@<本作は一応357話からの続きらしいからそっちから読んだほうが理解が深まっていいと思うわよ~
~あらすじ太郎の独り言~
魔理沙が下着姿で霊夢の家に行ったそうだよ。それなんて露出狂? あ、幻想郷だけに露出郷なんちゃって。
……
思ってないっすよ。全然上手いこと言ったなんて思ってないっすよ。
~登場人物~
幻想郷の妖怪な仲間たち。いじょ。
基本的に博麗神社は人が来ない。恒常的に来ているのは黒白の魔法使いか小鬼くらいのもので、参拝客なぞ来るはずもない。幻想郷の大結界を維持しているのにまったくありがたがられない不幸な神社である。
「はあ……」
もっとも、最近巫女である霊夢を悩ませているのは賽銭不足による経済難だけではない。
そう、恋煩い。
友人の魔理沙に恋する乙女となってしまった彼女は日々悩み続けていた。
「はあ……魔理沙は私のことを好き、大好き、好き、大好き……」
「その花占い意味無いんじゃない?」
「大好きなのよー!」
「いったー! 全部毟ったー!」
偶然遊びに来ていた萃香なぞ、不気味極まりない霊夢にビクビクしているくらいだ。
「なあ霊夢ー。そんなに好きなら言っちゃえばいいじゃん」
「恋文なら出したわよ。咲夜経由で」
「おお! で、どうだった? ドゥだった?」
「ど、ドゥ? それがまったく音沙汰なし……あの黒白……きっと家できのこ両手に踊ったり、腋に挟んで逆立ちしてるに違いないわ……私がこんなに悩んでるのに……」
「腋に挟んで逆立ちって物理的に無理じゃない?」
「お黙りっ! このコンソメ!」
「パンチ!?」
そんなこんなで今日も今日とて縁側で茶を啜りつつ日向ぼっこに興じる巫女と鬼。やってることは、ヒキコモリたちと大差ないことに彼女たちは気付いているだろうか。
霊夢が魔理沙に恋文を出してすでに数日。そろそろ何かアクションがあってもいい頃だと思っているが、魔理沙がその手紙を咲夜からのものだと勘違いしているのでどうしようもない。来るはずもない。
のだが実は現在魔理沙はゴキブ(自主規制)よろしくこそこそ近付いているのである。
「……れいむ」
「ん? 何、萃香」
「私何も言ってないよ?」
「れいむー」
「っ! この声は、魔理沙! 魔理沙なのね!」
愛する人の囁きを耳にした霊夢は勢いよく立ち上がる。
魔理沙がついに私に会いに来てくれた!
「遅いわよまり……さ?」
「よう、久しぶりだな!」
バァーン! という効果音とともに登場したのは黒じゃなくて白い魔理沙。そう、彼女は黒い衣を脱ぎ捨てて下着姿で仁王立ちしていたのである。その開き直りっぷりにあきれるばかりの小鬼。
「うわあ……爽やかな笑顔が痛いね、霊夢。登場のエフェクトも古いし」
「……」
「霊夢?」
「ごふぁっ!」
「……なんでさ?」
「は、鼻血を我慢したら喉に逆流して……がふっ……」
「はい、ちり紙」
「ありがとう……あかん……博麗神社はエルドラドやー! ぐぼふぁっ!」
萃香はあきれ果てて突っ込む気すらないようだ。かなりクールである。
さて、すでに瀕死状態の霊夢に魔理沙が心配して近付くが、どうも鼻血の原因を正確に把握していないようだ。距離が縮まれば縮まるほど出血量は増えていく。
「おいおい霊夢……その出血洒落になってないぞ」
「ああ魔理沙……来てくれたのね……」
血溜りの中に沈む霊夢をそっと抱き起こす魔理沙。彼女の手をそっと取り胸元に引き寄せて強く握った。鼻血の池でなかったら、さぞ感動的な場面であろう。
「霊夢……死ぬな!」
「魔理沙……」
「……あんっ」
「……」
「ちょ……霊夢どこ触って……はぅ!」
「よいではないかよいではないかー!」
密着しているのをいいことに魔理沙の胸を執拗に責めまくる霊夢。突然の事態にわけがわからない魔理沙。そして相変わらずクールに茶請けの煎餅などを頬張っている萃香。博麗神社は、今、確実に変だった。
「さわんなって……言ってんだろうが!」
「ミコミコレイム避け!」
ひらりと魔理沙の一撃をかわす霊夢。大仰な名前がついているが、ただ避けただけである。
「こんなことしてる場合じゃない! 霊夢、御祓いしてくれ!」
「御祓い?」
明らかに不満そうな霊夢の声。当然である。彼女は魔理沙が自分の愛を受け止めに来てくれると思い込んでいるのだから。実際は受け止めるどころか伝わってすらいないのだが。
「そうなんだ、この手紙もらってから調子が変で……どうも呪われてるみたいなんだ」
「その手紙……」
「あ? ああ、咲夜に渡されたんだけどさー……霊夢?」
「そう……そういうこと、魔理沙……」
