燭台の炎はゆらゆら揺れて、卓上の便箋を仄かに照らす。薄暗い図書館は、離れるほどに黒くなり、闇の中へと消えてゆく。そこはとても静謐で、誰もいない、私だけの世界。自分の心を開いても、何の問題もない世界。
紅茶の香りが芳ばしく、私はそれに手を伸ばした。ささやかな休息、暖かな気持ちが身体にしみたら早く続きを書きましょう。
本を書くこと、それはとても大変な事だけど、手紙を書くという苦労もまた、それに劣らない。
本が見知らぬ多くのひとへと自分の考えを伝えるものなら、手紙は誰か一人へと、自分の気持ちを伝える為のもの。それに優劣はなく、費やすべき労力もまた同じ。
だから私は心を込めて手紙を書く。
普段恥ずかしくて言葉にできないことも、文字として書くのなら不思議と素直になれる。それはきっと手紙の魔力。自分の気持ちを文字にするのには抵抗はない、それを出すとき、少しの勇気が必要なだけなのだから。
薄茶色の休息を飲み干して、私は再びペンを取る。大切な大切な友人への手紙は、あと少しで完成する。
別にレミィと話すのが嫌になったわけではない。たまには違う接し方をしたくなっただけ。
でも、それは案外に面白い。
普段の、意地っ張りな私からは考えられないほど、優しい言葉が便箋を埋めてゆく。レミィが喜ぶのを通り越して怪しむのが目に浮かぶ。
灯りにかざしてみたり、毒が仕込んでいないかと訝しんだり…爆発するのを予想して、扉の影から様子を伺っているかも知れないわね。読みたい…だけど怪しい、餌を前にした小動物ってあんな感じなのかしら?本でしか知らないけど、そんな気がするわ…まぁレミィも小動物だしね。
そうそう、想像しただけでもとても面白そう。もちろん、ただの便箋に普通のインクを使っているのだけれど。
手紙を渡したら、こっそりと見ることにしましょう。私と違って、レミィの表情はとても豊かなのだから。
だけど、この手紙には私の心が詰まっている。表情はあまりないけど、でも心の中には色々な気持ちを持っている私の手紙…散々悩んだ末、間違いなく読むであろうレミィも、きっと喜んでくれるでしょう。そして、それを見る私もきっと楽しめる。
言葉の魔術は書く者も、そして読む者も虜にする。自分の気持ちを便箋に込めて、たった一人の相手へとそのまま届けるのだから…
すっと…完成した手紙を封筒に詰め、私はもう一度紅茶を飲もうとしてそれが無いことに気がつく。空のティーカップは寂しそうに冷たくて、思わず手を放してしまった。そういえばさっき飲んでしまったのね…
また淹れましょう、そう、レミィが来るまでには時間がある。二人で紅茶を飲んでお話しをして、そして私の心を届けることにしましょう。
そんな、少し先の未来を予想しながら、私はゆっくりと立ち上がった。
咲夜の日記より抜粋
お嬢様が「歌って踊れる吸血鬼~♪」なんて言いながら厨房に乱入して、突然安来節を歌ってどじょうすくいをやりだしたらしい。厨房のどじょうは全滅した。
あの不要不急の一週間魔女に一服もられたのかと思ったが、ごく普通の手紙しか置いていなかった。成分解析の結果ただの紙と判明、謎は膨らむばかりであるが、もしかすると、幸福感のあまり一時的な精神異常をきたしたのかもしれない。
非常に悔しいが、お嬢様の看病の機会ができたので特別に許してやろうと思う。
小悪魔の日記より抜粋
パチュリーさまが魔法を文章にできる本とかを読み出していた。怪しい、何か企んでいるに違いない。
私も負けないように新しいいたずらを考えないといけない、早く資料を集めないと…
『おしまい』
紅茶の香りが芳ばしく、私はそれに手を伸ばした。ささやかな休息、暖かな気持ちが身体にしみたら早く続きを書きましょう。
本を書くこと、それはとても大変な事だけど、手紙を書くという苦労もまた、それに劣らない。
本が見知らぬ多くのひとへと自分の考えを伝えるものなら、手紙は誰か一人へと、自分の気持ちを伝える為のもの。それに優劣はなく、費やすべき労力もまた同じ。
だから私は心を込めて手紙を書く。
普段恥ずかしくて言葉にできないことも、文字として書くのなら不思議と素直になれる。それはきっと手紙の魔力。自分の気持ちを文字にするのには抵抗はない、それを出すとき、少しの勇気が必要なだけなのだから。
薄茶色の休息を飲み干して、私は再びペンを取る。大切な大切な友人への手紙は、あと少しで完成する。
別にレミィと話すのが嫌になったわけではない。たまには違う接し方をしたくなっただけ。
でも、それは案外に面白い。
普段の、意地っ張りな私からは考えられないほど、優しい言葉が便箋を埋めてゆく。レミィが喜ぶのを通り越して怪しむのが目に浮かぶ。
灯りにかざしてみたり、毒が仕込んでいないかと訝しんだり…爆発するのを予想して、扉の影から様子を伺っているかも知れないわね。読みたい…だけど怪しい、餌を前にした小動物ってあんな感じなのかしら?本でしか知らないけど、そんな気がするわ…まぁレミィも小動物だしね。
そうそう、想像しただけでもとても面白そう。もちろん、ただの便箋に普通のインクを使っているのだけれど。
手紙を渡したら、こっそりと見ることにしましょう。私と違って、レミィの表情はとても豊かなのだから。
だけど、この手紙には私の心が詰まっている。表情はあまりないけど、でも心の中には色々な気持ちを持っている私の手紙…散々悩んだ末、間違いなく読むであろうレミィも、きっと喜んでくれるでしょう。そして、それを見る私もきっと楽しめる。
言葉の魔術は書く者も、そして読む者も虜にする。自分の気持ちを便箋に込めて、たった一人の相手へとそのまま届けるのだから…
すっと…完成した手紙を封筒に詰め、私はもう一度紅茶を飲もうとしてそれが無いことに気がつく。空のティーカップは寂しそうに冷たくて、思わず手を放してしまった。そういえばさっき飲んでしまったのね…
また淹れましょう、そう、レミィが来るまでには時間がある。二人で紅茶を飲んでお話しをして、そして私の心を届けることにしましょう。
そんな、少し先の未来を予想しながら、私はゆっくりと立ち上がった。
咲夜の日記より抜粋
お嬢様が「歌って踊れる吸血鬼~♪」なんて言いながら厨房に乱入して、突然安来節を歌ってどじょうすくいをやりだしたらしい。厨房のどじょうは全滅した。
あの不要不急の一週間魔女に一服もられたのかと思ったが、ごく普通の手紙しか置いていなかった。成分解析の結果ただの紙と判明、謎は膨らむばかりであるが、もしかすると、幸福感のあまり一時的な精神異常をきたしたのかもしれない。
非常に悔しいが、お嬢様の看病の機会ができたので特別に許してやろうと思う。
小悪魔の日記より抜粋
パチュリーさまが魔法を文章にできる本とかを読み出していた。怪しい、何か企んでいるに違いない。
私も負けないように新しいいたずらを考えないといけない、早く資料を集めないと…
『おしまい』
しかも看病が必要とかパッチェさん、あんたどんだけ苛めてるんだよwww