「アタイ…… 最強なんだから…」
何処からかそんな寝言が聞こえてくる幻想郷は平和だった。
「チルノちゃん…… また布団剥いじゃって…」
そんな優しい声で蒼い氷の妖精にまた布団がかけられた。
ココは幻想郷に住む少々おバカな妖精、チルノの家だと思われる。
寝息が響き渡る部屋で大妖精「名前で呼んで欲しいです…」
もとい、【フロウ】は紅茶を楽しんでいたそうだ。
だが、妖精に紅茶が飲めるのだろうか、それ以前に何処から仕入れたのか……
そしてチルノの寝言も静まると、大妖精は夜の湖に向かって歩き出した。
※※ご存知の湖※※
「……」 あら? あれは…… 「何をしているんですか?」
「ぅん? あぁ…… フロウさん…」 他人行儀な子です。 確か名前は【リグル】と言ったでしょう。 チルノちゃんの友達です
いつも【さん】は要らないって言ってるのに…… まぁいいや、暇だもの
「何してるんですか?」 そう聞いてあげたらリグルちゃんは答えてくれました。
「月を見てるのさ、蛍は夜闇に飛ぶからね」 「どうして夜闇で月なのかしら?」
「ど、どうでもいいじゃないさ!」 緑の髪が揺れて、頬が真っ赤になってる姿が夜闇に写りました。 とても可愛いです…… どうやらちょっとおとぼけさんのご様子……
「体に気をつけてね」 「……フロウさんは何しに来たんですか…?」 そう質問されてしまいました。 困りますね……
私は特に理由も無く来ていました。 いつも居るからなんとなく来ただけです、意味なんてありません。
「お散歩です。」 そう言っておけばいいかしら、お散歩と同じ事だし。
「ふぅん、弱いんだからあまりうろつかない方がいいよ。 それじゃ」
そう言って帰ってくあの子を弾幕の餌食にしたいのは私だけかしら? いえ、コレはきっと気の迷いですね。 平常心平常心……
さて、お散歩と言った手前、ココで帰る訳には行きません。 色々歩いて行きましょう……
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「う~、お腹空いたぁ……」 お魚獲ろうかなぁ……? でも寒いし疲れるしお腹減っちゃうし……
「……ぅ?」 小さな影が見えるよ。 食べられるのかな? まぁいいや……
「貴方は食べられるの?」 「ハイ?」 その小さい人は聞き返してきちゃいました。
「喋れるなら食べれるよね…… いただきます」 「ひっ!?」 ありゃ、齧ろうとしたら逃げられました。
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あ…… あれは一体何でしょうか、もしやアレが噂に聞く吸血鬼、スカーレットデビルでしょうか……
後少しで私もあの方の糧になる所でした…… でも… 全然赤くなかったです。
「待って食べれる人~」 あ、追って来ました。 私は本気で逃げましょう。 「食べないで下さい……! 止めてください!!」
「お腹減ったの~、腕一本でいいから~」 そんな怖いことを言わないで下さい。 体がカタカタ震えてしまいます。
「弱いもの虐めは止めなさい!」 「あいたっ!」
後ろで何かが落ちる音がしました。 それと別の声も聞こえました。 一体何なのでしょうか……
恐る恐る振り返ると、先程のスカーレットデビルさんが紅白の変な人に怒られています。 今の内に逃げましょう
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「うむぅ…… 中国じゃなぁい… うにゅぅ…」 …全く、この子は仕事一つまともにこなせないのかしら?
「起きなさい中国」 「んがっ!?」 パチンと花提灯を鳴らせて目覚めた中国に目覚まし代わりの説教を始めましょう。
「うたた寝しながら紅魔館の門番が勤まるとでも思ってるのかしら? 貴方の意識は中国にでもあるのかしら」
中国が何処かは知らない。 だけども幻想郷には無いと言う事だけは確か、だからとりあえずそう言っておいた…… が…
「んぐぅ…… ぐぅ…」 「…」 頭で何かが切れる音がした。
気付いた時には私のストックナイフは一本減り、美鈴が額にナイフを刺しながら涙していました。
「ご…… ごめんなさい咲夜さん、お願いですから解雇だけは…」 寝起き早々、涙を流しながらそう言われるけれど……
そのお辞儀の度に胸で揺れてる脂肪細胞の塊が邪魔臭いのよ。 あぁ、イライラする。
「それなりの誠意を見せなさい。 今晩中に不審者一名を捕獲、コレが解雇を免除する条件よ」
「そ、そんな殺生な事を言わずにこの【紅 美鈴】にお慈悲を!!」 …呆れた、こんな所でも名前を覚えて欲しいのかしら
「不審者を捕まえたらそれなりの報酬をあげる、それでいいのかしら? 中国」 「だ、だから中国と呼ばないで下さい……」
「あら、だったら今回で不審者を捕まえれたら紅魔館で貴方の中国と言う呼び名を廃止してあげましょう」 そう言うと美鈴の顔がすっごく明るくなったわ。
「が、頑張ります!」 真っ赤な電球。 この程度で釣れるのなら簡単ね、なら私は見回りに戻りますから絶対に捕まえなさい
「ハイ!」 ……解雇なんて本当は嘘なんだけどね。 単純な美鈴には効果覿面の様…
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一安心です。 ココまで来れば簡単に気付かれる事もないでしょう。
──でもココは何処?
