「あ、エリー」
「あ、アニス。何の用?」
「いやいや、ちょっと通りがかっただけ。それよりさ、噂知ってる?」
「何の?」
「レミリアが変なこと企んでるって」
「ううん。ていうか、様つけようよ。メイド長がどこで聞いてるかわからないわよ」
「まあいいじゃん。周りに誰もいなさそうだし」
「そうだけど……。で、何を企んでるの?」
「それは知らない」
「はあ?」
「だって私も他のやつから聞いただけだし」
「何よそれ……」
「ま、そのうちなんか起こるでしょーよ。それまでのんびり待ってようよ」
「はあ……ま、いっか」
「んじゃ、私はこれから訓練あるから。洗濯がんばってねー」
「ん、そっちもねー」
「うわー……これが企んでたことかー……」
「こりゃすごいね。お日様がほとんど見えないや」
「ていうか、何でこんなに紅いのよ。目が悪くなりそうだわ」
「レミリアが紅い色好きだかららしいよ?」
「だから様つけなさいって。……はあ、それにしても困るなあ……」
「どうして?」
「洗濯物が乾かない」
「あーそっか。この霧じゃねえ」
「そうなのよ。まったく、何でこんなことするのかしら」
「さあねえ。お偉いさんのすることはただの妖精にはわからんもんよ」
「まあいいや。とりあえずこれ干してくるね」
「いつもいつも真面目だねえ。いってらっしゃーい」
「しくしく……」
「ありゃ、どうしたのさ?」
「洗濯物が……」
「全然乾かなかったの?」
「全部真っ赤になってた……うう……」
「……あー……」
「あ、アニス。そんなに急いでどうしたの?」
「ああエリー。いやー、なんか侵入者がやってきたぽくてねー」
「侵入者?」
「うん。なんか美鈴さんがぶっ倒されたらしくてさ、今そいつが図書館に向かってるから迎撃しなさいってメイド長から」
「あー、そりゃ大変ね。で、その侵入者の目的は?」
「知らないけど、まあこの霧止めなさいなんじゃない?」
「あー、じゃあ私そっちの方につく」
「ええ!?」
「いいかげんもう洗濯物が真っ赤になるのはいやだもの。当然よ」
「ああそういうこと。てか、今さりげにレミリアにケンカ売ったよね。いいの?」
「いいのよ。というかあんたもいいかげん様つけなさいって」
「いいのよいいのよ。それにしてもあんたはいいよねー。こういうのと関係なくて」
「そりゃ洗濯隊だもん。ま、がんばってきてね」
「ん、がんばってくるわー」
「あーっ、いいお天気!」
「やっとこさ霧が晴れたねー。……あの侵入者には、ありがとかな。私もそろそろお日様見たかったし」
「ほんとに! ああ名も知らぬ侵入者様! レミリア様を倒してくれてありがぐはぁっ!?」
「ああ! どこからともなくナイフが飛んできてエリーの頭に深々と! 医者、医者ー!」
「う、うう……し、心配しないで……。妖精は死んでも、すぐ、復活するから…………がく」
「エリィィィィ!」
「あー、私としたことがちょっとはっちゃけすぎちゃったわ」
「どんまいどんまい」
「大変だーっ!」
「うわ、っと。ちょっとアニスどうしたの?」
「ああエリー! 今すぐ安全なところに隠れなさい!」
「え、ちょ、何があったの?」
「妹様が部屋を抜け出したのよ!」
「えええっ!?」
「今すぐパチュリー様が雨を降らせてくれるけど、それまで何とかして止めに行ってくる!」
「雨って……大変! 洗濯物取り込まなきゃ! さっき干したばっかりなのにー!」
「そんなこと気にしてる暇があるかー!」
「でもー!」
「ああもう、じゃあお互いがんばるということで!」
「うん、いってらっしゃい! 壊されないように気をつけてねー!」
「努力するー! そっちこそ気をつけてねー!」
「やっほーエリー」
「あ、アニス。久しぶりー。あの時は大丈夫だった?」
「ま、何とか壊されずには済んださー。それよりもさ」
「何?」
「妹様、最近丸くなったと思わない?」
「……さあ、私は知らないけど、そうなの?」
「そうなのよ。むやみやたらに暴れなくなったし、部屋でもわりとおとなしくしてるのよ。きっとあのときに満足したんだと思うの」
「へえ……」
「……なんか、あいつってすごいよね」
「そうだね。突然現れたと思ったら、いろんなことやっていって、なのにそれが全部みんなにとっていいことになってる。……ほんと、すごいよね」
「ほんとにね……」
「さてと、そろそろ訓練の時間だから、行ってくるね」
「あ、そう? じゃ、私も溜まってきた洗濯物片付けるかな」
「それじゃ、今日も一日がんばりますか」
「がんばっていきましょー」
そんなわけないか。きっときのせ(デモンズゲート