「四季様の能力って、白黒はっきりさせる能力じゃないですかー」
「そうね」
今日は二人とも休暇だから、なんとなく彼岸の草むしりなどしている。
映姫はボランティア、小町はその付き添いというか熟睡してるところを速やかに拉致されたから欠伸が止まらない。
「じゃあ、スクール水着を白スクに! なんつー荒業も当たり前のようにできるんですよね」
「スクール水着ってなんですか」
小町は鎌があるから草刈りは簡単だったが、映姫は自分の手で引き抜くか悔悟の棒で断ち切るか、あるいは閻魔ビームで消滅させるか、くらいしか選択肢がなかった。どれも疲れる。
というか、昨日雨が降ったもんだから非常に雫が鬱陶しい。
「白のハイソックスを黒のハイソックスに! とか」
「靴下の色を変えてどうしたいの」
小町はたまに自分の足の指を切断しそうになるのをどうにかした方がいいと思う。
とりあえず下駄じゃなくて靴を履け。
「白のニーソックスを黒」
「白髪を黒髪にした方が有意義だと思うけど」
その雑草みたいに見えるのはヨモギだから食べられる。
「それだとアッシュブロンドのひとが可哀想じゃないですか!」
「なんで藤原の肩を持つんですか」
「上の字とか八の字とかもいますよ?」
「上白沢と八意ですか。というか解りにくい」
オオイヌノフグリを見て興奮するな。
よく見たら勿忘草だし。
「夏が過ぎても日焼けひとつしていない肌を……一気に……あ、いや、別に全身くまなくってわけじゃないですよ?」
「小町はいつも夏過ぎると炭化しますよね」
二人の半径10mは、いつの間にやらミステリーサークルの如く刈り尽くされていた。
雑草の山は、閻魔ビームで焼却処分。
楽でよい。
「ちく」
「白い白い」
食べられる草がたくさん獲れた。
平地なのにワラビとゼンマイ生えてたのが奇跡だった。
「食パンを黒糖パンに出来たら便利ですね」
「そのときは普通に黒糖パン作りますよ」
「リンゴ酢を黒酢に!」
「リンゴ酢黄ばんでるし」
小町はまだオオイヌノフグリを摘まんで遊んでいる。
もういいから本物見に行けばいいと思う。
「白米を玄米に……あ、ご、ごめんなさい……」
「毎日食べてるし玄米」
「――そうだ! 玄米を白米に変えれば!」
「あたい天才みたいに言ってますけど別に白黒はっきりさせる能力ってそういう意味じゃないですから」
次の雑草地帯に移動していると、何者かが作った兎獲り用の罠に小町が引っかかってこけた。
それはともかく、こけた拍子に勢いあまって巨大な鎌が映姫の帽子に上手いこと突き刺さった。
帽子がでかくて助かった。
「じゃあ、たとえば?」
「たとえば……」
引き抜いた鎌を小町に放り投げると、あまりに回転が良すぎたせいかブーメランの軌道を描きながらおかあさーんとばかりに帰ってきた。
小町の胸に挟んで避けた。
でかくて助かった。
「コーヒーとミルクを分離したり?」
「ひよこのオスとメスを分けます」
「リグルのオスとメスを分けたり」
「分けません」
とりあえず、ここら一帯の雑草にそれぞれ自我があるのは何とかすべきじゃないのか。
ああ眠いと欠伸する小町の口を悔悟の棒で塞ぎ、映姫は雑草討伐に毅然として乗り出した。
「とりあえず、四季様にはスクール水着プレゼントしますね」
「頂きましょう」
世界に平和が訪れた。
めでたしめでたし。
おいしかったです。
読みやすいSSでした。
面白かったです