紅魔館・ヴワル図書館―――
アリス「こんにちわ。誰か居るかしら?」
パチュリー「誰かと思えば・・・帰って」
アリス「い、いきなりそれはひどいんじゃないの!?」
パチュリー「いやなんとなく。何の用よ?魔理沙は居ないわよ」
アリス「いや、別に私そういう趣味ないから・・・」
パチュリー「・・・ふぅん、残念」
アリス「何に関して残念がってるのか疑問だけど・・・知らないほうが良いわよね」
パチュリー「で、何の用事?」
アリス「図書館に来る用事なんて、一つしかないじゃない」
パチュリー「ま、まさか・・・
図書館に住まう美少女魔法使いを手篭―――」
アリス「はいはいストーップ。ないから。そういう趣味ないから」
パチュリー「偽者・・・(ぼそっ」
アリス「え?」
パチュリー「そっちの趣味に走らないあなたなんて偽者だわっ」
アリス「なんで!?」
パチュリー「なんでと言われても・・・あなたってそういうキャラじゃない?」
アリス「一体どういう偏見なのよ・・・」
パチュリー「ま、それは置いておいて」
アリス「かなり納得行かないのだけれど・・・」
パチュリー「魔導書を読みたいのならそこの棚よ。
読めるものばかりとは限らないけれど」
アリス「じゃあ遠慮なく」
がさごそがさごそ・・・
アリス「あ、これなんか良いかも・・・どれどれ・・・」
パチュリー(独り言大きいわね・・・)
アリス「んー、読めない」
パチュリー「それは貴方のレベルでは読めそうにないわね」
アリス「なっ・・・そ、それならあなたは読めるっていうの?」
パチュリー「ええ、まぁ」
アリス(くっ、悔しい、無い胸張られてるのが余計に悔しいっ)
パチュリー「まぁ、私位世界れべぇるな魔法使いになると-――」
アリス「そ、そう。なら読んで聞かせてくれないかしら?」
パチュリー「え?なんで私が」
アリス「読めるからでしょう?」
パチュリー「・・・私は読書中なんだけど」
アリス「いいじゃない」
パチュリー「む・・・まぁ、いいわ。どれどれ・・・」
アリス「そういえばなんとなく手に取ったは良いけれど、
この本ってなんていうタイトルなの?」
パチュリー「題名も読まずに本をとらないで・・・
ええと、これは『不思議の国のアリス』ね」
アリス「どこかで聞いたような・・・でも魔法に関係あったかしら」
パチュリー「では読むわよ」
アリス「あ、ええ。お願い」
昔々あるところに、とてもプライドの高い少女がいました。
(中略)
めでたしめでたし。
アリス「何よ中略って!?何がめでたいのか解らないわよっ」
パチュリー「だって読むの面倒・・・」
アリス「お願いだからちゃんと読んでちょうだい」
パチュリー「はぁ・・・仕方ないわね。じゃあ一度しか読まないからちゃんと聞きなさい」
昔々ある魔界に、とてもプライドの高い少女がいました。
少女の名前はアリスと言いました。
ある日アリスは魔界で暴れていた幽香という妖怪と対峙します。
「魔界で暴れるなんて、許せないんだからっ」
魔界の秩序の為に挑んだ彼女でしたが、幽香は度を越して強く、
まったくと言っていいほど相手になりませんでした。
「うぅ・・・悔しい、でも感じ・・・もとい、まだ負けてないんだからっ」
負けたのに負けを認められないアリスは、
再戦を挑む為、究極の魔導書(定価¥1890)を手に入れます。
これでリターンマッチができると喜び、早速読み始めました。
『R18指定』という表示が表紙になされていたのには全く気づかずに・・・
「えっ、ちょっ、何なのよこれっ!?」
さぁ究極の魔法を覚えてやろうと本を開き、
初めてその内容を知ったアリスは、しどろもどろになり手を止めます。
「うぅ・・・こ、こんなのママに見られたら怒られちゃう・・・」
まだ幼いアリスはもうどうしていいやら、
半べそになりながら困り果てます。
少ないお小遣いをためて買った本だったので、捨てるに捨てられませんでした。
「はっ、そ、そうだわっ、これはきっと試練なのよっ
簡単に究極の魔法が出せるわけないもの!!」
