「いや~、幽々子からいきなり手紙なんて来るから何事かと思えば…」
「そうね、まさかレストランを開いただなんてね」
博麗霊夢と霧雨魔理沙は二人で冥界上空を飛びながらそう言った。
「えぇと、それで場所はどこだっけ?」
「白玉楼の庭のどっかにオープンしたって手紙には書いてたけどなぁ。…こう広くっちゃ…お?」
魔理沙が指を突き出した。
「あそこじゃないか?明らかに異質な建物が建ってるぜ。あんなのいままで見たことない」
「あぁ、確かに。きっとうそうね。降りましょう」
二人は高度を下げてその建物の前に降り立った。
「ふぅん、案外いい外観だな」
魔理沙が建物を見上げながらそう漏らした。
「そう?この庭に洋風の建物よ?周囲との調和を考えたらいまいちじゃない」
霊夢の言うとおり、その建物はレンガ造りの洋風の建物だった。建てて間もないはずなのにもうすでに蔦などが壁に絡まっていて、古風な雰囲気をかもしている。
「そりゃお前、レストランだからだろ?」
「レストランねぇ…でもあの看板見なさいよ」
「看板?」
レストラン入り口上にデカデカと木製の看板が掲げられている。そしてそこにはやたら達筆な筆文字で『お食事処 西行寺』の文字。空気を読めていないかのようなその看板は、はっきり言って完全に店の雰囲気をぶち壊している。
「…まぁ、和洋折衷ってヤツだろ。そんなことどうでもいいからはやく入ろうぜ」
「そうね」
二人は入り口のドアを開いた。それに合わせてカランカランという軽い鐘の音が響く。
「……あれ?」
「ちょっと、戸口で立ち止まらないでよ。どうしたの?」
魔理沙は首をかしげた。後ろでつっかえていた霊夢も首を覗かせる。
「……うぅん、廊下だな」
はたして入り口の向こうは薄暗い廊下だった。天井近くでは辛うじてランタンが灯っている。
「窓も無いのか。ここは吸血鬼のレストランかぁ?」
「確かに窓が無いのはお食事処にしては雰囲気悪いわね。あ、ほら。廊下の奥にもう一つ扉があるわよ。あそこに入るのね」
霊夢が廊下の奥を示す。たしかにそこには入り口と同じデザインの扉がもう一つある。
「二重扉か。冬のことでも考えてるのかね」
そんなことを言いながら二人は廊下の奥へと進んだ。
「全く、二度手間取らせるなよな」
言いながら魔理沙はドアノブに手を掛けようとして、ピタリ、とその手を止めた。
「何?今度はどうしたの?」
不審そうに霊夢が声をかける。
「いや…ドアに張り紙がしてあるから…」
「張り紙?」
覗いてみると、なるほど確かにドアに張り紙がしてあった。
「何て書いているのかしら?」
「えぇと…『ようこそいらっしゃいました。この店では弾幕ごっこのことは忘れて純粋に食事を楽しんでいただきたいと思っております。つきまして、お手持ちのスペルカードはそこの金庫の中へお入れ下さい 店の店主より』…」
「スペルカードを?って、金庫って?」
「あれだろ」
視線をやると、確かに壁に金庫がはめ込まれていた。鍵が刺しっ放しているので、開閉はこちらの自由というわけだ。
「それで?どうするんだ?」
「うぅん、まぁべつに食事に来ただけだし…別に構わないといえば構わないわね。あんまり無粋なヤツと思われるのも癪だし」
「そうか」
そんなわけで二人は金庫の中に手持ちのスペルカードを入れてきっちりと鍵を掛けた。
それから、扉を開く。…と
「あぁ?」
魔理沙が再び素っ頓狂な声を上げた。
「…またぁ?」
今度は最初から顔を覗かせていた霊夢が一緒に呆れたような声を出す。
そう、扉の先は先ほどと全く同じように廊下が続いていたのだ。
「二重扉ならまだ理解できるけど…三重扉なんて存在の意味がないぜ」
二人は愚痴愚痴言いながら廊下の奥、扉の前まで進んだ。
「…また扉に張り紙があるな…えぇと、今度は…『当店内は少々日当たりがきつくなっております。日焼けなどをなさいませんようにこのクリームを体中に塗り込んでおいて下さい 店の店主より』
「クリームって…この壷のなかに入ってるこれかしら…」
霊夢は近くにあった壷を取り上げた。
蓋を取ってみると、たしかにクリーム状のものが入っている。
「これを身体に塗れってか」
魔理沙は下唇を突き出し眉根を寄せた。
「でもまぁ、日焼け対策というのは一応客への配慮…と納得できないこともないけど…どうなのよ、これは…」
