Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ある意味 夢のお薬(紅魔館編) 前編

2007/07/20 21:55:48
最終更新
サイズ
4.88KB
ページ数
1
 

 紅魔館。その名の通り、紅くて魔が住む館。
 こう考えると、館の名前をもっと凝ったものにしろよと少し思ったが、ウチも永遠亭とか、まんまその通りなのだと気づき、口を閉ざした。
 しかし。
 私は鈴仙の腕に抱かれる永琳様を見る。
 ……どうもひっかかる。
 違和感というか、おかしいというか。
 喉に小骨がひっかかっているような落ち着かない何か。それを今永琳様に感じている。
 だって、おかしいのだ。
 今回の事件は、いや私が原因だし私が悪いのだけど……そこを差し引いてもいやに手回しがいい。
 試作段階の薬にすでに解毒剤があったり、閻魔の薬の効き方に急に真剣になったり、幽霊のお姫様の診察も、普段より何割も真剣に取り組んでたし……
 まるで……

「てゐ?」

 永琳様は……

「あの、そのまま行くと」
「危ないですよ」

 ひょいっと、急に体が引き戻された。

「へ?」

 ふわりといい香りがして、そのまま柔らかくて質量あふるる何かが背中にあたる。

「お、おおぉ?!」
「どうしたんですか?ぼーっとして、門に衝突したら痛いですよ」

 その声に、それが誰で背中の何かがアレだと気づく。
 紅魔館の門番。頭文字に役立たずがつく、いろいろと不幸な人。

「……あの、なにか悲しいこと考えてません?」
「え、ううん何でもないよ」

 しゅんとする彼女にぎくりとしながらも慌てて首を振る。
 目の端に、呆れた顔の鈴仙と、微笑している永琳様が見えた。

「…はあ。それで、今日はどういったご用件でしょう?」
「実はですね。ちょっとメイド長に火急の用があるんです」

 慌てて鈴仙が門番に近づく。門番はきょとんとしてから「はあ、咲夜さんに」とんーと考え込んで、

「じゃあいいですよ。どうぞ。紅魔館は貴方達を歓迎します」

 にっこりと笑って、私達を通してくれた。






「……なんか、あっさりだったね」
「うん」

 幾分拍子抜けした私達に、永琳様は困ったように微笑む。

「う~ん。どうやら彼女には私が八意永琳だって、すぐに分かっちゃったみたいね」
「え?」
「永琳様を?」

 そういえば、この子供は誰ですか?なんて、一言も聞かれなかった。
 いや、でも一目見ただけでそこまで分かるだろうか?魂の選別をする、目の肥えた死神ならまだわかるが、あの門番がそこまで見破れるのかと疑問に思う。

「彼女の能力は、気を使う程度の能力。言葉だけ聞けばとても単純でありきたりに聞こえるわ。でもね?単純なら単純で、ありきたりならありきたりなほど、能力とは使いやすく、応用ができ、そして可能性も広がるのよ?」
「えっと…」
「多分だけど、彼女は人の気の流れも、感情も、色も、声も、それら全てを使おうと思えば使えるのよ」

 それは、

「まあ、彼女はまだまだそこまで到れないみたいだけど、能力がそれなら、必ずと断言できるわ。辿りつけると。
 まあ、未来の大妖怪候補なのかしら?」

 くすくすと楽しげに笑う永琳様。だけど私は笑えない。なんか、さっきの門番が急に怖くなる。
 気とは全身を巡る。全身どころか世界を巡っている。それを操りその声を聞き自分のものにできる。それは、世界を味方にしているのと同じだ。

「覚えておいて、能力とは、力が強ければ強いほどに使役が難しい。珍しくて強い能力をもっているから強いとは限らない。むしろ単純な力をもっているからこそ力を扱い成長できる」

 扱えない力は邪魔なだけ。
 永琳様はそう締めくくって、もう話す事ははないと、小さな授業を終わらせる。
 何となく無言になって考え込んでしまう私と鈴仙は、ちょっと顔を見合わせる。
 ある意味で、能力者なら誰だって必ず考えるだろう事だけど。それをこの人の口から言われると、どうにも考えてしまう。
 その扱えきれない力が邪魔になっている、鈴仙は、どうなんだろう?

「鈴仙、あのさ――」

「あら、珍しいお客様ね」

 尋ねかけた声が、どこか冷えたナイフを思わせる。そんな彼女の声にかき消された。

 はっとして、私達は彼女を見る。

 そこには…………

 何も普段と変わらぬメイド長がいた。

「……………………あれ?」

 別段、何処もおかしくなっていない
 私と鈴仙は顔を見合わせる。つまり、彼女は飲んでいない?
 微妙に期待していたので裏切られた気になるが、まあ、そこは喜ぶべき所だ。

 でも何故だろう。永琳様の顔が笑顔のまま青くなっていく。どうやら何か思いついたらしい。

「……つかぬ事をお伺いするのだけど」
「?あら、何かしら」
「……この子から貰った栄養剤とか」

 鈴仙を指さして、永琳様は訊く。

「ああ、あれ?私は別に疲れてないから……あげたわ」
「…っ」

 永琳様は顔をそらして、自らの失態に落ち込んだように鈴仙の服を掴む。
 鈴仙がこんな場合なのに、ぴくぴくと耳を動かして顔は思案げなのに嬉しそうだった。

「さっきの門の横に、紅茶とお菓子が置いてあったわよね」
「は、はい」

 置いてあったらしい。
 私はぼうっとしていて気づかなかったけど…

「……私、あの紅茶の本来ならありえなさげな色合いに、ちょっと心当たりがあるのだけど」

 ぴっしっ。

 私と鈴仙、そしてメイド長も固まった。いや、メイド長は訳がわかってないんだけど、ばれた?!みたいな驚愕の顔をしていた。
 えっ?それ、え?どういう意味と聞きたくても、何か分かってきたんですけど、
 つまりあれ?
 このメイド長。栄養剤を紅茶に混ぜて、門番に渡した、とか?


「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ??!!」


 私がはっとした時には、外から門番の悲鳴が聞こえてきて……
 はっとした顔の、どこかあせった顔のメイド長が消えた。時を止めて移動したんだろう……

「師匠」
「……ええ、ごめんなさい。別のことを考えていたとはいえ、うっかりしすぎだったわ」
「これで、被害者は四人目か…」



 何だか、閻魔以外の巨乳率が高い気がした。


永琳と幽々子と美鈴。

うん。被害者が何故か意図せずに巨乳だ。

四季様は悲しいけど除外。
夏星
コメント



1.ライス削除
巨乳って、あれですよね。
公式設定ではないですよね。
見た感じですかな。

さあて、めーりんはどうなってしまうのか。
2.名無し妖怪削除
ちょw咲夜さん何やってんの?意図してのことじゃないんだろうけどさ。知らないんだし。けど何故隠して盛るんだ?w
3.名前が無い程度の能力削除
素晴らしい