<注意>
香霖堂での設定とか、全力で無視してます。
『魔理沙は捨て子』設定でGO!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どうだ、私のは?」
「すごく・・・・・大きいわ」
「触ってみるか?」
「え・・・・・・・・・・・な、何これっ、柔らかっ・・・それに、あったかい・・・・」
「霊夢は『とっても気持ちいい』って言ってくれたぜ」
「こんなの・・・・私だってそう思うわよ」
「試して・・・・みるか?」
「・・・・・・・そのために見せたんでしょ?」
「いやまぁ」
一人暮らしの魔理沙の家のベッドはなぜ無駄に大きいんだろう・・・・・?
私より小さな体のくせに、私の家より乱雑として足の踏み場もないくせに、ベッドだけは私の家のそれよりも大きいし立派。
「でも、これなら二人で寝ても大丈夫だろ?」
「そうだけど・・・・・何でこんな大きいモノ持ってるのよ。どこかで拾ってきたの?」
「違うって。こいつはただのお下がりだよ」
「・・・・変な仕掛けとかないでしょうね」
「回る方がよかったのか?」
「普通でいいのよ、普通で」
「失礼な、私と同じでこいつも普通だぜ」
「・・あんたのどこが・・・・・・・・・いや、いいわ」
お下がりねぇ・・・こんなダブルベッドを使ってたって事は、誰か体の大きい人と一緒に寝てたって事よね。一体誰?・・・・・・・
いいや、やっぱり追求するのはやめておこう。魔理沙はあまり昔話をしたがらない奴だから、訊いたって時間とノドの無駄よね。
でも私が唯一知ってる事・・・即ち魔理沙が唯一教えてくれた事といえば、彼女は両親の顔を知らないという事のみ・・・・・・
「じゃあ、私はそろそろ寝るぜ」
「私も寝るわ・・・・・どうせ明日も早いんでしょ?」
「あー、先に言っておくけど寝言と歯軋りは禁止な。私が眠れない」
「寝言はともかく、私は歯軋りなんてしない!・・・ところで、億に一つもないけどもしも私の寝相が悪かったら?」
「無意識の蹴り一発につきマスタースパークってとこで」
「・・・・安心して。その辺はどこぞの野良よりよっぽど弁えてますから」
大きなベッドの端に入る。
堂々と真ん中に行きたいけど真ん中には魔理沙がいるし、行けばよからぬ事を考えてるんじゃないかって思われそうで、それはそれでなんだか気に入らない。
端の方にいても、ベッドから落ちさえしなければ大丈夫。
「明日・・・ていうか今日は4時起きなー・・・・・・」
「またずいぶん早いのね?」
「合成に時間のかかる薬があるんだよ・・・ふぁぁ」
「いいけど・・・・言いだしっぺが寝坊なんかしない事。寝坊したら蹴るわよ?」
「・・・・・できれば裸足で」
「もちろん、 ブ ー ツ 履 か せ て い た だ き ま す わ ♪ 」
魔理沙に向けたにこやかな笑顔は、自分で言うのもアレだけど相当引きつっていたと思う。笑顔というか『笑顔に見える何か』ね。
今日・・・昨日から魔理沙の家に泊り込んでの魔法研究。とうに日付は変わってしまい、疲れと眠気でイラついてくるのも当たり前。
終了の目処が立っているのが救いと言えば救いなんだけど・・・
そういえば、もし私が寝坊なんかしたらどうなるんだろう・・・マスタースパーク?ブレイジングスター?それともドラゴンメテオ?
・・・・・・それはないか。
ここには足の踏み場もないほどの蒐集品が眠っているのに、スペルカードの一発で全てを無駄にするなんて事はしないはず。
せいぜい鼻をつまむか大きな音を立てるくらい・・・そう考えると急に身も心も軽くなってきた。
意識が曖昧になり、体がありとあらゆる力を忘れようとしている。
瞼がだんだん重くなり、頭がありとあらゆる感覚を遮断しようとしている。
横では魔理沙が何か言ってるみたいだけど、どんな顔で何を言っているのか全然分からない。
どうせ『お前こそ寝坊するなよ』とか言ってるに違いない・・・・・でも返事をする気も起きなくて・・・・・・・・・
「おや・・・・すみ・・・・・・・・まりさ・・・・・」
一言、そう言うのが精一杯で。ベッドの温もりと柔らかい感触に包み込まれ・・・・・・・・・・・・
―――・・・・・・・・ぁ・・・・
・・・・え?
