紅魔館の一日は陽が沈む頃に始まり、空が白む頃に終わる。
幼い吸血鬼の当主を中心に据えれば勿論そうなるわけで、館のメイドはその大半がそれに従わされる。
そして、ここにも一人。
(・・・・・お嬢様、おやすみなさいませ)
幼き月の寝顔を慈愛の表情で見つめ、静かに一礼をして寝室を去る。
幼き当主・レミリアが眠ってしまえば、彼女が目を覚ますまでの間はかなり自由が利くのだ。
その自由な時間を使い、メイド長・咲夜は自室に戻らず別の部屋に向かっていた。
「どうしたんですか?咲夜さん」
「え?い、いやぁ、ちょっと・・・・実は・・・・・・・」
赫々然々。
咲夜は紅魔館の門番、美鈴の部屋に来ていた。
純粋な人間である咲夜にとって、人間味の強い美鈴は部下であると同時にいい話し相手でもあった。
自分の周りは妖怪か魔女だらけ。吸血鬼の姉妹へは畏れ多くて軽い話などをできるとは思えないし、図書館に巣食う魔女も思考が飛躍しているように見える。
そして最強のメイド長として尊敬と畏怖の念で見られている咲夜の事、部下のメイドたちとは対等な話など望めるはずもなく・・・・・・気がつけば、メイドではなく咲夜に近い実力を持つ美鈴だけが彼女の愚痴、相談事を真摯に受け止めてくれていたというわけだ。
赫々然々。
「・・・・そういうわけで、結構辛いのよ。あんたならいろいろ知ってるんじゃないかと思って」
「ふぅん・・・・・・でも咲夜さん、『コレ』初めてだったんですか?」
「・・・もしかして・・・・・・・・・意外?」
「意外ですよぉ。私だって何度か経験済みなんですから、咲夜さんならそれこそ数え切れないくらいかと・・・・・・」
「そ、そう・・・・・・・・・・・」
目を輝かせながら正直に答える美鈴を見て、羨ましいような恥ずかしいような気がしてきた。
見た目、自分よりも年下に見える彼女が実は経験者(しかも複数回)で、メイド長たる自分が未だ経験なし・・・
紅魔館に来る前の尖りに尖っていた自分なら、この瞬間に美鈴をバラバラにしてたかも・・・・・・
そんな事を考えつつ目をそっと背ける咲夜。と、そこへ美鈴が咲夜の手に手を取って目をいっそう輝かせてきた。
「!?」
「ねぇ、咲夜さん。私でよかったらお手伝いさせてもらえませんか・・・・・?」
「へ・・・・・・!?」
「そんなに辛そうな咲夜さんを見てると、こっちまで辛くなってきちゃいますよ・・・・・」
「そ、そ、そこまでしてもらわなくっても、私一人で大丈夫よ。助言とあんたの気持ちだけ頂戴しておくわ」
「でも・・・・・私だったら、咲夜さんをいっぱい気持ちよくしてあげられるんです!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なぜこの娘はここまで断言できるんだろう。
なぜこの娘は自分に関わりたがるんだろう。
なぜこの娘の瞳はこんなに綺麗なんだろう。
自分には、分からない。
美鈴は武術の達人だ。素手で人体を傷つける事についての達人と言ってもいい。
ならばその対極、素手で人体を癒す事についても達人という事なのだろうか?
よく分からないが、とにかく美鈴の熱烈な申し出に気圧され、思わず後ずさりしていた咲夜の脹脛にベッドの角が引っかかる。体を支える物は手近になく、かといって踏ん張り返せば前につんのめって美鈴に抱きつく事になる。
今の雰囲気で美鈴に抱きつくと何をされるか分かった物ではない・・・やむを得ず、勢いに身を任せて咲夜はベッドに尻餅をついた。
「きゃっ!?」
「大丈夫ですよ、咲夜さん・・・・・痛くありませんから」
断りきれない雰囲気ではある。
今ここで美鈴の申し出を却下すれば、流石に刺されはしないだろうがその後ずっと気まずくなるのは間違いない。
それに、咲夜には断らなければならない理由があるわけでもない。むしろ人体に精通しているのであろう者が『痛くない』と言っているのだから
断る事にメリットなど何もないはずなのに・・・・・・
「でも恥ずかしいわ・・・・・・・こんな事、独りでもできるわよ」
病気や怪我でもないのに自分の身体を他人に預けるというのは心に引っかかるものがある。
自分の身体は自分が一番よく知っているし、ましてやプライドの高い咲夜は安易にそういう事をしたくなかったのだ。