大きなお屋敷が見えるのですが、湖への帰り道がよく解りません。
あ、あんな所に緑の服に真っ赤な髪の方が居ます。 ココは何処なのか教えて貰いましょう。
私は近寄ります。 するとあの方は足音に気付いた様子、私の方を見ると笑ってきました。 かなり怖いです。
「こんにちわ、不審者さん」 「不審者? 誰の事ですか? 貴方と私しか居ないですよ? あ、申し忘れました。 私はフロウと申します」
「フフ、私はコレで中国じゃない…… 中国じゃ…」 「え、ちょ、止めて下さい…… 何を… イヤァァァァ!」
残念、私のお散歩はココで終わりのようです。 怖い人に捕まって私はお屋敷に連れて行かれました。
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「咲夜さーん、不審者捕まえて来ましたよ~!」
あら、美鈴…… 不審者を捕まえた? そんな…… お嬢様に頼んで今日は【害となる物が現れない運命】を美鈴に施したのに……
「って貴方、不審者は何処かしら?」 「この子です」 ……へぇ~、不・審・者 ねぇ…
「そんな小さな子の何処が不審者と?」 「私の方に近寄ってきたんですよ、十分不審者じゃないですか」
どうやら脱中国の為に見境無く捕まえてしまった様だ。 後で説教ね…… 兎に角、この子の保護が優先かしら
「貴方は後で説教よ、その子を引き渡しなさい」 「えぇ…… 私、説教ですか?」 「不審者では無い者を招き入れた以上…… ね」
「申し訳ありませんがココはどちらでしょうか、早く帰らないとチルノちゃんが起きてしまいます」
チルノ? あぁ、蒼いおバカさんね…… とっても無邪気で可愛い… (少女妄想中)
…………
……………
………………
………ツッー…
「あの… 鼻血……」 「え、あ゛!!」 メイド服に数滴垂れました。 メイド長にあるまじき失態を……
「私の部屋にいらっしゃい、っと……」 「あ、お初にお目にかかります。 私はフロウと申します、以後お見知りおきを……」
やはり深々とお辞儀をしてきた。 だけどね、私に身長でも勝ってない、顔も幼い子に…… 私は…
「……?」 胸が負けてるのよ! コレは許されない事だわ。 今すぐにその邪魔な脂肪をこのナイフで……
「あ、あの、そのナイフで一体何を……」 フロウちゃんがカタカタと震え始めたわ。 コレは…… アリね
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私は怖い銀の髪のメイドさんに部屋の中に連れ込まれてしまいました。 私はどうなってしまうのでしょう?
ひょっとしてこの五体をバラバラに刻んで食べられてしまうのでしょうか、それとも奴隷にされるのでしょうか……
ひょっとして( 自 主 規 制 )な事を!!? 何にしてもココの人は皆怖いです。
あぁ、扉にガチャリと鍵を閉められました。 私はきっとチルノちゃんの目覚めにも対面出来ないでしょう。
ごめんなさいチルノちゃん、一緒に居れなくて。 「ふぅ…… さて…」
紫の眼光が私をにらみつけました。 蛇に睨まれた様に体が動きません、その間にもあの方はにじり寄って来ます。
と、突然服を脱ぎだしました。 い、一体何が……!? 「着替えるからちょっと待ちなさい」
あ、着替えるだけだったのか…… 助かったです。 しかし油断出来ません。
人間とは卑怯だとチルノちゃんが言っていました、今、急に襲いかかられたら私は為す術無くされるがままになってしまうでしょう。
全身の震えが止まってくれません。
何これ?
まぁ、上のは例えだが、やはり山場とかオチとかないと淡々とした文になるしな
次話からそういうところに気をつければ、少しはおもしろくなるんじゃね?