おはようございます。冥界の白玉楼でおなじみの、魂魄妖夢でございます。
いやいや、昨日の晩は酷いものだったんですよ。
夜遅くだというのに珍しく紫様がいらしたんですよね。
別に睡眠を邪魔されたから私の機嫌が悪いわけじゃあございません。
幽々子様と紫様が何の前触れもなく弾幕の張り合いをされたんですよね。
これだけなら私も幽々子様を応援して楽しんでいるところ。
ですが、今回は思ってた以上に庭が荒れてしまいましてね。
紫様は事が済めばお茶も飲まずにすぐにお帰りなさったんですが、もうちょっと周りのことを考えて欲しかったですね。
幽々子様はと言うと、同じくすぐに休まれたんですよね。
まあ私の仕事なので当たり前なんですけども「明日には元通りにしてちょうだいね」と仰せられたんですよね。
主人に文句を言うことなんて従者の私には許されていないんで、行き場のない怒りが溜まる一方ですよ。ぷんすか。
ご自身と友人様が散らかしたのに私が尻拭いですか。
でもやりますよ。やればよろしいのでしょう。やらせていただきます。
こんな事も起きれば、目覚めに頭痛を感じることも不思議じゃないですよね。
いくら私が若くて元気があるからといっても、回復する元気も回復しなくなりますよ。
そのくせ、お目覚めの幽々子様は上機嫌なんですよね。こちらの気も知らずに。
おまけに朝餉の最中頭痛に悩んでいると、私の惣菜が次々と幽々子様に横取りされていたんですよね。
いつものことかもしれないですけど、今日は機嫌がいいのか容赦なしですよ。
結局口にできたのは少しのお漬物とお吸い物。
こんな労働環境で二百由旬もの庭整備ですか。いい商売でらっしゃいますわ、本当。頭にきちゃう。
とはいえ私は従者の身。喜んでどんな仕事も引き受けさせていただきますよ。
それでもって、仕事を始めたんですよね。ああ、頭が痛い。
すると空気を読んだかのごとく、例の紅白が来たんですよね。ああ、胃まで痛くなってきた。
追い払おうにも、敵わない。ああ、また弾幕で木が倒れる。はあ。
私を負かした巫女は幽々子様と暢気にお茶を啜っていらっしゃる。腹が立つ。
はい? 幽々子様のお呼びだ。お茶受けがないから持ってきてということですね? はい、かしこまりました。疲れる。
ああ、私もお茶をご一緒してよろしいので? 是非ともそうさせていただきます。
それで、例によって私のお菓子はもう幽々子様の胃袋ですか。さいですか。お茶が美味しいですねえ。ぐうぐう。
さてと私は湯のみを片付けて仕事に戻りますね。あー、腰が痛い。
こんな調子じゃあ二百由旬全敷地の庭整理なんて今日中にできそうにないですよ。
落ち着こう。独り言を言っても草木は起き上がってくれない。ぐちぐち。
あれあれ。体が言うことをきかない。
おろおろ。お酒も入っていないのに千鳥足ですわ。
ふらふら。地平線が傾いてとうとう真っ逆さま。
どうしたことでしょう、倒れてしまったようです。
さっきのお茶がまずかったんでしょうか。いつもの茶葉のはずですが。
あーまずいまずい。景色が回ってる。熱でも出たのかしら。
いよいよ息も苦しくなってきました。あーもうこのままくたばるなんて嫌だなー。
おろおろ。自分の体が宙に浮いてますよ。
おかしいなあ。半魂の自分じゃないのに浮いてるなんて。
なんと、幽々子様が私を抱えていらっしゃるじゃないですか。
そんなことをされると御着物に皺ができますよ、幽々子様。
え? じゃあ自分で歩けるかって? すみません、出来そうにないです。はい。
お布団まで運んでくださって、お手数おかけします。
本当こんな私にここまで構ってくださるのは幽々子様しかいませんよ。
そんな、幽々子様に看病していただくなんて滅相もございません。
勝手に薬飲んで寝ていますよ。しくしく。
え? 昼餉を持ってきてくださった? それはありがとうございます。感謝感激でございます。
なんと? お嬢様自らお箸で私の口に運んでくださる? 至極光栄にございまする。
ちょっとちょっと、突然そんな御身を悪く言うような言葉はやめてくださな。
本音を言えばどうぞどうぞと言いたいところですが、そこまで仰るなら私の負けです。元気出してくださいよ。
ああ、いま一番元気がないのは私でございますね。その通りです。ごほごほ。
すみませんねえ、お嬢様。私がこんなものなばかりに。
あーもう、そんな泣きそうな顔なさらないでくださいよ。本当。
ほらほら、お顔をお拭きになって。そうですよ、幽々子様にはその笑顔が一番なのですから。
反則ですよ、本当。もうそのお顔を見れただけで私明日からも奴隷の様に働かせていただきます。
ちょっとちょっと、お顔が近いですってば。あ、幽々子様がほっぺに口づけされた。
あーもうそれもっと反則ですよ。幽々子様大好き。愛してます。
え? 熱が酷くなった? いやいや、それはあまりの恥ずかしさと嬉しさに感極まってるだけですよ。
おまけに寝そべる私の頭を撫でてくださるなんて、私まで笑顔になってしまうじゃありませんか。
すみません、いっぱい愚痴ってしまいました。心の底から愛してますよ。
本当、幽々子様はそんなのだから一生あなたについていくんですよ。