Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

そして誰もいなくなった

2007/06/30 10:39:42
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「魔理沙、ちょっと脱ぎなさい」

そう、それはいつものお茶の時間の出来事だった。
今日は可愛い妹のフランと偶々やってきていた魔理沙が同席している、という違いはあったものの、それ以外は概ね
いつも通りのお茶の時間。

最近はフランともよく席を供にするようになった。
フランは以前に比べるととても落ちついてきており、おとなしくいい子にしている事が多くなった。
そうなった切欠が私ではなかったというのが残念だが、そんな事は些細な事。今フランがこうして笑ってくれている
だけで十分だわ。
そう、こうして栗鼠の様にクッキーを齧るフランを見ているだけで………何と言うか、もう、ね。
目と胸と鼻の奥から熱いものが込み上げてくるわ。
あぁ、フラン可愛いわ、フラン。
私達にはまだまだ未来があるんだし、今までの分もこれから姉妹仲良くやり直していきましょう。
そりゃあ、もう仲良くなって行きつくトコまでイキましょう。

そうやって私はフラン(+1)とのお茶会を楽しんでいた。
だというのに、給仕をしていた咲夜がいきなり魔理沙に向かってそんな事を言い放ったものだから、私にはそうする
以外の行動を選択することが出来なかった。もちろん瞬時に自らの力を使うことで別の行動を選択するという運命を
手繰り寄せようとしたが、失敗に終わっていた。
よって私は不本意ながらも、その選択を受け入れ行動に至った。
まぁ、つまるところ………

「ブフゥッッ!!?」

噴いた。
それはもう盛大に噴いた。噴いた紅茶で虹が架かる程には盛大に。
魔理沙も、私がこの行動に至った原因である咲夜も驚いた顔で私を見ている中、ただ1人フランだけが

「わぁ~きれ~。ねぇ、コレって虹だよね」

と、無邪気に喜んでいた。
あぁフラン、貴方が喜んでくれて私は嬉しいわ。仕方の無かった事とはいえ、今までずっと地下にいたから虹を見た
ことも無かったのよね。ごめんなさい。いつか2人で本物の虹を眺めながらお散歩できると良いわね。
いえ、お散歩以外にもイロイロとしたいわね。

「ッゴホッ!!ゲホッ…ゲホッ!…」

ドコのドイツのソーセージよ、人がせっかく感動的モノローグに浸っているというのに五月蝿いわねぇ。

「…ゲホッ、…カハッ、ケホッ………ゴホンゴホン…」
「だ、大丈夫ですか、お嬢様」

………そうか私か。いかんいかん、フランの前であんまりな醜態を晒したせいで思わず現実逃避してしまったわ。





「…で?咲夜、一体どういうつもりよ?」

なんとか落ち着きを取り戻した私は、涙と口の周りを拭いついでにチーンと鼻をかむと咲夜に向かい問いかける。

ちなみにフランには席を外してもらった。何やら大人向けの話しになりそうだったから。
いや、もちろんいずれはフランにもそういった事は教えるつもりではいるが、それはまだ早い。
それに教えるならば、私が実地でもって教えなければなるまい。それが姉の特権…いや姉の務めだろう。
フランはまだ魔理沙と遊びたがっていたが、咲夜だけでなくこいつにも事情を聞かないとならないので仕方ない。
魔理沙が『また後でな、部屋に行くから待っててくれよ』と言ったらおとなしく引き下がってくれた。
こいつめ、ちょっとフランに気に入られてるからって………。そのうち人形遣い辺りにサックリ殺られてしまえ。

まぁ、いいや。とにかく、私は目で咲夜に応えを促す。今は先程の咲夜のトンでも発言の方を追及を優先しよう。
よりによってフランの前で私にあんな真似をさせたんだ。きっちり問い詰めてやらなければ。