さっと霊夢の周りの雰囲気が変わる。さすがの萃香もこれは拙いと感じてせんべいを頬張るのをやめた。やめて、茶を啜った。
これは……この霊夢の空気は体験したことがある。本気で相手を叩きのめすとき、霊夢はいつだって殺気をゆんゆんあたり一面に放つのだ。
「ちょっと霊夢! 落ち着けって!」
「祓ってもらいたいくらい私の気持ちは邪魔だと……」
「何言ってるのかわからないぜ!」
「問答無用! 夢想封印・瞬!」
「ポロロッカー!」
至近距離からぶっ放されるスペルカード。回避する間もなく魔理沙はもろに食らってしまった。
「ぐ……どういうつもりだ……霊夢……」
「坊やだからさ……」
「わけわかしまず……」
「ふふ……服破れて魔理沙ったら可愛い……」
「やめ……ろ……」
無防備の魔理沙に近付いていたぶろうとする霊夢。彼女は、もはや愛に狂った一人の女でしかなかった。
手に入らないのならばいっそこの手で無茶苦茶にしてしまえ。
精神の均衡を失った霊夢は目の前の魔理沙を蹂躙することしか頭になかった。
「萃香……助けてくれ……!」
「無理!」
「そんな力いっぱい否定しなくても!?」
「邪魔したら私の仁クン人形全部没収って言われてるんだ!」
「ああ……じゃあしょうがないか……」
「しょうがないね」
「……アリスにでも作ってもらえばいいじゃないかこのアル中!」
「お酒馬鹿にすると人生台無しにしますよ!?」
「超怖ええええええ!」
結局役に立たない鬼であった。そればかりか魔理沙を見捨ててお茶を補充しに行ってしまう始末。薄情者、ここに極まれりといった感じだ。
その間にも霊夢の指は魔理沙をまさぐり続ける。
「魔理沙……あなたは私の中で永遠に生きるのよ……」
「やめるんだ霊夢……ここで主人公を消してしまったら、物語が終わってしまう!」
「でもバッドエンドを経験しないとCGモードが100%にならないわ……」
「人生にセーブポイントはないぜ!?」
ああ魔理沙! ここで終わってしまうのか! バッドエンドのフラグは一体いつ立ったんだ!
しかし嘆くのはまだ早い。人生何事もタイミングが大事である。そう、このタイミングで魔理沙に助っ人が現れるのだから人生はわからない。
「そこの紅白! 何をしている!」
「くっ……タイミングの悪い……だからあなたは空気が読めないって言われるのよ、妖夢!」
そう、魂魄霊夢と西行寺幽々子が博麗神社を訪れたのである。
「そそそそんなことはない! それより霊夢! 何か知らんがどう考えてもお前が悪そうだ! よって……KILL!」
「あらあら妖夢。今のは『KILL』と『斬る』を掛けたのね? さすがだわ~」
「幽々子様、そうやって解説されるとすごく痛いです……」
「あら、あなたたちに出来るかしら? 一度負けてるくせに。ねえ、幽々子?」
「……あまり調子に乗ってると千年くらい時間をかけて咀嚼するわよ」
「ゆ、幽々子様、ちょっと怖すぎます……」
「ご飯を食べるときは最低30回は噛もうね! 博麗の巫女との約束だよ!」
対峙する冥界組と博麗の巫女。今まさに決戦の火蓋が切って落とされようというときに、予想外の闖入者のせいで一気に場の雰囲気は一変する。
「あら、面白そうね。私たちも混ぜてくれるかしら、霊夢?」
「レミリア……」
「ふふ……咲夜。私の気持ちは決まったわ。どうやら霊夢は私に興味がないみたいだし。私にはあなたしかいないわ」
「……なんだか保険で付き合っちゃってる高校生みたいな扱いですね、私」
「自分の気持ちに決着をつけるためにここに来たけど……ふふ。正解だったわ」
レミリアと咲夜の登場である。さて、ここに魔理沙、霊夢、咲夜が揃った。手紙を巡る奇妙な誤解を共通項に持つ彼女たちが揃ったことによって物語は次の段階へと進むことになる。はたして、この状況で誤解は解けるのだろうか……
ここで、舞台は紅魔館へ移る。
「デストローイ!」
「ひぃっ!」
「デデデデデデストローイ!」
「もうやめてくださいよぅ妹様ー!」
「あら、美鈴。避けてはダメよ」
「パチュリー様の鬼ー!」
今まさにフランドールとパチュリーによる美鈴狩りが展開されていた。ちなみに、小悪魔は妖しげな色の液体(粘体にしか見えないが)の入った鍋の番をしながらパチュリーのサポートをしている。
「パチュリー様、そこを右です!」
「でかしたわ、小悪魔!」
「おろろろおおおおぉぉぉおお?」
「地方妖怪マグロだよー!」
パチュリーが先回りしたところにベッドシーツを頭から被り、目のところだけ穴を開けたフランが飛び掛かる!