「私、他のメイドさんにもよく頼まれてるんです。みんな気持ちいいって言ってくれますよ」
「・・・・・・・・・本当?」
「ええ。流石にレミリアお嬢様とかフランドール様には畏れ多くてできませんけど・・・今度パチュリー様にもしてあげようかって思ってるんです」
「・・・本当に気持ちいい?」
「自信なら・・・・・あります」
美鈴の細くしなやかな指が、まるで獲物を見定めているかのごとくわきわきと動く。
あの指で、そして美鈴が自負する技術でしてもらったらどれほど気持ちいいのだろう・・・・・
決して小さくはない部屋に少女二人、咲夜の心拍はだんだん速くなり、美鈴の顔にもうっすらと紅がさす。
もはや、断るという選択肢は咲夜の頭の中から消滅し始めていた。
「すごい、咲夜さん・・・・・・こんなに固くしちゃって」
「あ、あまり時間かけないで・・・さっさと終わらせてほしいもんだわ・・・・・」
ベッドに腰掛ける咲夜の固いしこりを服の上から撫で、顔をさらに赤らめて咲夜の目の前に傅いて美鈴が呟く。これから、咲夜が気持ちよくなるまで自分の物となる・・・これで心ときめかないはずがない。
最初は指先で軽く触れていただけだったのがだんだん指で撫で回すようになり、ついには服越しにそこを掴んできた。
「あっ・・・・・!」
それだけで咲夜の身体は敏感に刺激を感じ取り、背筋から寒い物を全身に通す。
思わず背筋が仰け反り、不安定になる身体を支えたのは美鈴の長い腕だった。
「っとぉ・・・咲夜さん、大丈夫だと思うけどもし痛かったら遠慮なく言ってくださいね」
「ええ・・・・まずはあんたが痛くしてくれない事を祈っておくわ」
「祈ってて下さい。絶対に応えてみせます」
自信満々に胸を張る美鈴の姿が随分頼もしく見えた。
確かに自分より背が高くてスタイルもいい彼女だが、今ほど頼れる存在だと感じた事はない。門番の仕事をしている時よりも頼り甲斐があるような気さえする。
全身の力を抜き、咲夜は改めて己の身体にかけられた美鈴の手に目をやる。
――大丈夫。この子を信じよう。
――この子なら間違いなくやり遂げてくれるはず。
二人の位置はさらに近づき、もはや普通のトーンの声で喋ってはうるさくなってしまうかも知れない。
せめてもの心配りで『ぃぃゎょ』と小声で囁く。美鈴の耳にもそれが届いたようで、小さく一つ頷くとしこりを掴む指にグッと力を込めた。
「あっ!?」
咲夜は同じ反応を二度示した。背を仰け反らせ、身を震わせほんの僅かな痛みを伴う刺激に顔を歪め・・・・・・体勢を崩さずに耐えた事だけがさっきと違っていた。
慌てた顔を見せても手だけは放さない美鈴。包み込む指に力を込めつつ、押し付けるようにゆっくりと擦り動かす。
「うくぅっ・・・・・!」
三度咲夜の身体が跳ねる。力の入らない上半身を眼前の美鈴に委ね、首から肩に腕を回して思わず抱きしめていた。
流石に美鈴の動きも止まり、手を放して何となく抱き返してみたりする。
「だ、大丈夫ですか?咲夜さん」
「大丈夫・・痛くないわ・・・・・・ちょっとビックリしただけよ」
「よかった・・・・・・ところで咲夜さん?」
「何?」
お互い抱き合ったまま、言葉を交わす。
ものすごく不自然な体勢であるのだがまさか突き放すわけにはいかず、
キスの一つくらいおかしくない体勢なのだがそうするわけにもいかず、
仕方なく不自然な体勢のまま言葉を続ける。先に口を開いたのは美鈴の方だ。
「気持ちよくなったら・・・絶対我慢しないで下さいね」
「・・わっ、分かってるわよ・・・・・あんたに言われなくたって」
「それならいいんです・・・・・そしたら私、もっと気持ちよくしてあげますから!」
「・・・・っ・・・・・・・・・・・!!」
美鈴の満面の笑みを間近で見せ付けられては『完全で瀟洒な従者』も形無しである。
酒でも飲んだかのように顔を真っ赤にして、目の焦点は定まらず、未だ収まりのつかない身体を美鈴に晒してほんの少しの不安混じりの期待で待つくらいの事しかできない。
そして、そのわずかな不安でさえも緊張混じりの大きな期待に飲み込まれようとしていた。
今より気持ちいい事をされたらどうなるんだろう?
美鈴に思い切り甘えたらいいんだろうか?
美鈴はどんな顔をして応えてくれるのだろうか?
