――は閉店しますた。
「あれ? ……っかしいなぁ」
小首をかしげるお嬢様は大変かわゆらしい。
が、借金はおろか開店資金すら回収出来なかった素人経営を思い出すと、憎さあまって押し倒したい程。
「やっぱ材料に段ボール使ったのはマズかったっスかねー」
美鈴。テメーのせいでどんだけ客減ったと思ってんだ。
「まさかレストランで失敗するとは思わなかったわ」
咲夜、次の商売考えなさい、と続けるお嬢様の目に帳簿は映る事なく。
「人工的に卵作るのに成功したんですけど、これ売りましょうよ」
もう美鈴は黙ってろ。
「このままじゃ没落貴族よっ! きっと卑賤の者共に拾われて慰みものにされて売り払われてそれから……」
とうとうと妄言を重ねるおぜうさま。
その想像力を経営に生かしてくれれば。
「そして霊夢が拾ってくれてボロ長屋に住んで小さな石鹸カタカタ鳴って冷たいねって肩寄せ合って……」
「よく妄想が続きますね」
「当然よ。私には運命が見えるんだから。このくらいの未来予知……あっ」
「アンタね。このまま先祖の墓をないがしろにしてると、地獄に落ちるわよ!」
運命を見る能力を生かし、占い師として鮮烈デビューを果たしたお嬢様。
占いの是非とかはどうでもよく、ちっさい子が懸命に働く姿に、誰もが心を打たれている。
「アンタの背中には龍がついてるわ!」
目に見えないものを売ってるので元手ゼロ。
凄まじい黒字。このペースならば借金も返せるだろう。
元はといえば、『おねーさまー、それ私のパンツでしょー!』『フランのものは私のもの。私のものは霊夢のもの』
なんて、くっだらない姉妹喧嘩で館吹っ飛ばして出来た借金だが。
流石はお嬢様。御自分の尻拭いは御自分でしておられる。
でもトイレでお尻拭く時は私の手を借りて欲しい。凄く。
「次の方どうぞ……って、霊夢じゃない」
「なによ。巫女が占い師のトコ来ちゃ悪い訳?」
悪かないけど金払い悪そうで不安。
「紫に色目使う、冥界の電波お嬢いるじゃない? あいつミンチにしてやりたいんだけど、何曜日に決行すればいいかしら」
また巫女のくせに物騒な相談を。
「なに。人肉をミンチにするだと」
私の出番だ、と言わんばかりにすっくと立ち上がる美鈴をぶっ飛ばして制止。
ちょっと大人しくしてろ。今はチャイニーズグルメの話してる訳じゃない。
「霊夢、私の言うとおりにすれば運は開けるわ」
「どうすんのよ」
「あ、愛してるわレミィって言え!」
私情入ってませんか。
「……愛してるわレミィ」
「次、この婚姻届に印鑑押しなさい!」
「あー結婚は無理。私まだ魔理沙と離婚調停中だから」
「――!? こ、この馬鹿娘!」
いよいよ家系図まで持ち出し、霊夢に説教を始めたお嬢様。
「だから長男に家督を継がせつつ私の妾になれ!」
「アンタ言ってることムチャクチャよ」
「なんでよ霊夢。私がこんなに言ってるのに分かってくれないの……。うー。……あっ」
「れみ」
「りあ」
「うー☆」
お嬢様のうなり声より発展したこの曲は、今や毎週オリコン上位に食い込む名曲に成長。
ふりふりアイドル衣装が功を奏し、主に大きいお兄さん達を中心としたファン層を獲得。
洋ロリに熱狂する連中なんて危なっかしくてしょうがないが(お前もだろとか思った奴出て来い)金払いはいいのでありがたい。
「まさか私の天分が歌手だとは思わなかったわ」
「前々からお嬢様のアニメ声には使い道が有ると思ってました」
「やっぱ占い師は駄目ね。本売らないと儲かんないし」
CD。PV。写真集。
どのグッズも以前を遥かに上回る売れ行き。
印税長者……。良い響きだ。
館の再建は近い。
「ところでお嬢様。一つ懸念が」
そろそろ一曲で活動するのは限界である。
サンバ調やパラパラ風にアレンジしてみたが、やはり曲には寿命というものがある。
「じゃ、私が適当に作詞とかして新曲作ればいいのね」
「助かります」
「夜雀の曲でも参考にしとくわ」
『アイドル歌手レミリア、盗作疑惑!? ミスティア側、訴訟も検討』
「なにこの新聞」
「書いたヤツ誰よ!?」
「文とかいうビッチです」
「ぶっ殺し!」
『凶行! アイドル歌手レミリア、記者に暴行』
「おま」
「なんでこう裏目に出るのよ! 明らかに悪意ある報道よ!」
「取りあえずお嬢様は謹慎という事で。世論を同情の方向に持っていきましょう」
「咲夜頭いいな」
『レミリア、厳罰処分で神経症か』
「なんなのよこの叩きラッシュは」
「どこの新聞もキツイ論調ですね。『仮病だろ』とか『引退か』なんて書いてあるとこもあります」
「もうやだ! お国帰る!」
無論性的な意味で。
俺のビールとおつまみを返してくれwww
紳士的なあとがきもひどいw
あと、お兄ちゃんに見せてくれないかな、フランちゃん
こんな殺伐としたゆかれいむは初めてだwwww
とにかく、あぶなっかしいネタ連発でおもろかったです。超。