派手な音をさせながら一体になって転がっていたが、やがてベッドシーツの地方妖怪の下で伸びきった美鈴の姿を視認することが出来た。
「ポケモン(ポケット門番)、ゲットだぜ!」
「あなたを、伝説です」
「うううぅ~」
さて、なぜ美鈴が彼女たちに追いかけられているのか。時は少しばかり遡る。
「ふふ……レミィがいない今しかいない、この惚れ薬の魔術を行うには……だがしかし触媒には『中華風で主に門番を生業とする、名前で呼んでもらえない妖怪』が必要か……」
「お姉さまも咲夜もいないしパチュリー遊んでー!」
「美鈴を捕まえるのよ!」
「らーじゃ!」
という感じである。魔理沙が主人公なのに何で今まで自分が出てこなかったのか不思議でしょうがないといったご様子のパチュリーさんです。
「さあ……美鈴。血という血を搾りつくしてあげる……」
「お前の血は何色だー!」
「ちょ……妹様……普通に赤……です……」
「ふふふふふふふふふふふ」
鍋に注ぎ込まれる美鈴の血……かと思ったらほとんどがパチュリーの鼻血だったりする。彼女の頭の中には魔理沙との桃源郷が描かれているに違いない。
「ふっふふー魔理沙は私に惚れてる~毎日~パチンコ代渡してくれ~る~♪」
「すっごいヒモじゃないですか……」
謎の歌がさらに妖しげな儀式に拍車をかける。パチュリーはノリノリですでに4番に入っている。「ホクロが多い~」とか聞こえるがもはや何の歌かわかったものではない。
本来ならここで恋の呪文を唱えるのだが、恋は盲目はよく言ったもの。パチュリーは完全に自分を見失っている。
「うわーおいしそう。舐めちゃおーっと」
「あ、妹様それはやばい気がします! いろいろと!」
ペロっと一口舐めるフラン。不意に視線が鋭くなったと思うと変なことを口走った。
「こいつは恋の病の味だぜ……」
「ズキュゥゥゥゥゥゥン!」
それにしてもこの中国風妖怪、ノリノリである。
それはさておき、どう考えても失敗作の魔法薬を服用したフランは無事なのであろうか。
「ふふふ……体が滾ってきたぜ……」
「まさか……!」
「今なら巫女なんぞぶっ飛ばして魔理沙を独り占めに出来る……すばらしいぞこの力!」
「うわあ……とってもロキ様っぽいー」
「ふんっ!」
急にキャラが変わったフランは窓を突き破って博麗神社の方へ飛んでいった。パチュリーはそんなことに気付かずにいつまでも鍋をかき回している。小悪魔もノリノリだ。
「こぁー! こっぁー!」
「魔理沙は~岩井のレーズンが好き~」
「く……豹変した妹様を救うには……薬には薬! あの人しかいない!」
「呼んだかしら……かふっ……」
「な……永琳!」
ちょうどいいところに永琳が訪れる。なんというタイミングであろう。
「はあ……はあ……このあとそのまま博麗神社へ行こうと思ったけど……重要なことを思い出したわ……」
「重要なこと!?」
「そう……さっき思いついたギャグ、忘れないうちに書いておかないと……」
「忘れてしまえ!」
「あれれ? いいんですか? 本当に忘れますよ? 忘れちゃいますよ?」
切が無いので当身を入れる美鈴。なぜかこの人が一番の常識人に見えてきたから困る。あ、阿求がいた。
「ぐはっ……私は一体……そうだ、この事態を収拾するには紅魔館のあれが必要なのよ!」
「なんだって……!?」
「あ、ちょっと吐血していい?」
「え? いやダメだけど?」
「そうよねぇ……ダメよねぇ……だが吐く! ごほおっ!」
「最初から言わないでよ、んもうっ!」
それから数分後。ようやく永琳も落ち着いたようでまともに会話が成立するようになった。なんとも、面倒なことである。
「今幻想郷をとりまくこの事態……おかしいと思うでしょう?」
「私は紅魔館のことしか知りませんけど……ちょっと変ですね。あの人とか」
「誰のことかしら?」
「うおっ! パチュリー様正気に戻ったんですか?」
「失礼ね……蝋人形にするわよ」
「閣下!?」
「パチュリー。あなたも薄々気付いているでしょう? この幻想郷の異変について」
「そうね……でも根が深すぎる。一朝一夕でどうにかなる問題でもない」
さっきまでのトランス状態が嘘だったかのように深刻な顔で永琳と話し合うパチュリーだったが、どうも手元の鍋がシリアス度をダウンさせている気がしてならない。
「なぜ紅魔館に?」
「レミリアの運命操作能力。あれで対抗できないかと思って」
「残念ながらお嬢様は博麗神社にもう行っちゃいましたよ」
「緑の人、がんばる、青の人、追いかける。赤の人立って3人で大事なアタックチャンス!」
「現実逃避してる!」
「どうするの?」
「とりあえず博麗神社へ向かって頂戴。私は別を当たるから」
喘息のパチュリーを伴って博麗神社へ向かうことは決して楽ではなかったが、美鈴はあることに思い至っていきり立つ。
足元に落ちていた愛○みかんの箱に片足を乗せて気炎を吐く美鈴! 今! 世界は美鈴のために!
