永遠亭、永琳の作業場。
鈴仙「師匠、それは何をしているんですか?」
永琳「ああウドンゲ。今、フィギュアを作っているのよ」
鈴「あ、モデルは師匠ですね?」
輝夜「あら、人気者が来たわ」
永「そうですね」
鈴「ひ、姫様。なんですかいきなり」
輝「イナバ、お前は主を差し置いてどれだけ立体化されれば気が済むのか」
鈴「も、申し訳ありません……(平伏)」(うう、マズい時に来ちゃったなぁ)
輝「でも何故なのかしらね?」
永「わたくし考えますに、姫の形を模するのは畏れ多いからではないか、と」
輝「そんなものかしら」
永「下々の者の考える事など、そんなものでしょう」
輝「でもそうなると、永琳、貴方の少なさが説明がつかないわよ」
永「お心遣いありがとうございます」
鈴(……何も考えるな私何も考えるな私)
永「ですから、比較的親しみやすいウドンゲなどは、そういった点でも手ごろなのでしょう」
輝「安い女という訳ね」
鈴「(酷!)わ、私の服ってフリルとかないじゃないですか、多分、その辺ですよ、ええ!」
輝「スカーレットの小娘」
永「西行寺」
鈴「う」(なんで知ってるの、ってかこの人たち納得したいんじゃないの!?)
永「私達って、ラスボスの中でも立体化に恵まれませんよね」
輝「数だけ見たらハクタクにすら負けてるかも知れないしね」
永「あら、こんなところに人気者のウドンゲが」
輝「安い女ね」
鈴「うう……」
――少女製作中――
鈴「でも、姫様も師匠も随分上手ですね」
輝「暇だけは売るほどあるしねぇ」
永「制作代行とかやってますしね」
鈴「(この人達そんな事してたのか)あ! よく見たらそのフィギュアのモデル、私じゃないですか!? しかもそんなに削っちゃって! ダメ! スカートそんなに削らないでー!」
輝「落ち着きなさいイナバ、これはダメージ表現よ?」
鈴「一体何をされればそんなに服が破れるんですか! 殆ど残ってないですよそれ!」
輝「うーん。お腹まわりの具合がわからないわ、ちょっと脱ぎなさいイナバ」
鈴「な、なんでそんなにリアル志向なんですか! あ、ネクタイ返して下さい! し、師匠~」
永「少し待ちなさい、パテが硬化中なのよ」
鈴「師匠のも私のだ!? しかもなんでそんなに胸を大きくしてるんですか! 恥ずかしいからやめてくださいよ~!」
輝「じゃあ、数を増やして?」
永「さすが姫、マニアックですね。ですが玉兎は複乳ではありませんよ?」
輝「そうだったかしら」
永「確かめてみますか?」
輝「そうね、そうしましょう」
鈴「え? いや、ちょっと、待って、待ってくださいよ~!」
――少女調査中――
輝「ふぅん。お前、意外とスゴイのね、少し見直したわ」
鈴「えぅぅ……(もうイヤ……)」
永「尻尾の付け根とかどうなってたかしら?(握)」
鈴「うひゃあ!?」
塗装
鈴「わ、色塗りですね、スゴイ臭い……」
永「もしやるなら換気はしっかりしておきなさい。私は薬品の類は効かないからいいけど」
輝「三日くらい塗装で篭ってると、気がつかないうちに一回くらい死んでたりするのよね」
永「ご自身の命をかけて作品に命を吹き込むその姿勢、ご立派です」
鈴(コストが無限じゃありがたみも薄れると思うんだけどなぁ)
永「ウドンゲ、いくら死に放題でも、命は命と心得なさい」
鈴「!?」
永「しかし姫、仏の御石の鉢を塗料皿に使うのは、さすがにどうかと思いますが」
輝「いいじゃない、ご利益ありそうで」
鈴(うわー、神宝台無し……)
輝「永琳の塗装は何時見てもすごいわ、見てこのハンドピース捌き」
永「恐縮です」
鈴「って、なんでシャツが透けてような塗装なんですか! それに、私の胸はこんなはちきれそうな大きさじゃないって、この前調べたじゃないですかー!」
永「ウドンゲ……女の子の胸には夢が詰まってるのよ……」