―――・・・・ま・・ぁ・・・・・・
・・・・何?何の音・・?・・・・・・・・・・いや、これは――
―――みー・・・・ぁ・・・・・・・・
・・・・これは――声?誰かの声?それも、どこか近くで・・・・・・
―――み・・・・まぁ・・・・・・・・・・
ああ、なるほど。
音のように聞こえたのは魔理沙の寝言だった。
何の夢を見ているのか知らないけど、こっちに向けてきた寝顔はとても幸せそう。
もう・・・寝言は禁止だって私には釘を刺してたくせに・・・・・・でも寝顔がかわいいから許してあげる。
―――みーままぁ・・・・・・
『みーまま』?何の事だろう?
どうせ寝言だからまともな言葉にはなっていないんだろうけど・・・
―――みーまま・・・ぎゅっ・・・・・してぇ・・・・・・
・・え!?ちょ、ちょっと魔理―――――
―――みーまま、ぎゅーっ・・・・・・
何よ。
何なのよ。
魔理沙が寝言で言ってる『みーまま』というのは、どうやら誰かの名前らしい。
それはいい、いいんだけど・・・
それで何で私に抱きついてくるの・・・・・・?
―――んみゅぅ・・みーままぁ・・・・・・・
私を誰かと勘違いしてる・・・?
その言葉遣いや表情はまるで子どものようで、子どもの頃の夢を見ているのかも知れない。
・・・・・・・・・・・・
・・・・抱き返してやればいいのかしら・・・?
魔理沙を起こしてしまわないように、そっと背中に腕を回す。
・・・私より小さいって事は普段見てるから分かるけど、腕を回してみるとその小ささがよく分かる。
こんなのが妖怪にも肩を並べるほどの実力者だなんて。
こんなのが『あの』マスタースパークの使い手だなんて。
―――ん~~~~~~~~~~♪
魔理沙のカラダががこんなに細いなんて。
魔理沙のカラダがこんなに柔らかいなんて。
呼吸が荒くなっているのが分かる。
鼓動が激しくなっているのが分かる。
いつもの理不尽な魔理沙とは全然違う。
時折見せる女の子らしい一面とも少し違う。
ひょっとしたらこれが小さい頃の魔理沙・・・・・・とってもかわいくて、とっても甘えん坊で・・・
ああもう。これじゃ気になりすぎて眠れない・・・・・
―――ん~~、みーままぁ・・・・・・
え、何?今度は何?
―――みーまま、ちゅぅ~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・あ、ちょっと魔理沙、寝ぼけてるからってこんな・・・・・・
ぁっ・・・・・・・・・・・!?
ゴキャッ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!?」
「おー。目覚めたか」
「・・・ッだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」
何?何?今度は何?
