Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

Each of Life

2007/10/22 01:46:52
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人間が十進法を用い始めた事など私にとっては至極どうでもいい事なのであって何の因果も持っていない。
何故なら私は妖怪だから。元は人間だったのかも知れないけれど今となっては最早気にも留めていない事柄だ。
ちなみに冒頭の言葉には特に意味は無い。

最近人間と関わりを持つ様になってからふと疑問に思った事があった。
言っておくが、いつも「そうなのかー」とか「わはー」と言っているつもりではない。
私だって考え事をする時はある。
してそのお題とは、何故妖怪は人間を食すのかという事だ。
妖怪と言っても別に偏食家でも無い限り、基本は肉、魚、野菜、エトセトラ……割と雑食でもある。
勿論人間を食べていかなくても生きていける筈なのだ。
だがしかし宵闇の妖怪であり、夜行性とも言えるこの私が夜空を駆ければ、時々眼下には人間の死肉に群がる妖怪達が必死に筋肉を貪っている光景を目の当たりにすることも何度かあった。
では何故妖怪は人間を襲い、食らうのか。
前々はそんな事など瑣末な問題とも思わなかったのだが、ここ最近霊夢やら魔理沙やらと親しくなっているせいかどうにも人間という生き物を食べ物として見難くなっていることは事実だった。
何故と聞いているけれど人間を食べている妖怪にも理由は各々あるのだろう。
恐怖に慄く姿を見るのが楽しいから、とか。
人間の肉は美味い事でとても有名だから、とか。
それが妖怪の本分だから、とか。
まぁ、妖怪なのだし、理由と言ってもそんな単純なものだろう。
しかし、結局のところそれらは私が求めている答えには程遠かった。
恐怖に慄く姿を見るだけなら、その辺の小動物でも脅かして嗜虐心を勝手にそそればいい。
人間の肉が美味い事は私も確かに認めるが、それ以上に美味い食べ物などこの世にごまんとある筈。 人間の血はベトベトしてて食べにくいし。
妖怪の本分と言っても、世の中には色々な妖怪がいるものでただ只管に人間を食べる事が本分という訳でもない。
これらの例は全て欺瞞という訳なのだ。

別に人間に情が移ったわけでもない。
人間の目線から考えれば確かに「妖怪は人を食う」というイメージや先入観が流布していることだろう。
いや、或いは実際にその現場を目撃してそういった噂が流れ始めたのかも知れない。
人の噂は七十五日と言うが七十五日を過ぎる前に村人がいなくなると、また村人が一人妖怪に食われたという噂を運ぶのだから噂が絶えることも無い。
中には自分の両親、子供、伴侶や友人。食われた者にも人と人との繋がりは無い筈も無く、食われたことに対して、何故妖怪は人間を食わなければいけないか。と嘆いた人も数多いと思う。 私は妖怪だけど。
それでも私が思う疑問はそういった疑問ではなく、ただ純粋に何故私達妖怪は人間を食べる能力を持ったのか。
『妖怪=人間を食べる』といった方程式が当たり前に成り立っていた私にとってそれは大きな疑問となった。
妖怪である私がそういった疑問を感じている時点で変わった妖怪だとも思っている。
霊夢や魔理沙と会う前までは人間は食料だと感じていた訳だし。
それが、彼女等と友人、知人といった間柄になってからは時々こう言う事をふと思い当る事がある。
彼女等を食べたくないと言ったことから思う事もあるのかも知れない。

余談だが、私の力は闇を操る程度の力と大仰にして言っているが、ただ自らの周りの光を遮断する程度にしかない。
それ故、私の実力が彼女等の到底足元にも及ばない事を自覚している。なので、私が彼女達を食べようとしても食べれないというのが現実であるが。
って、ああもう、私が言いたいことはそういう事ではない。何だったっけ。
あー……つまりは、私は何故妖怪が人間を食すのかが気になってしょうがなかったのだ。



そんなことを考えながら空を飛んでいた私は、同じようにたまたま宙に浮いていた魔理沙にその事を話した。
人間に妖怪のこういった気持ちを伝える事事態が皮肉なものであったが多分私は誰かに私の考えを聞いて欲しかったんだと思う。それでその疑問が解決されるかどうかは兎も角として。
私は彼女にその旨を話す。

「―というわけなんだけれども…」
「………くかー」
「って、こら、寝るな。折角暇そうに漂っていたから相談しているのに」
「私には何で相談している方が偉そうなのか甚だ疑問なんだけどな……くかー」
「いや、だからもうそれはいいから」

