ここに書かれている文は全て、某所の名無したちが
「」の中にあるお題を守りつつ、数分で書きあげたものです。
ちなみにお題もその場のノリだけでひねり出した物ばかり。
ここに投稿する際に、どこで書き手が変わっているかを判り易くする為に
一行空白を空けました。
お題「zの音を使わない斬撃音」
トン、と背中をノックされたと思った。振り返ると、先ほどと同じ顔でメイド長が立っていた。「今日の貴女は食事係」という彼女の言葉を、私は背中に生えたナイフで聞いた。
すーっ、と、優しく撫でさすられた肩口から、噴き出す鮮血、開く隙間。骨が見えた。
メイド長は顔色を変えるふうもなく、さらさらと解体をすすめてゆく。
邪魔な肋骨と血管をすとん、と切り落とし、未だかすかに脈打つ心臓を丁寧に取り出す。どろっとした血が両手を汚し、床にこぼれた。
ふと。ぱたぱたと、一匹の蝙蝠がやってきた。地に降り立ったそれはこぼれた血を啜――「お嬢様、つまみ食いは行儀が悪いですわ」
(編者注:何故かこの時は暗黙の了解のような物で、前者の後を繋いだ短文の流れになっていた)
お題「会話オンリーで短文(魔理沙・固有名詞禁止)」
「ゆかりんかわいいよ!1!」
「……紅茶が飲みたくなったわ。今日はまだ良いのが入らないの?」「私の育ててるのなら分けてもいいわよ?採るのがちょっと手間だけど」
「新鮮で生きの良いのが飲みたいの。悪いけど、温室育ちは好みじゃないわ」
「久しぶりね」「そうかしら」「貴女は待ってても私のところに来ないから。私が出向いてばかり」「それは残念。でも私も、一度は貴女の元を訪れたのかしら」
「今夜はあの望月に見合った物を用意しなさい」「では、欠けたる所のないたま、玉露と……団子は如何でしょう?」
お題「てるよ」
「うどんげー、ちょっとWM買ってきてー」
「歴史改ざんしてBANされた垢復活させてよ」「無茶言うな。外の世界のものなんかできるか」
「お願い……霊夢……PCの結界解いて……一生の……お願い……」「言いながら死んだり復活したりしてる人間の一生のお願いなんて聞けるわけないじゃない」
永遠は永遠だからその長さに価値は無い。ならばこそこの一瞬だけに意味があり、そしてこれだけが結果と言える。<オークヒーローを倒した><「BOT」がDROPを拾った>「えーりん!えーりん!」
「あら姫、お出かけですか?」「昨日のGvGの相手殺してくる、リアルで」
「まったく、収集家気取りが何人もいて困るわ。真の収集家は私に決まってるじゃない」「姫のレアは売って家計の足しにさせていただきましたよ」
「ねぇ、あなたは私の能力を知ってるのかしら? 永遠は私の手にあるのよ? 効率なんていくらでも自由にできるわ(モニタに向かってぶつぶつと)」
数分後……「……クソがっ」
お題「秋」
「すっかり秋ねぇ……秋といえば」「幽々子様、秋刀魚も栗も松茸もリンゴも月見バーガーももう食べたじゃありませんか」間髪いれぬつっこみに幽々子はしれっとした顔で「あら、紅葉狩りといいたかったのに。妖夢はくいしんぼうね」「……」
「あの空の月は、私達と同じ輝き。 だから私は、一人でも平気……」
「秋といえば芸術の秋ね!だから私は歌で表現するわ!」「あんたに芸術を愛する心があるならやめときなさい」
「私は食欲の秋の方がいいわね」
染め抜いた真紅の天井。敷き詰めたバージンロード。舞い散るは幼子の叩き鳴らす掌のような紅い葉。それでも私の傍らにある主人は、赤の中でなお紅かった。
「秋……芸術の秋」「私たちが引っ張りだこの季節ね~」
――「みんな秋らしく虫の演奏会のほうがいいって……」「……」
「秋ね」「秋だぜ」「秋といえば食欲の秋。この陰陽玉で太らずスイーツを」「秋といえば読書の秋。その陰陽玉で快適な香りとともに」「貸さないわよ」「じゃあ黙って借りる」
お題「過去」
彼女には過去は無い。彼女には未来も無い。彼女には今日と同じ昨日が有り、それと同じ一昨日が有る。故に、彼女には今日だけが有り、今日も幻想郷は平和だった。
「ふと、初めて藍と会ったときのことを思い出したわ……あのころの私は清純で可憐で処女雪のような存在だったわね」「真顔で嘘つかないでください」
最後の一閃は、今でも目に焼き付いている。 何千何万と繰り返される「それ」が、今の彼女の師匠であった。
「昔? そんなくだらないもの、いちいち覚えてないわ。大切なのは今、そして未来よ」「言葉はかっこいいが、覚えてないんじゃなくて、覚えられないんじゃないのか?」「な、な、何をバカ言ってるのよっ!!」「……本当に鳥頭だな」
「人間ていうのはあんまり多く物は覚えられない生き物。あんまり長生きするのも考え物ね」「代わりに私が覚えている。どんな小さなことでもまた話して聞かせる」「まるでおばあちゃんね」「お前のほうが年は上だろう」
私は、ただひたすらに記し続けるまでだ。 それが彼女の続けていたことだから。 そして私には既に彼女はなく、無限に続く未来しかないから。
お題「過去の自分が見る未来(今)」
酷い夢を見た。私の中にこんな普通の少女じみた感傷が残っているとは冗談にも劣る。出来の悪いブラックジョークのようなものだ――私に、家族ができるなどと。