思い込みの激しい年頃のアリスは唐突に思いつき、
魔導書を強引に読み進めます。
「うっ・・・くっ、すご・・・うわぁ・・・」
最初は恐る恐る、一枚めくっては次のページをちょろちょろ見るだけだったというのに、
途中からはもう好奇心に負け、試練がどうとかも忘れ完全に読みふけってしまいました。
「はぁ・・・す・・・すごい内容だったわ・・・まさか巫女があんな事になるなんて・・・」
肩で息をしつつも、なんとか全工程読み終えたアリス。
たった数時間で大人の階段を走破してしまいました。
「で、でも、これで究極の魔法を覚えたはずっ」
しかし、内容を思い出せば赤面してしまうし、
そもそも魔法に関する書物のはずなのに、それらしい事はほとんど書かれてませんでした。
これでは究極の魔法なんて発動のしようがありません。
「も、もしかしたらピンチに陥ったら発動する系の魔法なのかもっ」
一縷の望みを抱き、アリスは一人幽香の下へと向かいました。
決して勝ち目の無い、叶うことのない相手を倒すため―――
その後、アリスはトラウマになるほど幽香にもこもこにされ、
おまけに魔導書の所為で家に帰るに帰れず、
幻想郷で暮らすことになりましたとさ、めでたしめでたし。
アリス「ぜんっぜんめでたくないわよっ!!」
パチュリー「ふぅ・・・」
アリス「何一仕事やり終えた後みたいな満足げな顔してるのよ・・・」
パチュリー「めでたしめでたし」
アリス「繰り返さないでよっ!!」
パチュリー「まぁ、いいじゃない。きっと何かがめでたいのよ」
アリス「ていうかなんで私なのよっ」
パチュリー「そんなの作者に聞きなさい」
アリス「誰よ」
パチュリー「私」
アリス「聞いてるじゃないのよっ!?
ていうか何っ?なんであなたがそんな事知ってるの!?」
パチュリー「え・・・だって・・・(ぽっ」
アリス「なんで赤くなるのっ!?」
パチュリー「ずっと・・・見てたから・・・(ぽっ」
アリス「・・・・・・」
パチュリー「・・・・・・」
アリス「冗談よね?」
パチュリー「ずっと見てたから・・・」
アリス「繰り返さなくて良いわよっ」
パチュリー「冗談は置いておいて」
アリス「冗談だったのね・・・良かった」
パチュリー「まぁ本当の事なんだけど冗談という事にして・・・」
アリス「何なのよっ!?あなた私のストーカーなのっ?」
パチュリー「・・・・・・(こくり」
アリス「いやそこは否定してっ!?」
パチュリー「えー」
アリス「えーじゃないわよっ、もうっ、全く・・・何なのよ・・・はぁ」
パチュリー「まぁ、それはいいとして、あなたその本今も持ってるのよね」
アリス「えっ?あー、あれ?あれは大分前に魔理沙に奪われたわよ。
そのまま戻ってこないからどうなったのやら」
パチュリー「・・・でも今持ってるその本は・・・」
アリス「これ?これはただの日記だけど・・・」
パチュリー「むしろその本を下さいっ」
アリス「いきなり敬語っ!?」
パチュリー「ふ、ふふふ・・・私の知らないあなたの日常がそこに・・・」
アリス「だ、誰かぁっ、誰かこの魔法使いなんとかしてっ!?」
パチュリー「あなたは3面ボス、私は4面ボス。
叶うわけないのはわかってるわよね?」
アリス「いやっ、その脅し方なんかおかしいからっ」
パチュリー「はぁ・・・アリス=マーガトロイド・・・
私の愛しいげふぁっ」
アリス「えっ・・・」
パチュリー「じ・・・持病の喘息が・・・こ、こんな時に・・・」
アリス「・・・・・・」
パチュリー「・・・・・・(ぜぇぜぇ」
アリス「じゃっ、そういう事でっ」
パチュリー「あっ、ちょっ、待ってっ
まだ私の愛のラストワードは展開してないわっ」
アリス「ま、間に合ってるからっ、それじゃっ」
紅魔館・廊下―――
ばたん
アリス「・・・はぁ。危なかったわ。何なのよあれ・・・」
とてとてとてとて
アリス「それにしても、何か色々と矛盾してるような気がするのよね。何かしら」
とてとてとてとて
ドォーンッ!!
