・百合くさいけど百合じゃないです
・咲夜×魔理沙くさいけど咲夜×魔理沙じゃないです
・ちょっと自己解釈ありです
・至らぬ部分ばっかです。 さあ殺せ!
紅魔館の一室、カーテンの隙間から漏れる朝日に室内が淡く満たされていく。
壁に飾られた無数のナイフが日の光を銀に染めて反射する。
「いっつも思うんだけどさ。……この部屋、いかにも『十六夜 咲夜の部屋でございます』って感じだよな」
淹れたばかりの紅茶のカップを手に取り、部屋を見回しながら普通の魔法使いは言った。帽子は膝の上に降ろされていた。
お茶を一口。ソーサーの隅に乗った角砂糖二つをカップの中に落としてまた一口。
「何が『いかにも』なのかしら?」
魔法使いとテーブルを挟んだ位置に腰掛けながら瀟洒なメイドが尋ねた。
「いや、四方八方どこを見てもナイフが目に付くあたり、あんたらしいなぁっと……」
一体何本のナイフがあるんだ?と指差し数え始める魔理沙。
紅魔館の敵を全て切り裂くには十分な数よ、と細かに動く魔法使いの小さな手を眺めながら咲夜は答える。
「大体それなら魔理沙、貴方の家こそ『いかにも』といった感じじゃない」
魔理沙の手が止まる。
「どの辺がだよ」
「物で溢れかえって足の踏み場もない辺りが」
飄々とした様子で紅茶を味わう咲夜。その態度に魔理沙は少し頬を膨らませ、言う。
「家はともかく、私自身はいつでも整っているぜ? 身だしなみも心構えも」
「髪留めのリボン、解けかけてるわよ。今日は妹様の相手をしていたのでしょう?きっとその所為でしょうね」
「ふふん。今日は一発も当たっちゃいないぜ? 見え透いた嘘は――」
と魔理沙は得意げに笑いながらも、さりげなく片側だけ編んだ髪の先に手を伸ばそうとする。
そこで咲夜は時を止めた。
「嘘よ」
自分以外の全てが止まった世界。
しかし咲夜は誰にも聞かれないよう、ぼそりと嘘を告白した。
椅子から立ち上がり、魔理沙に近づいていく。
魔理沙の頬をそっと撫でる。
いつでもどこでもころころと表情を変える少女。
初めて会ったときだって、敵同士だったにも関わらず、不敵に、時に無邪気に笑っていた。
裏をかかれて窮地にたった時には悔しそうに顔を歪めて、得意の恋符を取り出してはまた不適に笑う。
霧の異変が終わってからも、彼女はしばしば紅魔館を訪れては色んな表情を、笑顔を振りまいていく。
いつだって彼女は止まったりしない。
猛スピードで空を駆け抜ける彼女はどんな時もいろんな感情を胸に抱いて、惜しげもなく辺りに零していく。
それはとても楽しげに見えて、――実際楽しいのだろうけれど――しかし咲夜は思う。
危なっかしい。
今まで、咲夜は幻想郷で暮らし始めてから一度だって誰かを心から心配した事などなかった。
吸血鬼の姉妹はいつだって強く、咲夜が心配するまでも無く、いかなる敵をも薙ぎ払ってきた。
門番もそこらの妖怪では話にならないほど強い。例え負けてボロボロになろうと自身の気を操り驚異的な回復を成す。
図書館の魔女はそもそも外に出る事はなく、持病の喘息は自作の薬で抑えている。
紅魔館の外の者など初めからどうでも良い。
自分のことだって、そうだ。
どんな脅威が来ようとも、十六夜咲夜は紅魔に使えるものとして淡々と立ち向かう。
それなのに、この少女のことは気にかかるのだろう
しゅるり、と魔理沙のリボンを解く。時の止まった世界でもリボンと金色の髪は柔らかさを失わない。
時を操るメイド長はそのまま少女の髪に触れようとして、自分の能力の限界が近い事を悟る。
名残惜しげに手を離し、先ほどまで座っていた椅子に再び腰掛ける。そっとカップを持ち上げる。
「貴女は私にとって――」
時間が再び動き出し、咲夜の言葉はそこで止まった。
「――お見通しだぜ」
滑らかに魔理沙の手が目的地に達し、解けたリボンがその掌に収まった。
「……あれ?」
手の中のリボンを眺める。笑みは一瞬できょとん、と呆けた顔に変わった。
彼女の代わりにクスリ、と小さく笑ったのは咲夜だ。
咲夜の様子に気づいた魔理沙が今度は半眼で睨んでくる。
「時間を止めただろ」
本当によく変わる表情だ、と咲夜は思う。同時にとても愛おしい、とも。
「こんな悪戯に能力を使うなよ。手品ならともかく…………何だよその顔、眠くて変な夢でも見てるのか?」
「別に眠いわけでも幻覚を見ているわけでもないわ。悪戯に引っかかったのを笑っているわけでも、ないわよ」
自分がどんな顔をしているのか、分からないが、咲夜は言った。
「ただ……」
「ただ?」
自分は何を言おうとしているのだろうか。
咲夜自身よく分からないまま肺が、喉が、舌が、唇が、言葉を紡いでいく。
言って良い事なのか、悪い事なのか、それすら分からない。
