※このネタは18歳以上の方がわかる仕様となっております。わからない方は最寄のお兄さんにお聞き下さい。
それと意識して見れば花映塚(むしろ文花帖)のネタバレが含有しておりますが、内容にはまったく関係性がないのでスルーしてもらっても大丈夫です。
幻想郷の端っこに、ひっそりと存在する沼がある。
ほとんど誰も気に掛けないような場所にある沼は、常に青々しい湖面を空に向けて佇んでいた。
青々しいといっても、水が青いわけでもあおこが大量発生しているわけでもなく、蓮の葉が沼に蓋をしてしまったかのように繁茂しているのである。
……そこに妖精の影がひとつ、蓮の葉に上に乗って揺らめいていた。
その妖精の名はチルノ。
氷精とは思えないほど活発な彼女が、なにやら思いつめたような表情でそこにぼーっと突っ立っているのである。
チルノが思案に耽るなんて……と思うかもしれないが、彼女だって考え事に浸るときもあるだろう。
確かにそれがクロマグロが泳ぎを止めるときの頻度くらいだとしても、皆無だということは流石にない。
たまたま偶然何の因果か今日はそういう日だったに過ぎないのだ。
きっと『猿山のサルが最も多く視聴するテレビ局』なんかに思いを馳せているのであろう。
「はぁ~あ……」
チルノはちょっとだけ物憂げに溜息をつく。
そんなに猿山の視聴率が気になるのだろうか?
「どうしました? 溜息なんかついて。」
思案に耽っているチルノに対して上から声が掛けられる。
「なぁんだ、またアンタか。今日は新聞のネタになるようなことはしないわよ。」
邪魔をしないで欲しいといわんばかりに、チルノは手で払う動作を行う。
「それは心外です。私だってたまには誰かを心配して声を掛けたりするんですよ?」
「へぇ~。」
にっこりと品の笑みを浮べる文。
だが、いくらチルノでもそれなりに学習能力はあるのだ。胡散臭そうな表情を崩すことなく相槌を打った。
「まあ、1人で悩むよりも私に相談するべきだと思いますよ? 年長者としてアドバイスできることも少なくないわけですし。」
放っておいたら揉み手でもしそうな勢いで文は告げる。
どこから見ても「ネタにするぞっ!」オーラが出ているのだから、これはチルノの猜疑心を悪化させるだけだろう。
「……そうね、レティもまだ出てこないし、アンタに相談しようかしら。」
って、チルノ!
「……それで、どんなことを悩んでいたのですか?」
チルノに見えないくらい素早く腰だめにガッツポーズを取った後、文はチルノに晴れ晴れしいくらいの笑顔で話しを進める。
「実はね……」
チルノは再び考え込むように下を向く。
無論、文の手にはさりげなくメモ帳が握られているのだが、それに気付く気配は全くない。
「ほらっ、私って『おバカ』とか『⑨』とか色々言われているけど、『可愛い』とか『萌へ~』とかって言葉はあまり聞かないの。」
「はあ。」
風が吹いたらメモを取り落としそうなくらい、力ない返事を文は返す。
それを気に掛けることなく、チルノは熱っぽい様子で一気に捲くし立てた。
「私だって『チルちゃん』とか『チルのん』とか『チル様』とか万人に言われたいわけよ! どうにかならないかな?」
「…………………………」
そこから生まれる沈黙という名のブリザード。
これをチルノが意識的に起こしたというのなら大した氷精であるが、爛々とした瞳で文を見つめている辺り無意識のことなんだろう。
……しかも、相談したことで解決すると疑っていないところがなんともチルノらしい。
「可愛いといわせるにしても、このおバカキャラは既に定着してしまったし払拭するのは無理。それなら、おバカキャラを生かしてアイドル化を図る? でも、昨今おバカキャラが許されるのは外タレか不思議ちゃん系。この娘はどちらにも該当しないし……。」
それに対して、文は口元に手を当ててブツブツと何事かを呟いていた。
文は物事を考えるとき独り言をいう癖があるのだ。
チルノにはその内容を理解しているのかどうか定かではないが――おそらくわかっていないだろう――じっと、文の演算が終わるのを黙って見つめていた。
「よしっ、これならどうでしょうか?」
