今日もこの店には常連客の少女二人が来ている。
まあ、金を払わない客を客と呼べるかは怪しいが。
ここは香霖堂。幻想郷のほぼ中心に位置する古道具屋だ。
ただ魔の森という妖怪が現れる森の入り口に立っているため、客は殆ど来ない。
そもそもこんな人が来ないような場所に店を構える店主は商売をする気が無いだろう。
それでも前述の二人や西洋の侍従や兎の耳を生やした少女、人魂を連れた剣士がくるのだから世の中わからないものだ。
今日も紅白と白黒の少女によって賑やかな一日になりそうだ。
おっと自己紹介がまだだったな。
私の名前は『草薙』
店主の近くの壁に立て掛けてある剣。
それが私だ。
騒がしい、されど平穏な日々
「だからラーメンは醤油だろ!」
「いいえ、塩よ!」
二人はなにやら食品の調味料にこだわっているらしい。
私にはそういう食品に対するこだわりというものはよく分らない。
食物を摂取することができないので知識として理解できても実感はできない。
そういうことだ。
私のことはさておき、店主の方はというと二人の口論を意に介さず読書をしている。
流石、と言うべきなのかなんなのか。
おそらくは意見を聞かれるか何時も通りに口だけではなく手も出始めるかしない限り静観を決め込むのだろう。
「香霖は醤油の方が好きだよな!」
「霖之助さんは塩派よね!」
と、いつの間にやら議論の矛先が店主の方に向いたようだ。
その声を聞き、店主は読んでいた書物に栞を挟み少女達の方へ顔を向けた。
「僕はさっぱりしている方が好きだからね。塩が好きかな」
紅白の少女の顔に不敵な笑みが浮かび、白黒の少女の顔が曇る。
「でも醤油も好きだよ」
一転して白黒の少女の顔がぱぁっと明るくなる。
表情がころころ変わって実に微笑ましい。
店主もその百面相に苦笑する。
「あ、なに笑ってやがる!」
白黒の少女が店主の苦笑に気付き怒鳴る。
「ああ、すまない魔理沙」
まったく、失礼な奴だぜ。とでも言わんばかりに黒白の少女が憮然と腕を組む。
「で、二人とも夕食はどうせここで食べていくつもりなんだろ?」
「「もちろんだぜ(よ)」」
やれやれ、とお手上げの体勢をとりながら首を横に振る。
基本的に食事を取らなくてすむくせに今日は朝から食料の買出しに行ってたのはそれが理由か。
全く、商品を勝手に持っていったりツケを溜め込んだりしているというのに彼はこの二人にはとことん甘いな。
夕食の用意をするために店主と二人の少女が店の奥に消える。
そうして静かになった店内で私は思う。
願わくば、この騒がしい平穏な日々が続くように、と。
まあ、それはそれ
みそも美味しいと思うんだ
あと私は味噌派
一冊100円以下で投げ売りしましょー
塩派のおれが言ってんだから間違いない!
道具に感情か・・・なんか新鮮