『ウドン波の方程式:UW=2πfvρ』
朝目覚めると、私の枕元に一冊の雑誌がおかれていた。
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みんなの永遠亭会報誌 Vol.0000001 七月号
特集:永遠亭の献立
兎でも分かる月齢の読み方
連載:月が及ぼす影響について 第一回
Inaba Girlsのファッションコーナー 第一回
会報:例月祭の執り行いについて
健康診断のお知らせ
永遠亭規定の項
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「……会報誌?」
少しだけ読んでみた。
「…………」
会報誌にしてはミーハーな感じだ。
人型因幡のファッションコーナーとか師匠の薬が載ってるダイエット広告とか。
ていうかコレ私の湯上り写真じゃねーか。何が投稿者応募だふざるけるな。
「あーもう。この会報誌だれが編集したんだろう?」
みんなの永遠亭会報誌 編集:八意永琳 監修:蓬莱山輝夜
「うわぁ……」
一気に読む気がうせて、乱雑にページを繰る。
すると終末の「永遠亭規定の項」というコラムに目が止まった。
ある規定の項に何故か私の名前が出ていた。
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鈴仙・優曇華院・イナバの狂気の眼の増幅の規定
一般に、10kUW/㎡のウドン波に被爆すると、50%の人妖が精神活動に狂気を顕性する(図4-1)。
100kUW/㎡を超える値では一時的な人格障害が現れ、
1MUW/㎡を超えると不可逆的で重篤な人格障害が発生する(図4-2)。
安全を管理する面ではウドン波の被爆量は1kUW/㎡以下に抑えるべきである。
以上の理由により、月の輝面比に応じた被爆時間限界を表4-1に示す。
また同様に鈴仙・優曇華院・イナバ(以下鈴仙)の増幅能力には、
月の輝面比とウドン波の関係を考慮して次の制限を定める。
①鈴仙は月の輝面比に係わらず60dB以上の増幅を行ってはならない。
②鈴仙は1kUW/㎡以上の狂気を出力してはならない。
③有事の際には、鈴仙には規格(表4-2)に準じた最大500kUW/㎡までの出力を許可する。
尚、此れに違反した者は重罰に処す。 (八意永琳)
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「……ウドン波?」
とりあえず師匠のところに走った。
「あの、何ですかこのウドン波って?」
「ウドン波:UWはUdongein waveの略。ここでのUW/㎡は被爆面積あたりのウドン波よ」
知らねぇよ。
「わけわかりません。いいえ、そうではなくてですね。ここの「重罰に処す」ってなんなんですか?」
「ああ、UW/㎡の固有単位は〔Rei〕。れいせんのRei」
「人の話を聞いて下さい!!」
「ちなみにこのウドン波っていうのは人妖に狂気を惹き起こさせる波のことよ」
「私の質問に答えてください!!」
「はいはい。この重罰っていうのはね、私の仕事のお手伝いよ」
「え、仕事のお手伝い?」
何をやらされるんだろう。汚い仕事だろうか。
「違反者が出たら動物実験を行うからその時に……」
「出たらって……それ、私が被験者になるんじゃないですかぁ」
「ほとんど被害者ね」
「うわぁーん! 虐めるのもいい加減にしてくださいよぉー」
「いい加減に実験をすればいいのね」
「いいわけないでしょうッ!!」
私が弄られキャラなのは師匠のせいかもしれない。
「落ち着きなさいウドンゲ、軽い冗談よ」
「軽い冗談でこんなもの作らないでください」
この会報誌はいつまで出す気だろう。
永遠亭の名物になりそうだ。
「でもこれは実用性のあるデータよ。
あなたも自分の増幅能力についてよく理解していないようだし」
「う。それはそうですけど」
「それと、この「ウドン波の方程式」は因幡達の教育に取り入れるから」
「は?!」
因幡達にお受験でもさせる気ですか。
「じょ、冗談ですよね?」
「いいえ。本当に因幡達の教育の中に組み込むわよ。
月の事だけは教育しておかないとね。有事の際に色々と困る事も多いでしょうし」
「えぇー……すごくリアルで嫌ですよその理由。つーか絶対に私変な目で見られますよぉ」
「あら。自分の名前が単位になる事は名誉なことなのよ」
「それはそうかも知れませんけど……」
結局、後日に因幡達と一緒にウドン波とか月の影響とかの講義を受けさせられた。
講義が終わってからは、因幡達からすっかり怖がられるようになってしまった。
いくらなんでも泣く事ないじゃん。目が合っただけで。
事情を調べていくと、てゐが私のデタラメなウワサを流しているらしいことが分かった。
『目が合うと発狂する』とか『しゃべると三日以内に気が狂う』とか『近づいたら汚染される』とか……
よし。ウドン波でシメてやろう。
一方その頃……
文「クソッ!! カラー印刷の会報誌だなんて生意気なッ」
冷戦時代の軍事科学書籍を彷彿とさせる構成に噴いた
他にもっとやることないのですか、この人は。
東方の人たちはみんなしょうもないことばかりにこだわりますね。
実はこれ、方程式ではなくて公式なんですが語呂がよいので方程式にしました。
ついでにエクセルでグラフと表も作りました。公開はできませんが。南無。