Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

私の得た答え

2005/06/15 00:54:50
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  この話しを読む前に、創想話の『追悼のコンサート』を必ず読んでおいて下さい。
  『追悼のコンサート』で書けなかった場面の補完となっております。



















「一応聞いておくけど、やめるのなら今のうちよ」
「なら、そこをどいてくだ―――」
「―――おやすみ」
私が言い終える前に、咲夜さんは私の後ろをとっていた。それに気付いた瞬間、体が勝手に動く。
私は振り返るひまも惜しんで、前に飛び込んでいた。すると今までいた位置を一瞬送れて殺気が通り過ぎる。
「あら? よく避けられたわね。分からないまま終わりにしてあげようと思ったのに」
「ハァ、ハァ」
私は素早く立ち上がり、振り返る。
危なかった。今のを避けられたのはほとんど奇跡だ。もう一度同じ不意打ちが来たら次は避けられそうにない。
なら、同じ状況は作れない。相手の言葉につられて喋れば、無意識のうちにそちらに気を捕られてしまう。
落ち着け。まだ彼女は私を甘く見ている。呼吸を整えろ。神経を研ぎ澄ませろ。
「もうつられて、喋ったりはしないか。でも ね、他にもやりようはあるのよ」
――――――――――――――――――――キィン。
今度は腕を組んで話している途中で、私の背後にナイフを仕掛けていた。私は空を切るナイフの音を頼りに左手の白楼剣を振るう。ナイフを弾く確かな手応えと共に乾いた音。
大丈夫だ。これなら口調の違和感に気付いて、何とか弾ける。
……今の一撃にしろ、初撃にしろ私を殺す気はないらしい。あくまで咲夜さんは私の無力化しか狙っていない。それならいきなりナイフの群れに囲まれる、という事はないだろう。そこを付けばあるいは。
「あれ? これも防がれるか。なら少し本気を出さないといけないわね」
「……」
私は答えられない。彼女の変化を敏感にとらえなければならないのに、喋る余裕などない。
だがこのままでは、防戦一方になるだけだ。一か八か仕掛けるしかない、か。
「仕方ない―――!」
私は咲夜さんの言葉を最後まで聞かず、地面を蹴り全力で踏み込む。
油断している今のうちに勝負を決めなければならない。なら不意を付いて相手の予想外の速さで切り込むしかない。そのために初めの一撃で決める。
瞬く間に消失する間合い。私は楼観剣を最速の速さで振り下ろす。

―――いける。
しかし、咲夜さんは微笑んだ。刃が触れる瞬間、彼女の姿が視界から消える。
「くっ!」
視界の中に危険はない。ならそれ以外からか!
私は体を捻りながら、左の白楼剣を逆手に持ち替えて背後に向かって突き出す。更に右手を返して、振り下ろした楼観剣の慣性を無視して、無理矢理振り上げる。

響く音は同時に二つ。
頭上から落ちてきたナイフは、楼観剣に弾かれ地面に落ちる。
またもや後ろを捕っていた咲夜さんは、私の白楼剣をナイフで受け止めていた。その顔には、驚愕の色が見て取れたがそれも一瞬。
体勢の悪い今のままではそこからの追撃が間に合わない。
あっさり間合いを空けられた私は、それを潰すべくもう一度駆ける。
咲夜さんは今度は余裕を持って、待ち受ける。その両手にはいつのまにかナイフが三本づつ握られている。
それをこちらに向けて投げる。
……変だ! おかしい! 何かが違っている!
頭の中で警鐘が鳴り響く。違和感の正体が分からないまま、私は体を捻っていた。
そこに突き立つ一本のナイフ。
彼女自体を囮とした不意打ち。私は勢いを殺され仕方なく、その場で咲夜さんが投げたナイフを打ち落とす。

「ぜぇ、ぜぇ」
「大分息が上がってきたわね。そろそろ私も、能力を全部使わせてもらうわよ」
咲夜さんの言うとおり、私は異常な速さで疲労していた。常に死角にまで気を使わないといけない状態は、精神に極度の負担をかける。もう気を張り詰めていられる時間も余りないだろう。そして気が緩んだ瞬間、不意の一撃を受けて私は……負ける。
「これが最後になりそうね」
咲夜さんは自分の左右と頭上に、一本づつナイフを縫いとめる。
今度は空間も操り始めたようだ。もうナイフが真っ直ぐ飛んでくるなどという常識は通用しないらしい。

