪戯に胸を躍らせながら、
博麗神社へ飛び立っていった。

だが、三妖精は知らない。
神社には巫女と同等、もしくはそれ以上の恐ろしい存在が留守番をしている事を。



改めてキノコ狩り。

魔理沙と鈴仙はやはり結構な知識があるのか、キノコを採る手に迷いが無い。
余裕があるのか、栗や柿といった秋の味覚にも手を出している。
魔法の森の瘴気の影響で色が普通では無かったり、形がやたら大きかったりするが
それでも結構美味だったりする。

一方、霊夢はというと・・目に付くキノコというキノコを採っていた。
食べれる物、食べれないものなどお構い無しの様子である。
どうやら神社での永琳の何気なく放った一言が効いているようだ。
目が¥マークになっていて、ちょっと近づき難い。

そんなこんなで、二時間もかからない内に大きめの籠は八分強くらいまで溜まった。


「さてと、籠もそろそろ限界だし、ちょっと早いが引き返すか?」
魔理沙は額の汗をぬぐいながら、近くにいる二人に聞こえるように声を出す。
比較的魔理沙の近くにいた鈴仙は、よいしょっと軽く腰を上げ、
「そうね、これ以上採ったら持ち帰るのも大変かもしれないわね」
と同意する。魔理沙から少し離れた位置にいた霊夢も
「そうね、それじゃ鈴仙、お願いね。」
しれっとそんな事を言う。
ちなみに視線はまだ地面を向いている。
どうやら帰る直前までキノコを採りたいらしい。

「ちょっ、なんで私が?」
鈴仙は霊夢の声がした方向を振り向く。
「あら?今日の鈴仙は力仕事って聞いたわよ?魔理沙から」
相変わらず地面を向いたまま霊夢の声が返ってくる。
「あはは・・まぁ、そー言うことだ。頼んだぜ、鈴仙?」
頬を掻きながらちょっと気まずそうに魔理沙は鈴仙の肩を軽く叩く。
「・・はぁ、分かったわよ。」
意外と物分かりの良い鈴仙、なんとなく永遠亭での地位が窺える。


一方、博麗神社。

永琳は縁側に座り優雅にお茶を嗜んでいる。
ちなみに、お茶っぱと水と湯呑は自前のものを用意している。

その少し離れた場所、茂みに隠れるようにして三妖精の姿がある。
「ちょっと、どーゆー事よ?誰も居ないんじゃなかったの!?」
サニーがルナに問い詰めるが、ルナは手を横に振り
「そんなの知らないわよ、居ないかも・・とは言った気がするけど」
と、そんな事を言う。

「で、実際どうするの?何か良い手は無いかしら?」
スターは考え込むような顔をしてサニーの方を見る。
「相手の素性が知れない以上、下手に動くのは得策じゃなさそうね」
ルナは慎重論をサニーに唱える。
しかし、サニーは
「何言ってんのよ、あんなのこっちの能力を使えばノープロブレムよ。
こっそり後ろに回って、バットで一発かませば楽勝よ。」
なんか穏やかではないことを言う。

「作戦はこう、私は光を屈折させて姿を隠す、スターは目標の動向を注意深くサーチ、
ルナは・・はい」
と、バットをルナに渡すサニー。
「ちょっと、なんでそんな危険な事を私一人にやらせるのよ?」
ルナは文句を垂れるが、
「いや、だってほら、今の天候だとルナの能力使えないでしょ?
もしかして何もしないで黙って後ろから見ているつもり?」
サニーは正論を返す。

確かに今日は快晴。ルナの「消音」は使えない。
ルナは、暫くの間逡巡したが、やがて諦めたのか、
「わかったわよ、やるわよ、やればいいんでしょ。その代わり・・」
と、ルナはバットを受け取り
「何かあったら、全力でフォローしてよね」


作戦開始。

ルナはバットを片手に茂みから出る。
サニーは茂みに隠れたまま、光を屈折させ三妖精全員の姿を眩ませる。
スターもレーダー能力で目標を捕捉し始めた。

なるべく音を立てずに目標に近づくルナ。
目標までおよそ15m。
と、ここでスターが口を開く。
「おかしいわね、私の眼に何も写らないんだけど・・」
はて?と首を傾げる。

