持たない魂
孤独、独り。独りは寂しく、悲しい。恐い。虚しい。面白くない
。楽しくない。地獄。
幻想郷は楽園か?
楽園。私は、楽園に生きているし死んでもいる。いや、生きてい
ないし死んでもいない、の方がニュアンス的に合っているか―――
―。
独りは、寂しい。
寂しくて、辛い。
藤原妹紅。
もう何歳かも分からない。
幻想郷は楽園だ。
幻想郷は楽園なのに、妹紅の魂は地獄に沈んでいる。
どうして私だけが独りなのか。私がそれほどの罪を犯したという
のだろうか。
しかし、人間は、罪を犯していないのに罰される。反対に、罪深
いのに罰されない人間もいる。
つまり、世の中は不公平なのだ。ただ単純に、そうなってるのだ
。
世の中は、運だ。
運で出来ているんだ。
私は不幸だったんだ。
だからこんなに悲しいんだ――――妹紅は思う。
雨が降っている。
水溜りに、妹紅が映っている。水溜りにいる妹紅を、妹紅は睨む
。すると、当たり前のように水溜りにいる妹紅も、睨み返す。
妹紅は、妹紅に睨まれていた。
妹紅は、妹紅を睨んでいた。
私が死なないなんて――――嘘でしょう――――?
幻想郷に、妹紅は問うた。あるいは、水溜りの妹紅に向けて、た
だ呟いてみただけかもしれない。もしかしたら呟き返してくれるん
じゃないかと、思って。
しかし、水溜りの妹紅は、何も言ってはくれなかった。
妹紅は、膝をつき、水溜りに手を突っ込んだ。
嘔吐する。
すっぱいものが胸を通して喉の奥へ――――やがて、口から吐き
出される。
胃液が混じりあった水溜りに、妹紅の顔が映る。
私の顔は悪くないな、と思い、笑みを浮かべる。中々かわいいじ
ゃないか、と顔をくしゃくしゃにする。
「ふふふ」
妹紅は、立ち上がると汚れた口を横柄に拭った。拭った手をその
ままに、ポケットに突っ込む。
「あはは――――」
重々しい雲を見上げ、哄笑する。雨粒が舌や歯をこつこつと叩く
。
雨は、おいしくない。
妹紅は、妹紅を食したことがある。妹紅の肉は、おいしくなかっ
たし、妹紅の骨も、血も、飲んだり食べたりした事があるが、ふつ
うだった。ふつうの人間の味がしただけだった。
妹紅の肉はふつうの人間の味がするのに、妹紅はふつうの人間じ
ゃなかった。
おかしいのだ、矛盾しているのだ、私は。
「あは―」
なぜ――――?
どうして私は独りなのか―――分からない。
どうして、なぜに、いかにして、輝夜は独りじゃないのに、私だ
けが独りなの――――?
妹紅の頭に、疑問符がいくつも浮かんでは消える。
「ひゃははははは」
妹紅は哂う。
「ひゃははははは」
誰かに会うときには、私は特に苦しんでいるそぶりを見せない。
誰かと話しているときは、孤独を忘れられるから。
独りになってしまうと、たまに、壊れてしまうことがあるのだ。
こういうふうに。
このようにして。
こんなふうに。
あのように。
あなたのように。わたしのように。
にんげんのように、ようかいのように。
かわいいだろう? 私って。
誰か私を、殺してくれ。
博麗神社には今日も巫女が、茶を啜る。
ほんのり甘い、お茶を啜る。
「はあ――――」
熱い吐息を零す。
胃の中に溜まったお茶が、内側から体を温める。
「――――ったく――――本当に、しょうがないわね」
勘というものは不思議なものだ。いきなり、見境なく脳裏を尋ね
てくる。
「――――面倒だなあ――――そんなに、むせび泣かなくても、い
いじゃないの――――」
霊夢は、お茶を片付けると、外に出た。
ふわりと空気に乗る。紅いスカートがはためく。
そんなに哂わなくてもいいじゃないの――――そんなに苦しむ必
要なんてないんじゃないの? あんたは、ねえ、本当に、ねえ――
――馬鹿。だよねえ。私のことを馬鹿といったくせに、あんたも負
けず劣らず、馬鹿なのね。いいわ、いいわよ――――そんなに啼く
のなら、啼きたいのなら。
あなたの、気が済むまで――――「殺してあげるわ蓬莱人――」
今日も博麗霊夢は、忙しい。
忙しいのは、好きじゃなかった。
なぜなら、のんびりしているからだ。のんびりしているようで、
のんびりしているというのが、私なんだから。
しかし、まあ、いいだろう、許してやろう。許してやるわよ。
妖怪退治は私の仕事なのだから。
「おわり」
孤独、独り。独りは寂しく、悲しい。恐い。虚しい。面白くない
。楽しくない。地獄。
幻想郷は楽園か?