「こーりんお兄ちゃん、私お兄ちゃんのお嫁さんになる!」「はいはい、嬉しいよ魔理沙」「信じてないなー。いーもん、お兄ちゃんがどこに行っても追いかけて、ずっと一緒にいるんだから」
――「覚えてないんだろうなあ……」「なにが?」「なんでもない」
夜空を見上げる。 遠い遠い其処に眠るは我が主。 もう、心に決めた事なのに。 私は姫と共に…… 永久を生きようと。
「今はまだ無理、でも生き続ければ、力をつけ続ければ必ず殺せる。いつかやってやる。……絶対に……」
お題「ランダム3語“魚”“雲”“山”」
山の朝はもう露が降りるようになった。初秋の雲は時折り霧として我が家を包む。橙を起こして紫様に声をかけ、旬に入った秋刀魚を一匹焼く。もし紫様が起きてくるなら、もう一匹焼いてもいいだろうか。
「今日も暑いわね……雲も山みたいになってるし」「山?それはちがうよ、霊夢。雲とは水だ。空に浮かぶ海なんだよ。そして鳥も、雲の中においては魚となる。モノの意味は、周りによって決められるんだ」
山の頂点が黄色く染まり始める季節の出来事だった。その日の空は雲ひとつなく、満ちない月が闇に穴を穿つ。星見に因れば双魚宮は最高のコンディション。相方の少女を引き連れて、今夜も旅立って行く魔法使い達。
山みたいに大きくなることが出来て~雲みたいになれて~酒がでてくると水を得た魚みたいになる生き物。な~んだ?
お題「星(魔理沙禁止)」
古から連綿と続く魔術「陰陽術」は、「式」である彼女にはとても縁が深い。 中でも得意とする術、飛翔晴明は陰陽の始祖の名と、星の印を持って紡がれていた。
「ひとがしんだらなにになる?」「人が死んだら星になります」「ほしがしんだらなにになる?」「星が消えたら月夜になります」「つきがしんだらなにになる?」「月が死んだら星が涙を流します――だから人は生きるでしょう」
お題「ただいま」
「――――」彼女は口を開き、そしてそのまま息だけを吐き出した。家の玄関で、彼女の妹達はまだ帰っていない。だから彼女は、騒霊たる彼女は、その在り方を忘れたように言葉を発しなかった。音にならず風に溶けた言葉は、彼女の「二人の」妹達がいない屋敷に、ただ消えていった。
最後に外へ出たのは何時だろう? 全てはこの狭い空間の中で済んでいたというのに。 「鬼、か……」 巨大な図書館を象徴するかの様な漆黒の扉を開くと、そこには司書が待っていた。私は、もう何十年も使っていないその言葉を、しかし自然に紡ぐ事が出来た事に驚いてもいた。その言葉を聞いた司書の笑顔は、これ以上に無いものだった。
長い長い夜があっという間に終わり、きっとあいつがなんとかしたのだろう。夜を戻したことに礼でも言ってやるべきなのかもしれないが、そんなことを言えばあいつは満面の笑みを浮かべて本棚ひとつ分の本を抱えていきかねない。いや、持っていく。やはりここは無関心を――「ただいま」昨日の今日でもう現れた。頬にはこれ見よがしにバンソウコウを貼っている。
「何がただいまよ」「生きて帰ってこられないかもしれない、命がけの弾幕ごっこから帰ってきたんだぜ」「あっそ」「信じてないな」信じている。いや、わかっているが、認めるのは癪に障る。でも感謝の言葉くらいは伝えておいてあげるべきだろう。「……り」「ん? なんか言ったか」「何も言ってないわよ」ま、あとは本の一冊ぐらい、目に見てあげるとしようか……。
お題「夜」
寝付けない夜。ふと声が聞こえた。「あなたは食べてもいい人類?」――どうやらよく眠れそうだ。
山の夜は静かだ――などと、それはどんな幻想だろう。虫は歌い、風がそよぎ、木々は枝を鳴らす。夜長と冠する季節になって、昼の騒ぎには翳りが見えても、夜の賑わいにはいささかの変わりも無かった。空を見上げる。数多の星が輝く中に、不自然な闇色のひとすじ。不思議に思ううちにひとすじの闇はぐんぐん膨れあがり、中に潜むなにかが胎動する。ああ、夜が降りてくる。
輝く円が東の空から昇る。 辺りを僅かに照らす。嗚呼、もう太陽の昇る時間か。 我等が吸血鬼の夜は、これからだ。
夜空に浮かぶ綺麗な満月。その満月に、私は大事なことを忘れている気分になる。なんだろう、なにを忘れてしまったのか。なにか大事な、大事な……「ああ」唐突に脳内の靄が晴れるように、その正体を思い出す。銀色の髪をなびかせた、あいつを、あいつを、「あいつを殺すのを忘れてたわ」
空を覆う雲は星の光を遮り、どこまでも暗い夜。けれど、こう言うときこそが私たち蛍の本領発揮。――今夜、私たちは地を天にする。
私はこの時間が好きだ。寒くもなく暑くもなくて。この空は今、私だけの物。その証拠に、空を埋めているのは私のブレイジングスターだけしかないじゃないか。
お題「道具」
全てに於いて、もっとも優先すべき事は信用性。特に日常的に使われるものについては言うまでもない。侵入者が現れたときに、私がもっとも信用出来る道具は一つ。――「お行きなさい、中国」
「私が遣うの道具なのだから、完璧である事は必要充分な条件だわ」「私が遊ぶ道具なのだから、手を加える余地は残ってないと興ざめだわ」
私の人形は道具ではない。大切な友達。
私の力はリボンで封印された。ずいぶん昔のことだ。今ではもう、効力も薄れて外す事もわけはない。けれど――と、私はリボンを撫でて笑った。力など可愛さの前にどれだけ意味があるだろう?
