Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

大切な人を守るため?

2007/10/01 18:53:29
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「れいむ~つーかーれーたー」
私が居間でお茶を飲んでいると、目の前から突然紫が現れた。昔はこの瞬間には驚き戸惑ったものだが、最近はもう慣れてしまった。
「はいはい。何に疲れたか知らないけどお疲れ様。言っておくけど、貴方のためのお茶はないわよ?」
「つれないわねぇ・・・」

「で、何に疲れたのよ?」
「そう、聞いてよ、霊夢。実は最近家事全般を私がやってて・・・」


え?今こいつはなんて言った?
火事?家事?
「落ち着け私・・・素数を数えろ・・・!真実を見つめるんだ・・・!」
「それでね・・・って聞けよ」
「まぁオチは読めるんだけどね。藍と喧嘩でもしたんでしょう?」
「いや、全然」
「落ち着け私!素数を数えろ!!」
「いや、現実としてありえる範囲でしょう!?」

「で、何があったの?」
「藍が橙の教育にかかりっきりでね。・・・そのせいで家事がおろそかになってるのよ」
「ふーん」
まあどうでもいいけど。自分の式のために主をないがしろにする式ってのはどうなんだろう。
「で、慣れない家事に追われてた訳よ」
「はいはいお疲れお疲れ」
「で、肩揉んで」
「はいはい」
拒否してもしつこく食い下がりそうだったし、最悪私の家に泊まるとか言い出しかねないので承諾した。

うつ伏せになった紫の肩や背中を指で軽くマッサージする。予想よりも肩の筋が張っていた。どうやら疲れているのは本当らしい。




「・・・あ」
五分ほどした時、紫が顔を上げた。その視線の先には、私の私物の入った棚がある。
「ねぇ、霊夢。あそこに耳掻きあったわよね?」
「なんであなたが私の家の棚の中身を知ってるのよ?」

私の問いを無視して紫が立ち上がる。そしてそのまま棚から耳掻きをとってきた。
何で耳かきの場所まで知ってるねん。
「はい、お願い。最近耳掃除をする暇もなかったのよ」
「はいはい」
渡された耳掻きを受け取る。だが素直じゃない私は当然のように自分の耳掃除を始める。

「こ、このひねくれ者!!話の流れからして私に耳掃除をしてあげるべきでしょう!?」
「あー?聞こえんなー?それが人にものを頼む態度かにゃー?」
「お願いします。是非貴方さまに耳掃除をしていただきたいと願います」
「素直だ!?」


紫が私の目の前に腰を下ろした。
「耳掃除ぐらい自分でやればいいじゃない」
「いやいや、霊夢がしてくれることに意味があるのよ」
「・・・ふん」
「それに歴代の博麗の女性は全て耳掃除が上手かったわ。だからきっと霊夢もすごい巧いはずよ」
「嫌よそんな血筋」
「確か先代はその技術を遣って全ての妖怪を統率できたとか」
「何やってんだ私の先祖は・・・」
「あと伝説の耳掻きが掛け軸の裏に隠されているらしいわ」
「無駄な物残す暇あったら金を残せ先祖!!」


そして、私の太ももの上に紫が頭を乗せる。
しかもうつ伏せで。何故うつ伏せか。
「あー・・・耳掃除を誰かにしてもらうなんて何年ぶりかしら?耳掃除自体もう何百年としてない気もするわ」
「分かったから太ももに顔を擦り付けるな。横を向け」
「うりうり」
「やめっつの。そっちむけ」
「はあい」



「でも本当に永い時間やってないから本当に汚いかもしれないわ」
「気にしないわよ」
「私が恥ずかしいのよ」
「何よ、今更。それに、あんたなんかの耳なら、何が出てきたっておかしくな・・・」









紫の耳の中に。ちっちゃい紫がいました。
『あら、ご機嫌よう』








全力で、噴いた。
「ぶふぉっ!!」
「え!?何!?」
「だ、大丈夫よ、落ち着いて、ね?」
「私は大丈夫よ!?」

私は事実を確認しようと紫の耳を再び見る。相変わらずそこにはちっちゃい紫がいた。

『ついにこの計画がばれてしまったわね』
「何!?何なのよ!?」
「え!?何が!?」
「あんたは黙ってなさい!!」
「は、はい!!」

『では自己紹介を。私は紫の式と思っていただければ結構よ。ただ、『今は』、だけど』
「どういうこと・・・?」
『この本体があまりに耳掃除をしないものだから、溜まりに溜まった耳垢やその他のもの・・・それらに魂が宿ったもの・・・それが私よ』

耳垢の式!?

