「してやられた!! あのもやし!!」
永琳さまこと師匠は禿げていた。
言い換えればスキンヘッドであった。
「やられたって、その頭のことですか?」
「はっ、いやっ、ウドンゲいつからいたの!?」
「昨夜の午後ぐらいからですかねえ」
「いつよそれ!? っていうかどこにいたの!? 素で気付かなかったハッハーン」
「引き出しの中です」
「タイムマシン!?」
師匠が最近セクハラと怪しい取引と怪しい薬作りしかしてないので、未来から公正させにやってきました。
「くぁー、ウドンゲに頭見られた! 恥ずかCー!!」
師匠は爆発した。
残り師匠×4
「というわけで、もやしに薬の材料を頼んだんだけど、偽物をつかまされたわ」
「自分で飲むって、何の薬作ってたんですか……」
「モテ薬」
「最低じゃないですか」
「てへ」
「てへじゃない」
八意永琳は食事も睡眠も必要ない!
ただひとつ、セクハラさえあれば……。
「というわけで、もやしを懲らしめてきて」
「そんなんでいいんですか」
「えーと、ラスボスを倒せば私も元に戻る、はず!」
「なんですかそれ」
「お約束」
「で、何で私が」
「それはッ!!」
辺りがフラッシュした気がした。
「あなたがッ!!」
まただ。チカチカする。うぜぇ。
「主人公だから!!」
師匠は爆発した。
残り師匠×3
残り師匠が0になるとゲームオーバーだよ☆
なぜ主人公の私ではなく師匠の残機なのかは魔界神のみぞ知る。
師匠も知らない。
「よくわかりませんが紅魔館のパチュリーさんをのしてくればいいんですね」
「頑張って! あ、トランシーバー渡しとくから何かあったら教えてね! 私からも何か連絡するかも」
「わかりました。うまくできるかはわかりませんが……」
「頑張れ頑張れウドーンゲー」
ハゲ師匠は踊った。
「どうでもいいですが帽子かぶっといたほうがいいですよ。笑えるんで」
「はうっ恥ずかCCCCCCCCCCCC」
師匠は爆発した。
残り師匠×2
「出発前から残機が半分以上減ったんですけど」
「えーりん、お茶目☆」
「………」
「はうっ、無言」
師匠は爆発した。
残り師匠×1
師匠は押入れから猫耳フード(白魔導師的な意味で)を取り出し、埃を払ってからかぶった。
正直似合ってないし、おでこが広いの見えちゃってる、そもそもそんなものが出てくること自体が不可解なんだけど、もう師匠の残機がないので黙っておく。
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい。辛い旅になるかもしれないけど、あなたならきっとできるわ。私は新薬の開発に勤しむからこれで」
懲りない人だ。
STAGE1 ちんちくりん
何という竹林……下手に動くと間違いなく迷う。^o^
しかし心配御無用、上空を飛べば視界も広く、何ともないのです。
そーれ、浮上ー。
浮上ー。
………。
私は力をなくし、土に跪いた。
ああ、人の世とはなんと非情だろうか。
いつもできるはずの飛行が、できない……!
いるはずの人間が、いない……。
いないはずの人間が、いる……。
天の理をも曲げますか……さすがは乱世。
私は、竹林を抜けられないのか!?