「はぁ…どういうつもり、とおっしゃられましても………」
「だから!!さっきの“脱げ”はどういう意味だったのか聞いてるのよ!!」
「ああ、それでしたらそのままの、服を脱げ、という意味ですわ」
「あ、やっぱり!?じゃなくて、いったい何でそんな?」
「いえ、だって普通は脱いでするものでしょう、“アレ”は」
「…あ、“アレ”って、まさか“アレ”!?」
「ええ、“アレ”です。
 場合によっては着たままでもいいのですけれども、あの体勢では脱いで貰わないとやりにくいですし」
「着たままで!?」
「ええ、着たままです。でも普段は脱いでもらってからしてますけどね」
「普段は!!?…って、あ、貴方もしかしていつもそんな事してるの!!?」
「いつもではないですが、割としょっちゅうしていますね。あ、もちろんお仕事の邪魔にならない程度ですよ」
「そ、そう………。ま、魔理沙、咲夜の言ってる事はホントなの!?」
「ん?ああ、確かに毎回ってわけじゃないが、思い出してみるとしてもらった事は多いな」
「え~っと、いったいどうして?」
「どうしてって言われたってなぁ………気付いたらそうなってる事が多いし」
「気付いたら!?じゃ、じゃあ知らず知らずの内に脱がされて………?」
「いやいや、さすがに脱ぐ時は自分で脱ぐだろ、普通」
「なら、後は…ええと、どうして咲夜に?」
「いや、最初は自分でしてた事もあるんだぜ。でも、あいつの方が上手いからなぁ」
「上手い!?咲夜!!魔理沙があんな事言ってるけど、そうなの!?」
「はい、もちろん上手く出来ますよ。メイドですからね」
「え!?メイドだからって…メイドだと皆あれが上手なものなの?」
「ええ、メイドの基本技能ですし。まぁ、残念ながらウチの妖精メイドには期待出来ないでしょうけれども」
「へ、へぇ…そうなんだ。そりゃぁ、妖精じゃねぇ………」
「お嬢様、他に何か?」
「うん、いいわ、分かったわ。分かりたくなかった気もするけど、分かったわ。
 ………でもね、咲夜。1つだけ言わせてもらうけど、“アレ”は人前でやるものじゃないと思うのよ」
「え!?そうなのですか?今まで気にした事は無かったのですが………」
「そうなの!!そういうのは2人だけのときに、自分の部屋あたりでなさい」
「あ、場所も気を付けた方がいいのですね」
「もちろんよ!!…って、もしかして今までは?」
「ええ、特に人目も場所も気にせずでした」
「ちょ、ちょっとちょっと!!そうなの、魔理沙!?」
「ん?ああ、妖精メイドが見てる事なんて、しょっちゅうあったぜ」
「みみみみ見てたぁ!!?」
「別に驚く事じゃないだろ。妖精だって興味あるだろうし。だいたい“アレ”は見せたらまずいもんなのか?」
「まずいわよ!!普通に!!そもそもいままでドコでしてたのよ!?」
「どこって、いろいろだぜ。だいたいはどこか腰掛けられるところでしてもらってたな。まぁ、ちょっとくらいなら
 廊下で立ったままで、って事もあったし」
「………へ、へぇ…そう、廊下でも…。すごい大胆さね………。
 い、いや、ともかく!!さっきも言ったけど、これからはもう少し場所を弁えなさいよ」
「…あ~、という事らしいぜ咲夜」
「そうね、今度からは気を付けましょう」
「………はぁ、ほんとそうしてちょうだい。フランの教育にも良くないから」

全くその通りだ。そんなに館内のあちこちでそんな事をしていたなんて。
もし、フランがそれを見かけていたらと思うとぞっとする。
いたいけなフランがそんな場面に遭遇してしまったら、きっと言葉では言い表せないほどのショックを受けてしまう
に違いない。そんな事は断じて許すわけにはいかない。…いやまてよ、ショックを受けたフランを慰める為に姉の私
自身が文字通り一肌脱ぐという展開もアリ、か。

―――ほら泣かないでフラン。あれはね、決して恐い事ではないのよ。ほら、お姉様が教えてあげるわ、ハァハァ。

………………………うん、それはそれでおいしいかも。そういう運命も検討の余地ありね。

「―――あの、お嬢様?」
「え?ああ、どうしたの咲夜」
「お茶会の続きはいかがなされますか?」
「ああ、そうねぇ………」

お茶もお菓子も(私の噴いた紅茶で)駄目になってしまったし………

「今日はもうお開きね。片付けは任せるわ」
「はい、かしこまりました。では失礼致します」
「じゃ、私も行くぜ」

咲夜はテーブルの上を片付けると部屋を出て行き、魔理沙もその後を付いていく。

「あ、そうだ咲夜。さっきの続き頼むぜ」
「そうね、じゃあ私の部屋にしましょうか。これ片付けたら行くから、先に行ってて」
「おお、了解だぜ」

………この後に及んで結局するのか、あの2人は。まぁ、咲夜の部屋へ行くらしいからいいだろう。

それにしてもあの2人が、ねぇ。まあ、人間同士だしいろいろ通じるところもるのかもしれないが………。
ああ、でもどうしよう。咲夜はともかく、魔理沙がそんな事になっているなんて知れたら大事になりそうね。
フラン…は知られても姉として私が体で慰めてあげるとして、パチェに人形遣い、霊夢辺りも怪しいわ。
他にも私が知らない連中もいそうだし、咲夜も大変ね。しばらくは黙っておいてあげましょう。