お題「ランダム3語“夢”“春”“乱”」
春眠暁を覚えずなどと言うが、夢見の悪さに目覚めたのはまだ夜明けには程遠い時間だった。掻き毟りでもしたのか、血を滲ませ乱れた胸元を合わせ、水を求めて寝台を降りた。
とてもとても暖かい春の日。こんな日は縁側で昼寝をするのがとても気持ちいい。「私の夢を乱りに邪魔する奴は夢想封印 」このメモでも貼っておけば邪魔するのもいないでしょ。ああ、本当に…… 眠く……
弾幕の果てに、私は満開に咲き乱れる桜を見ていた。封印が解かれたのだと確信した。……けれど見る間に花びらは散って、散って、散って、やがて最後のひとひらが落ちたとき、私は長い夢から覚めたのだった。
ああ私は夢でも見ているのか。死に満ちた冥界でこんなにも春が溢れている。咲き誇る桜の、なんと幽雅なことか。
春の花見大会としゃれ込んだはずが、ふと気がつけば大乱闘弾幕スマッシュ……とにかく、少女たちの入り乱れる弾幕ごっこになっていた。長年の経験から、こんなときはおとなしくしているに限る。僕は桜の木の下に腰を下ろすと、桜の花びらに包まれる夢でも見るべく、木に持たれかかり目を閉じた。
吹雪のごとく舞い散る桜。乱れる桃に紅がひとひら、続いてふたひら。西行寺幽々子は春の夢と消えた。もう、誰かの花びらを散らすことはない。
春雨を腹いっぱい食べる夢を見た。しかし現実はカンパンと水。憂さ晴らしに彩光乱舞したらナイフが飛んできた。
(編者注:このお題に関しては、お題の3語を「入れ忘れてしまった」物もあります)
お題「ランダム3語“家族”“言い伝え”“先走り”(ただし先走りは“先走って”といった活用でも可)」
博麗の巫女には家族はいない。それが妖怪たちの間の言い伝えである。故に孤高。故に無敵。故に唯一のものであると。しかしこれは、妖怪たちの畏れが先走った誤解だと、彼女に直接関わる妖怪たちは知っていた。
既に「失われた家族」からの言い伝えなんて、完全に忘れていた。こんなに花が咲き乱れるなんて異常が起こるまでは。もっと早く思い出していれば先走る事もなかっただろうに。60年。人には少し長すぎる時間ね。霊夢はそう思った。
家族とは最高の絆である、という言い伝えを信じてやってきたが、実際はニートが一人である。今は先走ったと後悔している。
リグル・ナイトバグは今日も泣いていた。自分の支配下の大勢の蟲たち──家族のようなものだ──が、巫女を倒せば幻想郷最強だという言い伝えを信じて先走り、弾を撃つまでもなく座布団に潰されたのだ。その数、実に千五百。人間逢魔なら単独で1面のランク甲を達成できる撃破数である。
「ねぇ、もうすぐ新しい妖精が生まれるんだって?あたい、子供が生まれるのって言い伝えでしか聞いたことなかったの!どんな子かな、ひょっとしてあたいの妹になるのかな、楽しみ!もし妹だったら、子分にして、何でも言うこと聞かせて……」
チルノちゃんはどんどん先走っている。新しい家族が増えるかもしれないことが楽しみでしょうがないのだ。でも、それは私にもわかる。私ははしゃぐチルノちゃんの後姿に幼いころの自分の姿を重ねた。
お題「ランダム3語“戦術核”“工業オイル”“深海”」
(編者注:一つ前のお題がひょんな事からランダム3語になったのだが「意外と何でも出来そう」との事で無理っぽい3語をお題に選ぶ、という流れになり、その結果が今回のお題になった。
なお工業用オイルは「非食用の物」「工場等で飛び散っている黒くてギトギトしている油」のような物を主に指している)
漏れた工業オイルの匂いが充満している。月からの原因不明の衝撃波は、今も間断なく船体を揺らし続ける。宇宙という深海に漕ぎ出した人類は、月面でインベーダーに出会ったってわけだ。皮肉に顔を歪めて笑う船長が、言う。「仕方ない戦術核を使うぞ。前面の障害を打倒する」
深海魚とやらの形を模した時計が止まってしまった。香霖に見てもらったところ、油が切れたようだ。普通のものではなく「工業オイル」と呼ばれる特殊なものでないとまずいらしい。それを譲ってもらう条件として、ある小山を吹き飛ばすように言われた。仕方なく八卦炉に全魔力を流し込み、一気に放つ。その威力は、外の世界で言う所の戦術核クラスであった。
「ら―……ん―……?」紫様の声が響く。まるで工業オイルのように黒く、ギトリと絡みつく声だ。私は深海の底に沈められたかのごとき圧迫感を受け、立ちすくむ。こうなったのも、紫様のスキマ物置を掃除していたら、間違って戦術核を爆発させてしまったからだ。でもそこまで怒らないでも……
「……で、何で今回は深海なんだ?」「うん、深海には竜宮城があって、そこには一気に年をとる魔法の道具があるらしいのよ」「じゃ、それを取りに行くのか。でもそんなのすぐ渡してくれるとは思えないぜ」「あら、大丈夫よ。この携帯用戦術核を手に頼み込めば」「あーっと、工業用オイルが漏れ出してこれ以上の航行は無理だな。急速浮上するぜ。」「ちょっとちゆり、どこにそんなエラーが」「うるさいっ!」ボカッ