「ひょっとしてこれは私の見せ場ですね! 唯一の常識人としてカオスと化した幻想郷を救うという……!」
「無いわね」
「無いわ」
「あり得ないわ」
「だから無いって」
「あの……2回ずつ言わなくても……いえ、ごめんなさい……」
どうあっても弄られキャラから脱却できない美鈴。きっとどこのコミュニティへ行ってもそういう扱いになるのだろう。
本能的に備わるスキル「下っ端」はすでにEXランク。神の域にまで達しているといっていい。神は神でも下っ端なのが美鈴クオリティ。
「ところでパチュリー、その薬何?」
「これ? なんか失敗してできたんだけど……」
「そうだった! 妹様がこれ舐めて変貌しちゃったんですよ!」
「魔法薬はあまりよくわからないけど……匂いからしてヤヴァイヤヴァイ気がするわ」
「妹様がマッスルシスターニヴァイニヴァーイ! な感じになってましたよ」
何がニヴァイニヴァーイ! だと永琳は呆れつつ怪しげな薬をサンプルとして持ち帰ることにした。
鍋から分けてもらおうと懐から取り出した容器を見て美鈴は絶句してしまう。
「尿瓶? しびん? SHIBIN? びっくりしすぎて3通りで表現しちゃいますよんもうっ!」
「イェア! イッツ尿瓶!」
「何を驚いているのよ、美鈴」
「いやいやパチュリー様。だってありえないでしょう」
「嘆かわしいわ。所詮凡人にはわからないのよね。月でもわかる人は少なかったわ」
なんか理不尽に貶されたが、そんなセンスがわかってしまうくらいなら自分は一生凡人でいいと思う美鈴。
「冗談よ。今日のラッキーアイテムが尿瓶だから持ち歩いてるだけ。さて、この薬がいっぱい入った尿瓶をあなたにプレゼントゥ!」
「いりませんよ……持って帰って分析するんでしょうに……」
「……紅魔館の門番はツッコミが甘すぎるわ。全然ダメ」
「同じ紅魔館の住人として恥ずかしいわ……」
「うわあ……すごい理不尽ですぅ……」
そんなこんなで紅魔館の二人も博麗神社へ向かうことになった。永琳はというと一度竹林に戻るという。まだ心当たりがあるようだ。異変に気付いた彼女たち3人は幻想郷を救うことが出来るのだろうか。
「お師匠……私を忘れないで……ぐふぅ」
「まだしらを切りますか、霖之助さん」
香霖堂で霖之助を問い詰めているのは幻想ブン屋の射命丸文である。
「しらをきるも何も、事実だから仕方がない。それとも証拠があるのかな? でっちあげは、名誉毀損だよ」
実は先日、「これから一緒に運動でもどう? 二人で……って言ったらどうだったかな」という独り言をたまたま通りかかったこの鴉に聞きとがめられてしまったのだ。
「仕方ないですね……証拠をお見せします!」
「ほう……」
「出でよ! 証拠!」
文が自信満々に出した証拠。それは、隙間からお尻だけを出している紫とその式神藍、その式神の式神の橙だった。
突然の展開に霖之助はわけがわからないというジェスチャーをして文に向き直る。
「……何の証拠かな? あ、変態の証拠だね。うん、新ジャンル『隙間に挟まった』」
「違いますよ! ていうか何ですかあなたたち!」
「~~~~~~~~~!」
「……隙間の向こうで話されてもわからないね」
「紫様は『何か道具をくれ』とおっしゃております」
「のび太クンを思い出したよ」
「誰です? それ」
「さあ? ていうかこれが証拠じゃないんだよね」
「全然違いますよ……って何か光ってますよ、あれ」
いきり立つ文が指を差したのは店の奥で淡く、妖しく光る箱。なにやらやたらと存在感がある箱であった。
「これ? この前拾ったんだけど不思議なことに名前も使用用途も不明なんだ」
「そんなことってあるんですか?」
「うん……恐らくは『名前がなく、ただそこにあるだけで意味のあるもの』なんだろう。使用する、という概念がないから使用用途もわからない」
「~~~~~!」
「ん? 今のは『お尻が痒いので掻いてください』だね?」
「違います。全然違います、このエロ」
にわかに賑やかになった香霖堂。果たして霖之助は文の追求を逃れることができるのだろうか。そして八雲一家の命運は?
ますます収拾のつかない事態になりつつある幻想郷。宴は、まだまだ終わらない。
~次回予告~
輝夜です。永琳も鈴仙も出かけているので仕方なくてゐと潜水艦ゲームをしています。でもてゐはずるいので当たっても当たったって言わないし、実は最初から艦隊を配置してなかったりするので皮を剥いで塩水に浸してやろうかと本気で考えました。
嘘です。スプラッタエクスプレス!
さて次回は
「隙間の中からハロにちは」
「賽銭箱の恨み」
「神社に響くアタックチャンス」
の三本立てでお送りします。
それでは皆さん。じゃーんけーん死ねー!
