「なぁ、霊夢。……その、突然こんな事言うのも変なんだが」
そして何故か魔理沙の口調に覇気が無かった。
おかしい、と私は思う。魔理沙はいつも自信満々で傍若無人(本人に言ったら怒られそうだが)なはずだ。
少なくとも私の前では。
いつだったか、誰にも見られてないところで必死に修行している魔理沙を見た、とか言う噂が広がったことがある。
当然そのネタを聞きつけて、四六時中張った天狗がいたが、5日目にして流石にうざがられたのか、カラスが丸焼けになっているのを見た。
実際魔理沙に聞いてみたことがあったが、
『まさか、私がそういうの嫌いなのは知ってるだろ?』
とか言われたので、私もそれ以上追及するのをやめたが。
っと、話がそれてしまったが、とにかく霧雨魔理沙とはそういう人物なのだ。
その人物が私の目の前でもじもじとしている。……はっきり言って、驚きだ。顔には出さないが。
「……何なのよ?」
「いや。……うん」
相変わらず歯切れの悪い魔理沙。
本当にどうしたのだろう。
「一体どうしたのよ。いつもよりも覇気が無いじゃない」
なんて私が言うと、分かってるくせに、と魔理沙が小声で言うのが聞き取れた。
あまりにも小さな声だったので、私は聞き違いかと思って黙っていたが。
「霊夢。単刀直入に言ってくれ、私のことどう思ってる?」
「……い、いきなり何よ」
「頼む。大事なことなんだ」
切羽詰ったような顔をされては、私は反論できない。何より、魔理沙にここまで言われて私が何も言わないのは卑怯だと思った。
「そうね……なんだかんだで、気の会う友達。かしら」
「友達……?それ以外には?」
「ん~……まぁ、他のよりは親しみやすいわね。友達以上恋人未満というか」
「そ、そうか……」
心なしか、魔理沙の表情が硬くなった気がした。
私、何か気に障るようなこと言ったかしら。……言ったかも。
「今からさ……」
「何?」
「今から、きっと私、凄いばかばかしいことを言うけど、黙って聞いててほしい……んだけど」
「別に、いいわよ」
あぁ。私魔理沙に飲まれてる。……いや、ペースが。
「最初に霊夢と会ったときは、いや、悪気は無いぞ?変なやつだと思った。
だって巫女なのに腋があいてるんだぜ!?これを変と言わずして何と言うよ!……いやまぁ、問題はその後なんだが」
魔理沙が照れくさそうに頭を掻く。……ちょっと、そんなしぐさ、全然あんたらしくないんだけど……。
「それで、霊夢と会っていくうちに、なんというか。私の心のうちが変になっていくのを感じて。
その……病気かと思って永遠亭の医者に見てもらったりしたんだが、原因が分からないらしくて。それでも日に日に変な感じが強くなってきて」
待って、待ちなさい魔理沙。それは、それは……。
「私、段々何事にも集中できなくなって、気がついたら霊夢のことばかり考えてて」
その先を言ったら……もう、戻れなくなる。だから、やめて、その先を言うのは……!!