お題「ランダム3語“チョンマゲ”“ベルトコンベアー”“ネイルアート”」
お題「ランダム3語“うみうし”“生ハム”“背泳ぎ”」
スキマを操るあの少女に、ネイルアート用の道具を持っていかれた。翌日の朝、僕の店には隙間が開き、次から次へといろいろな品が転がり込んでくる。「こういう機構をなんと言うんだっけな…… ベルトコンベア―、だったか」 正に流れ作業の到達点の如く溢れる商品。あの少女はよっぽど気に入ったらしい。最後に現れたものは…… 「『チョンマゲのかつら』という名前らしいが…… 帽子としても使いにくそうだ」 こうして、香霖堂の在庫は増えてゆくのだ。
湖(内海)で海水浴と洒落込む妖怪の群れ。今日は紅魔館の無礼講。背泳ぎする中国は胸だけが潜望鏡のように水面に浮かべている。パチュリー様は水中呼吸の魔法で水底を漁り、先程はウミウシをチョンマゲのように頭に乗せて上がってきた。日にも水にも弱いお嬢様方はネイルアートに興じ、メイドたちはその周りに山海の珍味をベルトコンベアのように運び続けている。
(編者注:全く無関係の3語、でほぼ同時に二種のお題が出されたが、双方のお題を生ハムのみ除き同時にクリア)
たまには……と、蓬莱山輝夜を我が家に招いた。どうやら、彼女はこちらのディナー形式にあわせて珍しく洋装をしたようだけど……「変わった格好ね。例えるならそう……ウミウシ? 月ではそんなのが流行なのかしら」「あら、ウミウシもばかにしたものではないわ。水の中を優雅に泳ぐなんてことは貴方にはできない芸当でしょう?」「私は背泳ぎなら何とかできるからいいのよ」彼女は肩をすくめると、メロンの生ハム包みをまずそうに食べた。
ある夏の日、チルノはその急激な空模様の変化に気がついた。背泳ぎをしていたので空が良く見えたからだった。「さっき凍らせたウミウシはアメフラシだったのかな?」彼女はそう思ったらしい。しかしその雨は、紅魔館の周囲にしか降っていなかった。館の内部は天地を返したような騒ぎだった。人間の侵入者のおかげで妹様が外に出ようとしたからだ。もっとも、いつも通り数時間後には平静を取り戻してはいたのだが。侵入者がどうなったかって? その日の紅魔館のメインディッシュは新鮮な生ハムだった、それだけの話さ。
お題「魔法(魔法使い禁止)」
魔法のようにと言うけれど、手品の本質はそれじゃない。経験と理論と技術と――そしてほんのちょっとの悪戯心が『魔法のように』人を楽しませる。
博麗の巫女の元には、代々人と妖怪が集う。そして、捕食者と捕食される者とが仲良く酒を交わす。それが、古くから伝わる博麗の魔法なのだろう。 ――幻想風土記
「皆も何度か目にしているだろうが、幻想郷の者たちは様々な力を行使する。神仙術、妖術、精霊力……」「慧音先生、魔法はー?」「ああ、魔法も、だな。よく言えたな。偉いぞ」「へへへー。僕もいつか魔法を使えるようになるかな?」「ああ、きっと……いや、もうおまえは魔法使いだよ」「もう?なんでー?」「ふふ、いや、今はわからなくてもいい」
お題「絵師叩き」
「これはマジカルブラシ、外の世界のこもった世界の中の少女が使っていたとされるマジックアイテムだ」「わかりにくいわね」「これで似顔絵を描くとそれが動くらしいぜ」「そう、試したの?」「アリスを描いたつもりだったんだが動かなかった。アリスは泣いて逃げていくし」
どうせ人も来ない毎日。薄暗い部屋で、絵を描いてみる事にした。昔取った杵柄と言う訳では無いが、気分転換には丁度良い。これも霧雨の家で覚えた事だ。先ずはモデルの辺りをとって描いてゆくが、そのモデルというのは僕の記憶の中にしかない過去の虚像。人体を正確に写し、その後に服を描こうとしていたのだが……
彼女の裸像を描きあげた直後、幸か不幸かモデル本人、魔理沙が店に訪れてその動きを止める。……まずい、これは非情にまずい。嗚呼、案の定彼女の顔はひどく恐ろしく見える。きっと彼女の事だから、口よりも先に手がd ――彼の意識はそこで途切れた。
図書館の本に載っていた、絵師の筆を元にその画風を真似する魔法。なんとなしにそれを覚えた私は、香霖の店から使い込まれた筆を一本拝借し、ためしに何枚か絵を描いてみることにした……のだが。「で、これがその絵なんだが」「……なにこれ? 人のバランスは酷いし、なんか歪んだ絵じゃないの」「そうなんだ。使い込んでるからてっきり凄腕の絵師の筆かと思ったのにな」
「きっと下手の横好きだったのね。……で、その筆の持ち主はなんてやつなの?」「あー……聞いたこともない名前だったぜ」――「パブロ・ピカソってやつらしい」
「」の中にあるお題を守りつつ、数分で書きあげたものです。
ちなみにお題もその場のノリだけでひねり出した物ばかり。
ここに投稿する際に、どこで書き手が変わっているかを判り易くする為に
一行空白を空けました。
お題「zの音を使わない斬撃音」
トン、と背中をノックされたと思った。振り返ると、先ほどと同じ顔でメイド長が立っていた。「今日の貴女は食事係」という彼女の言葉を、私は背中に生えたナイフで聞いた。
