私を閉じ込めているのはこの地下室や雨なんかじゃない。館のみんなでもない。閉じ込めているのは私自身。私の中で今も疼き続ける、渇き続けるお姉様との想い出。私を封じる私のことば、あなたはいくつまで解けるかしら?
追いやるのは今はもう還らない愛情の残滓、赤く熱くて蒼く冷たい、甘くて苦い。
「クランベリートラップ」
これは私を隔てる真紅の線、越えることの叶わない、誰も越えさせられない滅びの断裂。
「レーヴァティン」
ここにいるのは私だけ。私はずっと話し続ける、たくさんの私に向かって。私にもどれだけいるのか判らない私。
「フォーオブアカインド」
振り向けば後ろの正面に立つのは私の過去、我と我が身を捕らえた幾重もの後悔の檻。
「カゴメカゴメ」
来るはずのない誰かをずっと待ち続け、偽りの希望に甘美に迷っているのは迷路を生んだはずの私。
「恋の迷路」
そして、楽しいことも私は思い出す。それは目まぐるしく移り変わる虹色の花火のような記憶、でも檻の中では今の痛みをいっそう深くするばかり。
「スターボウブレイク」
四方の冷たい壁は、叫びを跳ね返して増幅するばかり。悲鳴も絶叫も、誰にも届きはしない。そう、あなたのも。
「カタディオプトリック」
未来をなくしたあの時からずっと、私が見るのは過去ばかり。今は暗闇の中だから。正確に正確に、時は心と身体を切り刻む。私の爪を針にして。
「過去を刻む時計」
…ここまで近づいて来られたのは初めてね。でも、あなたもこれでいなくなる。あなたは弾幕を避けきれず、そして誰もいなくなるの。
「そして誰もいなくなるか?」
あなたはこれでいなくなる。…でも、もしもいなくならなかったら。そして、私の495年を全て受け止めてくれたなら。そんな誰かが現れたなら、私は約束から解き放たれる。お姉様も心の中の私から解き放たれる。この、私にも止められない力を止める誰かが現れたなら。
「495年の波紋」
誰か、私をこの無限の檻から解き放って…痛みを感じる私すら、この狂気の中に消えてしまう前に。