その言葉が聞こえたのか、ルナは凄い勢いで後ろを振り返り
何やらゼスチャーを送ってくる。
スターの横にいるサニーは「GO!GO!」と目標を指さす。

「・・・・」
ここで迷っていても仕方が無い。
ルナは再度振り返り、縁側へと歩みを進める。

永琳とルナの距離が10mを切った。
所要時間3分。

「これは・・いけるかも?」
そう思い始めたルナだったが・・

「ん?」
ここで永琳は何かに気づいたのか、ふっと目線を湯呑からルナへ向ける。

「・・・・」
ルナ硬直。
まさに、だるまさんがころんだ状態。

「・・・・」
続いて永琳は茂みの方を見る。
サニーとスターも硬直。
顔を茂みから出しているとはいえ、サニーの能力は全員に使用している。
見えるはずが無いのだ。

「・・・・」
永琳は湯呑を置き、その辺に落ちていた小石を拾い上げ、茂みに向かって軽く投げた。
小石は緩い放物線を描き・・

「いたっ!」
サニーの頭にコツンとヒットした。

途端、サニーの能力が解かれ、永琳の眼前でルナの姿が顕わになった。
永琳との距離は5mも無い。

ルナの顔は蒼白し、
「さ、サニー、スター、たすけ・・」
と言うのがやっとである。
ルナは助けを求めるように再び後ろを振り向くが、二人の姿は遙か彼方・・

「に、逃げられた・・」
ルナは愕然とする。

「ねぇ。」
永琳は目の前にいる妖精に問いかける。

「・・き、きゃあぁあぁぁぁぁああぁぁあ~~~~!!」
耳を劈くような悲鳴が博麗神社にこだまする。
それは絶叫と言っても過言ではない。

ルナは持てる力の全てを出し、バタバタと翅を羽ばたかせ急上昇すると、
一目散に神社から飛び去って行った。

「?・・何だったのかしら?」
永琳は首を傾げながら、ルナの去っていく後姿を仰ぎ見た。



程無くして、霊夢たちが神社に帰ってきた。
「あら、早かったわね?」
永琳が出迎える。
「ただいま。留守中に何も無かったかしら?」
霊夢が永琳に訊ねる。
何かあったような気もするが、瑣末な事だったので永琳は手を横に振って答える。

「んじゃ先生、いきなりで悪いがコレを頼むぜ」
と言って、魔理沙は鈴仙の持ってきた大きめの籠を指さす。
永琳は若干疲れているように見える鈴仙に「御苦労様」と一言労い、
そしてキノコの判別を始めた。

流石にその手のエキスパートと言うだけあって、作業はモノの数分で終了。
予想通りと言うべきか、霊夢が採ったキノコの大半は永琳が買い取る事になった。
霊夢は「これで良いお茶請けが買えるわ」とか何とか言っている。

時刻は夕方。
「さて、姫の食事の支度もあるし、そろそろ私はお暇させてもらうわ」
永琳は立ち上がり、帰り支度を始める。
「じゃあ私も・・」
鈴仙もそれに倣い帰る準備を始めたが、
「あぁ、うどんげはここで食べてきてもいいわよ?」
と永琳は言う。
「ですが・・師匠」
永遠亭にてゐを留守番させているのが気になるのか、鈴仙は言いよどむ。
ただでさえ帰ったら何を言われるか分からないというのに。

それを察したのか、
「あぁ、てゐには私がうまく誤魔化しておくから大丈夫よ」
永琳は事も無げに言う。それを聞いた鈴仙はどこかホッとした表情を見せる。
「・・すいません、お願い出来ますか?」
と頭を下げる。
「それじゃ、うどんげの事よろしくね?」
永琳は霊夢と魔理沙に言い残し、永遠亭へ飛び去って行った。


「んじゃ早速飯の支度をしようぜ。霊夢、台所借りるぜ。鈴仙は手伝ってくれ」
と、魔理沙が言う。
今日の夕飯は豪勢になりそうだ。
霊夢はそんな事をぼんやりと考える。


魔理沙と鈴仙が台所で食事の準備をしている間、やることのない霊夢は
居間で一人、ごろごろとくつろいでいた。
すると「トントン・・」と玄関を叩く音がする。
「なにかしら、お客さんかしら?」
と、霊夢は玄関まで行き、戸を開け・・顔を引きつらせる。
「げっ、アリス」
「なによ、その『げっ』て」
アリスは腕を組み、ジト目でこちらを睨んでいる。
「いや、何でもないわ。それより何か用かしら?」
適当に誤魔化し、霊夢はアリスに用件を訊ねる。
「これ・・家の近くに生えてたのよ。せっかくだからあげるわ」
そう言ってアリスは霊夢に手に持っていたキノコを全て渡す。
「何?・・ってコレ松茸じゃない?貰っても良いの?」
アリスは頬を赤く染めて、
「べ、別に・・アンタの為に採ってきたわけじゃないんだからねっ!」
と叫ぶ。しかしよく見てみるとアリスの手は泥まみれだ。
苦労して探し当てた事は一目瞭然である。

「じゃあ、用はそれだけだから」
アリスは踵を返し立ち去ろうとする。
「あら、帰るの?折角だからウチでご飯食べていけば?
今、魔理沙がご飯を作っているんだけど・・」
その言葉を聞いたアリスは、ここでようやく仏頂面を解き、
「そう、それじゃ仕方ないわね・・お、お邪魔するわ」
と言った。

「あれ、アリスじゃないか?」
魔理沙が台所から顔を出す。
「魔理沙、アリスが松茸を持ってきてくれたわ」
霊夢はどこか嬉しそうに、魔理沙に松茸を渡す。
「マジか?今日の晩飯は豪勢だぜ」

それから約一時間・・

魔理沙と鈴仙は料理に精を出し、霊夢とアリスは酒やつまみの準備、
箸や皿などの細かい事はアリスの上海人形がこなし、ようやく食事の準備が整った。

キノコと栗のご飯、ナメコの味噌汁、松茸の網焼き、デザートの柿。
食卓は秋の味覚が満載である。

「「「「いただきます」」」」
日は西に落ち、夜の気配が漂い始めた幻想郷に四人の声が響き渡る。

今日も博麗神社は騒がしくなりそうだ。
本作はMegaMari及び、らき☆すたとは一切関係ありません。
期待して最後まで読んでくださった方、とってもごめんなさい。
あと、とってもありがとうございました。

とりあえず、2作目の投稿となります。
1作目は多分その辺に転がってるかと・・。

今回は、割とほのぼのとした感じに仕上がっている気が・・自信ありませんが。
偽物
[email protected]
http://rutikakkonise.blog122.fc2.com/
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1.名無し妖怪削除
アリス、まさにツン☆デレ