すーっ、と、優しく撫でさすられた肩口から、噴き出す鮮血、開く隙間。骨が見えた。
メイド長は顔色を変えるふうもなく、さらさらと解体をすすめてゆく。
邪魔な肋骨と血管をすとん、と切り落とし、未だかすかに脈打つ心臓を丁寧に取り出す。どろっとした血が両手を汚し、床にこぼれた。
ふと。ぱたぱたと、一匹の蝙蝠がやってきた。地に降り立ったそれはこぼれた血を啜――「お嬢様、つまみ食いは行儀が悪いですわ」
(編者注:何故かこの時は暗黙の了解のような物で、前者の後を繋いだ短文の流れになっていた)
お題「会話オンリーで短文(魔理沙・固有名詞禁止)」
「ゆかりんかわいいよ!1!」
「……紅茶が飲みたくなったわ。今日はまだ良いのが入らないの?」「私の育ててるのなら分けてもいいわよ?採るのがちょっと手間だけど」
「新鮮で生きの良いのが飲みたいの。悪いけど、温室育ちは好みじゃないわ」
「久しぶりね」「そうかしら」「貴女は待ってても私のところに来ないから。私が出向いてばかり」「それは残念。でも私も、一度は貴女の元を訪れたのかしら」
「今夜はあの望月に見合った物を用意しなさい」「では、欠けたる所のないたま、玉露と……団子は如何でしょう?」
お題「てるよ」
「うどんげー、ちょっとWM買ってきてー」
「歴史改ざんしてBANされた垢復活させてよ」「無茶言うな。外の世界のものなんかできるか」
「お願い……霊夢……PCの結界解いて……一生の……お願い……」「言いながら死んだり復活したりしてる人間の一生のお願いなんて聞けるわけないじゃない」
永遠は永遠だからその長さに価値は無い。ならばこそこの一瞬だけに意味があり、そしてこれだけが結果と言える。<オークヒーローを倒した><「BOT」がDROPを拾った>「えーりん!えーりん!」
「あら姫、お出かけですか?」「昨日のGvGの相手殺してくる、リアルで」
「まったく、収集家気取りが何人もいて困るわ。真の収集家は私に決まってるじゃない」「姫のレアは売って家計の足しにさせていただきましたよ」
「ねぇ、あなたは私の能力を知ってるのかしら? 永遠は私の手にあるのよ? 効率なんていくらでも自由にできるわ(モニタに向かってぶつぶつと)」
数分後……「……クソがっ」
お題「秋」
「すっかり秋ねぇ……秋といえば」「幽々子様、秋刀魚も栗も松茸もリンゴも月見バーガーももう食べたじゃありませんか」間髪いれぬつっこみに幽々子はしれっとした顔で「あら、紅葉狩りといいたかったのに。妖夢はくいしんぼうね」「……」
「あの空の月は、私達と同じ輝き。 だから私は、一人でも平気……」
「秋といえば芸術の秋ね!だから私は歌で表現するわ!」「あんたに芸術を愛する心があるならやめときなさい」
「私は食欲の秋の方がいいわね」
染め抜いた真紅の天井。敷き詰めたバージンロード。舞い散るは幼子の叩き鳴らす掌のような紅い葉。それでも私の傍らにある主人は、赤の中でなお紅かった。
「秋……芸術の秋」「私たちが引っ張りだこの季節ね~」
――「みんな秋らしく虫の演奏会のほうがいいって……」「……」
「秋ね」「秋だぜ」「秋といえば食欲の秋。この陰陽玉で太らずスイーツを」「秋といえば読書の秋。その陰陽玉で快適な香りとともに」「貸さないわよ」「じゃあ黙って借りる」
お題「過去」
彼女には過去は無い。彼女には未来も無い。彼女には今日と同じ昨日が有り、それと同じ一昨日が有る。故に、彼女には今日だけが有り、今日も幻想郷は平和だった。
「ふと、初めて藍と会ったときのことを思い出したわ……あのころの私は清純で可憐で処女雪のような存在だったわね」「真顔で嘘つかないでください」
最後の一閃は、今でも目に焼き付いている。 何千何万と繰り返される「それ」が、今の彼女の師匠であった。
「昔? そんなくだらないもの、いちいち覚えてないわ。大切なのは今、そして未来よ」「言葉はかっこいいが、覚えてないんじゃなくて、覚えられないんじゃないのか?」「な、な、何をバカ言ってるのよっ!!」「……本当に鳥頭だな」
「人間ていうのはあんまり多く物は覚えられない生き物。あんまり長生きするのも考え物ね」「代わりに私が覚えている。どんな小さなことでもまた話して聞かせる」「まるでおばあちゃんね」「お前のほうが年は上だろう」
私は、ただひたすらに記し続けるまでだ。 それが彼女の続けていたことだから。 そして私には既に彼女はなく、無限に続く未来しかないから。
お題「過去の自分が見る未来(今)」
酷い夢を見た。私の中にこんな普通の少女じみた感傷が残っているとは冗談にも劣る。出来の悪いブラックジョークのようなものだ――私に、家族ができるなどと。
「こーりんお兄ちゃん、私お兄ちゃんのお嫁さんになる!」「はいはい、嬉しいよ魔理沙」「信じてないなー。いーもん、お兄ちゃんがどこに行っても追いかけて、ずっと一緒にいるんだから」
――「覚えてないんだろうなあ……」「なにが?」「なんでもない」
