博麗 霊夢
博麗神社の巫女として幻想郷の平和を守っているフリをし続けていた霊夢。
魔理沙だけではなく咲夜というライバルの登場により、
ますます出番が少なくなっていく。
「えっ?また異変?・・・お金にならないのに」
しぶしぶ春雪異変解決に向かった彼女だったが、
既に到着した頃には全て解決した後であり、
何の為に冥界まできたか解らない有様であった。
異変解決後は特にする事も無く、平和な日常を送っていたが、
ある日、重大な事件が博麗神社を脅かす。
「参拝客が・・・来ないっ」
いつもの事である。
「じゃなくて、食料が無いっ」
数日家を留守にしていた間に、
備蓄していた食糧が全て消え去っていたのだ。
霊夢の新たな冒険が今、始まる。
霧雨 魔理沙
今回の異変解決の主軸として頭角を現し始めた魔理沙。
ある日、紫から宴会の幹事を頼まれ、
「集まりやすいし」という事で勝手に会場を博麗神社に決めてしまう。
うっかりアリスを誘い忘れてしまうが、特に気にせず盛り上がる面々。
しかし、そんな中問題が発生する。
宴会のメンバーであるレティと幽々子が会場を抜け出し、
勝手に備蓄庫の食料に手を出し始めたのだ。
居ない事に気づき魔理沙が向かった頃には既に手遅れであり、
元々雀の涙程度だった博麗神社の備蓄は空になってしまった。
「え、えーっと・・・見なかったことにするぜ」
宴会が終わった後に証拠隠滅をし、
何事も無かったかのように立ち去ってしまう魔理沙。
閻魔帳に窃盗以外の罪状がついた瞬間である。
十六夜 咲夜
紅魔館の顔として影ながらレミリアを支え続けた咲夜。
なんとか苦労をしながら、
無い胸を寄せてみたりして少しでも大きくしようとしていたが、
やはり無い物は無い為無駄な努力になってしまう。
そんな彼女にある日、聞き捨てならない台詞が耳に入る。
「あら、レミィ、最近少し胸が大きくなったんじゃない?」
「解るパチェ?
実はそうなのよ。あっても邪魔なだけなんだけど・・・
なんとかなくならせる魔法とかないものかしらね」
「私も最近何故か出てきてて・・・
太ったわけじゃないんだけど、肩も凝るし動きにくいし。
そういう魔法作れないか考えてみるわ」
「・・・・・・・・・」
その後レミリア達がどうなったかは言うまでもない。
チルノ
氷の妖精として蛙を凍らせることに使命感を燃やしていたチルノ。
次々と蛙を氷漬けにしていた日々を送っていたが、
そんな彼女に人生を大きく変えるチャンスが訪れる。
「あっ、また蛙発見っ。こおれーっ」
「待ってくれ妖精さん、実は僕は悪い薬剤師の薬で蛙に変えられた半妖なんだ。
どうか僕に真実の愛を教」
「パーフェクトフリーズッ」
主に彼のチャンスが潰えた。
レティ=ホワイトロック
冬の妖怪として幻想郷のあらゆる場所をふとましく闊歩していたレティ。
春の訪れと共に次の冬までの間、
どこかへと身を潜ませたかのように見せた彼女だが、
何故か彼女は博麗神社に居た。
「ちょっと・・・なんであんたこんな所にいるのよ?」
「なんでって言われても・・・なんだかここが居心地良くて」
「それ迷惑だから・・・寒いし、おかげで参拝客来ないし」
いつもの事である。
「あ、そっか、解ったわ。
家計が圧迫されててお財布が寒いからこんなに居心地が良」
夢想封印されてしまい、以降彼女が幻想郷に現れる事は無くなった。
橙
八雲一家の一人として藍に可愛がられていた橙。
ある日うっかりまたたびを食べてしまい、大いに酔っ払い藍に絡む。
「こ、こら橙やめないかっ
し、尻尾は・・・わふんっ」
「ほらほらー、藍様も尻尾が弱いんですよねー
それから耳もぉー・・・ふぅっ」
「ひ・・・ひゃ・・・あふあふ・・・」
「あらあら、仲が良いわねー」
「紫様っ、見てないで助けてくださ・・・あぁぁぁ~っ!?」
この話は紫を通して稗田家に伝わり、猫かぶりという言葉の語源となった。
アリス=マーガトロイド
今日も誰も来なかった。
寂しさを紛らわす為に作り続けていた人形が100体を超えた。
明日はきっと誰か来るかな。
・・・くすん。
リリーホワイト
「春ですよーっ」
春の到来と共に訪れる妖精・リリーホワイト。
花好きな女の子や小さな子供に人気のある彼女だが、