~あらすじ太郎の独り言~
魔理沙が下着姿で霊夢の家に行ったそうだよ。それなんて露出狂? あ、幻想郷だけに露出郷なんちゃって。
……
思ってないっすよ。全然上手いこと言ったなんて思ってないっすよ。
~登場人物~
幻想郷の妖怪な仲間たち。いじょ。
基本的に博麗神社は人が来ない。恒常的に来ているのは黒白の魔法使いか小鬼くらいのもので、参拝客なぞ来るはずもない。幻想郷の大結界を維持しているのにまったくありがたがられない不幸な神社である。
「はあ……」
もっとも、最近巫女である霊夢を悩ませているのは賽銭不足による経済難だけではない。
そう、恋煩い。
友人の魔理沙に恋する乙女となってしまった彼女は日々悩み続けていた。
「はあ……魔理沙は私のことを好き、大好き、好き、大好き……」
「その花占い意味無いんじゃない?」
「大好きなのよー!」
「いったー! 全部毟ったー!」
偶然遊びに来ていた萃香なぞ、不気味極まりない霊夢にビクビクしているくらいだ。
「なあ霊夢ー。そんなに好きなら言っちゃえばいいじゃん」
「恋文なら出したわよ。咲夜経由で」
「おお! で、どうだった? ドゥだった?」
「ど、ドゥ? それがまったく音沙汰なし……あの黒白……きっと家できのこ両手に踊ったり、腋に挟んで逆立ちしてるに違いないわ……私がこんなに悩んでるのに……」
「腋に挟んで逆立ちって物理的に無理じゃない?」
「お黙りっ! このコンソメ!」
「パンチ!?」
そんなこんなで今日も今日とて縁側で茶を啜りつつ日向ぼっこに興じる巫女と鬼。やってることは、ヒキコモリたちと大差ないことに彼女たちは気付いているだろうか。
霊夢が魔理沙に恋文を出してすでに数日。そろそろ何かアクションがあってもいい頃だと思っているが、魔理沙がその手紙を咲夜からのものだと勘違いしているのでどうしようもない。来るはずもない。
のだが実は現在魔理沙はゴキブ(自主規制)よろしくこそこそ近付いているのである。
「……れいむ」
「ん? 何、萃香」
「私何も言ってないよ?」
「れいむー」
「っ! この声は、魔理沙! 魔理沙なのね!」
愛する人の囁きを耳にした霊夢は勢いよく立ち上がる。
魔理沙がついに私に会いに来てくれた!
「遅いわよまり……さ?」
「よう、久しぶりだな!」
バァーン! という効果音とともに登場したのは黒じゃなくて白い魔理沙。そう、彼女は黒い衣を脱ぎ捨てて下着姿で仁王立ちしていたのである。その開き直りっぷりにあきれるばかりの小鬼。
「うわあ……爽やかな笑顔が痛いね、霊夢。登場のエフェクトも古いし」
「……」
「霊夢?」
「ごふぁっ!」
「……なんでさ?」
「は、鼻血を我慢したら喉に逆流して……がふっ……」
「はい、ちり紙」
「ありがとう……あかん……博麗神社はエルドラドやー! ぐぼふぁっ!」
萃香はあきれ果てて突っ込む気すらないようだ。かなりクールである。
さて、すでに瀕死状態の霊夢に魔理沙が心配して近付くが、どうも鼻血の原因を正確に把握していないようだ。距離が縮まれば縮まるほど出血量は増えていく。
「おいおい霊夢……その出血洒落になってないぞ」
「ああ魔理沙……来てくれたのね……」
血溜りの中に沈む霊夢をそっと抱き起こす魔理沙。彼女の手をそっと取り胸元に引き寄せて強く握った。鼻血の池でなかったら、さぞ感動的な場面であろう。
「霊夢……死ぬな!」
「魔理沙……」
「……あんっ」
「……」
「ちょ……霊夢どこ触って……はぅ!」
「よいではないかよいではないかー!」
密着しているのをいいことに魔理沙の胸を執拗に責めまくる霊夢。突然の事態にわけがわからない魔理沙。そして相変わらずクールに茶請けの煎餅などを頬張っている萃香。博麗神社は、今、確実に変だった。
「さわんなって……言ってんだろうが!」
「ミコミコレイム避け!」
ひらりと魔理沙の一撃をかわす霊夢。大仰な名前がついているが、ただ避けただけである。
「こんなことしてる場合じゃない! 霊夢、御祓いしてくれ!」
「御祓い?」
明らかに不満そうな霊夢の声。当然である。彼女は魔理沙が自分の愛を受け止めに来てくれると思い込んでいるのだから。実際は受け止めるどころか伝わってすらいないのだが。
「そうなんだ、この手紙もらってから調子が変で……どうも呪われてるみたいなんだ」
「その手紙……」
「あ? ああ、咲夜に渡されたんだけどさー……霊夢?」
「そう……そういうこと、魔理沙……」