夜空を見上げる。 遠い遠い其処に眠るは我が主。 もう、心に決めた事なのに。 私は姫と共に…… 永久を生きようと。
「今はまだ無理、でも生き続ければ、力をつけ続ければ必ず殺せる。いつかやってやる。……絶対に……」
お題「ランダム3語“魚”“雲”“山”」
山の朝はもう露が降りるようになった。初秋の雲は時折り霧として我が家を包む。橙を起こして紫様に声をかけ、旬に入った秋刀魚を一匹焼く。もし紫様が起きてくるなら、もう一匹焼いてもいいだろうか。
「今日も暑いわね……雲も山みたいになってるし」「山?それはちがうよ、霊夢。雲とは水だ。空に浮かぶ海なんだよ。そして鳥も、雲の中においては魚となる。モノの意味は、周りによって決められるんだ」
山の頂点が黄色く染まり始める季節の出来事だった。その日の空は雲ひとつなく、満ちない月が闇に穴を穿つ。星見に因れば双魚宮は最高のコンディション。相方の少女を引き連れて、今夜も旅立って行く魔法使い達。
山みたいに大きくなることが出来て~雲みたいになれて~酒がでてくると水を得た魚みたいになる生き物。な~んだ?
お題「星(魔理沙禁止)」
古から連綿と続く魔術「陰陽術」は、「式」である彼女にはとても縁が深い。 中でも得意とする術、飛翔晴明は陰陽の始祖の名と、星の印を持って紡がれていた。
「ひとがしんだらなにになる?」「人が死んだら星になります」「ほしがしんだらなにになる?」「星が消えたら月夜になります」「つきがしんだらなにになる?」「月が死んだら星が涙を流します――だから人は生きるでしょう」
お題「ただいま」
「――――」彼女は口を開き、そしてそのまま息だけを吐き出した。家の玄関で、彼女の妹達はまだ帰っていない。だから彼女は、騒霊たる彼女は、その在り方を忘れたように言葉を発しなかった。音にならず風に溶けた言葉は、彼女の「二人の」妹達がいない屋敷に、ただ消えていった。
最後に外へ出たのは何時だろう? 全てはこの狭い空間の中で済んでいたというのに。 「鬼、か……」 巨大な図書館を象徴するかの様な漆黒の扉を開くと、そこには司書が待っていた。私は、もう何十年も使っていないその言葉を、しかし自然に紡ぐ事が出来た事に驚いてもいた。その言葉を聞いた司書の笑顔は、これ以上に無いものだった。
長い長い夜があっという間に終わり、きっとあいつがなんとかしたのだろう。夜を戻したことに礼でも言ってやるべきなのかもしれないが、そんなことを言えばあいつは満面の笑みを浮かべて本棚ひとつ分の本を抱えていきかねない。いや、持っていく。やはりここは無関心を――「ただいま」昨日の今日でもう現れた。頬にはこれ見よがしにバンソウコウを貼っている。
「何がただいまよ」「生きて帰ってこられないかもしれない、命がけの弾幕ごっこから帰ってきたんだぜ」「あっそ」「信じてないな」信じている。いや、わかっているが、認めるのは癪に障る。でも感謝の言葉くらいは伝えておいてあげるべきだろう。「……り」「ん? なんか言ったか」「何も言ってないわよ」ま、あとは本の一冊ぐらい、目に見てあげるとしようか……。
お題「夜」
寝付けない夜。ふと声が聞こえた。「あなたは食べてもいい人類?」――どうやらよく眠れそうだ。
山の夜は静かだ――などと、それはどんな幻想だろう。虫は歌い、風がそよぎ、木々は枝を鳴らす。夜長と冠する季節になって、昼の騒ぎには翳りが見えても、夜の賑わいにはいささかの変わりも無かった。空を見上げる。数多の星が輝く中に、不自然な闇色のひとすじ。不思議に思ううちにひとすじの闇はぐんぐん膨れあがり、中に潜むなにかが胎動する。ああ、夜が降りてくる。
輝く円が東の空から昇る。 辺りを僅かに照らす。嗚呼、もう太陽の昇る時間か。 我等が吸血鬼の夜は、これからだ。
夜空に浮かぶ綺麗な満月。その満月に、私は大事なことを忘れている気分になる。なんだろう、なにを忘れてしまったのか。なにか大事な、大事な……「ああ」唐突に脳内の靄が晴れるように、その正体を思い出す。銀色の髪をなびかせた、あいつを、あいつを、「あいつを殺すのを忘れてたわ」
空を覆う雲は星の光を遮り、どこまでも暗い夜。けれど、こう言うときこそが私たち蛍の本領発揮。――今夜、私たちは地を天にする。
私はこの時間が好きだ。寒くもなく暑くもなくて。この空は今、私だけの物。その証拠に、空を埋めているのは私のブレイジングスターだけしかないじゃないか。
お題「道具」
全てに於いて、もっとも優先すべき事は信用性。特に日常的に使われるものについては言うまでもない。侵入者が現れたときに、私がもっとも信用出来る道具は一つ。――「お行きなさい、中国」
「私が遣うの道具なのだから、完璧である事は必要充分な条件だわ」「私が遊ぶ道具なのだから、手を加える余地は残ってないと興ざめだわ」
私の人形は道具ではない。大切な友達。
私の力はリボンで封印された。ずいぶん昔のことだ。今ではもう、効力も薄れて外す事もわけはない。けれど――と、私はリボンを撫でて笑った。力など可愛さの前にどれだけ意味があるだろう?