さすがに怪しいと見て、霊夢はクリームには手をつけない。
「うぅん、しかし注文が多いレストランだぜ…」
張り紙を見ながら魔理沙は腕を組んだ。
…さて問題はこのクリームをどうするのかだ、と霊夢が考えていると、魔理沙が不意に呟くように言った。
「…レストランと言えばさぁ……最近ミスティアが行方不明になったって事件があったの、知ってるか?」
「…は?ミスティア?…ミスティアがどうしたって?」
レストランで振っておきながらいきなりミスティアに話がとんだものだから、霊夢は一瞬魔理沙が何を言い出したのかが理解できなかった。
「だから、ミスティアが行方不明になったんだってば」
「…それは、過去の事件ってこと?もう見つかったの?」
魔理沙は首を横に振る。
「いや、それがいまだに行方不明らしい。まぁ誰が真面目に探したってこともないんだろうけど、少なくともここ最近例のヤツメウナギの蒲焼屋は営業してないらしいぜ」
「らしいらしいって…どこからの情報よ」
「鴉の新聞だ。あいつの新聞では少しの間『夜雀の行方を追うっ!』なんて特集を組んでたらしいけど、飽きたのかかなり中途半端に終わってたな」
「…で?その話がどうしてレストランに繋がるわけ?」
「いや、今思い出したんだけどさ、ミスティアが消息を絶つ前の日に客と会話してたんだよ」
「どんな?」
「『レストランの招待状を貰っているから、明日は休業して行ってみるんだ』って言ってたらしい」
場の空気が一瞬固まった。
霊夢がゆっくりと言う。
「………レストランの…招待状…?」
「…………らしい」
霊夢は懐から幽々子から届いたレストランへの招待状を取り出した。
「…招待状……」
「…招待状だな…」
二人はごくり、と息を呑んだ。
「……」
そして、どちらからともなく、目の前の扉を薄っすらと開けてみた。
扉の向こうはやはり薄暗い廊下が続いていた。そして一番奥にはやはり扉があり、張り紙が張ってある。
目を凝らしてそこから何とか文面を読んだ。
『色々注文しましたが、この扉が最後です。すぐに美味しい料理がいただけますよ。最後にここにある塩を身体に揉み込んでください。理由は特にありません。個人的な好みです。ですが、あまり揉み込みすぎるとしょっぱくなるのでやはりほどほどにしておいて下さい。本当に色々注文して申し訳ありませんでした。 店の店主より』
「……」
「……」
霊夢と魔理沙は無言で顔を見合わせた。
「か…帰りましょうか…」
「…そうだな…」
二人は一目散にレストランを後にしたのだった。
帰り際、魔理沙は扉の向こうから「ちっ」という舌打ちが聞こえた気がしたのだが、気のせいだと思うことにした。
とある料理店の奥の奥…
二人の人影が見える。
「二人とも帰っちゃいましたよ」
「う~ん、惜しかったわ…」
「最後の張り紙であんな露骨なこと書くからですよ」
「ちょうどいい理由が思い浮かばなかったのよ。どうやったら自然に身体に塩を揉み込んでもらえると思う?ならいっそ、勢いで押しちゃうのもありかな~って思ったんだけど~…」
「無茶ですよぅ」
「仕方ないから次行きましょう」
「まだ続けるんですか!?」
「当然でしょ?ただでさえ苦しい財政難の中、折角建てたんだから。使わないと勿体無いわ」
「え~……誰も来ませんよ、こんな怪しいレストラン…」
「あら、前に来たじゃない。お客様が一人……」
「あれぐらいですよ、引っ掛るのは…」
「そうね~、今度はウサギがいいわ。それも変わったウサギね!」
「聞いてないんですね…」
「よろしくね」
「………はいはい…解りましたよぅ…」
永遠亭。
鈴仙・優曇華院・イナバは自分宛に手紙が来ていることに気がついた。
「…わざわざこんなところにまで手紙?」
少し不審に思いながらも、鈴仙は手紙を開いた。
そこには
『白玉楼に料理店がオープンしました 鈴仙・優曇華院・イナバ様を招待したく思います 是非、いらしてください 店の店主より』
と、書かれていた。
《お帰りはあちらに…》
「そうね、まさかレストランを開いただなんてね」
博麗霊夢と霧雨魔理沙は二人で冥界上空を飛びながらそう言った。
「えぇと、それで場所はどこだっけ?」