鈴「尤もらしい事言ってるつもりかも知れませんが、説得力ゼロですから! しかもなんですかその下着! 勝手に人の下着のデザインまで起こさないで下さいよ!」
輝「あらイナバ、お前下着をつけてない方がいいの?」
鈴「そういう問題じゃありません! あ、でもこのデザインには見覚えが!? 私の箪笥の中身を入れ替えてるのって師匠だったんですね!?」
永「てゐよ(即答)」
鈴「実行犯がてゐでも黒幕は師匠です!」
永「見事な推理ね」
鈴「あー! 開き直った! この人開き直ったー!」
輝「永琳……」
鈴「姫様からも何か言ってくださいよ! この人、弟子の箪笥の中身を勝負下着にすり替えるんですよ!?」
輝「私の分は?」
鈴「論点はそこなんですか!?」
永「姫には合うサイズが無(サクッ)」
鈴「うわ、この人失言隠すのに舌噛み切ったよ!?」
【リザレクション】
永「で、なんでしたっけ?」
輝「貴方が私をどう思っているか、少し分かった気がしたわ」
完成品
輝「完成したわ」
永「お疲れ様でした」
鈴「ううぅ、結局あのままなんですかぁ?」
輝「そうね、折角だからモデルになったお前には見せてあげるわ」
永「寛大なお心に感謝しなさい」
鈴「は、はい……(なんで私、許されないといけないんだろう?)」
輝「はい、蓬莱山輝夜作、タイトルは『美しき花瓶』よ」
鈴「ちょ!? なんで全裸なんですか! それに……は、花が……」
永「ウドンゲ、少しは落ち着いてよく見なさい。全裸じゃなくて手錠や足枷はされているわ」
鈴「なお悪いですよ! なんでこんな金持ちの表沙汰に出来ない趣味みたいな格好になってるんですか! 色を塗ってた時と形まで違うじゃないですか!?」
て「花は苦労したわ、茎が細すぎて安定しないの」
永「一本一本別パーツですものね」
鈴「スルーされた! っていうかこれって外れるんですか!?」
輝「当然よ、ほら」
鈴「ぎゃーー!! 人の局部とか作りこんでんなーー!!」
永「ですが姫、ウドンゲは上付きですよ?」
輝「あらそうなの? じゃあ次回作には反映させなきゃ」
鈴「なんで……? 私、何か悪い事したの……? うう、えぐっ」
永「ウドンゲ、人は誰しも生まれながらにして罪を背負っているのよ……」
鈴「そういう問題じゃねぇー!!」
輝「ギャグでも噛ませた方がよかったかしら?」
永「そうなると微妙な表情の変化を表現しづらくなるかと」
輝「そうなのよねぇ、私もそこで悩んだのよ」
鈴「人の話を聞けえええぇ!」
輝「こっちもギャグを噛ませた方がいいかしら?」
永「では早速」
鈴「え!? あ! う! むぐぅ!? うう~! ううぅう~!!」
輝「静かになったところで永琳のも見せて頂戴な」
永「では」
輝「あら? 永琳のは胸が大きい以外は普通なのね?」
鈴「ぃ、うぉう!(し、師匠……!)」
永「実は今回、素材に凝ってみまして」
鈴「ぐうむー、むううぐ~!(じゃあこの前塗装してたのはなんだったんですか!!)」
永「あれは軟質ボディ用の原型よ」
輝「すごいわ永琳、イナバが何を言っているかなんてサッパリなのに」
鈴「(原型を塗装するバカがここにいるーー!!)」
輝「あら、髪が柔らかいのね、ドールヘア?」
永「服も外せます」
鈴「むぐおおうぅ!?(やっぱりかーー!?)」
輝「わぁ!ブラを外すとぷるぷるしてる! まるで本物ね!」
永「骨格と軟質素材の接合で悩みました。胸の中身は人体と同じ柔らかさの特殊シリコンを使用しています」
輝「わぁ、すご……これだけ大きいといろいろ挟めそうね……」
永「指関節までが動くので、自分で保持させる事なども可能です」
鈴「むがぁーーー! がああーー!! ひがあああーーー!!」
輝「……まさか、下も?」
永「ご自身の目でお確かめください」
鈴「むがーー! がええええーー!!」
輝「へぇ、どれどれ……(クイ)う、わぁ……」
永「腹部は限界までクリアランスに気を使い、可動部と内部構造との両立に成功しました」
ギギギ、バキン!