お題「ランダム3語“夢”“春”“乱”」
春眠暁を覚えずなどと言うが、夢見の悪さに目覚めたのはまだ夜明けには程遠い時間だった。掻き毟りでもしたのか、血を滲ませ乱れた胸元を合わせ、水を求めて寝台を降りた。
とてもとても暖かい春の日。こんな日は縁側で昼寝をするのがとても気持ちいい。「私の夢を乱りに邪魔する奴は夢想封印 」このメモでも貼っておけば邪魔するのもいないでしょ。ああ、本当に…… 眠く……
弾幕の果てに、私は満開に咲き乱れる桜を見ていた。封印が解かれたのだと確信した。……けれど見る間に花びらは散って、散って、散って、やがて最後のひとひらが落ちたとき、私は長い夢から覚めたのだった。
ああ私は夢でも見ているのか。死に満ちた冥界でこんなにも春が溢れている。咲き誇る桜の、なんと幽雅なことか。
春の花見大会としゃれ込んだはずが、ふと気がつけば大乱闘弾幕スマッシュ……とにかく、少女たちの入り乱れる弾幕ごっこになっていた。長年の経験から、こんなときはおとなしくしているに限る。僕は桜の木の下に腰を下ろすと、桜の花びらに包まれる夢でも見るべく、木に持たれかかり目を閉じた。
吹雪のごとく舞い散る桜。乱れる桃に紅がひとひら、続いてふたひら。西行寺幽々子は春の夢と消えた。もう、誰かの花びらを散らすことはない。
春雨を腹いっぱい食べる夢を見た。しかし現実はカンパンと水。憂さ晴らしに彩光乱舞したらナイフが飛んできた。
(編者注:このお題に関しては、お題の3語を「入れ忘れてしまった」物もあります)
お題「ランダム3語“家族”“言い伝え”“先走り”(ただし先走りは“先走って”といった活用でも可)」
博麗の巫女には家族はいない。それが妖怪たちの間の言い伝えである。故に孤高。故に無敵。故に唯一のものであると。しかしこれは、妖怪たちの畏れが先走った誤解だと、彼女に直接関わる妖怪たちは知っていた。
既に「失われた家族」からの言い伝えなんて、完全に忘れていた。こんなに花が咲き乱れるなんて異常が起こるまでは。もっと早く思い出していれば先走る事もなかっただろうに。60年。人には少し長すぎる時間ね。霊夢はそう思った。
家族とは最高の絆である、という言い伝えを信じてやってきたが、実際はニートが一人である。今は先走ったと後悔している。
リグル・ナイトバグは今日も泣いていた。自分の支配下の大勢の蟲たち──家族のようなものだ──が、巫女を倒せば幻想郷最強だという言い伝えを信じて先走り、弾を撃つまでもなく座布団に潰されたのだ。その数、実に千五百。人間逢魔なら単独で1面のランク甲を達成できる撃破数である。
「ねぇ、もうすぐ新しい妖精が生まれるんだって?あたい、子供が生まれるのって言い伝えでしか聞いたことなかったの!どんな子かな、ひょっとしてあたいの妹になるのかな、楽しみ!もし妹だったら、子分にして、何でも言うこと聞かせて……」
チルノちゃんはどんどん先走っている。新しい家族が増えるかもしれないことが楽しみでしょうがないのだ。でも、それは私にもわかる。私ははしゃぐチルノちゃんの後姿に幼いころの自分の姿を重ねた。
お題「ランダム3語“戦術核”“工業オイル”“深海”」
(編者注:一つ前のお題がひょんな事からランダム3語になったのだが「意外と何でも出来そう」との事で無理っぽい3語をお題に選ぶ、という流れになり、その結果が今回のお題になった。
なお工業用オイルは「非食用の物」「工場等で飛び散っている黒くてギトギトしている油」のような物を主に指している)
漏れた工業オイルの匂いが充満している。月からの原因不明の衝撃波は、今も間断なく船体を揺らし続ける。宇宙という深海に漕ぎ出した人類は、月面でインベーダーに出会ったってわけだ。皮肉に顔を歪めて笑う船長が、言う。「仕方ない戦術核を使うぞ。前面の障害を打倒する」
深海魚とやらの形を模した時計が止まってしまった。香霖に見てもらったところ、油が切れたようだ。普通のものではなく「工業オイル」と呼ばれる特殊なものでないとまずいらしい。それを譲ってもらう条件として、ある小山を吹き飛ばすように言われた。仕方なく八卦炉に全魔力を流し込み、一気に放つ。その威力は、外の世界で言う所の戦術核クラスであった。
「ら―……ん―……?」紫様の声が響く。まるで工業オイルのように黒く、ギトリと絡みつく声だ。私は深海の底に沈められたかのごとき圧迫感を受け、立ちすくむ。こうなったのも、紫様のスキマ物置を掃除していたら、間違って戦術核を爆発させてしまったからだ。でもそこまで怒らないでも……
「……で、何で今回は深海なんだ?」「うん、深海には竜宮城があって、そこには一気に年をとる魔法の道具があるらしいのよ」「じゃ、それを取りに行くのか。でもそんなのすぐ渡してくれるとは思えないぜ」「あら、大丈夫よ。この携帯用戦術核を手に頼み込めば」「あーっと、工業用オイルが漏れ出してこれ以上の航行は無理だな。急速浮上するぜ。」「ちょっとちゆり、どこにそんなエラーが」「うるさいっ!」ボカッ