「白玉楼の庭のどっかにオープンしたって手紙には書いてたけどなぁ。…こう広くっちゃ…お?」
魔理沙が指を突き出した。
「あそこじゃないか?明らかに異質な建物が建ってるぜ。あんなのいままで見たことない」
「あぁ、確かに。きっとうそうね。降りましょう」
二人は高度を下げてその建物の前に降り立った。
「ふぅん、案外いい外観だな」
魔理沙が建物を見上げながらそう漏らした。
「そう?この庭に洋風の建物よ?周囲との調和を考えたらいまいちじゃない」
霊夢の言うとおり、その建物はレンガ造りの洋風の建物だった。建てて間もないはずなのにもうすでに蔦などが壁に絡まっていて、古風な雰囲気をかもしている。
「そりゃお前、レストランだからだろ?」
「レストランねぇ…でもあの看板見なさいよ」
「看板?」
レストラン入り口上にデカデカと木製の看板が掲げられている。そしてそこにはやたら達筆な筆文字で『お食事処 西行寺』の文字。空気を読めていないかのようなその看板は、はっきり言って完全に店の雰囲気をぶち壊している。
「…まぁ、和洋折衷ってヤツだろ。そんなことどうでもいいからはやく入ろうぜ」
「そうね」
二人は入り口のドアを開いた。それに合わせてカランカランという軽い鐘の音が響く。
「……あれ?」
「ちょっと、戸口で立ち止まらないでよ。どうしたの?」
魔理沙は首をかしげた。後ろでつっかえていた霊夢も首を覗かせる。
「……うぅん、廊下だな」
はたして入り口の向こうは薄暗い廊下だった。天井近くでは辛うじてランタンが灯っている。
「窓も無いのか。ここは吸血鬼のレストランかぁ?」
「確かに窓が無いのはお食事処にしては雰囲気悪いわね。あ、ほら。廊下の奥にもう一つ扉があるわよ。あそこに入るのね」
霊夢が廊下の奥を示す。たしかにそこには入り口と同じデザインの扉がもう一つある。
「二重扉か。冬のことでも考えてるのかね」
そんなことを言いながら二人は廊下の奥へと進んだ。
「全く、二度手間取らせるなよな」
言いながら魔理沙はドアノブに手を掛けようとして、ピタリ、とその手を止めた。
「何?今度はどうしたの?」
不審そうに霊夢が声をかける。
「いや…ドアに張り紙がしてあるから…」
「張り紙?」
覗いてみると、なるほど確かにドアに張り紙がしてあった。
「何て書いているのかしら?」
「えぇと…『ようこそいらっしゃいました。この店では弾幕ごっこのことは忘れて純粋に食事を楽しんでいただきたいと思っております。つきまして、お手持ちのスペルカードはそこの金庫の中へお入れ下さい 店の店主より』…」
「スペルカードを?って、金庫って?」
「あれだろ」
視線をやると、確かに壁に金庫がはめ込まれていた。鍵が刺しっ放しているので、開閉はこちらの自由というわけだ。
「それで?どうするんだ?」
「うぅん、まぁべつに食事に来ただけだし…別に構わないといえば構わないわね。あんまり無粋なヤツと思われるのも癪だし」
「そうか」
そんなわけで二人は金庫の中に手持ちのスペルカードを入れてきっちりと鍵を掛けた。
それから、扉を開く。…と
「あぁ?」
魔理沙が再び素っ頓狂な声を上げた。
「…またぁ?」
今度は最初から顔を覗かせていた霊夢が一緒に呆れたような声を出す。
そう、扉の先は先ほどと全く同じように廊下が続いていたのだ。
「二重扉ならまだ理解できるけど…三重扉なんて存在の意味がないぜ」
二人は愚痴愚痴言いながら廊下の奥、扉の前まで進んだ。
「…また扉に張り紙があるな…えぇと、今度は…『当店内は少々日当たりがきつくなっております。日焼けなどをなさいませんようにこのクリームを体中に塗り込んでおいて下さい 店の店主より』
「クリームって…この壷のなかに入ってるこれかしら…」
霊夢は近くにあった壷を取り上げた。
蓋を取ってみると、たしかにクリーム状のものが入っている。
「これを身体に塗れってか」
魔理沙は下唇を突き出し眉根を寄せた。
「でもまぁ、日焼け対策というのは一応客への配慮…と納得できないこともないけど…どうなのよ、これは…」
さすがに怪しいと見て、霊夢はクリームには手をつけない。
「うぅん、しかし注文が多いレストランだぜ…」
張り紙を見ながら魔理沙は腕を組んだ。
…さて問題はこのクリームをどうするのかだ、と霊夢が考えていると、魔理沙が不意に呟くように言った。