そうして私は、最初のクリボーに体当たりされて落ちた。地面の下へ。
ぷるぅ
てれっててれれれー(死亡)
残りうどん×gyふじこpl;@
ふじこってなんだろう。
そう思いながら目を覚ますと、そこは師匠の部屋だった。
師匠は机に向かい、一生懸命に薬を作っているように見えた。
起き上がってよく見ると、グラビア写真集を至極真面目な表情で見つめているだけだった。
真剣だった。
まるで戦場に挑む戦士のように。
まるで締切り二時間前のように。
「まさか師匠がそんな本を」
「んぎょー!?」
気付いていなかったのか……私がため息混じりに呟くと、師匠は思いっきり写真集をぶん投げて驚いていた。
「あ、ああ、ウドンゲ……起きていたのね」
「ええ、今起きました」
「ふ、不思議のダンジョンで力尽きると、レベルが1になって、ここまで戻されてしまうの」
確かに、あの竹林はそれと似たようなものかもしれない。
「……師匠、一応聞きますけど、寝てる私に何かしてませんよね?」
「え?」
師匠は真剣だった。
真剣に納得していた。
その手があったか、と小声で呟いた。
聞こえてますよ。
何があっても倒れてはならないと思った。
彼女なら、とてもここでは書けないことを平然とやってのけるに違いない。書くけど。
目がギラギラしたハゲ医者に人体実験される……嫌だ。
書いた。
痺れない。ましてや憧れなど。
せめて髪が生えたら考えてやる。
「……よっと」
布団を丁寧に退け、ベッドから降りる。
うん、服は乱れていない。
「ところで師匠、なんでか空が飛べなかったんですよ」
「あなたはまだレベル1。今はただのうどんだけど、あなたがレベル18になってうどんげにクラスチェンジしたら空を飛ぶ能力が得られるわ!」
「もはや何のゲームだか。RPGツクールであちこちからパクリまくって収拾つかなくなった自作ゲームみたいな」
「ここは永遠亭。英語で言えばエターナル――」
「わかりにくいネタはともかく、いってきます」
「いってらっしゃい」
STAGE1 ちんち(ry
ひどい略し方をしたもんだと思った。キレたい。
ともかく冒険は始まったのだ。
失敗は許されない。
私は最初のクリボーに溜まったストレスをぶちまけると、私は
穴に落ちた。
ぷぅ
てれっててれれれー(死亡)
残りうどん×gyふじこpl;
「ふふふ、可愛いわ、ウドンゲ……」
「目覚めたァッ!!」
「ぎょっ!?」
そう易々と実験台になるものか!
私は三秒くらいで目覚めると、さっさと部屋を飛び出した。
師匠は爆発した。
残り師匠×0
GameOver
てっ てっ てー てーれーれてーれーれ てれれー
コインいっこ
残り師匠×5
「おおウドンゲよ、よくぞ帰られた」
何故今、師匠が爆発したのかわからない。
天才だからか。
「私の百円……あとで返してくださいよ」
「~♪」
「無視すんな」
とはいえ、この人の相手はやっぱり色々面倒なのでさっさと行くことにする。
STAGE1 ち(ry
もうここから進めない気がしてきた。
最初のクリボーを踏み殺し、穴を飛び越えて、何となく下り坂でジャンプしたら死んだ。
残りうどん×gyふじこpl
「うふふ、ウドンゲったら、そんなに私に会いたいのね……甘えん坊さん」
「頭突きッ!」
「あうち! もふもふしてるけど」
「耳ビンタ!」
「痛いっ! 痛キモチイイ!!」
「………」
STAG(ry
それにしても難易度高い。
最初のクリボーを踏み潰し、穴を飛び越えて、坂道ではジャンプしないようにした。
その後も栗を踏んだり煉瓦をぶっ壊したりしてたらレベルが2に上がった。
よぉー ちゃちゃちゃっ ちゃちゃちゃっ ちゃちゃちゃっちゃっ ほぅっ!
……レベルが上がった効果音らしい。気にしないことにする。
空を飛べるようになるまであと16レベル。近いようで遠い。
というかこのペースで続けていたら何キロバイトになるのか想像もつかない。
うどんげ頑張る。このSSの重さは私にかかっている。
「たこたこたーこ たぁーこたこたーこ たーこたこたこやき マントマン☆」
夜雀が歌いながら突っ込んできたけど、戦闘描写とか面倒だから蹴散らすね。ほい
「ひどくね?」
よぉー(ry
一気にレベルが4まで上がった。
もうなんか雑になってきている。
製作者が飽き始めているツクール製ゲームみたいな。
そうこう言う間にステージ1をクリアしたらしく、ファンファーレがどこからともなく鳴り響いた。
ストーキングされてるみたいで怖い。
とりあえずさっさと進む。
STAGE2 紅魔館門
竹林から出たらすぐ館にたどり着いた。これは間違いなく製作者飽きている。やばい。
何がやばいって、そもそもこのゲーム作りかけで放置されてるんじゃないかと思うところだ。最後のほう作ってなかったりして、そこから話が進まなくなってしまうかもしれない。
この紅魔館の奥、いや、一寸先さえも、存在しているのか危うい。
ツクール触ったことのある人ならわかると思う、マップだけ作って人がいないって状況はよくあるけど、それに実際出くわすと怖いと思うのよ。
しかも移動イベントも作ってないから、一度入ると永遠に出られないという。
紅魔館の門番は……いた!
