Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

自然存在メタモルフォーゼ(魔)

2007/06/12 07:12:58
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 ある朝、魔理沙がわりとどうでもいい内容の夢から覚めると、自分が寝床の中で身体からふさふさとした毛がはえた一匹の猿になっているのを発見した。とりあえず二度寝した。


 昼過ぎにまた目が覚めた。やはり猿だった。とりあえずベッドからモゾモゾと這い出て、首の後ろがかゆかったのでポリポリとかいた。お尻もかいた。お尻をかくのに人目をはばかる必要がなくなったと思うと少し気分がウキウキした。
「ウキ」
 猿だけに。


 身体が縮んだせいで不便になるかと思ったら実際そうでもなかった。むしろ、ガラクタの山で足の踏み場も無い魔理沙の家では、身軽な身体は大いに役に立った。図書館から借りた魔道書や香霖堂から借りたよくわからないアイテムを飛び石代わりにひょいひょいと、あっさり台所に行き着くことが出来た。やかんで湯を沸かしてお茶をいれ、朝食に何があったか、と思って食材庫を漁るとポテトがころがり出てきた。思い立って、魔理沙はポテトに生でかぶりついた。案外美味しかった。料理する手間が省けてこりゃあいい、と思った。


 身支度を整えて、とんがり帽子をかぶり、ほうきにまたがってみた。普通に浮いた。マスタースパークを撃ってみた。たまたま遊びに来ていたらしいアリスが焦げた。上出来だ、と胸中で呟いて、魔法の森の上空に飛び出した。


 いつも通り門番を焼いて、紅魔館図書館に侵入した。見慣れた本棚と思っていたが、普段で言えば腰の辺りの高さにある書架が正面にあって、存外見落としていた蔵書の多いことに気付いた。人間の限界のようなものを感じた。さっそく風呂敷にめぼしい品を詰めようとしたが、本というものは思った以上に重かった。そういえば紙ってもともと木だもんなあ、と妙に納得した。この図書館の本はどちらかというと羊皮紙のものが多かったが。
「あら、鼠は廃業したの」
 この図書館の主は、気配もなく背後に立つ。
「ウキ」
「まあそんなことどうでもいいわ。そろそろツケがたまってますわよ」
「ウキ」
「あんた、自分が信用される猿だと思ってるの?」
「ウキ」
「……そう。じゃあその信頼にこたえてあげるわ」
 五つの賢者の石がパチュリーの背後に展開され、魔理沙は泣く泣く風呂敷の中身を半分にして担いだ。絨毯の敷かれた床を四つ足で走って、賢者の石からばら撒かれる弾幕をちょこまかと避けた。図書館の入り口をマジックミサイルで破り、ほうきにまたがった。
「咲夜、咲夜! 猿を始末しなさい!」
 パチュリーが叫ぶと、廊下の真ん中に咲夜がぽんと現れた。
「あらあら、今日はえらく可愛いわね」
「ウキ」
「はいはい。全く、鼠から猿だと進化してるのかしら?」
「ウキ」
「……減らず口は進歩しないのねぇ」
 紅い館に銀のきらめきが走った。


「ウキ」
「別に呼んでないけどね」
 暮れなずむ神社で霊夢は掃除をしていた。といっても、ほうきを動かしているだけでゴミなどは集まっていなかった。形だけでも巫女の仕事をしているだけ、霊夢にしては上出来だった。
「ウキ」
「まったく。緑茶でいいわね?」
「ウキ」
 霊夢が奥に引っ込んで、魔理沙は縁側に腰掛けた。橙色の空に千切れ雲が漂っていて、美味しそうだなぁと思った。あと、神社の鳥居って意外と赤かった。
「はいお茶」
「ウキ」
 二人並んで湯飲みに口をつけた。魔理沙はしかめ面をして舌を出した。舌を火傷するような温度だった。ゆっくり、冷まして飲むことにした。
「バナナあるけど食べる?」
「ウキ」
 二人並んでバナナを食べた。甘かった。
「ウキ」
「……それって誉めてるのかどうか微妙ね」
「ウキ」
「はいはい」
 茜色の空を色とりどりの妖精が横切った。日中は悪戯して回って、今はどの人間も知らない彼ら彼女らの寝床を目指しているのだろう。











「ええとね、魔理沙をローマ字にしてアナグラムするの」

 MARISA → MASIRA

「ほら、ましら
「うわあほんとだ」
 霊夢は棒読みで答えた。八雲紫は魔理沙たちと同じ方向をまぶしそうに眺めながら、マイ湯飲みに霊夢の急須からお茶を注いでいた。
「ウキ」
「うん、流石のゆかりんもこの発見にはびっくり」
「自分でゆかりん言うな」
 霊夢は紫から急須を奪い返した。紫はスキマにまたがったまま、ずずずとお茶をすすった。
「粗茶ですわ」
「あんたが言うな」
「ウキ」
「同意するな」
 茜色の空をカラスが横切った。日中は幻想郷を盗撮して回って、いまは彼女の寝床で編集作業でもするのだろう。
「霊夢は、どう思うのかしら?」紫が笑みを消した。「人間と猿の境界って、人間らしさの境界ってどこにあると思う?」
「……妖怪のあんたがそれを言うの?」
 霊夢は紫の横顔をちらとうかがうと、面倒くさそうにため息をついた。
「考えたこともないわ」
「……そう」
「ウキ」
 そのとき魔理沙が発した声色が存外真剣味を帯びていたことに、霊夢、そして紫までもが少し驚いた。

「ウキ」

「……魔理沙」
「……ふふ、だから貴女って面白いわ」
 紫はお茶を飲み干すと、湯飲みをスキマに投げ入れて扇子を開いた。
「そうよね、魔理沙の言うとおりだわ」
 霊夢は少し興奮気味に言った。紫はその顔を満足げな、そして底の知れない笑みで眺めた。
「今日はいい夢が見れそうだわ」
 その言葉を最後に、八雲紫はその場からきれいさっぱり消えた。

「ウキ」

 でっかい太陽が、お山の向こうに沈もうとしていた。


この世はでっかい宝島。
つくし
http://www.tcn.zaq.ne.jp/tsukushi/
コメント



1.名無し妖怪削除
そう来るかw だからマスタースパークも打てたのかw
2.名無し妖怪削除
まwじwかwよwwwww