よく分からないけど、頭が割れるように痛い。痛いというかジンジンする。
よく分からないままバネのように飛び起きると、そこには既に着替えた魔理沙の姿。
手には何か丸い物を持ってきょとんとした顔で・・・って・・・・・・
「あ・・・・だぁぁぁぁぁ・・・・・・頭が割れるぅぅぅぅぅぅ・・・・!!」
「寝坊だぜ、アリス。2秒遅れた」
「2秒・・・ってそんな厳密な・・・・・・・・じゃなくて!一体何したのよっ・・・・!?」
「ああ、流石にマスタースパークは家が吹っ飛ぶからまずいんでさ。手近にいい物(天儀)があったんで使ってみた」
「そ、そう・・・・・・魔理沙も少しは(自分の事だけは)省みるのね・・・」
なるほど。要するに攻防一体の魔法玉を私を起こす為の鈍器として使ったわけね。
・・・・・魔理沙の馬鹿。馬鹿。ホムーラン級の馬鹿。
私の頭が割れても困るけど、そんな貴重なマジックアイテムをそんな事に使うなんて・・・・・・・
「そんな事よりほれ、早く着替えちゃえよ。もうひとふんばりで研究終わるんだから」
「・・・わ、分かってるわよ!」
ああもう。なんだか微妙に腹立たしい。
魔理沙が先に起きてたからでも、魔理沙に殴られたからでも、マジックアイテムで殴られたからでもない。
その腹立たしさは薄暗い靄のような物に包まれて判然とせず、自分の心の問題なのに何も分からない。
でも、腹立たしいのに魔理沙に当たってはいけないような気もして。上海を連れて私は寝室を飛び出していた。
「ねぇ、魔理沙」
「んー?」
別室で着替えを済ませ、朝食を摂る頃には頭の痛みは引いていたし魔理沙へのムカつきも消えてなくなっていた。
結局アレは何だったのか、分からない。分からないけど、あえて掘り返す気は起こらない。
今、気にならないんだったらそれでいいや・・・・・・カリカリに焼いたトーストにバターを塗って、一口パクついた。
「そう言えば今まで聞いた事なかったけど・・・あんたに魔法を教えたのって・・・・・・」
「ああ、それは私が教えなかったからだなぁ」
「あんな凶悪なマスタースパークとか、天儀の悪い使い方を教えたんだもの。まともな奴じゃなさそうね?」
「・・・・・魅魔様を悪く言うな。例えお前でも容赦しないぜ」
「ッ・・・・・・!?」
紅茶の入ったカップを叩きつける音がリビングに広がる。
普段は飄々とした印象の魔理沙なのに、今私に向けている視線は冷たく、鋭く、真っ直ぐで。
対応の一つでも間違えたら即座に魔砲が飛んできそうなオーラすら漂わせている。
「あ、ちょ、ちょっ・・・・・ごめん魔理沙。軽率だったわ・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・次から気をつけろよな」
「ん・・・・ごめん、魔理沙・・・・・・・・・・・・・で、あんたに魔法を教えたのは魅魔っていう人なのね?」
「・・・あ、あぁ・・・・・・・・正確にはヒトじゃないんだけどな」
まるで秋の空か山の天気のように、魔理沙の機嫌はあっという間に元に戻っていた。
・・・ああ、これはいわゆる乙女心という奴なのね。魔理沙も一応は女の子だし。
それにしても、魔理沙がここまで本気で怒り出すなんて・・・・・・?
「魅魔様は・・・確かに私の師匠だけど、私のお母さんみたいな感じでもあったよ。とっても綺麗で、とってもカッコよくて、とっても強くて・・・・・・ちょっと厳しかったけど、とっても優しかった。下手な人間よりよっぽど人間らしかったな」
「・・・・じゃあ、あの大きなベッドも天儀も、その魅魔さん・・・からのお下がりなの?」
「ああ。お下がりの品は他にも色々あるけど・・・・・・って、ちと喋りすぎたな。もう何も喋らんぜ」
それっきり、魔理沙はその人(?)の事は一言も話そうとしなかった。
それとなく聞いてみてものらりくらりと逃げるだけ。でも、さっきの返事と今の反応が私に全てを教えてくれる。
魔理沙にとって彼女は、育ての親であると同時に魔法の師匠。では魔理沙の本当の両親は・・・・・・
詳しい状況はともかく、結果として魔理沙は拾われた。そして育てられた。それでいいんだと思う。これ以上突っ込むのはヤボというものよ。
それに、短い間だったけど語っている時の魔理沙ったらとても嬉しそうな顔で・・・!
・・・・・・でも、気になる事はまだ一つあって・・・
「じゃあ魔理沙、『みーまま』って・・・・・・・・・」
「・・・・・・・!?」
「さっき言ってた魅魔さんの事かしら?」
「ア、アリス!?お前ちょっ・・・・・待っ・・・・・・・・・・」
「昨夜は大変だったわぁ・・・魔理沙ったら、あんなに激しく」
「くぁwせd・・・・・一体何なんだぁ・・・・・・・・!?」
「うふふふ・・・・あんたがお話を打ち止めするなら私・も・よ」
目をぐるぐる巻きにしていっぱいいっぱいの魔理沙。こういう一面も持ってるのねぇ・・・
ああ・・・・・あと一晩だけ魔理沙と添寝したいな。
(続けられないorz)