「…レストランと言えばさぁ……最近ミスティアが行方不明になったって事件があったの、知ってるか?」
「…は?ミスティア?…ミスティアがどうしたって?」
レストランで振っておきながらいきなりミスティアに話がとんだものだから、霊夢は一瞬魔理沙が何を言い出したのかが理解できなかった。
「だから、ミスティアが行方不明になったんだってば」
「…それは、過去の事件ってこと?もう見つかったの?」
魔理沙は首を横に振る。
「いや、それがいまだに行方不明らしい。まぁ誰が真面目に探したってこともないんだろうけど、少なくともここ最近例のヤツメウナギの蒲焼屋は営業してないらしいぜ」
「らしいらしいって…どこからの情報よ」
「鴉の新聞だ。あいつの新聞では少しの間『夜雀の行方を追うっ!』なんて特集を組んでたらしいけど、飽きたのかかなり中途半端に終わってたな」
「…で?その話がどうしてレストランに繋がるわけ?」
「いや、今思い出したんだけどさ、ミスティアが消息を絶つ前の日に客と会話してたんだよ」
「どんな?」
「『レストランの招待状を貰っているから、明日は休業して行ってみるんだ』って言ってたらしい」
場の空気が一瞬固まった。
霊夢がゆっくりと言う。
「………レストランの…招待状…?」
「…………らしい」
霊夢は懐から幽々子から届いたレストランへの招待状を取り出した。
「…招待状……」
「…招待状だな…」
二人はごくり、と息を呑んだ。
「……」
そして、どちらからともなく、目の前の扉を薄っすらと開けてみた。
扉の向こうはやはり薄暗い廊下が続いていた。そして一番奥にはやはり扉があり、張り紙が張ってある。
目を凝らしてそこから何とか文面を読んだ。
『色々注文しましたが、この扉が最後です。すぐに美味しい料理がいただけますよ。最後にここにある塩を身体に揉み込んでください。理由は特にありません。個人的な好みです。ですが、あまり揉み込みすぎるとしょっぱくなるのでやはりほどほどにしておいて下さい。本当に色々注文して申し訳ありませんでした。 店の店主より』
「……」
「……」
霊夢と魔理沙は無言で顔を見合わせた。
「か…帰りましょうか…」
「…そうだな…」
二人は一目散にレストランを後にしたのだった。
帰り際、魔理沙は扉の向こうから「ちっ」という舌打ちが聞こえた気がしたのだが、気のせいだと思うことにした。
とある料理店の奥の奥…
二人の人影が見える。
「二人とも帰っちゃいましたよ」
「う~ん、惜しかったわ…」
「最後の張り紙であんな露骨なこと書くからですよ」
「ちょうどいい理由が思い浮かばなかったのよ。どうやったら自然に身体に塩を揉み込んでもらえると思う?ならいっそ、勢いで押しちゃうのもありかな~って思ったんだけど~…」
「無茶ですよぅ」
「仕方ないから次行きましょう」
「まだ続けるんですか!?」
「当然でしょ?ただでさえ苦しい財政難の中、折角建てたんだから。使わないと勿体無いわ」
「え~……誰も来ませんよ、こんな怪しいレストラン…」
「あら、前に来たじゃない。お客様が一人……」
「あれぐらいですよ、引っ掛るのは…」
「そうね~、今度はウサギがいいわ。それも変わったウサギね!」
「聞いてないんですね…」
「よろしくね」
「………はいはい…解りましたよぅ…」
永遠亭。
鈴仙・優曇華院・イナバは自分宛に手紙が来ていることに気がついた。
「…わざわざこんなところにまで手紙?」
少し不審に思いながらも、鈴仙は手紙を開いた。
そこには
『白玉楼に料理店がオープンしました 鈴仙・優曇華院・イナバ様を招待したく思います 是非、いらしてください 店の店主より』
と、書かれていた。
《お帰りはあちらに…》
しかしながらPia白……どんな制服があることやら。
あ、ちなみにみすちーは今うちでお風呂に入ってます。
オチはてっきり、途中で泡を吹いて死んでしまったアリスが生き返って助けに来るのかと(ひどい扱い)。
Piaの方もぜひとも読んでみたい。
てっきり文まで幽々子様に食べられたものだとばかり……。
スペルカードで疑惑に、
クリームで確信。
うどんげも最後まで騙されるかもw
けど面白かった。
ってか妖夢には止めてもらいたいもんだ……