お題「ランダム3語“チョンマゲ”“ベルトコンベアー”“ネイルアート”」
お題「ランダム3語“うみうし”“生ハム”“背泳ぎ”」
スキマを操るあの少女に、ネイルアート用の道具を持っていかれた。翌日の朝、僕の店には隙間が開き、次から次へといろいろな品が転がり込んでくる。「こういう機構をなんと言うんだっけな…… ベルトコンベア―、だったか」 正に流れ作業の到達点の如く溢れる商品。あの少女はよっぽど気に入ったらしい。最後に現れたものは…… 「『チョンマゲのかつら』という名前らしいが…… 帽子としても使いにくそうだ」 こうして、香霖堂の在庫は増えてゆくのだ。
湖(内海)で海水浴と洒落込む妖怪の群れ。今日は紅魔館の無礼講。背泳ぎする中国は胸だけが潜望鏡のように水面に浮かべている。パチュリー様は水中呼吸の魔法で水底を漁り、先程はウミウシをチョンマゲのように頭に乗せて上がってきた。日にも水にも弱いお嬢様方はネイルアートに興じ、メイドたちはその周りに山海の珍味をベルトコンベアのように運び続けている。
(編者注:全く無関係の3語、でほぼ同時に二種のお題が出されたが、双方のお題を生ハムのみ除き同時にクリア)
たまには……と、蓬莱山輝夜を我が家に招いた。どうやら、彼女はこちらのディナー形式にあわせて珍しく洋装をしたようだけど……「変わった格好ね。例えるならそう……ウミウシ? 月ではそんなのが流行なのかしら」「あら、ウミウシもばかにしたものではないわ。水の中を優雅に泳ぐなんてことは貴方にはできない芸当でしょう?」「私は背泳ぎなら何とかできるからいいのよ」彼女は肩をすくめると、メロンの生ハム包みをまずそうに食べた。
ある夏の日、チルノはその急激な空模様の変化に気がついた。背泳ぎをしていたので空が良く見えたからだった。「さっき凍らせたウミウシはアメフラシだったのかな?」彼女はそう思ったらしい。しかしその雨は、紅魔館の周囲にしか降っていなかった。館の内部は天地を返したような騒ぎだった。人間の侵入者のおかげで妹様が外に出ようとしたからだ。もっとも、いつも通り数時間後には平静を取り戻してはいたのだが。侵入者がどうなったかって? その日の紅魔館のメインディッシュは新鮮な生ハムだった、それだけの話さ。
お題「魔法(魔法使い禁止)」
魔法のようにと言うけれど、手品の本質はそれじゃない。経験と理論と技術と――そしてほんのちょっとの悪戯心が『魔法のように』人を楽しませる。
博麗の巫女の元には、代々人と妖怪が集う。そして、捕食者と捕食される者とが仲良く酒を交わす。それが、古くから伝わる博麗の魔法なのだろう。 ――幻想風土記
「皆も何度か目にしているだろうが、幻想郷の者たちは様々な力を行使する。神仙術、妖術、精霊力……」「慧音先生、魔法はー?」「ああ、魔法も、だな。よく言えたな。偉いぞ」「へへへー。僕もいつか魔法を使えるようになるかな?」「ああ、きっと……いや、もうおまえは魔法使いだよ」「もう?なんでー?」「ふふ、いや、今はわからなくてもいい」
お題「絵師叩き」
「これはマジカルブラシ、外の世界のこもった世界の中の少女が使っていたとされるマジックアイテムだ」「わかりにくいわね」「これで似顔絵を描くとそれが動くらしいぜ」「そう、試したの?」「アリスを描いたつもりだったんだが動かなかった。アリスは泣いて逃げていくし」
どうせ人も来ない毎日。薄暗い部屋で、絵を描いてみる事にした。昔取った杵柄と言う訳では無いが、気分転換には丁度良い。これも霧雨の家で覚えた事だ。先ずはモデルの辺りをとって描いてゆくが、そのモデルというのは僕の記憶の中にしかない過去の虚像。人体を正確に写し、その後に服を描こうとしていたのだが……
彼女の裸像を描きあげた直後、幸か不幸かモデル本人、魔理沙が店に訪れてその動きを止める。……まずい、これは非情にまずい。嗚呼、案の定彼女の顔はひどく恐ろしく見える。きっと彼女の事だから、口よりも先に手がd ――彼の意識はそこで途切れた。
図書館の本に載っていた、絵師の筆を元にその画風を真似する魔法。なんとなしにそれを覚えた私は、香霖の店から使い込まれた筆を一本拝借し、ためしに何枚か絵を描いてみることにした……のだが。「で、これがその絵なんだが」「……なにこれ? 人のバランスは酷いし、なんか歪んだ絵じゃないの」「そうなんだ。使い込んでるからてっきり凄腕の絵師の筆かと思ったのにな」
「きっと下手の横好きだったのね。……で、その筆の持ち主はなんてやつなの?」「あー……聞いたこともない名前だったぜ」――「パブロ・ピカソってやつらしい」