咲夜の期待が尽きる事はない。
「じゃあ咲夜さん、続けますね」
「・・・え?あ、あぁ・・・・お願いするわ」
美鈴の言葉で意識を引き戻され、美鈴を抱きしめていた腕を慌てて放す咲夜。
解放された美鈴は嬉々として咲夜の身体に腕をかけ、例の精妙かつ絶妙な力加減で咲夜を揉みしだく。
「うぅっ!?や、あ・・・・・美鈴・・・・すごいっ・・・・・・・・・・!」
「咲夜さん・・・もっと、声出してもいいですよ・・・・・・」
「ん・・・・・・んっ!や、ぁぁぁ・・・・・・・・美・・・・リ・・・・・・・・・そんな、激しくぅ・・・!」
美鈴の手は時に大きく、粗く。または小さく、細かく。
まるで咲夜の心と身体を読み取っているかのように咲夜を揉み、擦り、時に扱きたてる。
最早咲夜は抗えない。刺激を受け、意識を集中させる事は叶わず、身体に力を入れる事ができなかった。それに、身を委ねていれば未知の感覚を得られるのだから下手に抵抗しない方がよかったのだ。
幸いにも美鈴の宣言どおり、咲夜は痛みらしい物をほとんど感じていない。感じるのは全身を震わせる、この奇妙な感覚のみ・・・そして、美鈴の手の動きがだんだん激しくなってきているのを咲夜は感じ取っていた。
「んぅぅっ・・・・・だ、だめ・・・もう・・・・やめっ・・・!」
「咲夜さん、もう少し・・・・もう少しですからっ・・・・・・・・!」
「やっ・・・・我慢・・・できないっ・・・・・・・・・・あっ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
再び、安定を保つ事のできなくなった上半身を美鈴に預け、涙を流し歯を食いしばる咲夜。
その身体は彼女の意志に反して小刻みに痙攣し、無意識のうちに美鈴の唇を求める。
美鈴はそんな咲夜を聖母のごとき微笑で見つめ、咲夜の唇を頬で優しく受け止めてやった。
「はぁ・・・・・・・・ありがと美鈴、スッキリしたわ」
「いいんですよ、これくらい。また辛くなったら言って下さいね」
「・・・今度は私がしてあげようかしら?」
「えぇっ!?い、いいんですか・・・・・?」
乱れた服を正し、ベッドに腰掛ける二人。
咲夜の顔に疲れの類は見えず、メイド服を直してしまえばいつもの『完全な瀟洒な従者』そのものだ。
ああ、こうだ。
やはりこの人は皆の前ではこうあるべきなんだ。
咲夜も人の子、辛い時もあるだろう。
だが彼女の弱い顔は、少なくとも他のメイド達には見せてほしくない。
美鈴は、咲夜には常に強く気高く美しい少女であってほしいと願うのだ。
だからメイド長の威厳を再び身に纏った咲夜を見て美鈴は内心満面の笑みで小躍りし、しかし表向きは咲夜の突飛な発言に目を丸くしていた。
「私がそう言ってるからいいのよ。それに、これのお返しっていう意味もあるし」
「はぁ・・・・・じゃ、その時は甘えちゃおうかな」
「いつでも、ってわけにはいかないけどね。お互い忙しい身だから仕方ないけど」
「えぇ。その時が来るを楽しみにしてます、咲夜さん!」
「ん・・・・・・じゃあね、美鈴」
軽く手を振って美鈴の部屋を後にする咲夜。まだレミリアが目を覚ますまでは時間があるから、自室で寛げるだろう。
部屋への道すがら、なんとなく首を曲げたり捻ったりしてみる。
――軽い。あれほど重かった肩が、首筋が、まるでなくなってしまったように軽い。
腕を回してみても、肩を回しても何も違和感を感じない。これなら料理に投げナイフにメイドの仕事に、遺憾なく腕を振るう事ができるだろう。
全ては美鈴のおかげ・・・・自力ではどうにもならなかった咲夜の肩こりは、あっという間に消えてなくなっていた。
まぁ、誤解できちゃうけど、直接的表現がなければいいんじゃないでしょーか。
俺はただ単に読みながら別の妄想をしてただけだぁぁぁ!!!(赤い水溜りにおぼれながら
個人的にはOKですが、こればかりは個人個人の
好みの問題なので、明確な答えを出すのは難しいと思いますよ。。
創想話がエロ描写容認の場になる事を望んではおりません。
ここしか創作の場がない訳でもないのだから、住み分けて欲しい。
この作品については、まぁオチが読めるので。それにしてもやや描写があからさま過ぎますが。
しかし東方シリーズでは、どうにもネチョ表現は考えられない。
そういう空気じゃないように見えるし……いや俺の浪漫回路がスペック貧困なだけかもしれないが。
肩揉みって結論に持ってくにはちょっと強引過ぎるかも・・・.
こっちにある以上,話の面白さも期待しちゃうので,
どうせなら,相応の場所でのネチョい作品の方を期待してます.
この辺りで察しがつきました。素人ですがスキルありますんで。
でもめーりんならゴキゴキ整体くらいやってくれそうな気もw