朝一番、台所へ向かうと姫が顔に白いドロドロを付着させて涙目。そんな日もある。
基本的に何でも受け入れるあらあらうふふな永琳。
ちょっと変な事考えて興奮しつつも輝夜の顔など拭き、しげしげと観察する。
(卵の白身ね……)
電子レンジと生卵の相性はトム&ジェリー並み、プチ核融合が戦術レベルの爆発を引き起こす、と月の兵法書にも記されている。
「因幡が……! 因幡の言う通りに料理したらこうなったのよ!」
(てゐだな)
的確に状況を把握し、てゐのおでこにめっ! しつつ流れ作業でレンジを掃除。
床に飛散した卵を拭き取るや否や、玉ねぎに斬撃を加える。
刹那――パック底に残留していた卵と掻き混ぜ、ご飯と醤油をベースに炒めること、風の如く。
待つこと林の如く、つまみ食いするてゐを叱ること火の如く。
ぐずる輝夜を包み込む胸元、山の如くなり。
「炒飯できたわよー」
まさしく天才である。
「師匠はお母さんすぎます」
よく分からない毒人形を拾ってきて、話し相手になってあげたり。
冒頭で電子レンジなど、近代的な言葉が出てきてもスルーしてあげたり。
今だって頼んでもいないのに、膝枕で耳掃除などうひゃあそこくすぐったい!
「次、左耳掃除するから頭の向き変えて」
上手い人に耳掃除されてる時特有の、ぞわぞわ感を後頭部に感じつつうどんげは思った。
(自分がどんどんダメになっていく気がする)
このままじゃマズイ、永遠亭全体が師匠におんぶに抱っこ。
この状況は、師匠にとっても自分達にとっても、良くない気がする。
「師匠」
明日からは、己が母性と決別し、我らを火中に放り込む覚悟で!
――こくり。
微笑などしつつ、ゆっくり永琳は頷いた。
可愛い子には旅をさせよ、こんな言葉思いついた奴は異常者、愚痴りつつ輝夜を見送る。
初めてのおつかい。姫は方向音痴ゆえ、迷子になるかもしれない。かわいいから、イタズラされるかもしれない。
心配の種は尽きない……そうだ! こっそり後をつけていこう、なんて思った矢先、
「不死身だから大丈夫じゃないっスか?」
冷たい突っ込みで我に帰る。
――てゐだ。アナタの血は何色よ、問いただしたい衝動に駆られ食卓へ駆け寄る永琳。
瞬間――視界に入る、ちっちゃな右手、明らかに間違えた持ち方のお箸、食べこぼしだらけの座布団。
てゐの脅威はその毒舌にあらず、あどけない所作にある。
(く……! 正しい箸の持ち方を教えてあげたい……!)
できればアーンしてあげたい。
沸々と湧き上がる母性が、身を焦がす程に苦しい。
(助けてうどんげ……!)
愛弟子に目を向ける。
なにやらネクタイを上手く結べないらしく、すがる様な目でこちらを見てきた。
言いだしっぺのくせにずば抜けて甘えん坊。
(目の毒すぎる……!)
ここはダメだ、手のかかる人が多すぎる、こんなトコにいたらお世話したくなっちゃう……!
湖があった。
妖精がいた。遊び場にしている。
つまり、永琳の緊急避難場所としては、最悪であった。
年端もいかぬ少女達の泥まみれになって遊ぶ様は、母性本能を引きずり出してくすぐり尽くしたあげく、頬ずりする様な、つまり――
(お、お洗濯してあげたい……!)
子守とお洗濯を心から愛する永琳にとって、この上ない誘惑である。
逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ……。
今すぐこの場から離れなくては母性が噴出する、間違いなく視界に入る全員を甲斐甲斐しくお世話してしまう……。
「――」
一瞬、視線が交差した。顔立ち自体は整っているが、お世辞にもお若いですわね、とは言えない雰囲気の女性であった。
助かった、こんな近くに年増がいた。
子供の対極にいる属性、オバサうわちょなにを何をする、そう、手がかかりそうにないお姉さん。
そういう人種を見ると永琳の母性は引っ込む。
――鏡見ればいいじゃ(ry
永琳は自分を年増とは思わない、若い子には負けないもん、色々葛藤しながらもその女性を凝視する。
凝視する。行水しようとしてる。
「ちょ」
何を思ったか、その女性は手にしていた日傘を岩場に立てかけ、裾をまくって湖へと向かう。
アレだ、我慢できなくなったんだ、周囲でキャッキャと遊ぶ妖精を見て、自分も水遊びしたくなったに違いない。
ちゃぽんと足を水面に入れた瞬間、ゴトンと音を立てて日傘が倒れた。
適当に立てかけておくからこうなる、物音に反応したその女性はビクッといい反応をし、こけた。
顔だけは水面にボチャンと飛び込み、不自然な姿勢になったせいで胸元が破れた。
成熟しきった豊満な肉体と、子供じみた所作のアンバランスな組み合わせが生み出す悲劇。
(ゴメンもう無理)
こんな手のかかる人を見せつけられたら、もうお世話するしかないじゃないか。
すぐさま駆け寄り痛いの痛いの飛んでいけ、擦りむいた膝を手当てしつつ、胸元を繕って家まで送る事にした。
もはや一人歩きし始めた母性を止められる筈もなく、おんぶに子守唄まで披露する尽くしっぷり。
吹っ切れた永琳は――凄くいい顔をしていた。
それよりも、ゆかりんのお世話したい!
取り敢えず、ネクタイ結べないウドンゲと、転んだゆかりんに萌え尽きました。
俺も永琳にめっ!されたい・・・
母性溢れる永琳にやられた。
>やはりえっちな絵を描きながら投稿するもんじゃないね。
( ゚д゚)
(゚д゚)
×明らかなに間違えた持ち方のお箸
○明らかに間違えた持ち方のお箸
ところで、
>やはりえっちな絵を描きながら投稿するもんじゃないね
詳しく語るんだ。
判らんね。
>やはりえっちな絵を描きながら投稿するもんじゃないね。
なにより一番聞き捨てならないね!