さっと霊夢の周りの雰囲気が変わる。さすがの萃香もこれは拙いと感じてせんべいを頬張るのをやめた。やめて、茶を啜った。
これは……この霊夢の空気は体験したことがある。本気で相手を叩きのめすとき、霊夢はいつだって殺気をゆんゆんあたり一面に放つのだ。
「ちょっと霊夢! 落ち着けって!」
「祓ってもらいたいくらい私の気持ちは邪魔だと……」
「何言ってるのかわからないぜ!」
「問答無用! 夢想封印・瞬!」
「ポロロッカー!」
至近距離からぶっ放されるスペルカード。回避する間もなく魔理沙はもろに食らってしまった。
「ぐ……どういうつもりだ……霊夢……」
「坊やだからさ……」
「わけわかしまず……」
「ふふ……服破れて魔理沙ったら可愛い……」
「やめ……ろ……」
無防備の魔理沙に近付いていたぶろうとする霊夢。彼女は、もはや愛に狂った一人の女でしかなかった。
手に入らないのならばいっそこの手で無茶苦茶にしてしまえ。
精神の均衡を失った霊夢は目の前の魔理沙を蹂躙することしか頭になかった。
「萃香……助けてくれ……!」
「無理!」
「そんな力いっぱい否定しなくても!?」
「邪魔したら私の仁クン人形全部没収って言われてるんだ!」
「ああ……じゃあしょうがないか……」
「しょうがないね」
「……アリスにでも作ってもらえばいいじゃないかこのアル中!」
「お酒馬鹿にすると人生台無しにしますよ!?」
「超怖ええええええ!」
結局役に立たない鬼であった。そればかりか魔理沙を見捨ててお茶を補充しに行ってしまう始末。薄情者、ここに極まれりといった感じだ。
その間にも霊夢の指は魔理沙をまさぐり続ける。
「魔理沙……あなたは私の中で永遠に生きるのよ……」
「やめるんだ霊夢……ここで主人公を消してしまったら、物語が終わってしまう!」
「でもバッドエンドを経験しないとCGモードが100%にならないわ……」
「人生にセーブポイントはないぜ!?」
ああ魔理沙! ここで終わってしまうのか! バッドエンドのフラグは一体いつ立ったんだ!
しかし嘆くのはまだ早い。人生何事もタイミングが大事である。そう、このタイミングで魔理沙に助っ人が現れるのだから人生はわからない。
「そこの紅白! 何をしている!」
「くっ……タイミングの悪い……だからあなたは空気が読めないって言われるのよ、妖夢!」
そう、魂魄霊夢と西行寺幽々子が博麗神社を訪れたのである。
「そそそそんなことはない! それより霊夢! 何か知らんがどう考えてもお前が悪そうだ! よって……KILL!」
「あらあら妖夢。今のは『KILL』と『斬る』を掛けたのね? さすがだわ~」
「幽々子様、そうやって解説されるとすごく痛いです……」
「あら、あなたたちに出来るかしら? 一度負けてるくせに。ねえ、幽々子?」
「……あまり調子に乗ってると千年くらい時間をかけて咀嚼するわよ」
「ゆ、幽々子様、ちょっと怖すぎます……」
「ご飯を食べるときは最低30回は噛もうね! 博麗の巫女との約束だよ!」
対峙する冥界組と博麗の巫女。今まさに決戦の火蓋が切って落とされようというときに、予想外の闖入者のせいで一気に場の雰囲気は一変する。
「あら、面白そうね。私たちも混ぜてくれるかしら、霊夢?」
「レミリア……」
「ふふ……咲夜。私の気持ちは決まったわ。どうやら霊夢は私に興味がないみたいだし。私にはあなたしかいないわ」
「……なんだか保険で付き合っちゃってる高校生みたいな扱いですね、私」
「自分の気持ちに決着をつけるためにここに来たけど……ふふ。正解だったわ」
レミリアと咲夜の登場である。さて、ここに魔理沙、霊夢、咲夜が揃った。手紙を巡る奇妙な誤解を共通項に持つ彼女たちが揃ったことによって物語は次の段階へと進むことになる。はたして、この状況で誤解は解けるのだろうか……
ここで、舞台は紅魔館へ移る。
「デストローイ!」
「ひぃっ!」
「デデデデデデストローイ!」
「もうやめてくださいよぅ妹様ー!」
「あら、美鈴。避けてはダメよ」
「パチュリー様の鬼ー!」
今まさにフランドールとパチュリーによる美鈴狩りが展開されていた。ちなみに、小悪魔は妖しげな色の液体(粘体にしか見えないが)の入った鍋の番をしながらパチュリーのサポートをしている。
「パチュリー様、そこを右です!」
「でかしたわ、小悪魔!」
「おろろろおおおおぉぉぉおお?」
「地方妖怪マグロだよー!」
パチュリーが先回りしたところにベッドシーツを頭から被り、目のところだけ穴を開けたフランが飛び掛かる!