「私、気がついちまったんだ。……私な」
「霊夢のことが、すk『まちなさああぁぁあぁぁい!!』
怒声。
あ~あ、肝心なところで茶々入れちゃって。
もうちょっと我慢すればよかったのに。
「……ふぅ。これで、決着がついたのか?」
「みたいね。お気に召した?慧音」
「ああ。その、こういっては悪いが。なかなかに楽しめた」
元凶が何を言ってるのか、悪いとか思ってないくせに。
いやまぁ、若干私も楽しめたかなぁ、とかもってるけど。
向こうでは魔理沙と怒声の本人が言い争ってる。
何でこんなことになってるのかというと、時は数分前に戻る。
* * *
「お、この本面白そうだな、借りてくぜ」
「って、何普通にとっていくのよ。返しなさい」
アリス邸にて、何故かお茶会に呼ばれた私と魔理沙がアリスの淹れたお茶(何でも紅魔館のメイド仕込だとか)をご馳走になって、のんびりした時間をすごしているときに、魔理沙が目に留めた一冊の本を盗もうと――本人に言わせれば借りようと――していた。
勿論アリスは毎度毎度盗まれてはたまらないと魔理沙を制した。しかし効果むなしく盗まれようとしていた。
「いい加減にしなさい。毎度毎度盗まれる私やパチュリーの身にもなってみなさいよ」
「よしなった。というわけで貰ってくぜ」
「もう、なってないじゃない!」
ギャーギャー騒ぐ2人を見えかねて私はある案を出した。
「なら魔理沙。あなたはアリスが気に入るような言い方をして持っていけばいいじゃない」
今になって思う。何で私こんなことを言ったんだろう。
普段なら誰かの肩を持たず、第三者目線で物を言うのに。
さて、そんな感じで言ってみたものの、魔理沙はやはりというべきか、アリスをからかい気味で全く相手をしない。
結局意味が無かったかと、私がため息をついたとき、その声は聞こえた。
「なら、魔理沙は霊夢を口説くといい」
声の聞こえたのは草むらのほう。その方向にいたのは、個性的な帽子をかぶった白沢(はくたく)、上白沢慧音だった。
というか、現れて突然何を言い出すんだこの女は。
「あら、あなた。……って、今のはどういう意味よ」
「言ったとおりの意味だ。口説く対象をお前から霊夢にしろ、ということだが、理解できなかったのか?」
「そうね。理解できないわ。貴方の頭が」
「これは帽子だ」
「おいくら?」
「30ドル」
「……で、結局なんで魔理沙がそんなことしなくちゃいけないのよ」
変な会話から抜け出した(ように見える)アリスが聞いた。それに対して慧音ははち切れんばかりの胸を張って(少し悔しい)言った。
「いいか?魔理沙はアリス相手だと本気でいえない。ならば相手を変えればいい。消去法で霊夢、ということになる」
「いや、何で私なのよ」
自慢じゃないが、私は巻き込まれるのが嫌いだ。自慢じゃないわね。
「消去法、といっただろう。そこにいたからだ」
「いや、そうじゃなくて」
「何、気にするな。余興だろう?」
「……」
ああ、といえばこう、といった会話に嫌気がさして黙った。黙った私を見て納得したと見たのか、慧音はさらに続けてくる。
「さて、ルールは簡単だ。魔理沙が霊夢を口説いてるとき、アリスが口を挟めば本は魔理沙のもの。挟まなければアリスのもの、ということだ。いいか?」
「いや……別にいいけど」
渋々といった感じのアリス。それとは逆に、うきうき気分の魔理沙。まて、なんで喜んでるんだお前。
「……なんでこんな面倒なことをやらせるのよ。じゃんけんとかでいいじゃない」
「何でかって、決まってるだろう?……私自身が楽しみだからだ」
幼い笑みを浮かべる慧音はどこか子供のようで。しかたなしに私も付き合ってあげた。
そして、勝負(?)は始まったのだが。
私を口説こうとしている魔理沙は何故かもじもじしていて、それはまるで恋する乙女のようで――――