踏んづけてさっさと行こうと思う。
「兎の超跳躍踏んづけアタック!(着地失敗すると死)」
「甘いわァ! ほあたぁ!!」
「なっ……!」
門番の中なんとかって奴は、こともあろうに私の踏み付けをはじき返した。
ちなみにウサギの跳超跳躍踏んづけアタックは、はじき返されたときのみ自滅ダメージがない。ゲーム的豆知識。
「まさか、まさかこいつがみすちーより目立つと思わなかった!!」
「ひどいですよー……」
「あ、いや失礼しました」
なんという強敵……製作者は間違いなく中……のファン。
「もはや中国という呼称さえ忘れられてしまった。もうだめだ」
「あ、そうそう中国だったね」
「紅美鈴ですけどね」
「それで、……えと、中……ラーメンマンだっけ?」
「『中』からマジカルバナナしないでくださいよー!」
「でも三つ編みしてるし」
「で、でもおでこに中なんて」
「書いてますよ」
「エェー!! これは間違いなくいじめだ!?」
ほんとに書いてある。
「じゃあそろそろ行きますね。あなたも力強く生きてください。ラ……なんとかさん」
「それさえ忘れるの!?」
うろたえるラさんを尻目に私は歩き出した……が、その行く手は遮られた。
「って、行かせませんよ」
「あ、腐っても門番?」
「です」
私は腰の右側に差した銃を掴んだ。これでいつでも抜き出せる。
同時に、ラさんと目を合わせたまま、後ろに一、二。
三歩目、不意に鳴った水の音。
ただの水溜りでよかったと思った。が、その時の一瞬の判断の鈍りを、ラさんは見逃さなかった。
そして叫んだ、大極拳法奥義なんとかかんとか――さすがにもう、私にそれを聞き取る余裕はなかった。
私は咄嗟に銃を抜き、
構え、
引き金を引く――。
嗚呼、たったそれだけの動作なのに。
ラさんの拳が、それよりも僅かに早く、私のみぞおちに入った――らしい。
らしいというのは、その瞬間には、私の身に何が起こったのかわからなかったから。
とにかく胃液が逆流する熱い感じと、口の中にすっぱい味が広がり……かつ、いつのまにか、私は倒れていた。
息苦しい。数秒は動けなかった。
なんとか起き上がることができたとき、真っ先に睨みつけた相手は、余裕を見せているのか追撃をしようとはしていなかった。
自分の位置は、ラさんから十メートル程度離れていた。
かなり吹き飛ばされたようだ……恐ろしかった。
本当に、こいつに苦戦するとは。人生、わからないものだ。
「通さねぇ……ここはぜってぇ通さねぇ!! 門番美鈴、この門が私の正念場よォ!!」
ラめ、調子に乗っている。うろ覚えでセリフネタをやらんでほしい。
むかついた、何が何でも倒す!
先ほど抜いた銃は落としてしまったが、今度は、左手側にあるもうひとつの銃を抜……けない? あれ、銃がない!?
「ふっふっふ、お探しのものはこれかしら?」
そう言うラさんの右手には、私の――。
最後の武器は敵の手中、だった……。
こんなに落胆したのは、てゐが私の人参を四本も食べてしまったとき以来のものと思う。
さらに、この落胆を絶望へとクラスチェンジ(レベル18)させる要因として、私の肉体は、さっきの一撃の影響で満足に動きそうもない、ということがある。
勝つのは無謀な気がしてきた。一度引き返すべきか?
……いや、ここで倒れようと。
むざむざ尻尾を巻いて逃げるなど、武人のすることでは……ない!
