「咲夜ぁー」
「はい。お呼びでしょうか。お嬢様」
レミリア呼びかけに、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が、音もなくレミリアの傍らに現れ、
命令を待つ。
「咲夜、私に仕えるのは幸せでしょう」
「はい。お嬢様のお世話をする事が私の生きる道ですから」
突然の質問、しかも疑問系ですらない言葉に、咲夜は何の躊躇なく即答した。
「メイドってそんなに楽しいの?」
「楽しい、ですよ」
ここにきて、咲夜も何か違和感を感じ出したが、次のレミリアの言葉で違和感は晴れる。
違和感は驚きに変わったから。
「それなら、私もメイドをしてみようかしら」
さすがの咲夜もこれにはかなりまいっただろう。
こうして、レミリアのちょっとした戯れが始まったのだ。
「お嬢様、本当にメイドをなさるんですか…?」
「いまさら止めても無駄よ。しっかり私用のメイド服も作ったのだし」
咲夜が自分用のメイド服を利用し、時間を止めてレミリアの身体に合うように作ったのだ。
ただ、ちょっと露出度が高くなってしまったのは咲夜の願望という事は闇に葬る事にしよう。
どんな露出かは、人それぞれの妄想の邪魔にならないように述べずにおく。
「メイド服、なかなか動きやすそうでいいじゃない」
「メイドは身軽さが命ですから」
適当に返答しながら、咲夜はレミリアを見ている。お嬢様のメイド姿などに感動するなど、
不謹慎ではあるが、自らの願望を表した衣装とそれを着たレミリアの魅力に胸の鼓動は高鳴る
ばかり。いけない、いけない。ブンブン、と顔を横に振る。
「それじゃあ、まずは何から?投げナイフの練習?」
「メイドはそんな事はしません」
「それじゃあ、ナイフで粉みじん切りの特訓ね」
「メイドに限ってありえません」
「それじゃあ…ナイフで…」
「メイドはナイフを使いません」
返答も億劫になり、咲夜はいつのまにかレミリアが持っていたナイフを手から奪う。
誰の影響なんだ、こんなにナイフに興味を持たせるのは。一瞬本気で思いそうになる咲夜。
「メイド=ナイフも知らないの、咲夜。遅れているわね」
「そういうことなら私は最先端ですよ、この上なく」
やれやれ、と苦笑いの咲夜。今後あまりお嬢様の前ではナイフを見せないようにしよう、な
どと方向性が微妙な決心をするが、結局は使ってしまうのですぐ撤回。
「お嬢様、メイドの基本はナイフではなく、主に心から仕える事です」
「主?」
「そうです。お嬢様には心から仕える事の出来る主がいますか?」
無理難題を出して早々に諦めてもらおうと、咲夜がレミリアに問う。かといって間違った事
は多分言ってはいない。
メイドの仕事をとりあえずやらせる事は簡単だが、後始末の問題…いや、お嬢様にそんな雑
務をさせるなど、と咲夜は思っての事。他意はない。きっと。
「…どうやら、私にメイドは不可能のようね」
あら、あっさり。咲夜は多少物足りなさを感じつつも、一種の達成感に浸ろうとした。が。
「ナイフはメイドでなくても扱っていいのよね?」
達成感を味わうのはもう少し先になりそうだ。咲夜は目を輝かせるレミリアを見て言った。
「ナイフの本来の用途は護身の意味合いが多いですので、お嬢様には必要ないかと思われます
が、お望みならばご教授いたします」
レミリアのナイフの実力は、短い間の指導でもそれこそ”時間を操らない咲夜”程度にまで
なったから、いや恐ろしいお方である。
しかし、結局はレミリアにとってナイフを使うという事は、ライフルを持っている者が、拳
銃に持ち替えるのと等しく、なんの意味もなさないといえばそれまでだが。
ただ、この出来事で、この後、咲夜の攻撃力は一気に、マイナスになることになる。
それは、レミリアが練習で銀製のナイフをほぼ消耗してしまったから。
だから、巷で噂の、アノ日、などという事実はない。
実は、レミリアの、なんでも興味を持つお年頃のせいなのだった。
言わずと知れるが、咲夜に後悔はない。
レミリアと、咲夜の時間。
