夏の暑い日・・・
けれども元気一杯に今日の仕事を消化する。
私は瀟洒なメイド、十六夜咲夜。
まずはお洗濯だわ。
「~~♪~~~~♪」
鼻歌混じりに衣類をゴシゴシ。
手が荒れそうだから後でしっかりケアしなきゃ。
洗ったら次は干さないと。
忙しいけど不満は無い。
これが私の務めだもん。
「~~~♪~~~~~♪」
今日も良いお天気。
陽射しがちょっと痛いけど、洗濯物がよく乾きそう。
せっかくだから洗濯物が干し終わったら美鈴のお布団も干しましょう。
お嬢様の布団も干したいけど、ベッドだから駄目ね。
せめて掛け布団だけでも干しましょう。
「~~♪~~~♪」
笑顔でふかふかのお布団に飛び込む美鈴の顔が浮かぶわ。
きっと大人っぽい体してるのに布団の上で猫みたいにゴロゴロするんだわ。
子供のような寝顔で寝るんだわ。
クスクス、たまに見回って布団を掛け直してあげよう。
「~~~♪~~~~♪」
さぁさ、洗濯物が干し終わったわ。
う~ん、先に美鈴に会ってから布団を干しましょうかね。
そういえばあの子、いつも外で門番やってるわね。
今日は特に陽射しが強いみたいだから冷たい飲み物とパラソルを用意してあげよう。
「あづい~~。」
今日もお外でお仕事。
私は門番の紅美鈴。
紅魔館で最もアダルトな体を持つ女。
「だるい~~~。」
見た目は大人、思考は子供。
だって単純な仕事なんだもん。
難しいことを考える必要はないんだわ。
他の門番隊の子たちも勝手に飛び回って、侵入者が来れば迎撃してくれるもの。
「ぎづい~~~。」
館の中はどうなんだろうか。
ここよりも涼しいのかな?
日の光があまり入らないように出来てるし、きっと涼しいよね。
「まぶじい~~~。」
ただ気になるのは咲夜さんだ。
私は外で立ってるだけの時間が多いからいいけど、あの人は動きっぱなしだ。
暑い中で仕事をするとかなり体力を持っていかれるのよね。
今日は一日の仕事が終わったらマッサージをしてあげよう。
「じんどい~~~。」
あの人もなんだかんだで子供っぽいからマッサージしたら反応がおもしろいだろうな。
気持ちいいなんて言わないだろう。
慣れてないとマッサージってすごく変な感じがするもの。
小犬みたいな声出しちゃうんだろうな。
くぅ~ん、くぅ~んってね。
「美鈴。」
マッサージが終わったら涙目で睨みつけてくるだろうな。
そんでもって強くやりすぎだとか言って、怒ってナイフ投げるんだろうな。
まぁ普段からよく働くあの人の為だから仕方ないね。
損な役回りだけど、あの人が元気じゃないとこっちが気が気でいられないし。
咲夜さん・・・頑張るのはいいけど、無理はしないでほしいな。
「美鈴!」
「は!?さ、咲夜さん!?」
「なに素っ頓狂な声出してるのよ。まさか寝てたのかしら?刺すわよ?」
「め、滅相もございません!」
「はぁ・・・まぁいいわ。はい、差し入れ。
ここに置いておくから適当にしなさい。」
「わ、わざわざありがとうございます!」
「あと、アンタの部屋にある布団、干しちゃっていいかしら?いいえ、干しておくからね。
いつ私があなたの部屋に入ってもいいようにキレイにしておきなさい。」
「は、はい!ありがとうございます!」
「あと、勘違いしないこと。」
「へ?」
「差し入れも布団干しも私が考えたことじゃないから。
『とあるかわいいメイドの子』があなたを心配して私に相談してきたんだからね。
感謝するならその子にしなさい。」
「はい!わかりました!で、でも!」
「?」
「やってくれるのは咲夜さんですから!ありがとうございます!」
「うるさい!バカ!」
「はぁ・・・」
これは失敗。私としたことが照れて変なことを言ってしまった。
せっかく上手く美鈴と話せてたのに・・・あそこで美鈴にお礼を言われなきゃ、
「今度の休日、どこか遊びに行きましょう?」とか、きっと言えた雰囲気なのに。
うぅん、絶対言えたね。マジで。
「はぁ・・・」
でもなんであの子、あんなに焦っていたのかしら。
今日はフレンドリーに話しかけたられたと思ったのに。
少しあの子に厳しくしすぎたかしら?
「クスクス。」
あぁ、びっくりした。まさか咲夜さんのこと考えてて本人がすぐ傍にいたとは驚きだ。
咲夜さん、気付いてるのかな。
微妙に口角が上がってて全然威圧感を与えられてないんだよね。
それとも、本当は軽く注意してるつもりなのかしら。
でもそれっぽい言動ではないからなぁ・・・とにかく嫌われているわけじゃなさそうだから、良し!
「クスクス。」
それより、咲夜さんが照れ屋だってわかっていたのに、ついお礼を言ってしまった。
昔と変わらないなぁ。あの人はいつも私を気遣ってくれる。
でも何故か別の人が提案したことにしようとするのよね。
「クスクス。」
数年前は「お嬢様がそう仰ったのよ。」とか言ってたな。
その時は丁度お嬢様が近くにいて、咲夜さんの焦った顔がおもしろかったな。
「あ、ま、間違えた!パチュリー様が言ったのよ!マジで!」とか言い訳してたっけ。
最近は『とあるかわいいメイドの子』を使うようになってきたな。
いつまで経ってもあの人はあの人のままなんだな。
「クスクス。」
それじゃ、折角の差し入れをいただきましょうかね。
パラソルを広げて、地面に刺して、日陰に入ってっと。
水筒の飲み物は・・・お、麦茶だ。
「ゴクゴクゴク・・・ぶはあっ!」
体の芯に伝わるこの冷たさ・・・たまらないねぇ。
夏の暑い日はまだまだこれから。
どんどん仕事をする環境は厳しくなるな。
でも、咲夜さんの頑張りと思いに応えられるように頑張らなきゃ。
「ありがとうございます。『とあるかわいいメイドの子』の咲夜さん。」
私の活力であるあなたへのお礼の言葉・・・届いてないだろうけど、言ってみました。
ドシュッ!!
不覚・・・届いてた。
いじっぱりで可愛かったです。
しかし、咲夜×めーりんって、多いですね。なぜか。
萌えました