それより今はフランの事よね。お茶会が中途半端になっちゃったし、様子を見に行ってあげなくちゃ。
その後はさっき考えた展開も含めて、もう一度私とフランのラブラブ・ワールドに至る運命を考えてみよう。
きっと2人の理想郷へ辿りついてみせるわ。まっててね、私の可愛いフラン。
私はウキウキした気分で部屋を出て行く。

――――――そして誰もいなくなった。











それから少し後、十六夜咲夜の部屋にて。
魔理沙が咲夜のベッドに腰掛けており、その視線の先には器用に手を動かす咲夜がいる。

「おぉ、やっぱお前の方が上手だな」
「そう?褒めるのは良いけど、むしろ貴方にはこうならない様に普段から気を付けて欲しいわ」
「ん~、そう言われてもなあ。気付いたらそうなってるんだ」
「まったくもう………ほら、出来たわよ」
「お、ありがとな」

そう言って魔理沙は咲夜が差し出したエプロンを受取り腰に巻く。
キノコ採集の時か、それとも弾幕ごっこの時にそうなったのかは分からないが、エプロンの端が少し破れていたのを
咲夜に直してもらっていたのだ。

「それにしても、なんだってレミリアはあんな事言ったんだ?」
「さぁ、分からないわ。もしかしたら紅魔館特有の仕来たりみたいな物かもしれないし、これからは気を付けないと」
「だな。んじゃ私は行くぜ、フランが待ってるしな。また気が付いたらよろしくな」
「はいはい、分かったわよ。世話が焼けるわね」
「じゃあ、またな」
「じゃあね」

そうして魔理沙を送り出すと、咲夜も裁縫箱を片付けて部屋を後にした。

―――――――――そして誰もいなくなった。

































時間を少し戻して、先程のお茶会を行っていた部屋。
レミリアが意気揚々と出て行き、誰もいなくなった部屋にクスクスと笑い声が響く。

「フフフ、お姉様ったらおかしいの。あんな勘違いするなんて」

声と供に姿をあらわしたのは、席を外したはずのフランドールだった。
手には1枚のスペルカードを握っている。
そのカード“そして誰もいなくなるか?”の効果により姿を消し、先程のレミリア達の会話を盗み見ていた彼女は
その様子を思い出し1人笑う。

「お姉様ってば、まだまだ子供なのよねぇ。だからあんなので慌てるんだ、きっと。ま、そこが可愛いんだけど」

そうして姉の慌てぶりを思い出し、また笑う。

「だいたい魔理沙が咲夜とそんな事になるわけ無いじゃないの」

そうだ、そんな事は絶対にあり得ない事だと彼女は知っている。
何故ならば………………

「あ、早くお部屋に戻らないと魔理沙が来ちゃうかも。その前にシャワー浴びとこ。レディーの嗜みだしね。
 フフ、今日はどうやって魔理沙と遊ぼうかなぁ」

そう言って、妖しい笑みを浮かべるとフランドールは部屋から出て行く。



――――――――――――――――――そして、今度こそ誰もいなくなった。

………………………あれ?
咲夜さんと魔理沙の話しのはずだったのに。
妹様に話しの内容をを破壊されたのか?
くると
コメント



1.名無し妖怪削除
勘違いレミリアにふいたwww
2.名無し妖怪削除
これは気持ちの良い勘違いですねwww
割としょっちゅう魔理沙のエプロンを繕ってあげてる咲夜さんと繕って貰ってる魔理沙の関係もちょっと気になります。
3.名無し妖怪削除
レミリア様御同様に勘違いしてますたよ、アッハッハ。
妹は既に大人だった。…レミリア様(´・ω・`)カワイソス
4.卯月由羽削除
騙し自体は簡単に見破れるが、それをまったく気にさせない作品の構成がよかったです。フランちゃんオットナーw