派手な音をさせながら一体になって転がっていたが、やがてベッドシーツの地方妖怪の下で伸びきった美鈴の姿を視認することが出来た。
「ポケモン(ポケット門番)、ゲットだぜ!」
「あなたを、伝説です」
「うううぅ~」
さて、なぜ美鈴が彼女たちに追いかけられているのか。時は少しばかり遡る。
「ふふ……レミィがいない今しかいない、この惚れ薬の魔術を行うには……だがしかし触媒には『中華風で主に門番を生業とする、名前で呼んでもらえない妖怪』が必要か……」
「お姉さまも咲夜もいないしパチュリー遊んでー!」
「美鈴を捕まえるのよ!」
「らーじゃ!」
という感じである。魔理沙が主人公なのに何で今まで自分が出てこなかったのか不思議でしょうがないといったご様子のパチュリーさんです。
「さあ……美鈴。血という血を搾りつくしてあげる……」
「お前の血は何色だー!」
「ちょ……妹様……普通に赤……です……」
「ふふふふふふふふふふふ」
鍋に注ぎ込まれる美鈴の血……かと思ったらほとんどがパチュリーの鼻血だったりする。彼女の頭の中には魔理沙との桃源郷が描かれているに違いない。
「ふっふふー魔理沙は私に惚れてる~毎日~パチンコ代渡してくれ~る~♪」
「すっごいヒモじゃないですか……」
謎の歌がさらに妖しげな儀式に拍車をかける。パチュリーはノリノリですでに4番に入っている。「ホクロが多い~」とか聞こえるがもはや何の歌かわかったものではない。
本来ならここで恋の呪文を唱えるのだが、恋は盲目はよく言ったもの。パチュリーは完全に自分を見失っている。
「うわーおいしそう。舐めちゃおーっと」
「あ、妹様それはやばい気がします! いろいろと!」
ペロっと一口舐めるフラン。不意に視線が鋭くなったと思うと変なことを口走った。
「こいつは恋の病の味だぜ……」
「ズキュゥゥゥゥゥゥン!」
それにしてもこの中国風妖怪、ノリノリである。
それはさておき、どう考えても失敗作の魔法薬を服用したフランは無事なのであろうか。
「ふふふ……体が滾ってきたぜ……」
「まさか……!」
「今なら巫女なんぞぶっ飛ばして魔理沙を独り占めに出来る……すばらしいぞこの力!」
「うわあ……とってもロキ様っぽいー」
「ふんっ!」
急にキャラが変わったフランは窓を突き破って博麗神社の方へ飛んでいった。パチュリーはそんなことに気付かずにいつまでも鍋をかき回している。小悪魔もノリノリだ。
「こぁー! こっぁー!」
「魔理沙は~岩井のレーズンが好き~」
「く……豹変した妹様を救うには……薬には薬! あの人しかいない!」
「呼んだかしら……かふっ……」
「な……永琳!」
ちょうどいいところに永琳が訪れる。なんというタイミングであろう。
「はあ……はあ……このあとそのまま博麗神社へ行こうと思ったけど……重要なことを思い出したわ……」
「重要なこと!?」
「そう……さっき思いついたギャグ、忘れないうちに書いておかないと……」
「忘れてしまえ!」
「あれれ? いいんですか? 本当に忘れますよ? 忘れちゃいますよ?」
切が無いので当身を入れる美鈴。なぜかこの人が一番の常識人に見えてきたから困る。あ、阿求がいた。
「ぐはっ……私は一体……そうだ、この事態を収拾するには紅魔館のあれが必要なのよ!」
「なんだって……!?」
「あ、ちょっと吐血していい?」
「え? いやダメだけど?」
「そうよねぇ……ダメよねぇ……だが吐く! ごほおっ!」
「最初から言わないでよ、んもうっ!」
それから数分後。ようやく永琳も落ち着いたようでまともに会話が成立するようになった。なんとも、面倒なことである。
「今幻想郷をとりまくこの事態……おかしいと思うでしょう?」
「私は紅魔館のことしか知りませんけど……ちょっと変ですね。あの人とか」
「誰のことかしら?」
「うおっ! パチュリー様正気に戻ったんですか?」
「失礼ね……蝋人形にするわよ」
「閣下!?」
「パチュリー。あなたも薄々気付いているでしょう? この幻想郷の異変について」
「そうね……でも根が深すぎる。一朝一夕でどうにかなる問題でもない」
さっきまでのトランス状態が嘘だったかのように深刻な顔で永琳と話し合うパチュリーだったが、どうも手元の鍋がシリアス度をダウンさせている気がしてならない。
「なぜ紅魔館に?」
「レミリアの運命操作能力。あれで対抗できないかと思って」
「残念ながらお嬢様は博麗神社にもう行っちゃいましたよ」
「緑の人、がんばる、青の人、追いかける。赤の人立って3人で大事なアタックチャンス!」
「現実逃避してる!」
「どうするの?」
「とりあえず博麗神社へ向かって頂戴。私は別を当たるから」
喘息のパチュリーを伴って博麗神社へ向かうことは決して楽ではなかったが、美鈴はあることに思い至っていきり立つ。
足元に落ちていた愛○みかんの箱に片足を乗せて気炎を吐く美鈴! 今! 世界は美鈴のために!