最近全く違う人種から好かれて困っている。
「わ、ワシにも春をくだされーっ
もう一度あの燃えるような恋を、かむばーっく!!」
「し、師匠っ、こんな所で何やってるんですかっ!?」
魂魄家は今日も賑やかです。
プリズムリバー三姉妹
それぞれの楽器にて様々な場所でライブを繰り広げる三姉妹。
白玉楼のバックアップもあり、幻想郷では知らない者の居ないビッグバンドとなる。
そんな中、彼女達に新規ボーカリストを採用してはどうかと打診が掛かる。
ボーカル候補生は三名。
夜間しか歌えないが優秀なボーカルのミスティア。
超熟練俄演歌歌手の紫。
そして最後はまさかのエントリー、恐怖のジャイアニスト霊夢である。
激しい弾幕協議の結果、姉妹は三人一致でミスティアを採用することに。
しかし初ライブの夜、事件が起きてしまう。
「目がっ、目がみえねぇぇぇぇっ」
「な、なんなんだこの歌声・・・辺りがどんどん暗く・・・」
「ふぉ、ふぉーっ!?ルナサ殿―っ
この老いぼれに姿をみせてくだされーっ」
ミスティアの歌を聴いた人間の客が、次々と鳥目になってしまったのだ。
ついでにご隠居も。
「ど、どうしようこれ・・・」
「あははっ、まぁいいんじゃなーい?新鮮でたのしーっ」
「今の隙にお客の懐からお財布をちょっとだけ拝借して・・・」
「いやリリカ、それ犯罪だから」
「えー」
「~~~♪」
あんまり気にしない姉妹二人とミスティア。
このままでは人気が低下してしまう―――
困り果てたルナサは、考えに考えた末2分で結論を出す。
「そうだ、八目鰻を売ろう」
後の土用の丑の日である。
魂魄 妖夢
冥界・西行寺家の庭師兼剣術指南として幽々子に仕えていた妖夢。
異変解決後も幽々子に尽くしていた彼女だが、
悩みも増えてしまうことになる。
「あ、あのー・・・」
「あらお仕事ご苦労様妖夢。
今日のば・ん・ご・は・んは妖夢の大好きなハクタクカレーよ~」
「いやそんなの好きじゃないっていうか食べたこと無いですから私っ」
家事担当の幽霊を異変時に(ボムの巻き添えで)成仏させられてしまい、
普段全く料理をしなかった幽々子が作るようになってしまったのだ。
「え~、折角美味しく出来たのに」
作る本人は苦労した分美味しく感じるものである。
「残すとCavedされちゃうわよ?ほら睨んでる」
「あ、あの幽々子様・・・それ、まだ生きてますよね・・・?」
「それはもう。当たり前じゃない。活きが良いわよ~」
鮮度抜群である。
「すごく怒ってるようなんですが・・・」
「妖夢が食べてあげないからよ。食べ物の恨みは怖いって言うし」
「え?わ、私の所為ですかっ!?」
「お・・・」
「「え?」」
「お前達の霊魂など無かったことにしてやるぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
「みょぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
「あらあらあら・・・」
後日、重傷者が一名、永遠亭に搬送されたという。
西行寺 幽々子
冥界の名家・西行寺家の主人として冥界を治め続けてきた幽々子。
異変解決後は妖夢をからかったりしながらまったりと過ごしていた。
しかし、そんな平穏は予想外の出来事によって打ち崩される。
「おー、これが有名な西行寺家の桜かー」
「おーい早く酒もってこいよ酒―」
「あ、そこのお姉ちゃん、何かつまみもってきてっ」
「シャンハーイ」
「ホウラーイ」
冥界と現世との境界が曖昧になった事により、
現世から大勢の人間が観光で来るようになってしまったのだ。
当初は賑やかになるのを歓迎し、庭の一部を解放した幽々子だったが、
花見後にゴミを不法投棄する客が増え、かつての景観が著しく損なわれてしまうようになる。
「こ、困ったわね~」
流石に困り果てた幽々子。
大事に育てた桜が酔った鬼に幹ごと折られたのを目の当たりにし、
今にも斬り込まんとしている妖夢を抑えながら考えた幽々子は、
とんでもない方法を思いついてしまった。
「皆幽霊になれば私の支配下♪」
「ちょっ、幽々子様!?それは流石に大事になってしまいますよ!?」