絶体絶命。
彼女に時間を止める能力がある限り、不意をつく他にこちらの攻撃を届かせる方法はない。
だが幻想奇術師の異名を持つ相手に、そんな簡単に意表がつけるはずもない。
唯一できそうな方法、霊体を使って分身を作る『二重の苦輪』も、霊体と今の状況では出来ないだろう。
……私は驚いた。まさか自分が一度切ろうとしたものの力に頼ろうとするとは。
もしかしたら、私は間違っていたのかもしれない。
おそらくその答えも、この戦いが決着する時に出るのだろう。
きっと私の予想通りの答えが。

しかしここまで来たら、はっきりした答えを出さなければ退けそうにない。
なら次の一撃に、今持てる全力を込める。

「行きます!」
私は叫ぶと同時に駆け出す。宙に縫い付けてあったナイフが私目掛けて飛んでくる。

剣の間合いまで五メートル!

真っ直ぐ飛んできたそれらを私は二本だけ弾く。足元へ迫る三本目を宙に浮いてかわす。
だがかわしたはずのナイフが軌道をかえて下から迫る。
私は空中で体を捻りながら、白楼剣で打ち落とす。
全てのナイフを落とした私は咲夜さんへ、向けて前進を再開する。
空から目指す形になった私は、咲夜さんの周りにまたナイフが補充されていることを確認する。
その数は六本。
驚くことではない。彼女の武器のストックに限りがないことは先刻承知。

後四メートル!

飛来するナイフをなんとか四本だけ弾く。残りは二本。その二本を私は着地して、やり過ごす。当然こちらを追いかけてくるナイフを、横に身を投げ出すことでかわした。素早く体勢を整えて、両手の刀を振るいナイフを叩き落す。
全てのナイフを落とした私はまた前進する。
そして咲夜さんの周りに補充されているナイフの数は……十二本。
そろそろ不味いか。

ナイフをかわしてそのまま咲夜さんに迫っても、おそらく反転してきたナイフと、彼女の飛ばすナイフで挟撃に合うだけだろう。
なら飛んでくるナイフを全て落としていかなければならない。でもそれは距離が開いていた時の話しである。
幸い、次から次へと飛ばしてくる気配はない。
咲夜さんはどうやら私を限界まで動かせたいらしい。
その事によって私の過ちを気付かせたいのかもしれない。
「もう、気付いてますよ」
私は自嘲気味に小さく呟いて、十二本のナイフへ立ち向かう。

後三メートル! ここで、決める。

飛び交うナイフの群れに、ほとんど勢いを緩めぬまま突っ込んだ。
私は左右の刀を一度ずつ振るい、急所を狙ってきた二本だけを弾く。
そこに出来た僅かな隙間に体を滑り込ませた。十本のナイフが体を霞め、引き裂いていくが傷は浅い。
まだ動ける事を確認した私は地を蹴り、更に加速する。
そして、楼観剣を背中の鞘に、白楼剣を腰の鞘に納める。
通り過ぎたナイフが反転して返ってくるには時間がかかる。咲夜さんもまだ次のナイフを準備できていない。
今、この一瞬に私を阻むものは無い。
そこは既に私の間合いの中。
私は咆哮と共に、二振りの刀を抜き放った。
一つは振り下ろし、一つは薙ぎ払う。……二つの閃光が交叉する。

―――そこで咲夜さんは優しく微笑んでくれていた。その笑みは羨ましくなるほどに慈愛に満ちている。
私は咲夜さんに当てる寸前で、それを止めていた。
当てる必要はなかった。それは決して届くはずのないものだから。

気の抜けた私は、急速に意識が遠くなっていく。
「幽々子様、申し、わけ、ありま、せん」
薄れゆく意識の中で、私はそれだけを言った。
初めてのバトルもの。
書いてるときは楽しかったのですが、動きが伝わっているのか心配です。

意見、感想、批評があれば幸いです。
choko
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