「はい。お呼びでしょうか。お嬢様」
レミリア呼びかけに、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が、音もなくレミリアの傍らに現れ、
命令を待つ。
「咲夜、私に仕えるのは幸せでしょう」
「はい。お嬢様のお世話をする事が私の生きる道ですから」
突然の質問、しかも疑問系ですらない言葉に、咲夜は何の躊躇なく即答した。
「メイドってそんなに楽しいの?」
「楽しい、ですよ」
ここにきて、咲夜も何か違和感を感じ出したが、次のレミリアの言葉で違和感は晴れる。
違和感は驚きに変わったから。
「それなら、私もメイドをしてみようかしら」
さすがの咲夜もこれにはかなりまいっただろう。
こうして、レミリアのちょっとした戯れが始まったのだ。
「お嬢様、本当にメイドをなさるんですか…?」
「いまさら止めても無駄よ。しっかり私用のメイド服も作ったのだし」
咲夜が自分用のメイド服を利用し、時間を止めてレミリアの身体に合うように作ったのだ。
ただ、ちょっと露出度が高くなってしまったのは咲夜の願望という事は闇に葬る事にしよう。
どんな露出かは、人それぞれの妄想の邪魔にならないように述べずにおく。
「メイド服、なかなか動きやすそうでいいじゃない」
「メイドは身軽さが命ですから」
適当に返答しながら、咲夜はレミリアを見ている。お嬢様のメイド姿などに感動するなど、
不謹慎ではあるが、自らの願望を表した衣装とそれを着たレミリアの魅力に胸の鼓動は高鳴る
ばかり。いけない、いけない。ブンブン、と顔を横に振る。
「それじゃあ、まずは何から?投げナイフの練習?」
「メイドはそんな事はしません」
「それじゃあ、ナイフで粉みじん切りの特訓ね」
「メイドに限ってありえません」
「それじゃあ…ナイフで…」
「メイドはナイフを使いません」
返答も億劫になり、咲夜はいつのまにかレミリアが持っていたナイフを手から奪う。
誰の影響なんだ、こんなにナイフに興味を持たせるのは。一瞬本気で思いそうになる咲夜。
「メイド=ナイフも知らないの、咲夜。遅れているわね」
「そういうことなら私は最先端ですよ、この上なく」
やれやれ、と苦笑いの咲夜。今後あまりお嬢様の前ではナイフを見せないようにしよう、な
どと方向性が微妙な決心をするが、結局は使ってしまうのですぐ撤回。
「お嬢様、メイドの基本はナイフではなく、主に心から仕える事です」
「主?」
「そうです。お嬢様には心から仕える事の出来る主がいますか?」
無理難題を出して早々に諦めてもらおうと、咲夜がレミリアに問う。かといって間違った事
は多分言ってはいない。
メイドの仕事をとりあえずやらせる事は簡単だが、後始末の問題…いや、お嬢様にそんな雑
務をさせるなど、と咲夜は思っての事。他意はない。きっと。
「…どうやら、私にメイドは不可能のようね」
あら、あっさり。咲夜は多少物足りなさを感じつつも、一種の達成感に浸ろうとした。が。
「ナイフはメイドでなくても扱っていいのよね?」
達成感を味わうのはもう少し先になりそうだ。咲夜は目を輝かせるレミリアを見て言った。
「ナイフの本来の用途は護身の意味合いが多いですので、お嬢様には必要ないかと思われます
が、お望みならばご教授いたします」
レミリアのナイフの実力は、短い間の指導でもそれこそ”時間を操らない咲夜”程度にまで
なったから、いや恐ろしいお方である。
しかし、結局はレミリアにとってナイフを使うという事は、ライフルを持っている者が、拳
銃に持ち替えるのと等しく、なんの意味もなさないといえばそれまでだが。
ただ、この出来事で、この後、咲夜の攻撃力は一気に、マイナスになることになる。
それは、レミリアが練習で銀製のナイフをほぼ消耗してしまったから。
だから、巷で噂の、アノ日、などという事実はない。
実は、レミリアの、なんでも興味を持つお年頃のせいなのだった。
言わずと知れるが、咲夜に後悔はない。
レミリアと、咲夜の時間。