幻想郷、もうひとつの世界
いつの時代のものでもよい、世界地図を広げたとき、そのどこにも神話・伝承・民話の語り継がれていない地域など例外中の例外である。それは私達が住む、この極東の島国とて例外ではない。科学万能と呼ばれるこの時代でも、「都市伝説」といわれる驚くべき物語が存在する。結局のところ、この都市伝説も、現代人にマッチした姿で語られる神話・伝承・民話のあるバージョンなのかもしれない。そして、それらはあくまで、人々の想像力が生み出した物語に過ぎないと思われてきた。
しかし、それらの物語と全く意味を異にするある場所を、とある山奥の一点に見つけることができる。ごく小さい一点に過ぎないから、見過ごしてしまうかもしれない、実際、現代人はこの一点のことなど忘れているかのようだ。だが、それはある。
○○県○○市の中心部からおよそ十数キロ、○○山中の一点、その大きさは、わずか半径2~30メートルにすぎない。
これが「博麗神社」だ。外界と、忘れ去られた人外の者たちが住む「幻想郷」と呼ばれる空間を隔てる、「結界」の出入り口である。
その「博麗神社」は寂れた神社と変わりない姿をしている。古びた社に、数百年は立っていると思われるご神木、そして最後に賽銭が投げられたのがいつだったかも分からぬ賽銭箱。それはまさしく廃墟と呼ぶにふさわしく、訪れる人はめったにいない。
いつからその「博麗神社」が存在していたかは分かっていない。数年前、親友の不思議な才能によって、私はそこに結界の裂け目があるのを初めて知った。そして、私とその親友は好奇心から、「博麗神社」をくぐり抜けた。そこに、私たちは未知の空間を発見した。背後には、やはり廃れた博麗神社が聳え立っていた。そして周囲には暗い森と妖怪の気配。この空間、幻想郷はいまだに多くの謎を秘めている。どのくらいの面積なのか、地理も、生態系の研究もさほど進んでいない。
外界側、「博麗神社」に特に何かを見る目をもたないものが入っても、そこにはただの寂れた神社があるばかりである。そして、このように考えることもできる、「幻想郷」は結界で遮断された地域などではなく、そこは別の宇宙なのだと、それこそ幻想的か?しかし妖怪たちは決して空想上のみの存在ではなく、古来から人間と様々に関わりあって暮らしてきたと私は考えるし、いまでも何処かに彼らは隠れている。ただわれわれが忘れ去っただけに過ぎないのだ。
私たちはこの「幻想郷」を探索し、そこで妖怪に食べられかけたことがある、危ないと思った瞬間、驚いたことに、一人の少女がその妖怪を追い払うのを見たのだ。彼女は、まるで西洋のメルヘンの世界を思わせる服装と、水色の髪を持ち、そして背中から透明の羽の生えた、まさしく「妖精」と言える姿格好をしており、私たちのほうを向いて、「危なかったわね」と日本語で話し掛けてくれた。
私は、その妖精に、ほかにもここへ来た人間がいないかと尋ねた、すると彼女は、幻想郷で一番広い湖の真ん中に、洋館が建っており、そこに「サクヤ」と名乗る人間の女性がいると伝えた。やはり、サクヤも私たち同様不思議な才能をもっているらしい。
私はそのとき、10年前に自分の住む学校から姿を消したという、ある女子生徒の噂を思い出した。どんなものであるかは確かめようもないが、「時間を操った」かのように見える異能ゆえに迫害され、忽然と姿を消したというもので、もしかするとサクヤがその本人なのかもしれない。でも妖精の話によれば、彼女が外界でどのような人生を送り、どういう経緯で幻想郷に来たかについて、自分たちはほとんど関心は無い、重要なのは、迷い込んできた人間の過去ではなく、彼女らの、「何かの手違いで人間になってしまった妖精」というべき人格なのだそうだ。
私たちは思う、ここは外界から忘れ去られ、あるいは排除された者たちが最後にたどり着ける居場所なのではないかと。外界とも何とか折り合いをつけ、かつこの幻想郷も訪れることができる私たちは、望外の幸福を得られたのかもしれない。
宇佐美蓮子、マエリベリー=ハーン共著 「ザ・ファンタズマゴリア」 序文より
「うーん、普通の人からみたらイタイ文章ね。」
「まあいいじゃない、これ誰かに売るために作ったんじゃないんでしょ?」
「まあね。」
ジャクスン女史と同じ立ち位置となるのは、やはり秘封倶楽部ですか。個人的にはやはり、「幻想郷・冬」を期待してます。美鈴の冬w