人間、生きていくためには働かなければならない。
否、人間に限らず妖怪もまた、食料調達のために働く必要はある。
しかし、物事には例外なく例外というものが存在する。
そう、幻想郷にも働く気など博麗神社の賽銭ほどもないNEETが数名存在するように。
「永琳、夕飯はまだかしら?」
とりあえずニートといえばこの方だろう。ぬばたまのニート、蓬莱山輝夜である。
「いくら不死でも、昼食の30分後に夕食を食べたら体に悪いですよ、姫」
輝夜は永遠を操る。もちろん永遠に生きる、というか永遠そのものと言ってもいいかもしれない。
それゆえ、大体暇を持て余している。
「けちねぇ、30分も頑張って暇をつぶしたのよ?じゃあ、朝食はまだかしら?」
「どこぞの健康体幽霊じゃあるまいし、そんなにおなかが空いたのですか?」
「そういうわけじゃないんだけど、暇なのよ。」
「永遠を生きるお方がただの数時間も待てないでどうするんですか。」
「それとこれとは別よ。」
むしろ、永遠であるからこそ、一瞬々々が輝夜にとっては永遠の時間でもあるのだ。
「とにかく、もうしばらくお待ちください。お部屋で休んでいらしたらどうです?」
「えー、暇ー。永琳どこか行きましょう?」
「…私はこれから食事の支度をするところなのですが。」
「どこか行きましょう?」
「…」
「ど こ か 行」
「はあ…、で、どちらへ?」
「月」
「…」
こうして月の頭脳は毎日悩んでいるのであった。
組織の頂点に立った者というのは、往々にして働かなくとも暮らすことができる。
次は紅のニート、レミリア・スカーレットである。
もちろん、朝6時に起きるなどと言うことはしない。起床はだいたいその12時間後だ。究極の社長出勤と言えよう。いや違うが。
「咲夜」
「はい、お嬢様」
しかし、今日の起床は朝の方の6時であった。それでも、咲夜は呼ばれれば文字通り一瞬で現れる。
完璧なメイドである。ただ、今の咲夜は若干慌てているようである。
「出かけるわ。付いて来て。」
「はい。どちらへ?」
「ん、ちょっと神社にお参りに。」
「わかりました。」
今日は仕事があるのに…、等と言うことは顔にも出さない。さすが完璧で瀟洒といわれるメイドである。
どんなに急で我が侭な事でも主の命とあらばいかなるときも最優先で確実に実行する。
「美鈴妹様の部屋の掃除とパチュリー様に頼まれた薬草調達とついでに買出しやっておいてね任せたわよそれじゃあ」
「え?ちょ、」
一瞬で美鈴に仕事を押し付けて出発する。全くかわいそうで便利なキャラである。いろいろと。
最後の一人は、三年NEE太郎、八雲 紫である。
「藍」
「はい」
…
「藍、」
「…はい?」
…
「…らんらららん」
「今忙しいんですからそういう戯れはやめてください」
「いやん、怒られたぁ」
「反省してくださいっ!」
「だって、最近構ってくれないんだもん」
「…紫様を起こそうとして何度返り討ちに会ったか、覚えてらっしゃいますか」
「私もただ寝てるわけじゃないのよ」
「…そうなんですか?」
「そう、夢をね、見ているの。」
「…夢?、ですか?」
「そうよ。そして私にとって夢と現の境界など意味をなさない。つまり、私はいつも起きている。そういうことでしょ?」
「…つまり、万年寝ぼけている、と。」
「あ」
「え?」
「ああああああああ!」
「え?え!?」
「いうえお」
「~っ!」
「ってことで、お仕事頑張ってねー」
「自分の開けたスキマとかいろいろと処理してから寝てください!いや違いますスキマの中で寝るんじゃなくてスキマを塞いでくださいと言ってるんですコレ私じゃどうにもできないんですから、あー自分の入ったスキマだけ閉じて~!」
こうして見てみると、この方達はどうして自分は働いてもいないのに我が侭を言って周りの者達を働かせるのだろうか。
…まあ、それぞれが圧倒的な力の持ち主であり、それによって従者を抱えているのだから、我が侭を言うのも当然なのかもしれない。
しかし、本当にそれだけなのか?
彼女らが我が侭を言うことで、それに応えようと従者はその月面一の脳を痛ませ、時間を止めて奔走し、服を脱いで転げまわる。
そして時にそれは幻想郷全体を大騒ぎに陥れる。
だが、正にそれによって、幻想郷は活気付き、使命を帯びた従者達はその成就のためにと死力を尽くし、最大限の力を発揮する。
彼女らの我が侭、それは従者を生かし、活かす。
彼女達は、働いたら負けなのだ。
脱ぐなあぁぁぁぁぁぁッッッ!w
脱ぐのも仕事の内・・・か?w
つまり半人半霊のみょんは、間を取ってフリーターってこと(ry