※百合気味ですのでご注意下さい。
+++
始め、眼前に映ったのは真っ白なシーツだった。
(…ん)
重くなった瞼をゆっくり開くのと同じくして、じょじょに私の意識が覚醒していく。
(…ああ)
どうやら、今の今まで眠ってしまっていたよう。
ふと窓の外へ視線を移すと、硝子の向こうは暗闇しか見えない。
となると、「あれ」から大分時間が経っているということか。
魔理沙と二人で街に出たはいいけれど、ふとした拍子に些細なことで仲をこじらせてしまい…それで私は彼女を残したまま帰ってきてしまったんだっけ。
そして、家につくなりベッドに顔をうずめて泣いて…
原因なんて本当にちっぽけなことだったから、今の私は彼女を責める気も何もないのだけど。
………もともと、私が悪かったのだし。
――その時。
自分の前頭部にずきんと痛みがはしった。
突然の頭痛に私は顔をしかめて耐える。
(あたま、痛い…)
風邪でも引いたのだろうか。
確かに今は季節の変わり目。体調が崩れやすい時期でもある。
(さっき魔理沙に酷いこと言っちゃったから、その罰かしら)
そう考えればこの痛みは妥当なものなのかもしれない。
それに、先ほどの件についての罰ならば幾らでも受け入れることが出来る気がした。
あれは十中八九私に原因があると言ってもいいのだから。
――魔理沙が「彼女」の話をした。
たったそれだけのこと。
なのに私は話を聞くなり不機嫌になって、魔理沙に対して冷たい言葉を浴びせてしまった。
その時彼女は突然の事態に驚きを見せると同時に、とても悲しそうな表情-カオ-をして…。
ベッドに体を横たえたまま、私は考える。
(…もう、このまま消えてしまえたらいいのに)
消えてしまえば魔理沙のことも、彼女のことも…何も考えなくていいのに。
そう思ったら胸が苦しくなって、なんだかまた泣けてきた。
(弱いなぁ…私)
流れる涙を手で拭うことすらおっくうになった私は自分自身を情けなく思い、顔を手で覆う。
昔はこんなじゃなかった。
彼女のこと…なんとも思ってなかったはずなのに。
最初は田舎の魔法使いだと馬鹿にしていた。
「だぜ」とかいう喋り方が男の子みたいで、仕草もなんだか子供っぽくて。
でも、いつからかそれが可愛いなって思い始めて。
私の方が大人なんだから、私がひっぱってあげないとって考えたりして。
それから二人でお喋りするのがたまらなく楽しくなって。
そして、今じゃ片時も忘れられない相手になっている。
(…魔理沙……置き去りにしてきちゃった………)
だからこそ、さっき私がとった態度がどうしても気掛かりで。
「嫌われたかな…」
ぽつりと呟いた…刹那。
「なにが?」
声が聞こえた。
「…~~~!?」
聞き覚えのある声に驚いて起き上がると、目の前には黒い三角帽を被った魔理沙の姿。
「住居不法侵入っていうヤツかもしれないけどすまん、心配だったから勝手に入ってきたぜ」
「…っ」
「って…アリス、顔赤いぞ。大丈夫か?」
己の手を私の額にあてがう彼女。
見れば、さっきのことなんて無かったかのように振舞っていて。
「…こりゃ風邪かな、ちょっと熱あるぞ」
だから余計に、私は苦しくなって。
「どうして…」
「どうしてって、だから心配で――」
「どうしてそんなに優しいの…っ」
抑えられない想いが雫となり、ぽろぽろとこぼれ落ちる。
あんなに酷いことを言ったのに、あんなに酷いことをしたのに、
どうしてあなたはこんなにも…!
