馬鹿には見えないパンツ。
そんなベタ嘘に引っかかった状態ですっ転び、サービスショットを披露したりする。輝夜は空気読むのが上手い。
(お約束)
黒髪=清楚、観客が望むステレオタイプをばっちり意識し、実に恥ずかしそうなリアクションを取る。
月の文化は関西風、ノリツッコミが挨拶代わりの環境だった故できる芸当である。
「姫が沐浴するぞー」
もちろん、用意されたのはぬるま湯だが、あたかも熱湯であるかのようなリアクションを取らねばならない。
「押さないでよ……! 押さないでよ……!」
ビクビクと湯船を前にしてためらう、背後でてゐが腹黒そうな表情でスタンバイする。
(出るぞ)
永遠亭のお家芸、熱湯リアクション芸が披露されんとしたその瞬間、
「輝夜どこじゃコラー!」
空気読めない子が乱入する。
一体どういう基準で侵入経路を選んだのか分からないが、天井を突き破り、浴槽に垂直落下。
「あー……」
一気に場の空気が白ける。
なにやってんのかと。そこは熱いを連呼するところでしょと。
「あん。入浴中……? そんなの関係ねえ! お前がよこした馬鹿には見えないブラとやらで、私がどれ程みっともない目に会ったと思う!?」
なにやら張り切って口上を済ませる妹紅。直後、怒りと共に背中の両翼がオーバーヒート。無論、膝上までお湯に浸かった状態である。
当人は意識しなかっとはいえ、お笑いフラグ成立。周囲のお湯を自身の炎で熱湯にランクアップさせ、
「あっつ!」
ごく、普通のリアクションを取った。
「お前……」
空気読めよ。そこは一世一代のリアクションとるところでしょーが。
激しくツッコミを入れたくなる輝夜、しかしバスタオル一枚では大げさな動きができない。
ホントに、タイミングの悪い来客である。
「私と勝負しろや……! 逃げんのか……!」
キーキーわめく妹紅を尻目に、自室に戻る輝夜。
もはや興ざめ、沐浴は止めて着替える事にする。
「……」
しゅるりパサ。色っぽい音を立てて着替える輝夜。
こういう時はその場に乱入し、下着に足を引っかけ着替え中の輝夜を偶然押し倒す、等のラブコメ展開が求められる。
「……」
微妙に育ちの良さが出て、行儀よく着替えが済むのを待つ妹紅。
とことん、フラグをへし折る星の下に生まれついているようだ。
「アンタもうちょっと空気読め」
くどくどと。ねっちりと。たたみかける様な説教。
大人しく正座で聞く妹紅、一応、ただならぬ怒気を察する事はできた。
(すでに三十分は説教してるのに)
あーん。足痺れたー。 とか、そういうリアクションが有ってもいいのに、実に申し訳なさそうに正座する妹紅。
不死者なせいか、もって生まれた気性なのか。どうもこの娘、我慢強すぎる。
(それが良くない)
普通なら悲鳴をあげる所もぐっとこらえる。どれほど恥ずかしい目に会っても、涙の一滴も流さない。
常に口を一文字に結び耐える少女、それはそれで萌えるが、流れとしてはおいしくない。
「少し、弱そうにしてみなさい」
そんな事言われても。数世紀に渡って娘一人所帯、すっかり耐えるのが板についた妹紅。
急に弱みを見せるなんて不可能、
「きゃ……きゃー!」
ダメダメ。そんな怖そうな目、しかも地声で悲鳴などあげたら男が逃げる。
「もっと色っぽく」
「い。いやぁーー!」
「もっと深刻そうに」
「よ、汚されるー!」
何事かと思い、永琳が駆けつける。
ちょうど発声法を教えようと輝夜が肩をがっしと掴んでいた体勢、何か誤解する永琳。
(お約束)
いいぞ、こういう勘違いは基本中の基本だ。
妹紅もだいぶ空気読むという事が何か分かってきたようで、
