Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

晩夏の吟遊詩人

2007/08/19 12:15:05
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 ミスティア・ローレライは、自分の羽根には秋の色が一番よく似合うと思っていた。夜寒に

名月に紺の空に、こじゃれた薄紫のくっきりと浮かび上がる様子はさだめて優雅だろうと、

見たこともない自分の姿を想像してはうっとりする。そうしてその言い知れない感慨をすかさず

歌に口ずさむと、ますます秋が近くまた待ち遠しく感じられるのだった。

 もうすぐ幻想郷に秋が来る。ミスティア・ローレライにも秋が来る。


 地上はどこもまだ夏の暑さである。野に一面に生い茂った草叢の、炎日にじりじりと灼かれて

こもった熱が夜の空気に蒸し蒸しと吐き出されている。大地の熱気に追い立てられてたまらず

空へ昇ると、点々と散りばめた星の中に線香花火のような月がくっきりと浮かんでいる。


 上空は秋の風が吹いている。大気が絶えず動いて爽やかに涼しい。大きな弧を描いてぐるりと

旋回すると、背中の羽根がいつになく活き活きとして心地よく風を切る。そうして眼下に広がる

草木山河を見渡すと、残暑の抜けきらない地上がなんだか可哀そうに見えた。日射と陽炎の

責め苦を受け続ける地上の住人たちに、この爽やかな涼味を伝えてあげるのが空飛ぶ吟遊詩人の

つとめのように思われた。そう考えるとまたたく間に詩が浮かび、それを乗せるべき律動リズム旋律メロディー

和声ハーモニーとが一気に胸の中で踊り出すのだった。音なき音に上機嫌で耳を傾けて、詩人はひらひらと

空を舞う。


 出来上がった歌を胸にしまい込んで、いつものように古歌を歌いだす。しとやかなリュートが

伴奏に欲しくなる、けれどミスティア・ローレライは夜空に一人だった。いつもは魅力的な音色で

合奏してくれる自然たちも、今夜は眠たげに素知らぬ風であった。仕方なくお月様に聴かせる

つもりで独唱する。秋のバラッドが深い夜空に沁み込んでいく。


 速やかに緩やかに、ソプラノにアルトに、歌は夜気に流れ出す。はじめ口ずさんでいた秋の

古歌は徐々にその言葉をすりかえられて、いい加減な即興詩へと変わっていく。

 明るすぎる月夜だった。みずうみは鏡面のように凪いでいる。ミスティア・ローレライは

背中に月明を浴びてまっすぐ森へ飛ぶ。水面に落ちた影も一歩先をまっすぐ飛んでいく――

しばらく歌がデュエットになる。


  鈴虫松虫きりぎりす、今年の蜻蛉はおいしいかしら。

  空飛ぶ鳥はお腹が空くの、吟遊詩人はお腹が空くの――。


 ミスティア・ローレアイは秋を焦がれる。そうしてゆるやかに空へ螺旋を描きながら、

鎮守の森を遥かに高く舞い上がる。
 テレビを見ながらほんの少しの寝酒におつまみを食べていたら、ほんとうに唐突に、みすちーが懐かしくなりました。別におつまみの品目に追加しようと言うわけではなかったのでしょうけれど、ともかくもほろ酔い加減に一気呵成でひとつ、白玉楼を離れて書いてみました。
 食膳に上らなくても魅力いっぱいのみすちー。思わず窓を開けて空に姿を思い浮かべてしまいました。月は見えませんが……。

ここまでお目通しいただき、ありがとうございました。
MS***
コメント



1.名無し妖怪削除
はぅ~!みすちーかぁいいよぉ~!
お、おもちk(ry
2.MS***削除
なんだかこれ以来みすちーがかわいくてかわいくていろいろ手につかない……庭先で飼いたいですねー。
テイクアウト一羽ー!