こうなれば、最後の頼みはスペルカード。
「もったいないから取っておいたけど、使うことにするわ、私のスペルカー……」
ドも、なかった。
「……どうしたの? こないのかしら?」
ラは余裕の表情で私を見ている。本当に調子に乗っててむかつく。
珍しすぎる見せ場だからって……!
そのとき、トランシーバーから聞き慣れた声がしていることに気付いた。いつから呼びかけていたかはわからないが……。
「……ちょっとタイム」
「ん、いいですよー」
歌うようにラは了承したので、私はトランシーバーを顔に近づける。
「……師匠ですか」
『ああ、やっと応答したわ。心配しちゃったじゃない』
「申し訳ありません、取り込んでいたもので。何かありましたか」
まさか、師匠の身に何か……。
『ひとつ言い忘れたことがあったのよー。ごめんね。スペルカードは、レベル6からじゃないと使えないの』
「チクショー!!!!」
私は爆発し……かけた。危ない。
さすがにハゲ師匠とともに自爆するわけにはいかない。いかない。
私のレベルはまだ4。つまりルール上、スペルカードを使うことは不可能。
身体は自由には動かない。銃は敵の手元。
「………」
「もういいですかー?」
待ちくたびれたと言うが如く、ラは地団駄を踏みながら言った。
残る戦法は体術のみ。だが、それも技術、体格、そしてダメージ、どれを取っても不利であり――。
誰がどう見ても絶望的な状況だ。
「いいですね? そろそろ……」
来る! 私は、私はどうしたらいい……?
1.正統派美少女兎のうどんげは突如反撃のアイデアを思いつく
2.兎の仲間が来て助けてくれる
3.かわせない。現実は非情である
「チェックメイトです」
相手は速い、一瞬で間合いを詰め、そして……。
どう考えても3です。本当にありがとうございました。
残念ながらボッシュートです。(ちゃーら ちゃらっちゃ~ん)
残りうどん×gyふじこp
とにもかくにも、今日も師匠の部屋である。
「うふふ、もう幸せそうな寝顔が天使のよう……」
「耳で目潰しアタック!」
「へぶぁっ」
説明しよう、耳で目潰しアタックとは、兎の長い両耳で敵の目を狙い攻撃する技である!
「なんでラがあんなに強いんじゃー! 聞いてないよ!」
「うう、またステージ1から、レベル1からなんて、ウドンゲ大変ね……」
「大変すぎますよ不思議のダンジョン。死にまくるし……」
大変すぎて当初の目的を忘れていた。
例の猫耳フードと、その奥に光るおでこを見たら思い出した。
師匠の髪を取り戻すまで、私は戦わなくては。
いざ、再び出発!
STAGE1 ち(ry
クリボーとクリボーの間に着地してしまって死亡
STAGE(ry
モンスターハウスだ!
死亡
STA(ry
毒矢の罠を二回踏んだのでやる気がなくなる。店主に矢を撃ってしまって死亡
ST(r
宇宙人の弾が砦に当たると思って隠れてたらスレスレで当たらなくて私に命中 死亡
S(r
食べすぎで死亡
(
恥ずかしくて死亡
「ウドンゲったら、いつまで経っても甘えん坊なんだから……」
「ちがーう!!」
永琳の壺[5]が割れた。
「これで99個目の失敗作です」
師匠の部屋が嫌になってきました。さっさと行くことにする。
「待って、ウドンゲ」
ただ、足だけを止めて応える。
「晩ごはん、一緒に食べましょう……?」
意外な一言に、思わず振り向いた。師匠の目には、なぜか寂しさが浮かんで見えた。
この頭だ。
兎たちの目に留まったら、師匠の威厳が落ちるかもしれない。
もしくは、小学生みたいなノリで、変に的確なあだ名をつけられるかもしれない。
アームストロング少佐……とか。
典韋のほうがいいかな。
ワイトでいいや。遊戯王の。
ともすれば、私がいないければ、賑やかな食堂にも行けず、ここに独りでカップラーメンをすするという切ない飯時を過ごすことになったのだろうか。