「ただ、魔理沙が可愛らしいな、と思ってね」
数秒、時間が止まった。咲夜の能力ではない。
無言が作る世界の停止。
「……お、おう。私はいつだって可愛い……ぜ?」
静かに再起する時間。
胸を張りながらも顔を逸らす魔理沙の顔は少しだけ朱に染まっている。
「そうね。魔理沙はいつでもどこでも可愛いわ。とっても」
「…………っ!」
咲夜はカップを持ち上げ、さらに続ける。紅茶は完璧に、瀟洒に、揺れる事無く持ち上がっていく。
自分が何を言おうとしているのか分からない。
でも、言ってしまった後で後悔することは無いだろう。
言葉にしようがしまいが、気持ちは変わらないのだから。
「まるで妹みたい」
「……わ、私に姉はいないぜ?私は一人っ子だから、な」
赤らんだままの顔で上目遣いに魔理沙は言う。
そういうことじゃなくて、と咲夜は微笑んだまま言う。
さっきから自分が浮かべていた表情に咲夜は今、気づいた。
自惚れかもしれないが、きっと優しい微笑みだろう。
「魔理沙、貴女はいつも真っ直ぐで、正直で、見ているだけでとても心が透き通っていくの」
魔理沙はさらに俯く。いつの間にか明るさを増した朝日が少女の赤くなった耳を晒す。
「でも、でもね?時々すごく心配になるの」
咲夜はカップを口元には運ばず、両手で包み込んでその暖かさを感じていた。
「そんな真っ直ぐな貴女が、いつか折れてしまうんじゃないかって」
無言のまま、俯いたままで魔理沙は咲夜の言葉を聞く。
「いつも皆に、私に色んな感情をくれる貴女が、崩れてしまいそうで……」
そっと咲夜は立ち上がる。
今度は時を止めず、零れる陽光と魔理沙に心の内を明かしながら。
「私は怖いの。魔理沙が、消えてしまう事が」
俯く魔理沙の傍に立つ。
「だからかしらね? 貴女が折れてしまわないようにいつまでも見守っていたい、とそう思うのは」
「わ、私はっ!」
咲夜の気配をすぐそばに感じて魔理沙は顔を上げた。真っ赤に染まって、必死な顔を。
「私は折れたりしない! ずっと真っ直ぐなままで最高の魔法使いになるんだ!」
立ち上がって真っ直ぐに目を合わせ、大きな声で言った。膝の上にあった帽子が床にふわりと落ちる。
お互いに立ち上がった事で二人の身長差がはっきりと現れた。
魔理沙はとても小さな体で、けれどしっかりと立って咲夜を見上げる。
「そうね。魔理沙ならきっと大丈夫」
咲夜は優しさに満ちた微笑みで応える。
「でも、やっぱり見守っていたいの。私の妹を。…………駄目かしら?」
太陽の光に照らされた咲夜の笑顔が眩しくて、魔理沙は再び俯く。
「…………す、好きにすればいいだろ……」
ぽすん、と 少女の頭が咲夜の胸に寄りかかる。
その小さな頭をそっと抱きしめて、咲夜はかつて無い温もりを感じた。
「うん。好きにさせてもらうわ」
紅魔館のメイド長が頻繁に館から姿を消すようになったのはその日からだった。
主である吸血鬼は今日も笑顔で出かけていくメイドの後姿にため息を吐きながらも止める事はせずに見送る。
「もうすっかり姉気取りね。……今日はフランと遊んであげようかしら」
門を守る妖怪は内側から開けられた門を振り返り、元気一杯の笑顔でいってらっしゃいを言う。
「いってらっしゃ~い! ……………………今日もナイフが飛んでくる心配もないし、もう一眠りしよっと♪」
はるか遠くから飛んできたナイフが門番の帽子を強化処理された筈の塀に深く縫い付けた。
博霊神社にて
「霊夢ー。お茶くれー」
「たまには自分d」
「はい魔理沙。熱いから気をつけてね?」
「咲夜、魔理沙は私にお茶を頼んだんだけど?」
「ねえ魔理沙?そろそろ私の事『お姉ちゃん』って呼んでくれないかしら?」
「……無視か」
「いや、その……それは、恥ずかしい……ぜ」
「……魔理沙まで?」
「いいじゃない。一回言ってしまえばもう恥ずかしさなんて消えちゃうわよ」
「何言ってんのアンタ」
「う~………………おねえ、ちゃん……」
「ちょっ! 魔理沙っ!? こんなのパッド長とでも呼んどきなさいよ!」
「あ~もう可愛いっ! 魔理沙可愛いっ!!」
「パッド発言さえスルーなの……?」
すらすらと読めました。
あと、「不適に笑う」は「不敵」では?
>・至らぬ部分ばっかです。 さあ殺せ!
よし! こーりんk(ry
>不適に、時に無邪気に笑っていた。
不敵に、じゃなく?
そんで二人にスルーされてやきもち焼いてる霊夢も可愛い…w
6弦はマイナーなのが好きなんです
ゲームも映画も小説も音楽も
……ついでにカップリングも!
こういう関係もいいものですな
是非シリーズ化を!
巫女やら人形遣いやら本の虫は、さくっとないがしろにされる方向で是非!