朝起きたら天狗が私の寝顔を盗み撮りしていた。
とりあえず一発吹っ飛ばして今に至る。
「もう、酷いですねぇ。私はただあなたの寝顔を撮りたかっただけなんですよ」
「そういうのを犯罪って言うのよ」
「いえ、違います。表現の自由ですよ」
この天狗はまったく悪びれる様子はない。一体どうすればこいつは懲りるんだろう。
とりあえず相手にしてると疲れるだけだから追い出すことにした。
「もう、どうでもいいからさっさと帰ってよ」
「そうはいきません。折角来たのですから、こうなれば今日は一日あなたを取材し続けます」
ふ ざ け る な ! こっちが少し下手に出るとすぐ付け上がるわけだ。
「大迷惑よ! とっとと帰れ! この鴉天狗!」
「そうはいきません! 記者の意地です!」
その後暫くスペル合戦となったが、おなかが空いたのでやめた。
「…はぁ、そういえば朝ごはんまだだったわね」
「私もですよ」
そう言いながら、この天狗は私の方を見てニヤニヤしてる。
嫌な予感がしたので釘を刺すことにする。
「言っておくけど、あんたに食わせるモノは一切ないわよ!」
「そ、そんな! 折角早朝からお邪魔したというのに!?」
予感的中。こいつは勝手に上がりこんだ挙句、朝ごはんをたかる気でいたらしい。
「あんたは取材に来たんじゃないの?」
「もちろんですよ。取材の一環で是非、朝ごはんを私も頂こうかと…」
「都合のいい事言ってんじゃないわよ! こっちは自分の分で精一杯だってのに!」
「なるほど…博麗の巫女は自分の分でいっぱいいっぱいなほど極貧の生活に喘いでるというわけですね」
メモを取り出してなにやら書き始める。
「ちょっと何書いてんのよ」
「決まってるでしょう。新聞の記事のメモですよ。明日の記事の見出しはこうです『巫女は貧乏生活のスペシャリストだった!?』と」
「誰がスペシャリストよ! もう、わかったわよ。今用意するから待ってなさい」
もう頭に来たので私は塩や砂糖、更にみりんや昆布だしとかタバスコなどありったけの調味料や香辛料を大量に煮物へと突っ込んで差し出してやった。
「ほら! 冷めないうちに食べなさいよ」
「おぉ! これが噂の巫女の手料理なんですね。では早速…」
天狗の奴は嬉しそうに、その煮物を口に入れる。
「さあ、お味はどう?」
「…むぅううう!?」
案の定、顔を真っ赤にしてむせ返る。ざまーみろ。
「あら、そんなに美味しかった? おかわりあるわよ」
「い、いえ…け、結構です!! あ、あのすいません。私急用を思い出したので今日はこの辺で…っ!」
天狗は、そう言うとお腹をおさえながら一目散に飛んでいってしまう。
…もう、正当な理由で来ればいくらでもご馳走なんかしてあげるのに。
さてと、お腹も空いたし香霖堂にでも行って朝飯ご馳走になってこよっと。
食べ物への有難さはしっかり持っている(筈)
それにしても射命丸、突撃隣の朝ごはんとな?
白玉楼へ是非飛んでみて行った方がいい。(きっと逆に食事に……)