静寂に包まれる室内。
やがてこらえきれずに嗚咽を漏らす私。
だけど魔理沙は三角帽をくいっと上にあげて、
「好きな奴に優しくするのが私の正義でね」
重い沈黙を打ち破り、にっと笑った。
「っ…!!」
彼女の笑顔はとてもまぶしくて。
私の辛い想い全てをいとも容易く消し去って。
「ばか…っ」
そんな魔理沙が愛しかったから、私は。
「大好き………!」
彼女の胸に飛び込んだ。
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始め、眼前に映ったのは真っ白なシーツだった。
(…ん)
重くなった瞼をゆっくり開くのと同じくして、じょじょに私の意識が覚醒していく。
(…ああ)
どうやら、今の今まで眠ってしまっていたよう。
ふと窓の外へ視線を移すと、硝子の向こうは暗闇しか見えない。
となると、「あれ」から大分時間が経っているということか。
魔理沙と二人で街に出たはいいけれど、ふとした拍子に些細なことで仲をこじらせてしまい…それで私は彼女を残したまま帰ってきてしまったんだっけ。
そして、家につくなりベッドに顔をうずめて泣いて…
原因なんて本当にちっぽけなことだったから、今の私は彼女を責める気も何もないのだけど。
………もともと、私が悪かったのだし。
――その時。
自分の前頭部にずきんと痛みがはしった。
突然の頭痛に私は顔をしかめて耐える。
(あたま、痛い…)
風邪でも引いたのだろうか。
確かに今は季節の変わり目。体調が崩れやすい時期でもある。
(さっき魔理沙に酷いこと言っちゃったから、その罰かしら)
そう考えればこの痛みは妥当なものなのかもしれない。
それに、先ほどの件についての罰ならば幾らでも受け入れることが出来る気がした。
あれは十中八九私に原因があると言ってもいいのだから。
――魔理沙が「彼女」の話をした。
たったそれだけのこと。
なのに私は話を聞くなり不機嫌になって、魔理沙に対して冷たい言葉を浴びせてしまった。
その時彼女は突然の事態に驚きを見せると同時に、とても悲しそうな表情-カオ-をして…。
ベッドに体を横たえたまま、私は考える。
(…もう、このまま消えてしまえたらいいのに)
消えてしまえば魔理沙のことも、彼女のことも…何も考えなくていいのに。
そう思ったら胸が苦しくなって、なんだかまた泣けてきた。
(弱いなぁ…私)
流れる涙を手で拭うことすらおっくうになった私は自分自身を情けなく思い、顔を手で覆う。
昔はこんなじゃなかった。
彼女のこと…なんとも思ってなかったはずなのに。
最初は田舎の魔法使いだと馬鹿にしていた。
「だぜ」とかいう喋り方が男の子みたいで、仕草もなんだか子供っぽくて。
でも、いつからかそれが可愛いなって思い始めて。
私の方が大人なんだから、私がひっぱってあげないとって考えたりして。
それから二人でお喋りするのがたまらなく楽しくなって。
そして、今じゃ片時も忘れられない相手になっている。
(…魔理沙……置き去りにしてきちゃった………)
だからこそ、さっき私がとった態度がどうしても気掛かりで。
「嫌われたかな…」
ぽつりと呟いた…刹那。
「なにが?」
声が聞こえた。
「…~~~!?」
聞き覚えのある声に驚いて起き上がると、目の前には黒い三角帽を被った魔理沙の姿。
「住居不法侵入っていうヤツかもしれないけどすまん、心配だったから勝手に入ってきたぜ」
「…っ」
「って…アリス、顔赤いぞ。大丈夫か?」
己の手を私の額にあてがう彼女。
見れば、さっきのことなんて無かったかのように振舞っていて。
「…こりゃ風邪かな、ちょっと熱あるぞ」
だから余計に、私は苦しくなって。
「どうして…」
「どうしてって、だから心配で――」
「どうしてそんなに優しいの…っ」
抑えられない想いが雫となり、ぽろぽろとこぼれ落ちる。
あんなに酷いことを言ったのに、あんなに酷いことをしたのに、
どうしてあなたはこんなにも…!
静寂に包まれる室内。
やがてこらえきれずに嗚咽を漏らす私。
だけど魔理沙は三角帽をくいっと上にあげて、
「好きな奴に優しくするのが私の正義でね」
重い沈黙を打ち破り、にっと笑った。
「っ…!!」
彼女の笑顔はとてもまぶしくて。
私の辛い想い全てをいとも容易く消し去って。
「ばか…っ」
そんな魔理沙が愛しかったから、私は。
「大好き………!」
彼女の胸に飛び込んだ。