* * *
そして現在の状態に至る。
結局本は魔理沙のものとなってしまい、アリスは自分で決めた(というか慧音に乗せられたというか)ことなので文句も言えず、ジト目で魔理沙を見るばかりだった。
慧音は面白いものが見れた、とばかりに上機嫌で、私はというと……まぁ、楽しかったとは思う。
まさかあんな魔理沙が見れたなんて。所々口調も変わってたように思えるし。
ふと考えた。本当に魔理沙に告白されたら、私はなんて答えるんだろう。
まぁ、それはないか。
私は一人納得して、すっかり冷めてしまったアリスのお茶を飲み干して神社に戻った。
戻る途中、結局私は何がしたかったんだ、とか思ったけど気にしないことにした。
そして後日。
このことを見ていた出歯亀天狗の手によってこのことは幻想郷中に広められ、隙間の妖怪からものすごい尋問を受けた。
おまけに『私も求婚する』とか言う始末。誰かどうにかして、いや本気で。
そして何故か魔理沙の口調に覇気が無かった。
おかしい、と私は思う。魔理沙はいつも自信満々で傍若無人(本人に言ったら怒られそうだが)なはずだ。
少なくとも私の前では。
いつだったか、誰にも見られてないところで必死に修行している魔理沙を見た、とか言う噂が広がったことがある。
当然そのネタを聞きつけて、四六時中張った天狗がいたが、5日目にして流石にうざがられたのか、カラスが丸焼けになっているのを見た。
実際魔理沙に聞いてみたことがあったが、
『まさか、私がそういうの嫌いなのは知ってるだろ?』
とか言われたので、私もそれ以上追及するのをやめたが。
っと、話がそれてしまったが、とにかく霧雨魔理沙とはそういう人物なのだ。
その人物が私の目の前でもじもじとしている。……はっきり言って、驚きだ。顔には出さないが。
「……何なのよ?」
「いや。……うん」
相変わらず歯切れの悪い魔理沙。
本当にどうしたのだろう。
「一体どうしたのよ。いつもよりも覇気が無いじゃない」
なんて私が言うと、分かってるくせに、と魔理沙が小声で言うのが聞き取れた。
あまりにも小さな声だったので、私は聞き違いかと思って黙っていたが。
「霊夢。単刀直入に言ってくれ、私のことどう思ってる?」
「……い、いきなり何よ」
「頼む。大事なことなんだ」
切羽詰ったような顔をされては、私は反論できない。何より、魔理沙にここまで言われて私が何も言わないのは卑怯だと思った。
「そうね……なんだかんだで、気の会う友達。かしら」
「友達……?それ以外には?」
「ん~……まぁ、他のよりは親しみやすいわね。友達以上恋人未満というか」
「そ、そうか……」
心なしか、魔理沙の表情が硬くなった気がした。
私、何か気に障るようなこと言ったかしら。……言ったかも。
「今からさ……」
「何?」
「今から、きっと私、凄いばかばかしいことを言うけど、黙って聞いててほしい……んだけど」
「別に、いいわよ」
あぁ。私魔理沙に飲まれてる。……いや、ペースが。
「最初に霊夢と会ったときは、いや、悪気は無いぞ?変なやつだと思った。
だって巫女なのに腋があいてるんだぜ!?これを変と言わずして何と言うよ!……いやまぁ、問題はその後なんだが」
魔理沙が照れくさそうに頭を掻く。……ちょっと、そんなしぐさ、全然あんたらしくないんだけど……。
「それで、霊夢と会っていくうちに、なんというか。私の心のうちが変になっていくのを感じて。
その……病気かと思って永遠亭の医者に見てもらったりしたんだが、原因が分からないらしくて。それでも日に日に変な感じが強くなってきて」
待って、待ちなさい魔理沙。それは、それは……。
「私、段々何事にも集中できなくなって、気がついたら霊夢のことばかり考えてて」
その先を言ったら……もう、戻れなくなる。だから、やめて、その先を言うのは……!!
