朝の日差しに促されるようにして、私の目がわずかに開かれる
かすかに聞こえる兎や小鳥の鳴き声に促されるようにむくりと起き上がる
…あ~。朝、ね
ここ最近ずっと師匠の実験に付き合ってたから、なんだか久しぶりの朝な気がする
今日はオフを言い渡されてるけど、どうしようかな…
まずは部屋の空気の入れ換え、かな
そう考えて部屋についた襖を開く
すると朝の清々しい空気と一緒に小鳥達のさえずりが…聞こえてこない
いや、確かに聞こえてはいるんだけど、それにも増してうちの子達の声が大きくて…
はぁ。朝からあの子達も元気ねぇ
そんなことを思いながら、もそもそとお布団を片付ける
…そういえば、最近てゐと遊んでないなぁ
ふんわりとしたお布団の感触にてゐを思い出してよし、と頷く
うん。今日はてゐと一緒に過ごそう
寝巻きを着替えて、ようやく行動開始
とはいっても、あの子はこの時間帯は健康のためとか言って外に走りに行ってるから、行動開始といっても何もできないんだけどね
とりあえず、てゐが帰ってくるまでに顔を洗ってこようかな
あ、てゐが帰ってきたらきっと汗かいてるだろうし、着替えと手ぬぐいを準備しておいて…と
あとは顔を洗いに行くついでに桶に水を入れて…
よし、いつでもお出迎えの準備完了。どこで待ってよう
てゐの部屋…は、ないわね。あの子、基本的に部屋は寝起きにしか使ってないし
それじゃあ素直に玄関の辺りで待ってようっと
…あ。でもそんなところで着替えたら流石に恥ずかしいかな
じゃあてゐの部屋に準備しておいて、玄関で待ってよう
何気ない朝の日向ぼっこ
何するでもなく、ただただ待ち惚け
ぽかぽかで、気持ち良い
…あぁ、駄目。このまま目的を忘れそう……
って駄目だろ、私!
首をぶんぶんと振って気を持ち直す
そこへ丁度てゐが帰ってくるのが見えて、私は大きく手を振る
お~い、てゐ~!…って、なんでそんな嫌そうな顔するのよ
はい、おかえりなさい。ほら、お水。それから息が整ったらあなたの部屋で体を拭くわよ
あ、こら!逃げないの。汗かいたままじゃ健康に悪いでしょ?そう、素直に大人しくしてなさい
それにしてもてゐの体ってあったかくてやわらかくて気持ちいいわね
もこもこ~
……………………はっ!?あ、あぁ、そうね。そろそろ行きましょうか
さてと、それじゃあ服を脱いで。最初はちょっと冷やりとすると思うけどまぁ我慢我慢
きゃっ、ちょっと暴れないでったら!
こら、そんなはしたない格好で外に出ないの!
はぁ、はぁ…。まったく、手間取らせるんだから
…え、そういえば何であんなところにいたのかって?
え、それは…師匠からオフを貰って、せっかくだからてゐと遊ぼうかなと思ったんだけどてゐは今日暇?
……う。何でここで嫌な顔するかなぁ
しかも明らかに必死に断る理由探してるし
うぅ、そこまでやられるとちょっと傷つくなぁ。いいわよ、今日はもうあなたには頼まないもの
そうだなぁ…少し遠いけど、無名の丘にでも行ってみようかしら。あそこに居たお人形、まだあそこにいるかしら
って何そんな捨てられた小兎みたいな顔してるのよ、てゐ。そんな顔したって騙されないんだからねっ
私はてゐに背を向けて歩き出して――
不意に服の裾を引っ張られて振り返る
…何よ?
今日は一日素直に言うことを聞いてあげるから一緒に遊ぼうって?
ふぅ~ん…てゐにしてはやけに殊勝な態度ね
でもてゐが本当に素直に言うことを聞いてくれる気もしないし、行っちゃった手前無名の丘にも行きたいし…あぁ、わかったわよっ!わかったからそんなつぶらな瞳でこっちを見上げないでよっ!
もう、早速てゐのペースにはまっちゃってるし。本当に言うこと聞いてくれるのかしら?
まぁでもいっか。最初の予定通り、てゐと一緒に過ごせるんだし
え、まずは最初に何をやるかって?
そうねぇ。まだまだ今日は始まったばかりだし、それじゃあ…ね
――ご飯、一緒に作ろっか?