………。
「ご一緒します」
「ありがと、ウドンゲ……最近、私は貴方に助けられてばかりね……なんだか情けない」
「そんなことありませんよ。あなたがいなければ、私は……」
その先は特に思いつかなかった。
「貴方は私の誇りの支障ですよ。いいところで誤字してしまいましたが」
ごまかし。
「うん、台無しね」
「ですね」
「………」
「………」
「……ぷっ」
「……くくっ……あはは……」
なぜだかわからない、のだけど、なぜか嬉しくて、なぜか可笑しかった。
そして、師匠が今ハゲなのだと思うと余計可笑しくて、私だけしばらく笑いが止まらなかった。
二人でカップラーメンを食べても、結局切なかった。
料理は手作りが一番だと実感した。せめて、晩ごはんぐらいは……。
STAGE1 ち……なんだっけ
辺りは既に暗闇に包まれていた。
人間や動物の時間は終わり、ここからは妖怪の時間。
昼間いたクリボーは軒並みどこかへ消え、代わりにメットが徘徊していた。
踏んでも死なないので経験値が溜めづらかったが、しばらくしてスピンジャンプで破壊できることに気付く。
損した気分だ。それにスピンジャンプは、スカートが舞い上がるからあまり使いたくない。
「もすかう もすかう らーんらららんらんらららん」
蹴散らす。
「んぎゃっ、やっぱりひどい……。もう名前すら出ないし」
「そんな怪しい歌を歌う奴なんて貴方ぐらいよ。大丈夫」
「妖怪の時間なのにー。私の時間なのにー。だいたい戦闘描写面倒だって言ってたくせにラ……何とかとはしっかり戦ってるしー」
STAGE2 紅魔館門
さて、おいしい焼き鳥を作って、私のレベルは5。残念ながら、目標の6には一歩及ばなかった。
故、結局ラとの戦いでスペルカードは使えないことになる。
……経験値設定が地味に意地悪な気がする。
だが、なぜだか私は自信に満ちている。というか、ラなんぞに二回も負けてたまるか。
「また来たんですか。懲りないですねぇ」
ラはまだ、そこにいた。
「……交代とか、ないの?」
「……ないですよ」
彼女も色々大変らしい。
「ちょっと聞いてくださいよ兎さん。咲夜さんったらこの間……」
なぜか唐突に愚痴り始めたので、とりあえず聞いてあげることにした。
サボるとナイフを投げられること。
それが確実に命中すること。
門番の食事は割と質素であること。
咲夜さんは自分のこととなると意外と抜けていること。
咲夜さんのパンツは白であること。
れみりあうーのやり方。
おいしい焼き鳥の焼き方。
それらに思うところがあって(従者同士、わかり合う部分があったのかもしれない)、私もつい話し込んでしまったのだった。
師匠は最近変態になってしまったこと。
師匠はむしろ昔から変態だった気がすること。
師匠は私に薬の製法より性知識ばかり教えること。
師匠のおっぱいはミサイルじゃないかと思うこと。
師匠のパンツは黒であること。
えーりん! えーりん! のやり方。
おいしい焼き鳥の焼き方。
なぜだか、一緒にいるとほのぼのするラさんと話をするうちに、ずいぶん饒舌になってしまっていたようだ。
でも、今師匠がハゲていることは言わなかった。
話をしている間、光る頭が脳裏に何度もちらついたけど、それだけはどうしても言いたくなくて、自分をごまかし続けた。
さて、いい加減話を進めようと思う。ただでさえ無意味にファイルサイズばかり肥大化させているのだ。
「あ、そういえば兎さん、何か用があったのでは?」
「……そうですね」
相手もようやく思い出してくれた。
私はラさんから十歩ほど離れ、いつの間にか戻ってきていた銃を抜いた(死んだときかしら)。
思えば、なぜこんなにも彼女と仲良くしていたのだろうか。
波長が合ったのかもしれないが……。所詮、敵同士である。私はこの奥へと行かなければならない。故に門番である彼女を、倒さねばならない……!
