絶対倫理アホリック（永）

「えーりんえーりん、ねえ、えーりん」
「お呼びでしょうか、輝夜姫」
「……博麗印の紅白まんじゅう知らない？」
「ああ、博麗の巫女が神社のアピールのために売り出したというお饅頭ですね。普通のお饅頭に博麗の烙印を押しただけの。でも神社自体にありがたみが無いから売れてないともっぱらの評判」
「誰が説明を求めたかしら」
「いえ、説明を求めている顔をされていたので」
「私が？」
「ほら、姫の右肩の上辺りにぼんやりと」
「霊！？」
「パチリ。写真にするとこんなにくっきり」
「うわぁ……本気の犬にも勝てそうな顔ね……」
「とりあえずそれっぽい雑誌に投稿しておきますね」
「それで、紅白まんじゅうの行方は知らないのかしら。お勝手の戸棚の中に入れてあったのだけれど」
「つまりあなたはこう言いたいのですね、イシャはどこだ！！」
「医者は貴方。ふざけないで頂戴、どうすればお饅頭と医者を聞き違えるのかしら」
「しかし世の中こうもり傘とミシンが手術台の上で偶然出会うこともあるわけでして」
「理屈はいいわ天才。まんじゅうどこ」
「さあ、さしもの天才にも皆目見当付きませんわ」
「へえ、じゃあそのほっぺに付いてるあんこは何かしら」
「人間は死ぬまで自分の顔を見ることが出来ないんですよね。すごい自己矛盾だと思いませんか」
「鏡を見れ、鏡を」
「あら、なにやら黒いのが。確かにこの黒さ・色つや・質感・小豆らしきつぶつぶの存在を考慮に入れるとあんこのように見えますが、しかし形而下的思考によってこれが本当にあんこだと言い切れますか輝夜姫。見たものが真実だとどうやって証明できますか」
「ベロォ……これは嘘をついてる味だぜ……」
「あんこの味しかしないと思いますが」
「ほらやっぱりあんこじゃない！」
「おおう八意永琳一生の不覚。よって自害。ぐさ」
「だがリザレクション」
「クソッ、なんて時代だ！」
「天才が聞いて呆れるわ。っていうか嘘をつくとき輝夜姫と呼ぶ癖が私に壊れていく愛を教えてた」
「硝子の少女時代ですから、そういうこともありますわ」
「テメェ自分の年を言ってみろ」
「１７歳と（宇宙単位により解読不能）日ですわ」
「……それで、何か申し開きはあるかしら」
「これは姫様のことを思ってのことです」
「ほう」
「姫はやんごとなきお方。命を狙われることもしばしばということで」
「まあね、姫だもんね、偉いもんね」
「毒見しておきました」
「待てやビッチ」
「何か問題でも」
「アンタ毒効かないでしょ！　毒見の意味ないじゃん！」
「あらあら、えーりんうっかり。てへり☆」
「今貴方に殺意を抱いたのは私だけじゃないと信じたい。よって刺す。ぐさ」
「しかしリザレクション」
「ああもう。せっかく楽しみに取っておいたのにどうしてくれるのよ！」
「はっ！　ま、まさか姫、これを脅しの種として『代わりにお前のまんじゅう食わせろよ……そこにあるふたつの白いまんじゅうをよぉ！』的なことをするつもりですね！　まさに外道！」
「そういうことはあんたの弟子だけにしときなさい」
「言われずとも今晩も頑張りますわ」
「うわぁ……イヤなこと聞いちゃった……」
「何がイヤなものですか、ウドンゲたらいつも涙目で『ししょお、もう、だめです、やめてぇ……』って言うんですけどイヤよイヤよも好きのうちという言葉があってですね」
「あああうるさいうるさいうるさい。とにかくまんじゅうの落とし前をつけなさい、もちろん性的な意味以外で」
「性的な意味だと解決法は４７８２４通りあったのですが」
「多いなぁ！？」
「性的な意味以外の解決法となるとあまりありませんわ」
「月の頭脳のただれ具合は分かったわ天才」
「とりあえず無免許医師もびっくりのセルフ開腹手術により取り出しますね。ぐさ」
「……せめて麻酔くらい打とうよ……」
「そうやって私の動きが鈍っている間にアレやコレをするつもりですね姫ゴブゥ」
「血を吐くな血を吐くな。ボケてる時間があるなら腹ふさげ」
「このゴッドハンドにかかれば……ほうら、摘出完了です」
「で、そのアンタの胃液でデロデロになったまんじゅうをどうしろと」
「どうぞ召し上がれ」
「食えるか！」
「混乱したりちからが下がったりするかも知れませんが満腹度は３０％回復しますよ」
「そんなものを食うくらいなら私が死ぬわ！　ぐさ」
「ああっ姫が！　すぐにカトリーヌをしなければ！」
「か……カトリーヌって何……ゴブゥ」



（Good End）