Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ベッドの下に殺人鬼、クローゼットにゃ紅美鈴

2007/07/13 23:01:22
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 紅魔館はレミリアの私室。題名通りの展開がそこにあった。
 職人の腕を余すところなく見せつける白亜の椅子に座り、優雅な仕草で紅茶を飲むレミリア。
 ベッドの下で息を殺し、レミリアのドレスを抱きしめ堪能しつつ、微塵の気配も悟らせまいとする咲夜。
 そして、レミリアの衣服にもみくちゃにされながら、クローゼットの中で軽い呼吸困難に陥っている美鈴。
 どうしてこんな状況が作られたのか。
 美鈴がレミリアの部屋に訪れたのは五分ほど前。そこで、胸以外がきつくて苦しいと、レミリアの服を着ようとして悪戦苦闘する咲夜を目撃した。父親の不倫現場を目撃した子供よろしく、咄嗟に目を逸らし逃走を図るも捕獲。
軽い脅迫を受けた。
「あなたはココで何を目撃したのか、もう一度言ってみなさい」
「いえいえ、私は何も目撃していませんよ、咲夜さん(ロリ)」
「言外に悪意を感じるんだけど」
「とんでもない! そんなこと思ってもいませんよ、咲夜さん(ロリ→ペド)」
「パワーアップしてない? してるでしょ、おいこら」
 胸ぐらを掴まれて、前へ後ろへ揺すられる。脳みそが良い感じにシェイクされて、笑顔で空に浮かぶ小悪魔が見えたとか。死んでないのに、まだ。
「わかってるわよね、ココでは私は瀟洒な従者で通ってるんだから。お嬢様の服を着ようとしてたなんて噂が流れたら、明日からどんな服着て暮らせばいいのよ!」
「いや、そこは普通にメイド服を着たらいいと思いますけど。逆に開き直れてお嬢様の服を着られても困りますし」
 瀟洒な従者、主に変態方面に。廊下で出くわしたら、死んだ振りをしないわけにはいかない。
「とにかく、あなたさえ誰にも喋らなければ問題ないのよ。いいわね、絶対に誰にも喋るんじゃないわよ!」
「つまり文字で広めろと?」
「違う! 誰にも教えるなってこと! もしも噂が広まるようなら、あなたの名前から『り』の字をとる!」
 本メイン。図書館で司書やってます。
 趣味はアイシクルフォールのEasyに被弾すること。
「大丈夫ですって、誰にも言いません。こう見えても口は固い方ですから。最低でも一時間は保ちます」
「思い切り柔らかいじゃないのよ!」
 幻に指定されかねない右ストレートが頬に決まる。種も仕掛けもないとは、このことだ。
 などと、軽いコミュニケーションをとっていたら、不意にお嬢様が部屋へと戻ってくる気配を察知。
「ど、どうしよう。勝手に部屋に入ったことがばれたら、きっと怒られるわ。いえ、怒られるだけで済んだら良い方。きっと地下に連れて行かれて、厳しい折檻を受けるのよ。ああ、止めてお嬢様! そこはナイフを仕舞うところです!」
「何を妄想してるんですか。とりあえず隠れましょう」
「いえ、ここは敢えて素直に怒られることにするわ」
「いいからとっとと隠れててください、咲夜さん(ペド→M)」
「さっきから私の属性を勝手にチェンジしてない? ねえ、チェンジしてるでしょ?」
 口論しつつも、美鈴はクローゼットへ、咲夜はレミリアの服を抱きかかえてベッドの下へ。それを持って何をするつもりだ。美鈴のツッコミはしかし、部屋にレミリアが入ってきたことにより永遠に吐き出されることはなかった。
 クローゼットの隙間から、部屋の様子を伺う。
 レミリアの片手には湯気が煙るティーカップ。非常に不味い。どうやら、そこそこ長居するつもりらしい。
 咲夜ならともかく、美鈴のいるクローゼットは地獄だった。服が全身にまとわりつき、あまつさえ口元を覆い、空気を吸わしてくれないのだ。
 さながら繊維のエイリアン。顔面を覆われたら、もう剥がせない。物音を立てられないから。