鈴「うぎゃあああああーーーーーー!!!! やめてええええええええええええ!!!!」
輝「永琳すごいわ、イナバがギャグを噛み砕いた」
永「予想外です」
鈴「な、な、なんで! 中身まで作る必要があるんですか!!!!」
輝「ほら見てイナバ凄いのよ、足を開くと連動してここが開くの」
鈴「連動させんなああああああああ!!!?」
永「本当は温度で色の変わる素材を用いて、カットモデルを再現するはずでしたが、軟質素材との相性が悪く断念しました」
輝「あら永琳、断面図だなんてマニアックね」
永「恐れ入ります」
鈴「うう……、ここまで来たらもう、医療用の資料模型じゃないですかぁ……」
輝「これ、内部の構造も軟質なの?」
永「もちろんです。お試しになりますか?」
輝「ええ、やってみたいわ」
鈴「た、試すって何をですか!!?」
永「まあ、見てなさい。姫、このチューブを挿し込んで下さい」
輝「永琳、入れにくいわ」
永「中身が詰まってますからね。締まりがいいんですよ」
鈴「人のフィギュア捕まえて、締まりとかいうなああああああああああ!!!!」
輝「これ、足を開いた方が入れやすいわね。そんな所もリアルだわね……っと、入ったわ」
永「潤滑液でも用意すればよかったですね、では、注水」
鈴「もういやああ!!」
輝「あ、お腹が膨らんできたわ」
永「内部には袋状のパーツがあります、そこに水が溜まる事で、このように」
輝「おめでたいわ。もう十月十日ね」
鈴「うう、えうぅ……ううぅうぅ……(なんで自分の妊娠した姿とか見なきゃいけないの?)」
永「この状態での運動性や、骨格、内臓への影響などを調べる事が出来るわけです」
鈴「し、師匠……心なしか胸も膨らんでませんか……?」
永「ああウドンゲ! よく気がついたわ、流石は私の弟子ね!」
鈴「それって、私褒められてませんよね……?」
輝「でもこれって、中身はシリコンなんでしょ?」
永「腹部が膨らむと、圧迫されたシリコンが胸に行くように設計されています」
輝「よく出来てるわねぇ、さすが匠の技」
永「残念ながら、コストが高すぎて量産は出来ませんが」
鈴「売るつもりだこの人――――!!?」
輝「何を今更驚いているの。イナバのフィギュアは永遠亭の貴重な財源なのよ?」
永「カラーバリエーションもあるわ。ちなみに末端価格は」
鈴「ぎゃああ!? 聞きたくありません! それになんですか末端価格って!!まるで違法品じゃないですか!!!」
永「お前の生来の破廉恥さは既に罪なのよ……」
鈴「だったらスカートの丈を伸ばしてください! ブラウスのサイズも一つあげてください!!」
輝「財政難だから衣服も省スペース、省サイズなのよ」
永「省エネルックですね」
鈴「際どい下着を山ほど買う余裕はあるくせにーー!!」
永「アレも売り物の一部よ?」
鈴「同じのを二度と見ないから何となくそんな気がしてたけどやっぱりそうかああああああ!?」
永「ウドンゲが来てからは、グッズ特需で随分と暮らしが楽になったわ」
鈴「いつの間にそんなものが! あ! でも里で変なTシャツを見た覚えが!?」
永「お前のブロマイド一枚で何人の兎が救われているか知らないのね」
鈴「知りませんし、知りたくもありません!」
輝「今日もご飯が食べられるのは、イナバ、お前のおかげなのよ」
永「ウドンゲ、ありがとう」
鈴「なにいい話っぽくまとめようとしてるんですか! 騙されませんからね!!?」
輝「最近騙されなくなってきたわね」
永「大丈夫です、商品展開はいろいろと考えていますから」
鈴「もうやだあ!! 月に帰るうううううう!!!」
永「その泣き顔、いい表情よ。レアカードになるわ」
輝「さすが永琳、容赦がないわね」
鈴「うわあああああん! うわあああああん!!」
>表現しずらくなる
づです。