斬り込もうとしていたのも忘れ、必死に止めにかかる妖夢。
「え~い、ぎゃすとりどりーむ~」
「だ、だめですよーっ!!」
「あっ・・・」
後日、弾幕をまともに受けた妖夢が永遠亭に搬送されたのは幽々子以外は誰も知らないことである。
八雲 藍
八雲一家の一員として紫、橙と共に悠久の時を過ごしていた藍。
その後しばらくして紫が冬眠に入ってしまったのでする事も無く、平穏に暮らすことになる。
そんなある年の冬。
マヨイガにも雪が積もり、家の外で歓喜する藍。
「ほぉらっ、橙っ、雪だぞ雪っ、ひゃっほー」
と、寒くてこたつで丸くなる橙。
「・・・寒い、寒いよぅ・・・藍様、私おこたの中で良いです・・・」
「そ、そうか・・・?」
しょんぼりしながら、しぶしぶ藍もコタツに入る事に。
食事中も同じだった。
「はふはふ・・・雑煮美味しいな・・・
ん?どうした橙、早く食べないと餅が溶けてしまうぞ?」
「あぅー・・・私猫舌だもん・・・食べられないもん・・・」
「あっ・・・そ、そうだったな、すまなかった・・・」
「くすん」
寝るときまで。
「じー」
「・・・うぅ」
「ど、どうしたんだ橙?」
「藍様ぁ、目を見られてるとなんだか嫌なの・・・」
「え?いや、ちゃんと寝られてるかなって気になったんだが・・・」
「うぅ・・・余計に寝にくいよぉ」
「そ、そうか・・・」
後日。博麗神社にて。
「あら紫の所の式神じゃない。何か用?因みに賽銭箱はそこよ」
「あ、あの・・・育児で相談を・・・」
「帰れ」
あっさり追い返された藍。
すぐに帰るのも気が引け、路頭に迷っていたのを、いつまでも戻らない藍を心配し、
探しにきた橙に見つけられ仲直りしハッピーエンドになったのだが、
それはまた別の話である。
八雲 紫
境界の妖怪として幻想郷を影から支えていた紫。
異変解決後は特にする事も無く退屈なので、また騒ぎを起こそうと企むが、
そんな彼女を止めんと一陣の風が吹く。
「この上また騒ぎを起こそうと言うなら、ワシを退けてからやりなされ」
ご隠居である。
「あら、随分と強気じゃない。私に勝てると思っているのかしら?」
(えっ、あれ、この人こんなにかっこよかったかしら・・・
わ、私どうかしてる・・・?)
「ふっ、西行寺家元剣術指南の腕前、その身で味わいなさるか?」
(面と向かうのは初めてだが・・・なんと・・・美しいっ!!)
「ふ、ふふふ・・・面白いわ。でもやめておいてあげますわ。
ご老人をいじめるのは趣味じゃありませんの」
(こんなかっこいい人攻撃できないわ。ここは退かないと)
「をゃ、恐れをなしたかな。何、それも仕方ない事じゃて」
(抜かった・・・この妖忌。戦場で戦いを忘れたわっ)
「あら、その物言い・・・ちょっと納得行きませんわね。気が変わったわ」
(そ、そんな・・・どうしたら・・・私そんなつもりじゃ)
「くくくくくっ、ならばこの刀の錆びになるが良いっ」
(む、むぉ・・・かっこよく啖呵を切ったは良いが、
鞘に入ってるの竹光じゃったぁぁぁぁっ!?
どうするんだワシっ!?)
妖忌の手元には
諦める・とりあえず脱ぐ・覚悟を決める・もっこもこにされてやんよ!!
と四枚のカードが。
「くっ、これだっ」
迷いを断つ為目を瞑り引く手に持ったのは・・・
「・・・覚悟を決める」
まさに当たりである。
「えっ?」
「ゆ、紫殿っ!!」
これも天命と、意を決し紫に詰め寄り手を伸ばす妖忌。
「えっ?きゃっ」
つい反射で自分の空間に逃げ込んでしまう紫。
妖忌は勢いを殺せぬまま直進してしまう。
そして
「ぐわっ」
「ぶぁっ」
勢いのままぶつかり合う唇と唇。
「・・・あら?」
「むぉ・・・なんと柔らかな・・・」
直後紫に見えたのは、
自分の居た場所の丁度後ろに何故か居た眼鏡男と妖忌が、
むちゅーっとディープなアレをしている所だった。
「は、はなせーっ
やっと蛙から元に戻れたのに今度は何の罰ゲームなんだぁっ」
「ふぉーっ、もう少しっ、もう少しだけっ、ワシに春をーっ」
「・・・・・・」
千年の恋も一瞬で冷めた瞬間である。
「・・・・・・寝よう」
その後数十年、紫が冬眠から覚めることはなかった。
平和の訪れである。
(終)
永夜抄編も頑張ってください。
次作も期待してます
次回は主役だから。