Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

しぐるい

2007/10/07 03:08:26
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 朝一番、台所へ向かうと姫が顔に白いドロドロを付着させて涙目。そんな日もある。
 基本的に何でも受け入れるあらあらうふふな永琳。
 ちょっと変な事考えて興奮しつつも輝夜の顔など拭き、しげしげと観察する。

(卵の白身ね……)

 電子レンジと生卵の相性はトム&ジェリー並み、プチ核融合が戦術レベルの爆発を引き起こす、と月の兵法書にも記されている。
 
「因幡が……! 因幡の言う通りに料理したらこうなったのよ!」
(てゐだな)

 的確に状況を把握し、てゐのおでこにめっ! しつつ流れ作業でレンジを掃除。
 床に飛散した卵を拭き取るや否や、玉ねぎに斬撃を加える。
 刹那――パック底に残留していた卵と掻き混ぜ、ご飯と醤油をベースに炒めること、風の如く。
 待つこと林の如く、つまみ食いするてゐを叱ること火の如く。
 ぐずる輝夜を包み込む胸元、山の如くなり。

「炒飯できたわよー」

 まさしく天才である。
















「師匠はお母さんすぎます」

 よく分からない毒人形を拾ってきて、話し相手になってあげたり。
 冒頭で電子レンジなど、近代的な言葉が出てきてもスルーしてあげたり。
 今だって頼んでもいないのに、膝枕で耳掃除などうひゃあそこくすぐったい!

「次、左耳掃除するから頭の向き変えて」

 上手い人に耳掃除されてる時特有の、ぞわぞわ感を後頭部に感じつつうどんげは思った。

(自分がどんどんダメになっていく気がする)

 このままじゃマズイ、永遠亭全体が師匠におんぶに抱っこ。
 この状況は、師匠にとっても自分達にとっても、良くない気がする。

「師匠」

 明日からは、己が母性と決別し、我らを火中に放り込む覚悟で!
 ――こくり。
 微笑などしつつ、ゆっくり永琳は頷いた。











 
 可愛い子には旅をさせよ、こんな言葉思いついた奴は異常者、愚痴りつつ輝夜を見送る。
 初めてのおつかい。姫は方向音痴ゆえ、迷子になるかもしれない。かわいいから、イタズラされるかもしれない。
 心配の種は尽きない……そうだ! こっそり後をつけていこう、なんて思った矢先、

「不死身だから大丈夫じゃないっスか?」
 
 冷たい突っ込みで我に帰る。
 ――てゐだ。アナタの血は何色よ、問いただしたい衝動に駆られ食卓へ駆け寄る永琳。
 瞬間――視界に入る、ちっちゃな右手、明らかに間違えた持ち方のお箸、食べこぼしだらけの座布団。
 てゐの脅威はその毒舌にあらず、あどけない所作にある。

(く……! 正しい箸の持ち方を教えてあげたい……!)

 できればアーンしてあげたい。
 沸々と湧き上がる母性が、身を焦がす程に苦しい。

(助けてうどんげ……!)

 愛弟子に目を向ける。
 なにやらネクタイを上手く結べないらしく、すがる様な目でこちらを見てきた。
 言いだしっぺのくせにずば抜けて甘えん坊。

(目の毒すぎる……!)

 ここはダメだ、手のかかる人が多すぎる、こんなトコにいたらお世話したくなっちゃう……!









 湖があった。
 妖精がいた。遊び場にしている。
 つまり、永琳の緊急避難場所としては、最悪であった。
 年端もいかぬ少女達の泥まみれになって遊ぶ様は、母性本能を引きずり出してくすぐり尽くしたあげく、頬ずりする様な、つまり――

(お、お洗濯してあげたい……!)

 子守とお洗濯を心から愛する永琳にとって、この上ない誘惑である。
 逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ……。
 今すぐこの場から離れなくては母性が噴出する、間違いなく視界に入る全員を甲斐甲斐しくお世話してしまう……。
 
「――」
 
 一瞬、視線が交差した。顔立ち自体は整っているが、お世辞にもお若いですわね、とは言えない雰囲気の女性であった。
 助かった、こんな近くに年増がいた。
 子供の対極にいる属性、オバサうわちょなにを何をする、そう、手がかかりそうにないお姉さん。
 そういう人種を見ると永琳の母性は引っ込む。
 ――鏡見ればいいじゃ(ry
 永琳は自分を年増とは思わない、若い子には負けないもん、色々葛藤しながらもその女性を凝視する。
 凝視する。行水しようとしてる。

「ちょ」

 何を思ったか、その女性は手にしていた日傘を岩場に立てかけ、裾をまくって湖へと向かう。
 アレだ、我慢できなくなったんだ、周囲でキャッキャと遊ぶ妖精を見て、自分も水遊びしたくなったに違いない。
 ちゃぽんと足を水面に入れた瞬間、ゴトンと音を立てて日傘が倒れた。
 適当に立てかけておくからこうなる、物音に反応したその女性はビクッといい反応をし、こけた。
 顔だけは水面にボチャンと飛び込み、不自然な姿勢になったせいで胸元が破れた。
 成熟しきった豊満な肉体と、子供じみた所作のアンバランスな組み合わせが生み出す悲劇。

(ゴメンもう無理)

 こんな手のかかる人を見せつけられたら、もうお世話するしかないじゃないか。
 すぐさま駆け寄り痛いの痛いの飛んでいけ、擦りむいた膝を手当てしつつ、胸元を繕って家まで送る事にした。
 もはや一人歩きし始めた母性を止められる筈もなく、おんぶに子守唄まで披露する尽くしっぷり。