演算が終了した合図を示すかのように、文は手をポンっと叩く。
「なになに!?」
瞳から星でも零れ落ちそうなくらいの勢いで、チルノは文に問いかけた。
それに気を良くしたのか、文はどこからともなく取り出した芭蕉の葉で口許を隠すようなポーズを取る。
そして、芭蕉の葉を高らかと天に掲げた。
「題して『幻想誘発作戦』です!」
「おぉーー」
まるで軍師のような様相の文につられて、チルノは自然と文に向かって拍手していた。
「っで、どういうことをするの?」
期待が臨界に近いのだろう、機器とした表情を浮かべてチルノは夢中になって文に続きを促す。
「これは私の新聞にあるワンフレーズを追加することによって、あなたを単なる『おバカキャラ』から『おバカ萌えキャラ』にクラスチェンジさせることが可能となるのです。」
文は自信満々に胸を張って断言する。
しかし、チルノはというとテンションは暗黒の木曜日すら凌駕するというくらい大暴落を起こしていた。
「はぁ~……、アンタに相談した私が間違ってたよ。あの新聞で何ができるって言うのさ。」
「何を言いますか、文章が引き起こす幻想の力というものをあなたは全く理解していませんね。」
このテンションの落差にもたじろがないというのは、流石記者というか、伊達に長生きではないということなのだろう。
文は字義通り子供諭すような口調でチルノに対する。
「いいですか? よく知っておいてくださいね。文字の魔力と云うものを……」
そういって文はチルノに微笑みかけた。
「う、うん……。」
それに気圧されるようにチルノは素直に頷く。
文は満足そうにチルノを見つめた後、今度はこちらを向いた。
「『氷を使う妖精チルノ(妖精)』という部分をこう書き換えて記事にするんです『氷を使い妖精チルノ(CV.金田まひる)』……それだけで十分ですよ、ねぇ?」
文はそう画面越しに朗らかに微笑むのだった……。
それと意識して見れば花映塚(むしろ文花帖)のネタバレが含有しておりますが、内容にはまったく関係性がないのでスルーしてもらっても大丈夫です。
幻想郷の端っこに、ひっそりと存在する沼がある。
ほとんど誰も気に掛けないような場所にある沼は、常に青々しい湖面を空に向けて佇んでいた。
青々しいといっても、水が青いわけでもあおこが大量発生しているわけでもなく、蓮の葉が沼に蓋をしてしまったかのように繁茂しているのである。
……そこに妖精の影がひとつ、蓮の葉に上に乗って揺らめいていた。
その妖精の名はチルノ。
氷精とは思えないほど活発な彼女が、なにやら思いつめたような表情でそこにぼーっと突っ立っているのである。
チルノが思案に耽るなんて……と思うかもしれないが、彼女だって考え事に浸るときもあるだろう。
確かにそれがクロマグロが泳ぎを止めるときの頻度くらいだとしても、皆無だということは流石にない。
たまたま偶然何の因果か今日はそういう日だったに過ぎないのだ。
きっと『猿山のサルが最も多く視聴するテレビ局』なんかに思いを馳せているのであろう。
「はぁ~あ……」
チルノはちょっとだけ物憂げに溜息をつく。
そんなに猿山の視聴率が気になるのだろうか?
「どうしました? 溜息なんかついて。」
思案に耽っているチルノに対して上から声が掛けられる。
「なぁんだ、またアンタか。今日は新聞のネタになるようなことはしないわよ。」
邪魔をしないで欲しいといわんばかりに、チルノは手で払う動作を行う。
「それは心外です。私だってたまには誰かを心配して声を掛けたりするんですよ?」
「へぇ~。」
にっこりと品の笑みを浮べる文。
だが、いくらチルノでもそれなりに学習能力はあるのだ。胡散臭そうな表情を崩すことなく相槌を打った。
「まあ、1人で悩むよりも私に相談するべきだと思いますよ? 年長者としてアドバイスできることも少なくないわけですし。」
放っておいたら揉み手でもしそうな勢いで文は告げる。
どこから見ても「ネタにするぞっ!」オーラが出ているのだから、これはチルノの猜疑心を悪化させるだけだろう。
「……そうね、レティもまだ出てこないし、アンタに相談しようかしら。」
って、チルノ!