「ち、ちちち違う! これはその、何でもなくてだな」
ラブコメ風の、優柔不断な主人公チックのリアクションを取る。地が出ただけかもしれないが。
空気。フラグ。流れ。
そういった要素を徹底的に指導された妹紅、改めて勝負を申し込む。
「亡き父君の恥をそそぐ、よい機会だ」
まずは情に訴え、喧嘩を正当化する。流れが、妹紅側へと寄る。良い手である。
瞬間――前後を考えず突進し、軽く受け流される。
序盤に押されるのは逆転フラグ、実に堅実な流れといえる。
「……?」
クエスチョンマークを頭に浮かべる輝夜、非常に秀逸なカウンターである。
(説明せねば)
相手が自分の能力を疑問に思っている時は、得意気に解説する義務がある。
「冥土のみやげにおしえてやろう。このフジヤマヴォルケイノは……」
致命的な死亡フラグだが、能力を語らねばならない。
(やられた)
空気読むのはやはり輝夜が上、一気に形勢が変わる。
丁寧に解説されたフジヤマヴォルケイノは短所も丸わかり、そこを突けと言わんばかりである。
「フジヤマヴォルケイノは、チャージに時間がかかる……!」
大技には大体そんな欠点が有る。
ここで勝負を決めようと接近する輝夜、もはや敗北は濃厚な妹紅。
「……! ならば……!」
角度を変え、必殺の弾幕をサスペンダーで受け止める妹紅。
激しい衝撃で胸元がはだける、馬鹿には見えないブラなんて嘘に引っかかった為ノーブラ、お色気展開である。
「わわ! 見るなー!」
無理やり空気をラブコメに変え、生存フラグを立てる。
空気を読みきった、高度な戦術である。
ここから殺気立った空気に戻すには、尋常ならざる手腕が要求される。
「……えーりん!」
さじを投げた。もはやどうしようもない時は人を呼ぶ、輝夜のみ許されるギャグ展開である。
「あらあら」
微笑などしつつ二人をなだめる永琳、お姉さんキャラのみが発動できる、ほんわか和み系空気。
無理やり、勝敗をリセットさせるつもりである。
これで最悪、負けは無くなった輝夜。妹紅としては、ここで追い討ちをかけたい。
(まずは)
このふわふわした空気を壊さねば、どうしようもない。
せめてゆるい空気よりはピンクな空気のほうが可能性が有ると、段差を踏み外し、永琳の胸にぼふっとうずまる妹紅。
むにゅにゅう、と顔面が食い込む。
これで永琳が恥ずかしげな悲鳴でもあげればラブコメ展開に突入し、あわよくばギャグを絡めたバトル展開も望めるが、
「……あら。いけない子ねぇ」
ほんのり頬など染め、妖艶な笑みを浮かべる永琳。
妹紅は知らなかったのだ。
色気と等身が一定量を越える相手にお色気フラグをぶつけると、ラブコメを通り越してちょっと人には言えないような展開になる事を。
「お姉さん、はりきっちゃうわよ」
死亡フラグほか○○○、×××等、悲惨なフラグを立てた妹紅。
これにて勝敗は決した。やはり空気を読む能力は、輝夜の方が上である。
妹紅がうらやましい・・・
あ、でもそんなの関係ねぇ!!!
・・・・・・紳士的ロリコンに何を言ってるんだ俺は
取り敢えず、貴殿にはえーりんの張りきった姿でも描いていただこうか!!
しかし今まではただのコンプレックスだったものが、ペドになるとどことなく病気っぽく聞こえてくるからふしぎ!
むしろ“ペドフィリアで紳士”と呼んだ方がいいかも
これぞまさに『軒を貸して母屋を取られる』ってやつさ
こりゃ他のバトルものでも楽しめそう・・・ってここまで展開が目まぐるしいバトル他にないYO!
ロリ氏の作品には意外とロリ成分が低い事に気がついた