月の綺麗な~こんな夜には~♪
っと、いらっしゃい
え、焼き鳥?
置いてないよ
ここは焼き八目鰻屋だからね
それでいいからくれ?
わかった、わかったから焦らないの
ところでお客さん、なんで焦ってるの?
・・・目が見えなくなった?
で、赤提灯の明かりだけが見えたからやってきた・・・と
それは災難だねぇ・・・♪
え、なんで嬉しそうなのかって?
そりゃ、お客さんが来たら嬉しいでしょう?
八目鰻は目に良いって評判だから、お客さん案外幸運かもね
え、新聞に載ってたところかって?
生憎と、新聞なんて小さい文字が並んだものは読めませんて
そんな暇あるなら歌ってたほうがいいじゃん
え、そうは思わない?
お客さんも分からず屋だねぇ・・・
そうだ、じゃあ一曲聞いていきなさいよ
追加料金?いらないよ
拒否権?そんなものは無いわ
だって貴方は・・・
『私の歌が聞こえる範囲にいるのだから・・・』
私はそんな物じゃないわ
え、後ろ?
それはひょっとして、着物を着ていて、頭に……
いらっしゃい、ここは焼鳥屋よ。
今から焼くから待っててね。
あら、逃げちゃダメよ。
焼鳥屋の後は、焼人屋を始めるんだから。
え、八目鰻は本当は目が二つ、他は模様だって知ってるかって
あははははは、お客さん馬鹿にしないでよ~
『うちのは本当に目が八つあるんだから……』