「……それで、どんなことを悩んでいたのですか?」
チルノに見えないくらい素早く腰だめにガッツポーズを取った後、文はチルノに晴れ晴れしいくらいの笑顔で話しを進める。
「実はね……」
チルノは再び考え込むように下を向く。
無論、文の手にはさりげなくメモ帳が握られているのだが、それに気付く気配は全くない。
「ほらっ、私って『おバカ』とか『⑨』とか色々言われているけど、『可愛い』とか『萌へ~』とかって言葉はあまり聞かないの。」
「はあ。」
風が吹いたらメモを取り落としそうなくらい、力ない返事を文は返す。
それを気に掛けることなく、チルノは熱っぽい様子で一気に捲くし立てた。
「私だって『チルちゃん』とか『チルのん』とか『チル様』とか万人に言われたいわけよ! どうにかならないかな?」
「…………………………」
そこから生まれる沈黙という名のブリザード。
これをチルノが意識的に起こしたというのなら大した氷精であるが、爛々とした瞳で文を見つめている辺り無意識のことなんだろう。
……しかも、相談したことで解決すると疑っていないところがなんともチルノらしい。
「可愛いといわせるにしても、このおバカキャラは既に定着してしまったし払拭するのは無理。それなら、おバカキャラを生かしてアイドル化を図る? でも、昨今おバカキャラが許されるのは外タレか不思議ちゃん系。この娘はどちらにも該当しないし……。」
それに対して、文は口元に手を当ててブツブツと何事かを呟いていた。
文は物事を考えるとき独り言をいう癖があるのだ。
チルノにはその内容を理解しているのかどうか定かではないが――おそらくわかっていないだろう――じっと、文の演算が終わるのを黙って見つめていた。
「よしっ、これならどうでしょうか?」
演算が終了した合図を示すかのように、文は手をポンっと叩く。
「なになに!?」
瞳から星でも零れ落ちそうなくらいの勢いで、チルノは文に問いかけた。
それに気を良くしたのか、文はどこからともなく取り出した芭蕉の葉で口許を隠すようなポーズを取る。
そして、芭蕉の葉を高らかと天に掲げた。
「題して『幻想誘発作戦』です!」
「おぉーー」
まるで軍師のような様相の文につられて、チルノは自然と文に向かって拍手していた。
「っで、どういうことをするの?」
期待が臨界に近いのだろう、機器とした表情を浮かべてチルノは夢中になって文に続きを促す。
「これは私の新聞にあるワンフレーズを追加することによって、あなたを単なる『おバカキャラ』から『おバカ萌えキャラ』にクラスチェンジさせることが可能となるのです。」
文は自信満々に胸を張って断言する。
しかし、チルノはというとテンションは暗黒の木曜日すら凌駕するというくらい大暴落を起こしていた。
「はぁ~……、アンタに相談した私が間違ってたよ。あの新聞で何ができるって言うのさ。」
「何を言いますか、文章が引き起こす幻想の力というものをあなたは全く理解していませんね。」
このテンションの落差にもたじろがないというのは、流石記者というか、伊達に長生きではないということなのだろう。
文は字義通り子供諭すような口調でチルノに対する。
「いいですか? よく知っておいてくださいね。文字の魔力と云うものを……」
そういって文はチルノに微笑みかけた。
「う、うん……。」
それに気圧されるようにチルノは素直に頷く。
文は満足そうにチルノを見つめた後、今度はこちらを向いた。
「『氷を使う妖精チルノ(妖精)』という部分をこう書き換えて記事にするんです『氷を使い妖精チルノ(CV.金田まひる)』……それだけで十分ですよ、ねぇ?」
文はそう画面越しに朗らかに微笑むのだった……。