「あ、あたしの方がおいしいわっ!」とアリスは叫んだ。目を見開いて、全力で違うと言葉にする。
「あら、本当に魔理沙がそう言ったの? 直接聞いたのかしら?」と、アリスを冷たい視線で見返しながらパチュリーは言った。その言葉には、どこか蔑みが含まれている。
「……言ってないわ」と悔しそうにアリスは答えた。「けれど、魔理沙はいつもあたしのをおいしそうに舐めてくれるわっ!」
「――ふん、それも本当に魔理沙が望んでいることなのかどうかは分からないわ。あなたが、内心嫌がる魔理沙に無理を押し付けているんじゃなくて? それに気づかないで、自分のなかで『魔理沙はあたしので喜んでくれてる』って勘違いして、あなたは魔理沙を困らせている」
「そんなことない!」
「どうしてそういいきれるの?」
冷たく言い放つパチュリーの言葉には、どこか苛立ちが混じっている。先ほどのアリスの言葉に、嫉妬してしまったのは、もはや偽る事のできない事実だ。パチュリーはまだ魔理沙に舐めてもらったことが無い。魔理沙の気持ちがどうであるか、そんなことは関係ない。アリスは、自分にはないことを魔理沙にしてもらった、ただそれが不快感を抱かせるのだ。
「あなたは」とパチュリーは人差し指をアリスの眼前に突き出す。「魔理沙の気持ちを、本当に分かっているの?」
「――!」
その言葉は、アリスの心に深い棘を刺した。
アリスの表情が凍ったのを冷ややかに見つめながら、しかしパチュリーは内心、魔理沙に舐めてもらえないのは自分が悪いのだと気づいていた。臆病な自分が、いつも言い出せないでいるからこそ、魔理沙は舐めてくれないのだ。いつだって、心の準備はできている。魔理沙が求めてくれたなら、いつだって差し出すつもり。
でも、臆病な私はこうしてアリスを羨み妬むことしかできない……
何よりもその事実が、パチュリーの心を苛んでいた。
「じゃ、じゃあ……」と、思考に埋もれていたパチュリーの意識を、アリスの言葉が引き戻す。「あなたが、私のを舐めてみて……」
「!」
その言葉に、パチュリーは目を見開いた。
「あなた、言ってる意味が分かっているの?」
「……ええ」
アリスの言葉は震えていた。けれど、確かな覚悟をパチュリーは感じた。
「……いいのね?」と、パチュリーはアリスの目を見ていった。「本当に、いいのね?」
「ええ」とアリスはパチュリーの目を、決意と若干の羞恥を含んだ視線で返した。
「あなたに、舐めて欲しいの」
「……わかったわ」
アリスは震える手で、スカートの腰部分に触れた。一度大きく深呼吸し、そして、ゆっくりと手を下へ下へと下げていく。スカートの中に手が入り、それに触れる。アリスの顔が羞恥に染まり、下唇をかんでそれを耐えようとしている。しかしその表情が逆に、パチュリーを誘う事になっているとは思いもしまい。
「じゃ、じゃあ……」
それが手の先端にあることを確認して、アリスはスカートの中から手を出した。
「な、舐めて……!」
目を瞑って俯いてしまったアリスの差し出した手を、パチュリーはしばらく見つめていた。アリスの俯いた顔と手を交互に見る。自分の手を上げてアリスの差し出した手を掴む。
そして、パチュリーはそれを口に含んだ――
「ううん……やっぱり少し甘すぎるわね、この飴。よくこんなものを魔理沙は嬉々として舐めれたわね」
「うう……魔理沙はきっと甘党なのよっ」
「魔理沙、図書館で紅茶を飲むときって砂糖入れないのよね」
「うううううううう……」
それはある日のヴワル図書館での事だった。
そういう習慣無いなあ
しかし最後まで読んでから頭から読み直すと飴玉一つで何をそんなにムキになってるんだとツッコミたくなる。