アリス「えっ、何・・・?」
魔理沙「アリスぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
アリス「ひっ、な、何よ・・・誰かと思えば魔理沙じゃない・・・」
魔理沙「本っ、本なんだがっ」
アリス「え?本・・・?」
魔理沙「あ、あんなその・・・
あんなけしからん本私に貸すなんて一体どういうつもりなんだっ!?」
アリス「けしからん・・・本?」
魔理沙「あれだよっ、あれっ。その・・・えーと」
アリス「あれじゃわからないわよ・・・」
魔理沙「えっ、く、口に出して言わないとダメなのか・・・?
で、でもなぁ・・・うーん・・・」
アリス「はっきりしないわねぇ。私は忙しいんだから、言ってくれないなら帰るわよ」
魔理沙「ひどいぜ・・・私だって乙女なのにな。
そんな・・・恥ずかしいことを言えって急かすなんて・・・」
アリス「はぁ?」
魔理沙「うぅ・・・い、言う。言うったら。言ってやるぜ・・・
だからその・・・巫女とか・・・(ごにょごにょ」
アリス「・・・巫女?」
魔理沙「いやだからっ、あのっ、ずっと前に借りた(ぴー)で(ぴー)な本だよっ!!」
アリス「ああ、それね・・・」
魔理沙「最初は読めなかったけど、最近やっと解読できてな・・・
その、やっと読めると思って広げたら・・・あ・・・あんな・・・」
アリス「勝手に持っていってよく言うわ」
魔理沙「だ、だって究極の魔導書って書いてあっただろっ
つい読みたくなるのは魔法使いとしては普通だと思うぜ!!」
アリス「それで・・・何?返しにきたの?」
魔理沙「いや・・・その・・・それなんだが・・・」
アリス「?」
魔理沙「実は新聞記者やってる天狗が来てたんだ・・・その、解読する時に」
アリス「ふぅん。それで?」
魔理沙「一緒に見たんだよ・・・ていうか見られたんだよ・・・」
アリス「・・・ご愁傷様」
魔理沙「返してっ!?私の純情を返してくれっ!!」
アリス「明日には幻想郷中に広まるわね・・・」
魔理沙「こっ、こうなったら天狗を討つしか・・・」
アリス「はいはい自棄にならないの・・・全く。
良い歳して、ちょっとくらいあれな本持ってた位で騒がれないわよ・・・」
魔理沙「えっ・・・そうなのか?」
アリス「そういうものじゃない?」
魔理沙「そ、そうなのか・・・」
アリス「大体あの天狗だって結構生きてるって聞くし、
そんなのネタにするまでもなく当ったり前~みたいになってそうじゃない」
魔理沙「そ、そうだよなー、良く考えたらそうだよなっ
うん。そういう事にしとくぜっ」
アリス「はぁ・・・もういい?私疲れてるんだけど」
魔理沙「ああ、安心した。安心したら盗みたくなった」
アリス「図書館はあちらよ」
魔理沙「行ってくるぜっ」
バヒューンッ
アリス「・・・ご愁傷様」
その頃、お山では―――
文「あ、あんな・・・あんなすごい本があるなんて・・・ど、どうしよう。
記事に・・・いやっ、こんな事書いたら私の品性を疑われるわっ
でもでも・・・はぅ・・・」
こうして、アリスの手元から離れたかの書物は、
様々な所で問題を起こしていったのであった。
(完)
ところで
>究極の魔導書(定価¥1890)
すいませんこれどこで売ってますか
あ、会話のテンポが絶妙でとても良かったです。