『しかし、例え耳垢といえど大妖怪である八雲紫の耳垢。そして今は少ないが時期が満ちれば多くの仲間が作られる。その力は本体を乗っ取るほどに強くなる。・・・私たちは紫を・・・乗っ取るわ』
「くっ・・・そんなことは絶対にさせないわ!!」
私はちっちゃい紫を潰そうと、耳掻きで一撃を繰り出す。
がりっ
「痛!?」
『ふふ、危ない危ない』
一瞬の隙をついて出した耳掻きの一突きは、あっさりと避けられてしまった。その一突きはそのまま紫(本体)の耳を傷つけてしまった。
「くっ・・・避けられたか!」
「何!?何の話!?何に避けられたの!?」
「紫、落ち着いて聞いて」
「痛い・・・何?」
「まず、あいつの声はあなたには聞こえないの?」
「何!?あいつって誰!?」
「そう・・・大丈夫。あなたは私が助ける。約束するわ」
「え!?何この展開!?」


『ふふ、さて、準備はいいかしら?』
「ふざけ・・・!?」






増えてました。ちっちゃい紫が。なんかもう耳の中にぎっしりでした。




『計画を変更するわ』
『もっと時間をかけて『女王』を増やしたかったけれど、ばれてしまっては仕方ない』
女王・・・?女王蜂のようなものだろうか?つまりこの大量のちっちゃい紫はその『女王』の仕業?
『我らの『女王』の力で、仲間を一気に増やし、この体を乗っ取る』
『我らの『女王』を潰さない限り、私たちは無限に増え続けるわ』
『本体を傷つけず、『女王』を見つけ、破壊する。貴方にできるかしら?』
「・・・上等っ!!」
私は躊躇わず、耳かきを奥へ突っ込んだ。
ぎゅり
「痛い――!!!」
「大丈夫!!かすり傷よ!!」
「それはやった側が言っていい台詞じゃな―――い!!」

本体に与える被害は最小限に・・・そして、一秒でも早く『女王』を見つけ、破壊する。
そう、大切な人を守るために!



正確に、そして迅速に。一匹ずつ確実にちっちゃい紫を潰していく。
だがちっちゃい紫は私の耳掻きを巧みに避けていく。ちっちゃい紫に与えるはずだった衝撃は、本体を傷つけてしまう。
「痛ぁぁぁ!?霊夢!もういいから!もう耳掃除はいいです!止めてくださいお願いします!!って言うか何でそんなに一生懸命耳掃除してるの!?むしろホントにこれ耳掃除なの!?」
「大丈夫・・・やってやる!やってやるぞ!!」
「お願いします!止めてください!!ホントに!!」


最初の何度かはちっちゃい紫の動きに翻弄されていたが、ちっちゃい紫たちの避ける時の癖を理解した時から、私の動きには無駄がなくなっていく。
一機ずつ、確実に落としていく。
『らめぇ』
『耳掻きらめぇ』
『かきまわされてるぅ』
「卑猥なことを喚くな!!」
「何も言ってない!!」



潰されたちっちゃい紫は塵になって消えていく。だが、奥の方からは次々とちっちゃい紫が溢れ出てきていた。これではきりが無い。だが、それはあることを意味していた。

「女王はこの奥にいる・・・!」
私は確信した。さらに耳掻きを奥へと滑り込ませる。
がりがりがり
「耳が―――――!!!!ミミガ――――――!!!!!」
「ああ、もううるさい!!沖縄の特産品の名前を叫ぶな!!」


「・・・!いた!!」
奥の方に固まっていた大量のちっちゃい紫を排除すると、その奥に一際大きなちっちゃい紫がいた。
あと少し!あと少しで女王を潰せる!それなのに・・・

限界が訪れてしまった。
がっ
「痛い―――――!!」
がっ
「いいいいいたああああいいいいいいい!!」
「そんな・・・」


耳掻きの長さが足りない・・・!
これでは女王に届かない・・・!!


