*下ネタ・グロ注意*
あー、かったるー。
私こと蓬莱山輝夜は今日も今日とて引きこもっていた。
最後に外出したのはいつになるのか。
宿敵である藤原妹紅は、最近竹林で牛と体力の限界プレイに挑戦しているらしく、とんと音沙汰がなかったりする。というか生きてるのかしらん。
八意永琳が外出を促さなくなったのは、随分前のような気がする。
鈴仙・優曇華院・イナバは、食事を部屋の中に持って来ず、廊下にそっと置くようになっていた。
因幡てゐ? 誰それ。
そういえば、ここ20日ほど炬燵から出ていない。
廊下の食事は、寝転がって蓬莱の玉の枝を伸ばせば何とか届いて引き寄せられるし。持っててよかった5つの難題。
昨日の夕食……夜食……? あれ? 朝食だっけ? まあ5時間前に食べたのは、色々入った雑炊だった。どう見ても余り物です。本当にありがとうございました。文句言いに行くのめんどくさいから別にいいや。
落雷のようなゲップを漏らした後、私はボリボリ尻を掻きながらテレビに目を向ける。やっているのは胡散臭い通販番組。全然面白くないが、リモコンを発掘するのめんどくさいからそのまま放置で。
パソコンはえーりんに壊されちゃったしなあ。
ボブ、と尻から豪快な音。うは、昨日の芋が効いたのかしら。下着の内側が生暖かくなった。このパンツ、いつから履いてたっけ。1ヶ月くらいは替えてないと思うけど。うん、なんてリーズナブルな私。流石姫。
まあ、そんなこんなで、華麗な引きこもり生活を送っていたら。
突然、視界が真っ白に染まり。
気付けば、見知らぬ場所にいた。
* * * * *
……えーと、何これ?
私ことパチュリー・ノーレッジは、己の目を疑っていた。
まず、状況を把握しようと思う。
最近小悪魔が発情してきてウザかったので妹様に進呈したら、司書がいなくなってしまった。
このままでは困るので、新しい使い魔を召還すべく、消極的に従順な悪魔を召還する方法を魔導書から探し出し、実行した。
そうして出てきたのが、これ。
これが、新しい、使い魔?
とりあえず、率直な感想を一言で。
「――臭っ」
「ちょっと! 今の傷ついたわよ!?」
「……喋ると臭いが酷くなる……けほけほっ」
「なんですって!? 確かにしばらくお風呂入ってないけど、そんな咳き込むほどじゃないはずよ!」
ガリガリと股ぐらを掻きながら、そいつは言った。
……嗅覚が麻痺している!?
この悪臭に何も感じないとは、こいつはどれだけの間、こんな空気を纏っていたのか。
よく死なないものだ。いや、既に死んでいるようなものか。
瞳は大量の目脂で澱み、肌は皮脂でネトネトだ。
服は汗の腐った臭いが染みつき、所々にカビが生えている始末。
よほど痒いのか、音が出るくらい激しく、脇や股を掻きむしっている。
あろうことか、排泄物の臭いまで撒き散らしている。よく見ると、着物の裾はどす黒く汚れていた。
なんだこれは。
こんな悪魔、見たことがない。
「で、私は何でこんなところにいるのかしら? 部屋で優雅にテレビを見ていたはずなのに」
「……信じたくないけど、私が召還した……みたい」
「召還? なんで? 私自分磨きに忙しいの。だから召還される暇もなければ、就活する暇もないの。ほっといてよ」
こいつは何を言ってるんだろう。
「とりあえず、私の使い魔として召還したから、働いて欲しいのだけど……
「働く? いやよめんどくさい」
ぶぴーと耳障りな音の後、ぴちゃぴちゃと床に何かが滴る音。こ、こいつ、部屋の中で普通に実入りを放出したの!?
こんな奴に掃除をさせたら、余計図書室が汚れそうな気がする。
というか現在進行形で汚してるし。死んでほしい。というかその前に悪臭で私が死にそう。
「……ごめんなさい、帰って」
「言われなくても。……でも、どうやって帰ればいいのよ」
「このまま出て行けば……あ、でも使い魔の契約しちゃってるから……まずは解除しないと」
「? なに、私、貴女の使い魔になってるの?
……そうね、本来なら誰かに仕えることなんて有り得ない私だけど、特別に使い魔になってあげてもいいわよ。
そうね……待遇は三食昼寝付きで……月給は――くらいでいいわよ?」
「帰って」
「え!? い、いや、べつに――くらいでもいいわよ?
それだけ稼げればえーりんもきっと私のこと馬鹿にしないと思うし」
「お願いします帰って下さい」
「……うう」
改めて、目の前の腐女を召還した魔導書を読み直す。
「えっと……目の前の臭いのを積極的に解雇する方法は……」
ぱらぱらとページをめくる。
めくる。
めくる。
見つけた。
…………。
閉じた。
OK、私死ぬわ。
「ちょ!? なにいきなり首吊りの準備してるの!?」
「離して! 私にはもうこれしかないの! 魔理沙以外となんて絶対嫌!」
どたんばたんと、臭いのと揉み合う。
……うわあ、触れられたところがねちょっとしてる……!?
暴れた拍子に、魔導書が床に落ちる。
「もう……何を見てそんな急に――」
腐女が魔導書を拾い、パラパラとめくっている。
制止する暇もなく、あの頁を見つけたようだ。
そいつは、臭い口を開いて魔導書の一部を読み上げた。
「『使い魔の契約を解除し、送還するには、対象と口づけを交わさなければならない』」
「…………」
「…………」
痛い沈黙。
先に口を開いたのは、相手だった。
「……まあ、ここってテレビもネットもなさそうだから、居てもつまらないわよね………………仕方ないか」
待って!
仕方ないって何が!?
というかどうして近付いてくるの!?
慌てて逃げようとしたが――足がもつれて転んでしまう。
咄嗟に魔法で何とかしようとしたが、詠唱のため息を吸い込んだら、臭気が喉にスマッシュヒットし、そのまま咳き込んでしまった。
「もう、私だって嫌なんだからね?」
そう言いながら。
近付いてきたそいつは。
私の上に覆い被さり。
ねとり、と粘つく舌なめずりの後――
図書室に、絶叫が響いた。
* * * * *
「ねえ、えーりん?」
「臭いです。近付かないで下さい姫。どうかしましたか?」
「私、このあいだ、はじめてキスしたの」
「……とうとう頭が……」
「な!? どういう意味よそれ!」
「姫。今の貴女に口づけをする死狂いは、幻想郷中を探しても見つからないでしょう。貴女の口づけは彼岸へ直行です。ヒガキスです。戯言はその程度にして、早く職を見つけて下さい。というか風呂入って下さい」
「いやよ、めんどくさい」
蓬莱山輝夜は誇らしげにそう言った後。
重い放屁を一発ぶちかました。
少し実が漏れたようだが、輝夜は全く気にする風もなく、にちゃにちゃと尻を掻く。
永琳は全てを諦めた。輝夜の部屋に静寂が戻る。
完
えーりんが哀れ……
パチェも哀れ
これは酷すぎる…。
と逃避してみる。
話はそれからだ。
しかし何故か爆笑してしまった
もしもゾンビの方程式が当てはまるとすればパチュリーは……いや言うまい……