「短い間でしたが、楽しかったですよ、ラさん」
「私、まだラなんだ……」
振り向く。先ほどまで親しみやすかった彼女は、今度は何故か、とても遠く見えた。
「……仕方ありませんね。いきますよ」
ラさんは、全て察しているかのように、淡々とそう言った。全ての技の基本となる何とかの構えのポーズを取る。
それに合わせて、私も銃を抜き、狙いを定める。
お互い、一瞬で終わらせるつもりだ。
私はここを通りさえすればいい。
ラさんは私を追い返すことさえできればいい。
銃はラさんの身中を捉えている。引き金を引けば弾はそこに行くだけ。
だが、それだけでは彼女の身を貫くことはできないだろう。それどころかきっと、私が引き金を引く動作に合わせて、銃弾を撃つよりも早く、持ち前の高速移動によって一瞬で右か左に移動し始める。そうなれば、銃しか武器のない私には圧倒的に不利な状況になってしまう。
では、どうするか。作戦はないことはないが……。
相手は速さもパワーも、私よりかなり優れている。こんなとき、保守的になっていてはいずれ負ける。だから、多少の無茶としてでも攻めなければ勝つことはできないのだ。
ゆっくりと左手の銃を抜く。構える。ふたつの銃口がラさんを捉える。ラさんは動かなかった。私の思惑を汲み取れないでいるのだろう。それでいい。一つ目の運試しは成功した。
ここからは分の悪い賭けになる。成功するかどうかは、ラさんにかかっていると言っても過言ではない。
私は今度は素早く、二挺拳銃の照準をそれぞれ右と左にずらしてから、同時に発砲した。
いくらラさんが素早いといっても、まさか銃弾の軌道にわざわざ飛んで入ったりはするはずもないし、私の正面はがら空きである。銃を撃った反動で両手もすぐには使えない。
つまり当然、ラさんはまっすぐか、上からこちらに向かってくる。どちらでもいい。これでいいのだ。
ラさんはきっと私を馬鹿に思っただろう、自分が左右に動くのは見越していたとしても、だったら左右に撃てばいいという浅はかな考えで銃を撃ったのだと。このうどんは不利な状況で焦ってしまったのだと。
だから、ラさんは無警戒にまっすぐ飛んできたのだ。
さあ、二つ目の運試しである。相手が私のイメージどおりのラさんであるならば成功するはずだ!
「紅美鈴さん!」
「はぃ、え!?」
うどんげ百の必殺技のひとつ、「名前で呼んであげる」!!(ずぎゃーん!)
もう諦めていただろう、名前で呼ばれるということ。中とかラとかじゃない、親に付けられた名で。私もうどんとかうどんげとか因幡とかよくわからない呼び名を付けられたので、この瞬間の気持ちはよくわかるのだ。嬉しいより先に、びびる。
つまりこの技は「名前で呼ばれない属性」を持つユニットを怯ませる効果を持つ、ということになるのだ!
「チェックメイト返し」
三発目の銃声はあまり轟かなかった。
ついにラさんをやっつけた。
ちなみにゴム弾です。気絶してるけど、ラさんなら多分平気。
レベルは一気に8に。やっとスペルカードが使えるぞ!