「……ふーっ……ふーっ……ふーっ」
 だがしかし、呼吸音は次第に大きくなっていく。
 クローゼットの中に潜み、幼女の服を顔に当てながら、呼吸を荒くするなど、これではまるで変態ではないか。
 紅美鈴。たとえ、十六夜咲夜のパットをフリスビーにして遊ぶことはあっても、変態と呼ばれる筋合いはなかった。少なくとも、本人はそう思っていたのだ。
 とはいえ。酸素不足にも限界があるわけで。ついに我慢しきれず、軽く身体を揺らして顔にへばりつく繊維質エイリアンを駆除。当然鳴り響く、THE物音。
「誰!」
 殺気がクローゼットに降り注ぐ。一発で居場所がばれてしまった。
 美鈴の脳内に四つの対処法が浮かぶ。
A.素直に飛び出す→事情を説明する→本メイン
B.このまま隠れる→スピア・ザ・グングニル→無茶しやがって
C.誤魔化す→「にゃ~」→なんだ橙か→スピア・ザ・グングニル→全藍が泣いた
D.凄く誤魔化す
 決定、Dで。
 美鈴は手元にあった衣装をかき集め、顔がばれないように顔面にまとわりつかせた。白いドレスが、覆面のように顔を覆い尽くす。
「とうっ!」
 そして威勢の良い掛け声と共に、クローゼットの中から飛び出した。ここからは相手に理解させる暇を与えてはいけない。
 勢いで混乱させて、うやむやのうちに逃走するしかない。
「私はドレスの妖精。普段からドレスを大切にしてくれるお嬢様に恩返しする為に、こうして現世に具現化してきました!」
「えっ、私ってばよく血とかこぼして咲夜から怒られてるんだけど」
 ショック。まさかの、紅い悪魔。
 日頃の恨みならともかく、恩返しする為にという設定には些か無理があった。というか、全てに無理がある。
「訂正、訂正。お嬢様に恩返しする為にきました。理由は何となく!」
「何となく!?」
「というわけで、あなたの願いを一つだけ勝手に決めてあげます。私が」
「あなたが決めるの?」
「なるほど、ドレスが欲しい。わかりました。じゃあ、通販で頼みなよ!」
「ただのアドバイスじゃない!」
 レミリアがツッコミに夢中な間に、ちらりとベッドの下を覗く。
 ドレスの妖精二号発見。
 問題はその顔に巻いたドレスは誤魔化す為のものか、趣味なのかによって評価が異なる。今のところは一:九は後者が有利。
「おおっと、そうこうしてる内に時間がなくなった。残念ですけど、ドレスの妖精は二分五十秒しか具現化していられないのです」
「随分と中途半端な時間ね」
「ごめんなさい。さあ、行きますよ二号!」
「オッケー……ふーっ……一号!」
「二号!?」
 ベッドの下から出てきた二号に、レミリアは目を丸くする。無理もない。こんな連中が二人も自分の部屋にいたら、間違いなく殺虫剤をたいていた。
「これからはドレスに血をこぼさないように! それじゃあさようなら、お嬢様」
「ドレスを大切にしなさいよ、ヴァンパイア」
 そうして二人は、呆気にとられたレミリアを置いて部屋から出ていったのである。
 脱出成功。
 色んなモノと引き替えに。





 後日、自分のしたことを改めて思い出して凹む咲夜に、美鈴は優しく声をかけてあげた。
「大丈夫、そのうち馴れますって」
 咲夜は余計に凹み、紅魔館の業務はしばらくの間滞ったという。








「そういえば咲夜、私の下着も無くなったんだけど、何か知らない?」
「…………」(少女口笛演奏中)
八重結界
コメント



1.ライス削除
趣味はアイシクルフォールのEasyに被弾すること。
という一文が秀逸でした。吹きました。
2.名無し妖怪削除
この長さでこの面白さはヤヴァイw
パットをフリスビーとか全藍とか散々笑った上に、あとがきで吹きました。
次回に期待しています。
3.卯月由羽削除
カオス過ぎるよwww
4.翔菜削除
>アイシクルフォールのEasyに被弾すること
悲惨すぎるwww
5.名前が無い程度の能力削除
いつも変らぬ八重結界節ww
あんた天才という名のカオスだww