危ない奴等がかっぽかっぽ

※くどいので、飽きたら最後から二段落目にホップステップジャンプ・・・かーるいす！






私に話を聞きたい？
いやいや、私の持つ知識など大した物ではありませんよ。知れば知るほど知らぬことが増えるばかりで。
それでも、私のそれが貴方の問い掛けの参考になると言うのであれば喜んで協力いたしましょう。
どのような物でも構いませぬよ。あらゆる問い掛けは私の糧となりますからな。


ふむ、時を止め空間を繰る人間と？
言葉にするのは簡単ですが、時を止めることに限定しても、この宇宙すべてに対して干渉するとも言える力ですな。
かつて世界を恐怖に陥れようとした吸血鬼が全力をもってしても実時間にして10秒程度止めるのが限界だったと聞き及んでいます。
人の身でありながらそれを行使し、なお空間まで繰るというのは想像の産物としてもいささか度が過ぎているかと。
物の怪の類と考えるならまだ共感が得られると思いますが。


次は賢者の石を多量に精製できる魔女ですか……成るほど、物語などを綴ろうとお考えですか。
賢者の石と呼ばれるものには諸説ありますが、共通することは常識を超えた力を持つモノであり、極めて稀少な存在であるということですな。
説によっては生成には多大な犠牲を伴うなどというものもあり、仰られるように札1枚を媒介とするだけで
数個のそれが生成できるというのは無理があるように思えます。
そのような魔女を登場させるにしても、もう少し考慮をしてもよいかと愚考しますな。


運命を操る吸血鬼。
運命を操るということ自体が曖昧な概念ですな。
そうですな…例えば未来日記なるものが在るとして、他人のそれを閲覧・変更できるとでも言いますか。
それは文字通りすべてを支配することに他なりません。
強大な力は大概の場合において相応の代償を払うもの。
その意味では、力と引き換えに日光に代表される数多の弱点をもつ吸血鬼にそのような能力を持たせるのは
悪くない話でしょうな。
………日傘を持てば太陽の下で活動できると？
最大級の弱点すらそのような単純なことで対処できてしまうのであれば、その存在自体が暴君となりえます。
主人公にするにしても、敵役にするにしても力が大きすぎ、脇役にしても存在感が強すぎます。
非常に扱いづらいジョーカー的な存在になるのではないでしょうかな。


すべてを破壊しうる吸血鬼ですか。
すべてとはまた曖昧ですが、物理的なものに限らず概念や定理なども破壊できるのであればこれほど恐ろしい存在もないでしょう。
そうですな、例えば１＋１＝２というごく簡単な定理を破壊した場合、すべての者は数を数えることが出来なくなります。
物理的な破壊よりもこういった破壊の方がよほど恐ろしい。
それを為せるのであれば、数多の物の怪、悪魔など取るに足らない者と成り下がるでしょう。
ふむ、先ほどの運命を操る吸血鬼とあわせて考えるのであれば、両者を戦わせるといった話は在りうるでしょうな。
いささか尺が大きい感じではありますが。
なんと、二人は姉妹？
う…むぅ。
申し訳ない、てっきり戦物だとばかり思っておりました。
ははは、私もまだまだ未熟ですな。


何、まだまだあると仰られますか。
興味深い。
貴方の想像力が如何程のものか、是非教えていただきたいです。


次は小間使いとなった九尾と。
九尾といえばかつて大陸を意のままに蹂躙した大妖怪ですな。
ただの妖狐ですら特A級という位置づけがされる中、九つもの尾を持つ妖怪の力は想像を絶するでしょう。
そのような存在を小間使い。
強大なものを屈服させるというのはある種のカタルシスを呼び起こしますが、そのような地位へ押しやられた
九尾の心などは想像のし甲斐がありますな。
…おや、私は何か変なことを申しましたか？
いえ、貴方から随分と楽しそうな、それもいたずらが成功したときの子供のような雰囲気を感じたものですから。
それにしても、九尾を遣うとはなんとも恐ろしい存在です。
果たしてどれほどの力を持っているのやら。


さて、お次は…かぐや姫には八意思兼神が部下としてついていたと仰られますか。
これまた想像だにしなかった説です。
ふむ…翁、嫗がたちまち富を得たこと、かぐや姫が数多の貴族の心を掴んだ事、当時最高方の警備をもってしても防げなかったかぐや姫の帰還など、影から智を授けた者がいると考えるのはそこまで荒唐無稽な説とは思えませんな。
貴方の意図まではわかりませぬが、ひとつの考え方としては納得に足りうるものがあります。
いやはや、その想像力には感服せざるをえません。
何、先ほどの私の考えなど、足がかりがなければ僅かな欠片すらつかめなかったものですよ。
貴方の説あってこそのものです。
しかし、絶世の美女に智の神の組み合わせとなれば、武ではなく智の力でもって国を支配することすら出来るのでしょうな。


最後ですか。
ええ、諏訪大明神なら存じております。
大国主との争いに敗れ諏訪の地に逃れたとも、土着神の統率とも言われる神ですな。
ほほぅ、実は諏訪大明神は一柱ではなく二柱であり、先ほど私が述べたことはそれぞれ別の神を指していると？
なるほど、確かにそれならば二つの説が存在するのも、出雲大社からの侵攻もなく諏訪の地で栄えたと言う事にも説明がつきますな。その二柱なら、国津神たちにも引けをとりますまい。
して、貴方の考えの中ではその二柱はどのような…一勢力に過ぎないのですか？
いったい貴方はどのような物語を綴ろうとしておられるのか…。






なるほど、合点がいきました。
貴方は神々の黄昏のような物を綴ろうとされているのですね。
確かにどの者も世界に多大な影響を与えうる者たち。
彼らが一堂に会すれば争いは避けられぬでしょう。
天は割れ、地は裂け……いや、私の言葉では語れぬような物になるのでしょう。
私には僅かに想像することしか出来ませぬが……ぬ、また私は何かおかしなことを申しましたかな？
何と？
さらに鬼、天狗、亡霊に閻魔まで加え、その上で彼らが仲良く共存していると？
………
くっ……はっはっははははははは。
いやいや、参りました。
完敗です。
あれだけの情報を得てなお想像がつかない世界です。
ええ、今現在も全く想像がつきませぬ。
貴方のことです、きっと表面上の友好などというものではなく、本当に彼らが仲良くやっている世界を想像できているのでしょう。
決して短くない時を歩んできたつもりですが、まだまだ想像の及ばない世界などあるものですね。
歴史を鑑みても、力あるものが集った時は常に争いが付きまとっていたものですが、全く、人の想像力とは恐ろしくも素晴らしいものです。
……ふむ、仮にそのような世界が存在したとですか？
もちろん興味は有りますが、同時に恐ろしくもあります。
この年になろうと、見えないモノはやはり恐いのですよ。
それに、そのような世界が存在しても私にはたどり着けないでしょう。
全く想像がつかない場所に到達するのは至難、を超えた難しさでしょうからな。
いえ、決して残念とは思いませんよ。
むしろ、そのような世界を思い描く楽しみが出来たと考えられますから。


おや、お帰りになられますか。
いえいえ、こちらこそ想像以上に楽しい時間を過ごさせて頂きました。
また機会がありましたら貴方のお話を伺いたいものです。
ええ、それではお気をつけて。異国のお嬢さん。

バランスクラッシャーレベルの能力持ってる者があちこちたむろしているのに、なぜか思いっきり平和。
幻想郷ってそういうところですね。