『ふふふ・・・博麗の巫女はその程度のものなのかしら?』
「くっ・・・」
もう駄目だ・・・これ以上無理をしては本体の体力が持たない。
本体は既に痙攣を起こしている。息も絶え絶えだ。
自分のせいかもしれない、という考えは一瞬で破棄した。


私は、もう駄目なのか・・・


・・・いや、待て。私は、まだ何かを知っている。
この状況が打破できるかは分からないが、私は、手段を持っている・・・!!
私は本体をその場に投げ出し、立ち上がる。
そして、我が家に代々伝わる掛け軸の元へ急ぐ。

「紫の話が本当なら、この裏に・・・」


掛け軸を、全力で、めくるッッ!!


そこには、望むものが、あった。




「紫っ!あったわ!!伝説の耳掻きが!!」
「うう・・・私はもう駄目・・・もう・・・何で私は耳掃除で重傷負ってるの・・・?」
「諦めないで!ほら、見て!!」

「え、それ耳掻き?」
「ええ。我が家に伝わる伝説の耳掻きよ」




なんか七支刀っぽいけど。




「違うッ!!それ絶対耳掻きと違うッ!!特に大きさがッ!!!」
「さすがご先祖様ね。この長さと形状なら完全に女王を駆除できるわ!」
「女王って何!?ねえ!!何の話よ!?」
「ほら、私の膝枕に!!早く!!」
「いやだよ!!断頭台に寝た方がまだいいよ!!」
「膝枕なしでやるのとありでやるのとどっちがいいのよ!?」
「どっちもいやよ!!そんな大きなものは入らないのよ!!」
「こうなったら力づくでも!!」
「いやああああああ!!!!!」

がりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがり

ぐちゃ


「アッ―――――――!!!!!!!」


その耳掻きは、女王へと届き、貫いていた。
『くっ・・・今回は私の負けね・・・でも、これで安心していいのかしら?』
「なんですって・・・?」
『貴方は気付いていないのかしら?』




『耳の穴は一つではないのよ?』





私は呆然とした。その隙に紫は起き上がる。
「うう・・・やっと解放された・・・」
「紫・・・」
「何よ・・・?」
アイアンクローで紫を再び太ももの上に移動させる。
「反対向きなさい」
「え!?いや!!いやよ!!もうあなたに耳掃除は頼まないわ!!」
「うるさい!!最初から伝説の耳掻きでやってやる!!」
「いぃぃやぁぁぁぁ!!!!」

がりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがりがり








「紫、起きて。紫・・・」
「・・・はっ!?私は一体・・・?」
「もう大丈夫よ、紫」
「うっ・・・何も思い出せない・・・思い出そうとすると頭痛が・・・」
脳が思い出すのを拒否しているらしい。まあ無理もない。あれだけ怖い思いをしたんだから。
させたのは半分ぐらい私だけど。可哀想なので頭を撫でてやる。



その時、無遠慮に居間の戸が開いた。そこには、魔理沙が立っていた。
「よーっす。・・・っと。邪魔だったかい?」
「ううん、大丈夫よ。何か用?」
「ああ。ちょっと・・・ん?」
「どうしたの?」






「いや、何でもないんだ。ところで霊夢。ちょっとそこにある耳掻き借りていいか?で、ちょっと耳掃除させてくれ。いや、深い意味はないんだ。本当に。何も心配せずに私に任せろ。絶対に助けてみせるから!」



そうだ。耳は一つじゃなかったんだ。


私にもついてたんだ。

当然、魔理沙にも・・・

それから、それから・・・

その日、幻想郷各地で「ミミガ――!!!」という叫びが響いた。



友人に「和む作品を書きたいんだ」と相談したら、「耳掃除とか書け」と言われたので書いたのですが、全く持って和みませんでしたね。あの嘘吐きめ!
誰か耳掃除というシチュエーションで和む作品書いてください。
それはさておき。
前作で予告した作品でなくて申し訳ない。何せ風神録が未入手でして。入手後にはそちらに着手したいと思っております。
この作品はクロスチャンネルのワンシーンを見ていて思いついた作品です。原作と同じ台詞も使わせてもらっています。あのシーンは自分の中でお気に入りのシーンだったので、いつかはこんなのをやってみたいと思っていました。
まあ、お楽しみいただければ幸いかと思います。
コメント



1.名無し妖怪削除
思わずgoogle先生に聞いてしまったじゃないか
2.名無し妖怪削除
耳が…痛いです……
3.名無し妖怪削除
よし、早速インスパアされてケータイ小説として(ry