 吹っ切れた永琳は――凄くいい顔をしていた。
「この度はうちの主がとんだ御迷惑を……」
「いえいえ。おかまいなく」

 あなた、おうちはどこ?
 背中でうとうとし始めた手のかかる女――八雲紫。
 住所はマヨヒガ、と答えるや否や、夢の中である。
 ――マヨヒガ。

(どうやって行けと)

 流石に諦めかけた永琳であったが。
 催眠術を駆使し、マヨヒガへと繋がるスキマを出させたのは、天才の名に恥じない偉業である。
 途中退行催眠のし過ぎで幼児退行したゆかりんに、ママーママーと懐かれておっぱいなんか出ないわよッ!
 とかここら辺はどうでもいいので省略。
 とにもかくも、マヨヒガに着いて、妙にしっかりした狐に応対されたのだ。

「おんぶしてここまで来たんですか。重かったでしょう」
「いえいえ、全然」

 もちろん、足腰は既に限界突破している。
 しかし一度面倒見ると誓った相手を、重いし厚化粧だし背中にゴムまりみたいな胸が当たって背負いにくい!
 とか愚痴るのは、永琳の信条に反するのだ。

「どうします? もう遅いですし、今日は泊まっていきますか?」
「い……いえいえ、おかまいなく」

 それにしても、ホントにしっかりした狐だ。
 寝室に運ばれていく紫を見送りつつ、チラリと台所を覗いた。
 よく手入れの行き届いた食器、使い古したまな板、幾千もの調味料。

(この狐、料理もするのか……)

「ああ。お腹が空いたんですか? 何か食べたいものありますか」
「いえいえ。おかまいなく」

 さっきから、おかまいなくを連呼してる気がする……。
 気持ち悪い……。冷静になれない。
 なにか、なにか、言いようの無い違和感を感じているのだ。

「あの……? 顔色が悪いですよ……?」

 心底心配そうな顔をして覗き込んで来る狐。
 そんな、医術を嗜む私が、他人に体調を心配されるなんて……。

(あ)

 そうだ、違和感の正体が分かった、この八雲藍とか言う狐、しっかりし過ぎている。
 いつもお世話する側の自分が、お世話されている……!

「き、気持ち悪い……」

 ぜいぜいと息を切らし、永琳は訴える。
 この部屋ダメだ、ダメな人がいない。
 誰か、誰でもいいから、手のかかる人を!
 お世話しなきゃダメそうな人を連れてきてくれないと、私おかしくなっちゃう!
 発作を起こし、のたうちまわる永淋。

「大丈夫ですか!?」

 すかさず駆け寄ってきた藍、ダメよ、ダメダメあなたはダメ。
 手がかからないからダメなの、私、誰かをお世話してないと死んじゃう!
 暴れに暴れ、思わず藍の服を破る永琳。

「だ、大丈夫です。慣れてますから」
 
 肌が露出するのに慣れてるって、どんだけしっかりしてるんだこの狐。
 ……って裸に慣れてるのはそれはそれで病的なものを感じるが、

「手のかかる人を連れてきてーーーッ!」

 いよいよ臨界点に達した永琳に、優しく、諭すように藍は囁いた。

「……なに言ってるんですか。手のかかる人なら……もういるじゃないですか」

 藍のしなやかな指は――永琳を指していた。











*やあ。面目ない。酷い誤字があったようだね。よりによって主役の名前を間違えるなんて最悪さ。
 やはりえっちな絵を描きながら投稿するもんじゃないね。
 ……おっと! 最後のは忘れて欲しい。
紳士的ロリコン
コメント



1.はむすた削除
誰かダメな人探してきてあげてーっ!
2.俄雨削除
ここに、ここにおるぞ、駄目な人はここにおるぞっ!!
3.名無し妖怪削除
永琳のママっぷりに吹いたっ!
4.名無し妖怪削除
究極の母性を見た。だが永淋ではなく永琳ですよッッ!!!
5.名無し妖怪削除
このえーりんは淋しんぼうっぽいから、永「淋」でも良い気がするぜッ!!
6.名無し妖怪削除
永遠亭、違う意味でダメ人間が増えそうだ…

それよりも、ゆかりんのお世話したい!
7.三文字削除
ゆかりんは少女だつってんだろ、堕裸厨!!

取り敢えず、ネクタイ結べないウドンゲと、転んだゆかりんに萌え尽きました。
俺も永琳にめっ!されたい・・・

8.名無し妖怪削除
てゐに騙されて涙目の姫様に萌えた。
母性溢れる永琳にやられた。



>やはりえっちな絵を描きながら投稿するもんじゃないね。


( ゚д゚)

(゚д゚)
9.名無し妖怪削除
藍さまはすっぽんぽんでも手が掛からない
10.名無し妖怪削除
俺のところにえーりんがこないのはなんでなんだぜ?
11.名無し妖怪削除
あまりの紳士的SSに憤死した
12.名無し妖怪削除
えーりん、お世話してくれ!
13.名無し妖怪削除
てゐが「めっ」されたくて悪戯した様に見えてならない。

×明らかなに間違えた持ち方のお箸
○明らかに間違えた持ち方のお箸
14.名無し妖怪削除
母過ぎる永琳とゆかりんの駄目っぷりに萌えた。

ところで、

>やはりえっちな絵を描きながら投稿するもんじゃないね
詳しく語るんだ。
15.名無し妖怪削除
ゆかりんの濡れたおっぱいに理性に全てを持っていかれた俺もダメ人間かも
判らんね。

>やはりえっちな絵を描きながら投稿するもんじゃないね。
なにより一番聞き捨てならないね!
16.名無し妖怪削除
藍様のお母さん度の高さは異常。
17.名無し妖怪削除
オチが上手いwwwww
18.名前が無い程度の能力削除
ネクタイ結べないうどんげにやられました