私の話に退屈したのか、寝そべった彼女を起こしながらも、むーと唸る。
このまま襲いかかろうかとも思ったが、残念ながら撃退されるのがオチなので唸るだけにしておく。
そんな私の様子を見て彼女は分かった分かったと反省の色も無しに言ってのける。
まぁ、それが彼女の性格だという事は初めて出会った時から知ってはいたけれど。
彼女は顎に手を当てて、所謂考えるポーズを取りながら暫しの間考え込むように低い唸り声を上げる。
やがて納得のいく答えが頭に浮かんだのかやけに自信があると言ったような表情をしながら私にこう言った。

「そりゃあ…妖怪にとって人間は貴重な食糧だし食いたい時だってあるだろ。例えばほら、いつもお茶漬けばっかり食ってるとたまに卵掛けご飯が食べたくなる様な…そんな感じじゃないのか」

彼女の例は分かりにくいものだったが、現実味を帯びていたので私は一応うんと頷く。うん。うん?
この辺は彼女の性格やら育ちやらが関わってきているのだろう。
普段食べている物だけだと飽きてきてしまうので、たまに別の物を食べたくなるだろう?
そう言っていると私は勝手に解釈した。

「もしかしたらだけど、お前、人間を食わなくなったから自分がおかしくなっちまったって思っているんじゃないだろうな?」

彼女の一言は若干的を射ていたものだったので思わず彼女の髪と同じ金色の髪を居心地が悪いかのように掻く。
人間を食べなくなったというのは違っていたがそれでも食べる頻度が少なくなっていたのは事実だし、誰彼構わず食べているわけでもなかった。
勿論、妖怪である自分が人間を食べる事を疑問に思う事は果たしてどうなのだろうかと思う事もあったこともまた事実である。
彼女は私がたじろぐのを見て図星だと悟ったのか僅かに口角を上げる。彼女は続けて言った。

「それだったなら、別にいいんじゃないか?お前が思ったように生きれば。人間を食わずに生きれるならそれでいいし、人間を食いたくなったら食えばいいし。憎まれる事はあっても、それを咎められることは無いんだし。あ、私は食われるのはご免だけどな」

何て冗談を言いながら朗らかに笑っていた。
私が求めていた答えとは違ってはいたが、だいぶ真理に近づいていた。そんな感じがした。
だから私は彼女、魔理沙にこう尋ねたのだ。

「ねぇ、じゃあ魔理沙は自分が何の為に生きてるかって考えた事ってある?」

私がそう質問すると魔理沙は一瞬狼狽するも質問の意図を理解すると、

「決まってるだろ」

迷いも無くこう言ったのだ。

「魔法使いとして生きる為、だぜ」

彼女は今までにない位に一番顔を輝かせていたと言っても過言ではなかった表情だったと思う。
その笑顔からは自由奔放に生きる彼女の生き方を垣間見たような気がした。
その時私は、人間の身でありながらも魔法使いとして生きる彼女に僅かながら羨望の情を抱いた。
今度は霊夢に同じ質問をしてみようかな。
霊夢だったら面倒臭がりながらも、生き方や言い回しは違うにしても、似たような答えが返ってくるんだろうなと思いながら。



それから私は前みたいに何故妖怪は人間を食べないといけないのか、とか、果たして自分は本当に妖怪として生きているのだろうか、などとは思わなくなっていた。
魔理沙が言っていた言葉は今でも私の心の中にあってそれからは彼女の言うとおり自由に生きる事にしている。
人間と楽しく喋る事も然り、人間を食べることも然り。
だから私は出会った人間に対して必ずこう告げるのだ。

「ねぇ、あなたは食べてもいい人類?」
初投稿です。
何となく幼いルーミアじゃなくって大人っぽいルーミアを書いてみたかった。
反省はしていない。

追伸 10月22日19時頃
誤字報告多謝です。
ごめんなさい、次に投稿する機会がありましたら誤字が無いよう気を付けて投稿しますね。
コメント



1.名無し妖怪削除
実は頭がよいルーミアというのは好物なので何の問題もないというかグッジョブです。
>痴虐心
嗜虐心では?
2.T.S削除
誤字変更致しましたー
報告感謝です。

感想ありがとうございます。
私も頭のいいルーミアが好きですよ。
幼いルーミアよりはこっちの方が原作寄りな感じがするので。
にしても、これはやり過ぎた感が否めないのですが(苦笑)
3.ノットマン削除
人間である魔理沙をもってして「人間を食いたくなったら食えばいい」と言い切ってしまえる辺り、幻想郷が決して単なる理想郷ではないと知らしめてくれます。
確かに幼いルーミアより、それなりに知性のある方が原作寄りの気がするなぁ。

>彼女の髪を同じ金色の髪を
彼女の髪と同じ金色の髪をでは?
4.削除
あぁ、なんかこう、幻想郷らしくて、すごくいい。
言葉では上手く言い表せないけど、確かに胸を打つものがあった。
こういう作品、好きですよ