もう正直疲れたので帰っていいですか。
でも師匠禿げてるんだろうなー。それはやっぱり嫌だなー。
STAGE3 としょかーん
やたらに静かな午後のひととき。
警備とかそういうのないの、ここんちは? 怖いぐらいに誰もいない、暗くて紅い恐怖の館。
そんな不気味な廊下の先に、目的の場所はあった。
きちんと辿り着いたよ。ちょっと迷ったけど。
ひょっとしてあれか、容量足りないせいでイベント作れなくて、後半の町やダンジョンがなんか質素なパターンか。
スーファミのツクールではよくあることです。「のこりがめん」とか懐かしいね。
それともまさかイベント全く作ってないんじゃ、と思ったけど、目的の人だけはきちんといた。豪華な椅子に腰かけて分厚い本を読んでいた。
「見つけたわ、七曜のもやし魔女」
「……あら、私に何か用? エロウサギ」
「えっ、いや、えろくないもん!!」
罵倒するつもりがされていた。何を言っているかわからねえと思うが(ry
いや、そんなことはどうでもいい。目的は目の前のもやしを折ることだけだ。
「よっこい庄一」
うるさいよ。
なんだかやる気が削がれるが……それも彼女の作戦かもしれないので、無理にでも気合を入れるため、私は叫び気味に言い放った。
「貴方さえ倒せば師匠は元に戻る!」
「戻らない」
「あれ?」
全てを知っているような目で、魔女は淡々と告げた。
師匠、世の中そう簡単にはいかないようですよ。
「じゃあどうすればいいのよ? 貴方の薬でああなったんだから、治し方も知っているでしょ?」
「実は冥界にいる亡霊の姫が黒幕で……」
「適当に言うな! 余計なことしたらまたファイルサイズが無駄に肥大化する!!」
「うーん、じゃあ王子様の口付けで元に戻るってことにしよう」
「ことにしようって……」
何だよそれ、って言おうとしたら、魔女の足元にスーファミがあることに気がついた。RPGツクール~SUPER DANTE~が挿さっていた。
画面には「マップ シナリオの さくせい」と書かれている。
……やっぱり諸悪の根源はこいつで間違いない。私は全てを察した。
「うん、じゃあそれでいこう」
「あら?」
きっとこのSSは、彼女がツクールで書いたシナリオ通りに進んでいる。だから、あのデータさえ書き換えてしまえば、きっとこの先の展開は思いのままになるに違いない!
それに、これ以上の戦闘は辛かったところだ。精神的に。もし倒されてまたステージ1からだなんてことになったら、立ち直れそうにない。っていうかもうぶっちゃけ面倒くさい。戦闘が回避できるのなら、そのほうがありがたい……というのは建前で。
師匠とキッス! 師匠とキーッス! えーりん! えーりん!! えーーーーりーーーーーーーーーん!!!
「……まあいいけどね。貴方の察しの通り、このSSは、この『すーぱーふぁみこん』と『RPGツクール』という式に入力されたとおりに動いている。まったく恐ろしい式……」
不意にパチュリーが、あっ、と声を上げた。同時に打撃音がした。
今まで画面に映し出されていた絵や文字が消えた。代わりに、赤や青や緑の点と線が無造作に散りばめられただけの、不気味な絵が映る。流れていた音楽さえも途絶えた。
――あーやっちゃった。
私の素直な感想だった。
「式が壊れた!?」
どうやらスーファミを蹴ってしまったらしい。パチュリーは慌てて電源を入れなおしたが、表示されたのはいつもの画面ではなく「セーブデータが きえました」の文字。
「NOOO!! 三ヶ月頑張ったのに!!」
「お約束ね。諦めなよ」
「諦めないわ! きっとも つけ 活 るに違 ! ぱ だ
やってしまった。フランドールは身震いした。きっとデータが消える。私の作った可愛いゲームが消える。彼女は嘆いた。
スーファミにとってもっとも危険なことは、可動中に衝撃を加えられることである。近くを歩いただけで止まる我が家のしょぼい中古スーファミ、Bボタンが潰れている我が家のしょぼい中古スーファミ。
そんなスーファミに危機がやってきていることに、フランドールは気が付かないでいた。
テレビの上に置いてあったファミコンのカセットが落ちた。
テレビの上に置いておいたドラクエ4のカセットが落ちた。
落ちて、下にあった可動中のスーファミに当たった。
フランドールが一生懸命ゲームを作っている最中に、そのデータを壊していった。
電源を入れなおせば、予想通りの「セーブデータが きえました」。
ああ、やってしまった。
「……まあ適当に作ったクソゲーだしいいや」
自分でクソゲーだって言うのどうよ。
今はあまり気にしていないフランドールだったが、ドラクエのデータも消えていることに気づいたら、きっと彼女は泣くだろう。
呪いの音を聞いて泣くだろう。
フランちゃん泣かないで可愛いけど泣かないでウフフ
ポルターガイストことカナの悪戯は成功だった。
成功したのに、あの子、驚くどころか気にさえし いなくて悲し ので、カ 、そ る
セーブデータが きえました。
爆発する師匠とスピンジャンプで舞い上がるスカートにはやられた
というかどこのスペランカー先生かね、うどんげ
そういえばSUPER DANTEにもレーヴァテイン出てましたね。