「私、気がついちまったんだ。……私な」
「霊夢のことが、すk『まちなさああぁぁあぁぁい!!』
怒声。
あ~あ、肝心なところで茶々入れちゃって。
もうちょっと我慢すればよかったのに。
「……ふぅ。これで、決着がついたのか?」
「みたいね。お気に召した?慧音」
「ああ。その、こういっては悪いが。なかなかに楽しめた」
元凶が何を言ってるのか、悪いとか思ってないくせに。
いやまぁ、若干私も楽しめたかなぁ、とかもってるけど。
向こうでは魔理沙と怒声の本人が言い争ってる。
何でこんなことになってるのかというと、時は数分前に戻る。
* * *
「お、この本面白そうだな、借りてくぜ」
「って、何普通にとっていくのよ。返しなさい」
アリス邸にて、何故かお茶会に呼ばれた私と魔理沙がアリスの淹れたお茶(何でも紅魔館のメイド仕込だとか)をご馳走になって、のんびりした時間をすごしているときに、魔理沙が目に留めた一冊の本を盗もうと――本人に言わせれば借りようと――していた。
勿論アリスは毎度毎度盗まれてはたまらないと魔理沙を制した。しかし効果むなしく盗まれようとしていた。
「いい加減にしなさい。毎度毎度盗まれる私やパチュリーの身にもなってみなさいよ」
「よしなった。というわけで貰ってくぜ」
「もう、なってないじゃない!」
ギャーギャー騒ぐ2人を見えかねて私はある案を出した。
「なら魔理沙。あなたはアリスが気に入るような言い方をして持っていけばいいじゃない」
今になって思う。何で私こんなことを言ったんだろう。
普段なら誰かの肩を持たず、第三者目線で物を言うのに。
さて、そんな感じで言ってみたものの、魔理沙はやはりというべきか、アリスをからかい気味で全く相手をしない。
結局意味が無かったかと、私がため息をついたとき、その声は聞こえた。
「なら、魔理沙は霊夢を口説くといい」
声の聞こえたのは草むらのほう。その方向にいたのは、個性的な帽子をかぶった白沢(はくたく)、上白沢慧音だった。
というか、現れて突然何を言い出すんだこの女は。
「あら、あなた。……って、今のはどういう意味よ」
「言ったとおりの意味だ。口説く対象をお前から霊夢にしろ、ということだが、理解できなかったのか?」
「そうね。理解できないわ。貴方の頭が」
「これは帽子だ」
「おいくら?」
「30ドル」
「……で、結局なんで魔理沙がそんなことしなくちゃいけないのよ」
変な会話から抜け出した(ように見える)アリスが聞いた。それに対して慧音ははち切れんばかりの胸を張って(少し悔しい)言った。
「いいか?魔理沙はアリス相手だと本気でいえない。ならば相手を変えればいい。消去法で霊夢、ということになる」
「いや、何で私なのよ」
自慢じゃないが、私は巻き込まれるのが嫌いだ。自慢じゃないわね。
「消去法、といっただろう。そこにいたからだ」
「いや、そうじゃなくて」
「何、気にするな。余興だろう?」
「……」
ああ、といえばこう、といった会話に嫌気がさして黙った。黙った私を見て納得したと見たのか、慧音はさらに続けてくる。
「さて、ルールは簡単だ。魔理沙が霊夢を口説いてるとき、アリスが口を挟めば本は魔理沙のもの。挟まなければアリスのもの、ということだ。いいか?」
「いや……別にいいけど」
渋々といった感じのアリス。それとは逆に、うきうき気分の魔理沙。まて、なんで喜んでるんだお前。
「……なんでこんな面倒なことをやらせるのよ。じゃんけんとかでいいじゃない」
「何でかって、決まってるだろう?……私自身が楽しみだからだ」
幼い笑みを浮かべる慧音はどこか子供のようで。しかたなしに私も付き合ってあげた。
そして、勝負(?)は始まったのだが。
私を口説こうとしている魔理沙は何故かもじもじしていて、それはまるで恋する乙女のようで――――
* * *
そして現在の状態に至る。
結局本は魔理沙のものとなってしまい、アリスは自分で決めた(というか慧音に乗せられたというか)ことなので文句も言えず、ジト目で魔理沙を見るばかりだった。
慧音は面白いものが見れた、とばかりに上機嫌で、私はというと……まぁ、楽しかったとは思う。
まさかあんな魔理沙が見れたなんて。所々口調も変わってたように思えるし。
ふと考えた。本当に魔理沙に告白されたら、私はなんて答えるんだろう。
まぁ、それはないか。
私は一人納得して、すっかり冷めてしまったアリスのお茶を飲み干して神社に戻った。
戻る途中、結局私は何がしたかったんだ、とか思ったけど気にしないことにした。
そして後日。
このことを見ていた出歯亀天狗の手によってこのことは幻想郷中に広められ、隙間の妖怪からものすごい尋問を受けた。
おまけに『私も求婚する』とか言う始末。誰かどうにかして、いや本気で。
永夜抄の組み合わせは私もそう思っていますw