「ひょっとしてこれは私の見せ場ですね! 唯一の常識人としてカオスと化した幻想郷を救うという……!」
「無いわね」
「無いわ」
「あり得ないわ」
「だから無いって」
「あの……2回ずつ言わなくても……いえ、ごめんなさい……」
どうあっても弄られキャラから脱却できない美鈴。きっとどこのコミュニティへ行ってもそういう扱いになるのだろう。
本能的に備わるスキル「下っ端」はすでにEXランク。神の域にまで達しているといっていい。神は神でも下っ端なのが美鈴クオリティ。
「ところでパチュリー、その薬何?」
「これ? なんか失敗してできたんだけど……」
「そうだった! 妹様がこれ舐めて変貌しちゃったんですよ!」
「魔法薬はあまりよくわからないけど……匂いからしてヤヴァイヤヴァイ気がするわ」
「妹様がマッスルシスターニヴァイニヴァーイ! な感じになってましたよ」
何がニヴァイニヴァーイ! だと永琳は呆れつつ怪しげな薬をサンプルとして持ち帰ることにした。
鍋から分けてもらおうと懐から取り出した容器を見て美鈴は絶句してしまう。
「尿瓶? しびん? SHIBIN? びっくりしすぎて3通りで表現しちゃいますよんもうっ!」
「イェア! イッツ尿瓶!」
「何を驚いているのよ、美鈴」
「いやいやパチュリー様。だってありえないでしょう」
「嘆かわしいわ。所詮凡人にはわからないのよね。月でもわかる人は少なかったわ」
なんか理不尽に貶されたが、そんなセンスがわかってしまうくらいなら自分は一生凡人でいいと思う美鈴。
「冗談よ。今日のラッキーアイテムが尿瓶だから持ち歩いてるだけ。さて、この薬がいっぱい入った尿瓶をあなたにプレゼントゥ!」
「いりませんよ……持って帰って分析するんでしょうに……」
「……紅魔館の門番はツッコミが甘すぎるわ。全然ダメ」
「同じ紅魔館の住人として恥ずかしいわ……」
「うわあ……すごい理不尽ですぅ……」
そんなこんなで紅魔館の二人も博麗神社へ向かうことになった。永琳はというと一度竹林に戻るという。まだ心当たりがあるようだ。異変に気付いた彼女たち3人は幻想郷を救うことが出来るのだろうか。
「お師匠……私を忘れないで……ぐふぅ」
「まだしらを切りますか、霖之助さん」
香霖堂で霖之助を問い詰めているのは幻想ブン屋の射命丸文である。
「しらをきるも何も、事実だから仕方がない。それとも証拠があるのかな? でっちあげは、名誉毀損だよ」
実は先日、「これから一緒に運動でもどう? 二人で……って言ったらどうだったかな」という独り言をたまたま通りかかったこの鴉に聞きとがめられてしまったのだ。
「仕方ないですね……証拠をお見せします!」
「ほう……」
「出でよ! 証拠!」
文が自信満々に出した証拠。それは、隙間からお尻だけを出している紫とその式神藍、その式神の式神の橙だった。
突然の展開に霖之助はわけがわからないというジェスチャーをして文に向き直る。
「……何の証拠かな? あ、変態の証拠だね。うん、新ジャンル『隙間に挟まった』」
「違いますよ! ていうか何ですかあなたたち!」
「~~~~~~~~~!」
「……隙間の向こうで話されてもわからないね」
「紫様は『何か道具をくれ』とおっしゃております」
「のび太クンを思い出したよ」
「誰です? それ」
「さあ? ていうかこれが証拠じゃないんだよね」
「全然違いますよ……って何か光ってますよ、あれ」
いきり立つ文が指を差したのは店の奥で淡く、妖しく光る箱。なにやらやたらと存在感がある箱であった。
「これ? この前拾ったんだけど不思議なことに名前も使用用途も不明なんだ」
「そんなことってあるんですか?」
「うん……恐らくは『名前がなく、ただそこにあるだけで意味のあるもの』なんだろう。使用する、という概念がないから使用用途もわからない」
「~~~~~!」
「ん? 今のは『お尻が痒いので掻いてください』だね?」
「違います。全然違います、このエロ」
にわかに賑やかになった香霖堂。果たして霖之助は文の追求を逃れることができるのだろうか。そして八雲一家の命運は?
ますます収拾のつかない事態になりつつある幻想郷。宴は、まだまだ終わらない。
~次回予告~
輝夜です。永琳も鈴仙も出かけているので仕方なくてゐと潜水艦ゲームをしています。でもてゐはずるいので当たっても当たったって言わないし、実は最初から艦隊を配置してなかったりするので皮を剥いで塩水に浸してやろうかと本気で考えました。
嘘です。スプラッタエクスプレス!
さて次回は
「隙間の中からハロにちは」
「賽銭箱の恨み」
「神社に響くアタックチャンス」
の三本立てでお送りします。
それでは皆さん。じゃーんけーん死ねー!
>仕様用途
使用では
誤字指摘ありがとうございます。訂正しました