美鈴です。今日は珍しく夜間に門番やっております。
ふだんは昼間お嬢様が眠っている最中が仕事時間なのですが、今宵は月がおかしいとかいうことでお嬢様と咲夜さんがお出かけなので、こうして夜門番なのです。
「ひま」
といってもやることありません。
「ねむ」
今すぐシェスタとしゃれ込みたいです。夜だけど。
「め~り~ん!」
と、何やら大声を上げてこちらに向かってくる方がおります。
「めーりん!うわぁーーーん」
「ちょ、なんですか!?」
いきなり抱きつかれました。あの、胸に顔をうずめられるとくすぐったいんですけど。
「めーりん……ふえーーん」
珍しく館から出てきたと思ったら泣いております。
「えーと、いったいどうされたんです?」
「うぅ、ひっく、えぐっ……お姉ちゃんとさくやが」
「お嬢様と咲夜さんが?」
「うう……わぁーん」
いかん、ガン泣きだ。
◇
「で、落ち着きました?」
「えっく……うん。ひっく」
果たしてほんとうに落ち着いているのかどうか判断に困ります。あぁ、一張羅が涙でびしょびしょ。まぁそれはいいんですが。
「一体どうされたんです?」
ちなみに彼女は地面に座っています。俗に言う女の子座りというやつです。ぺたん、という擬音が聞こえてきそうな。
「うぅ、あのね……」
潤んだ瞳がこちらを見上げております。
そういえば先日読んだ八雲藍さんの著書に『上目遣い+なみだ目=破壊力高ッけ~~』という公式が載っておりました。
そんなん誰でも知ってるよ!
「水晶でね、お姉ちゃんとさくやのこと見てたの。ひっく、そしたらね、ふたりともわたしのこといらない子だって言うの」
「はぁ……」
「役立たずだって。無駄だって」
お二人がそんなことを?
「それは…なんというかひどいですね」
「わたしのこと、もういらないって……うぅ、うぇーーん」
ぶり返してきたっ!?ああ、どうすれば……
「美鈴、どうしたの?」
そのとき別の方が館から出てきました。こちらはこちらで外に出てくるのが珍しい方です。まあ何にせよ助かります。
「なんとかしてくださいよう」
少女事情説明中。
「なんとかって、そういうのは美鈴のほうが得意でしょ?」
いや、それは確かにそうなんですけどね。
「めーりんもわたしのことキライなの?」
「い、いやそういうわけでは」
なんだか自分が極悪人に思えてきました。だからうるうるしないでってば!
「ああ、ほら、そんなに泣かないの。美鈴もこまってるでしょ?」
助け舟が来ました。
「だってぇ」
「だってじゃないの。だいたいあなたバカ?」
「バカじゃないもん。ちゃんと図書館で勉強してるもん」
「いいえ、バカよ、大バカ。あなたが要らない子のわけないでしょ。みんなちゃんとあなたのこと慕っているわよ」
「うぅ、ほんとう?」
「ほんとうよ。だから泣かないの。喘息にも良くないよ」
さらにフランドール様は付け加えます。
「それと今日お姉様と咲夜が外出していられるのはあなたが夜を止めているおかげ。役立たずなんかじゃないわ」
◇
その後お嬢様と咲夜さんが帰ってきました。
『まったく。パチェはいつまでたってもお子様なんだから』
『だって……お姉ちゃんもさくやもひどいこと言うんだもん。わたしのこともういらないとか言って』
お嬢様のお部屋の光景です。話しているのはお嬢様と、涙で目を腫らしたパチュリー様。要らない子扱いが相当にこたえたようです。
ちなみに私とフランドール様と咲夜さんはのぞき中。
「ていうか咲夜さん、ほんとにそんなこと言ったんですか?」
声をひそめて尋ねてみる。
「い、いや、あれは『うちにはもうパチュリー様がいるからハクタクを連れて行く必要はない』って意味だったんだけど」
「咲夜の悪い癖だわ。どうせ過程をすっ飛ばして結論だけ言ったんでしょ?かわいそうに、ショックで退行してるじゃない」
「う、面目ないですわ」
フランドール様のご指摘はなかなかに的確です。確かに咲夜さんは思考のプロセスを告げずにいきなり結論を言うことが多々あります。今回はそれが裏目に出たようですね。
『……ねぇ、お姉ちゃん』
『ん?』
『その……』
『寂しいのかしら?久しぶりにいっしょに寝る?』
こくんとうなずくパチュリー様。紅のさしたお顔は恥ずかしそうではありますが、同時にうれしそうでもあります。なんていうか、いい表情です。
あと咲夜さん、人の頭の上で「要らないわけないじゃないっすかぁ。はぁはぁ」とかいうのはやめてください。あなたお嬢様スキーじゃなかったんですか?「私は少女なら誰でもいけるわ」……そうですか。え?私も守備範囲内?まじで?
『よしよし』
『えへへ』
パチュリー様はお嬢様になでなでされて幸せそうです。とりあえず一件落着のようです。私たちは退散ですね。
「ほら、咲夜さんも帰りますよ?」
「ま、まって美鈴。もう少し」
「だめですってば」
鬼気迫る表情で柱にしがみつかないでください。
「あああ、ここで覗かぬは瀟洒の名が廃る~」
「覗いたほうが廃れるわよ、常識的に考えて」
フランドール様は冷静です。ていうか吸血鬼に常識を説かれるのは人としていかがなものかと……
◇
美鈴です。
いやあ、昨日はどうなるかと思いましたが、晴れて元通り。いつもの紅魔館です。
「うわーん、パチュリー様が朝帰りをっ!…うふ、うふふふふ。なんという寝取られイベント……奥義『ディスク叩き割り』を使わざるをえない」
小悪魔さんを除いては。
誰が誰なのかわからないから
台詞の横に、キャラの名前を振ってみるとわかりやすくなると思いますよ
面白いけどね、点数は60ぐらいかな?
何がなにやらさっぱり分からん。
騙しやったんですねw
おもろかったです。
あと少女長自重。
寝てた?
涙目上目遣いのパッチェさん……いいな。存外にいいな。
パッチェさん退行しすぎだw