楽園。私は、楽園に生きているし死んでもいる。いや、生きてい
ないし死んでもいない、の方がニュアンス的に合っているか―――
―。
独りは、寂しい。
寂しくて、辛い。
藤原妹紅。
もう何歳かも分からない。
幻想郷は楽園だ。
幻想郷は楽園なのに、妹紅の魂は地獄に沈んでいる。
どうして私だけが独りなのか。私がそれほどの罪を犯したという
のだろうか。
しかし、人間は、罪を犯していないのに罰される。反対に、罪深
いのに罰されない人間もいる。
つまり、世の中は不公平なのだ。ただ単純に、そうなってるのだ
。
世の中は、運だ。
運で出来ているんだ。
私は不幸だったんだ。
だからこんなに悲しいんだ――――妹紅は思う。
雨が降っている。
水溜りに、妹紅が映っている。水溜りにいる妹紅を、妹紅は睨む
。すると、当たり前のように水溜りにいる妹紅も、睨み返す。
妹紅は、妹紅に睨まれていた。
妹紅は、妹紅を睨んでいた。
私が死なないなんて――――嘘でしょう――――?
幻想郷に、妹紅は問うた。あるいは、水溜りの妹紅に向けて、た
だ呟いてみただけかもしれない。もしかしたら呟き返してくれるん
じゃないかと、思って。
しかし、水溜りの妹紅は、何も言ってはくれなかった。
妹紅は、膝をつき、水溜りに手を突っ込んだ。
嘔吐する。
すっぱいものが胸を通して喉の奥へ――――やがて、口から吐き
出される。
胃液が混じりあった水溜りに、妹紅の顔が映る。
私の顔は悪くないな、と思い、笑みを浮かべる。中々かわいいじ
ゃないか、と顔をくしゃくしゃにする。
「ふふふ」
妹紅は、立ち上がると汚れた口を横柄に拭った。拭った手をその
ままに、ポケットに突っ込む。
「あはは――――」
重々しい雲を見上げ、哄笑する。雨粒が舌や歯をこつこつと叩く
。
雨は、おいしくない。
妹紅は、妹紅を食したことがある。妹紅の肉は、おいしくなかっ
たし、妹紅の骨も、血も、飲んだり食べたりした事があるが、ふつ
うだった。ふつうの人間の味がしただけだった。
妹紅の肉はふつうの人間の味がするのに、妹紅はふつうの人間じ
ゃなかった。
おかしいのだ、矛盾しているのだ、私は。
「あは―」
なぜ――――?
どうして私は独りなのか―――分からない。
どうして、なぜに、いかにして、輝夜は独りじゃないのに、私だ
けが独りなの――――?
妹紅の頭に、疑問符がいくつも浮かんでは消える。
「ひゃははははは」
妹紅は哂う。
「ひゃははははは」
誰かに会うときには、私は特に苦しんでいるそぶりを見せない。
誰かと話しているときは、孤独を忘れられるから。
独りになってしまうと、たまに、壊れてしまうことがあるのだ。
こういうふうに。
このようにして。
こんなふうに。
あのように。
あなたのように。わたしのように。
にんげんのように、ようかいのように。
かわいいだろう? 私って。
誰か私を、殺してくれ。
博麗神社には今日も巫女が、茶を啜る。
ほんのり甘い、お茶を啜る。
「はあ――――」
熱い吐息を零す。
胃の中に溜まったお茶が、内側から体を温める。
「――――ったく――――本当に、しょうがないわね」
勘というものは不思議なものだ。いきなり、見境なく脳裏を尋ね
てくる。
「――――面倒だなあ――――そんなに、むせび泣かなくても、い
いじゃないの――――」
霊夢は、お茶を片付けると、外に出た。
ふわりと空気に乗る。紅いスカートがはためく。
そんなに哂わなくてもいいじゃないの――――そんなに苦しむ必
要なんてないんじゃないの? あんたは、ねえ、本当に、ねえ――
――馬鹿。だよねえ。私のことを馬鹿といったくせに、あんたも負
けず劣らず、馬鹿なのね。いいわ、いいわよ――――そんなに啼く
のなら、啼きたいのなら。
あなたの、気が済むまで――――「殺してあげるわ蓬莱人――」
今日も博麗霊夢は、忙しい。
忙しいのは、好きじゃなかった。
なぜなら、のんびりしているからだ。のんびりしているようで、
のんびりしているというのが、私なんだから。
しかし、まあ、いいだろう、許してやろう。許してやるわよ。
妖怪退治は私の仕事なのだから。
「おわり」
不死身はたとえ地球が壊れても、宇宙が無くなっても生きてるんですからね。
幅が狭くて言葉とかが次の行に行っちゃってるのが少し気になりますが…
>「――――」が何かとぎれとぎれになってしまうのが気になる。
同感です。何か一本の線のつもりでやったら、とぎれとぎれに…とか
そのフレーズいいですね。なんていうですか、肉体への影響なのに病んでいくのは精神面みたいな。良いと思います。